インターグローが2016年秋のリリースを予定しているPS4用ホラーアドベンチャー「ホラート -ディアトロフ峠の惨劇-」。実際に起きた事件を題材にしたという本作の魅力を開発者に聞いた。
「ホラート -ディアトロフ峠の惨劇-(ホラート)」は、1959年に実際に起こった「ディアトロフ峠事件」をモチーフにしたホラーアドベンチャーゲームだ。すでにSteamにてPC版が配信されている本作、2016年秋にはPS4版がリリースされる予定だ。ここでは、本作の紹介とあわせて、開発者インタビューの模様をお届けする。
はじめに、本作のモチーフとなった「ディアトロフ峠事件」について紹介しよう。この事件は、ウラル山脈でスノートレッキングをしていたロシアの大学生9名が謎の死を遂げた怪事件で、海外では映画化などもされ、未だに多くの関心を集めている。
男性7名と女性2名の学生チームが目的地のオトルテン山に行く途中、悪天候によりホラート・シャフイル山(マンシ語で「死の山」の意)でテントを設営することになる。数日経っても連絡のない学生たちを救助隊や軍が捜索するのだが、見つかったのは彼らのテントのみ。そのテントは引き裂かれ、学生たちが急いで逃げたような形跡が残されていた。
その後、9人の学生たちの遺体が発見されたのだが、下着姿だったり、肌がオレンジ色に変色していたり、外傷がないにも関わらず骨が折れていたりと、不可解な死を遂げていた。結局原因は特定できず、「抗いがたい自然の力」によって死に至ったと結論付けられ、50年経った今でも未解決のままだ。
「ホラート」の主人公はこの事件の捜査官となって、1990年代のウラル山脈で捜査レポートを集めることになる。薄暗く不気味な雪山の中で主人公が頼りにできるのは地図とコンパスのみ。一人称視点で進行する本作では、ひとりで雪山を彷徨う心細さをリアルに再現。誰もいないはずの山奥から声が聞こえてきたり、幻視が表れたりと、怪奇現象が次々と発生する。
そんな恐怖に包まれた状況で、雪山に散った「ディアトロフ峠事件」の捜査レポートを集めなければならないのだ。ゲームは雪山で発見するノートとナレーションによって進行。当時の新聞や研究レポートなどを収集していくことで断片的な情報が集まり、次第に事件の全容が明らかとなっていく。一体どんな結末が待っているのか、ホラー要素とサスペンス要素を兼ね備えた本作のPS4版は、2016年秋に配信予定だ。
開発スタッフに「ホラート -ディアトロフ峠の惨劇-」の魅力を聞いた
日記や写真なども多数残っているにもかかわらず解決していない本事件については、さまざまな憶測が飛び交い、今でも議論が絶えないのだとか。「ディアトロフ峠事件」を題材にした理由や、本作の魅力について、「東京ゲームショウ2016」を訪れた開発会社・IMGN.PROのオーナー・Bartosz Moskala氏とアカウントマネージャー・Jakub Rylko氏に聞いた。
――IMGN.PROについて教えてください。
Moskala氏:もともとはパブリッシング業務を行う企業で、デベロッパーがヨーロッパでタイトルを展開するときに手伝っていました。以前から自分たちでゲームを作りたいという思いがあり、「ホラート」を開発することにしました。「ホラート」がデベロッパーとして1作目のタイトルとなり、2作目、3作目のタイトルも開発中です。
――パブリッシャーからのスタートしたとのことですが、開発スタッフはどのように集められたのでしょうか?
Moskala氏:拠点が地方にあるので、その地域出身の開発者に声をかけ、手が空いたタイミングで戻ってきてもらいました。現在は9人ほどの開発者が在籍していて、「ホラート」の開発には1年ほどかかりました。
――開発スタジオとしてのIMGN.PROの強みはどのような点でしょうか?
