EDGESのホラー脱出ゲーム「脱出ゲーム:ギフト」は、「気づくと怖い」というユニークな怖さを持った作品。ホラー脱出ゲームとして本作ならではの魅力とは何か? 結末までプレイした上で、ネタバレなしで紹介したい。

目次
  1. 全体に漂う「何か裏がある」雰囲気!まさに「気づくと怖い」ホラー
  2. 自らドツボへとハマっていく怖さが秀逸!
  3. より多くのことに気づくため過去作を一通りプレイしてからの挑戦がオススメ!

EDGESの新作「脱出ゲーム:ギフト」はタイトルにも「脱出ゲーム」とある通り、同社が得意とする脱出タイプのアドベンチャーゲームだ。現在はAndroid版のみ配信されているが、iOS版も近日中に配信予定とのこと。

同社はこれまで「呪巣」シリーズ、「赤い女」など、ホラー脱出ゲームの良作をリリースしてきた。本作もまた、ホラー要素をウリとする作品で、リリース前にも公式Twitterアカウントが「気づくと怖いホラー」だとつぶやいている。はたして本作はどんなテイストのホラーなのか?  本作をクリアまでプレイして分かったその魅力について、紹介したい。

なお、まだプレイ前の人も少なくないと思うので、ネタバレ要素については一切含まないので、これからプレイするという方でも安心してご覧いただきたい。

「脱出ゲーム:ギフト」は、脱出アドベンチャーゲームとしては極めてスタンダードなスタイル。ゲーム内の場面を移動しながら、探索したい場所をタップ。探索をすることで謎解きのヒントや、謎解きに関わるアイテムを入手することができ、それらを使って少しずつ謎を解いていく。最終的に脱出に関わる主要な謎を解くことで、閉鎖空間から脱出することができればクリア…というものだ。

基本的に、謎の解き方さえ気づいてしまえば、数分程度の短時間でクリアできる。謎解きを考えている時間こそが本作のプレイ時間のほとんどで、これもまた、脱出ゲームとしては王道中の王道。謎の難易度は、筆者の実感としてはややカンタンなレベルだと感じた。色の組み合わせや数字の並びなど、ヒントに込められた法則に気づくのはさほど難しいことじゃない。脱出ゲームに慣れたプレイヤーであれば、恐らく謎を解くのにさほど時間はかからないはずだ。

全体に漂う「何か裏がある」雰囲気!まさに「気づくと怖い」ホラー

脱出ゲームとしてはスタンダード、王道な本作の特徴は、やはりホラー要素。「呪巣」シリーズや「赤い女」といったEDGESの過去作品のファンにとって肝心な部分も、「今回もキッチリ怖いのか!?」という点だろう。

この点から言えば、今作もバッチリ怖い! ただ、「呪巣」シリーズのように、突然霊現象が襲ってくるような、いわゆるJホラー的演出は本作にはない。また、「赤い女」にあったような、狂気に侵された人間に執拗に迫られる、サイコホラー的な演出も乏しい。

そもそも本作は、「呪巣」シリーズや「赤い女」のように、モノトーンで暗い、いかにもホラーな雰囲気ではなく、見た目上はかなりフェミニンでガーリーな印象なのだ。