Moskala氏:関わっているスタッフ全員がゲーマーで、プレイヤーの気持ちが理解できる点です。今も拡大を続けていて、「ウィッチャー3 ワイルドハント」に携わったプログラマーが参加するなどして、大きな仕事もできるようになりました。情熱とスキルを兼ね備えている点が最大の強みです。
――では、「ホラート」ついて教えてください。
Moskala氏:「ホラート」は、アドベンチャー要素とホラー要素を併せ持った探索ゲームです。1959年にウラル山脈で実際に起こった「ディアトロフ峠事件」をベースに開発しました。プレイヤーは調査官となって、事件の真相を探ります。
――サスペンス要素もあるんですね。
Moskala氏:はい、サスペンス要素とホラー要素があります。最も表現したかったのは、静かな雪山の不気味さと、そこで迷うことの恐怖です。
――「ディアトロフ峠事件」は海外では有名な事件なのでしょうか?
Moskala氏:ロシアではとても有名な事件です。
Rylko氏:ゲームを開発する際に事件について調査したところ、アメリカでも有名な事件であることがわかりました。特にアメリカでは、2作の映画が作られたほど関心が高く、不可解であり、迷宮入りした事件である点が理由のようです。
――映画の世界を体験しているかのようなプレイフィールでした。
Rylko氏:自分が主人公となって事件の真相を探っていく表現は、映画から影響を受けています。
――開発する上で、気をつけたポイントはどのような点でしょうか?
Moskala氏:実際に起きた事件なので、被害に遭われた方の遺族に失礼にならないよう、しっかりと調査し敬意を払いながら作りました。
Rylko氏:このゲームで強調したかったのは、雪山で迷う怖さです。この事件には多くの推測が溢れています。それらの要素をゲームに取り込むことで、謎を深めていきました。
――ゲームでプレイヤーは事件を解決できるのでしょうか?
Moskala氏:私たちの解釈としてのエンディングを迎えることは可能で、ノーマルとトゥルー、2つのエンディングが存在します。ノーマルエンディングは手がかりとなるノートを集めて、そのノートが導き出す結論を見るというもの。それとは別に用意されたサブノートを全て集めるとトゥルーエンディングを見ることができます。
――PC版のプレイヤーからはどんな反応がありましたか?
Moskala氏:この結末はどんな意味だったのかなど、さまざまな議論が行われており、私たち開発者が想像もしなかったような解釈をされた場合もあり、驚いています。
Rylko氏:「ホラート」を遊ぶまで、この事件について全く知らなかった人がゲームを遊んだことで事件に興味を持ち、実際に調査したり、文献を調べはじめるケースも多いです。ゲーム以外の行動に結びついていることが、開発者としてとても幸せです。
――事件を知らなかった人でも楽しめそうですね。
Moskala氏:もちろん楽しめます。「ホラート」を遊ぶことで事件を知ることができ、事件に対しても興味を持てます。
――「ホラート」に続けてリリースする2作品についても教えてください。
Moskala氏:ひとつは、2017年1月のリリースに向けて開発を進めているサバイバルホラーゲーム「HUSK」です。サイレントヒルに影響を受けて開発しているゲームで、90年代のアメリカが舞台になっています。複雑に絡み合ったストーリーが展開し、プレイヤーを良い意味で驚かせられるのではないかと思っています。一人称視点で、武器を使って戦うアクション要素もあります。
Moskala氏:2017年の3月にリリースを予定している「Seven: The Days Long Gone(Seven)」は、弊社のフラッグシップタイトルで、すでに1年以上の期間を費やして開発を続けています。20人以上の開発者を投入し、中にはビッグタイトルに携わった開発者もいます。
アクションRPGとなっており、縦横に自由度の高いアクションを取り入れていて、Unreal Engine 4を採用しています。古代文明と中世の雰囲気が組み合わさったようなオープンワールドでストーリーを進めていきます。
――「HUSK」と「Seven」は日本でも遊べるようになりますか?
Moskala氏:日本語化は確定していませんが、是非ともやりたいです。「サイレントヒル」にインスパイアされたタイトルなので、日本の方にも楽しんでもらえると思います。是非日本でも発売したいです。
――日本のユーザーにメッセージをお願いします。
Moskala氏:日本の皆さんに遊んでもらえてとても嬉しいです。皆さんの反応が気になるので、是非聞かせてください!
Rylko氏:「ホラート」を楽しんで下さい!
――ありがとうございました。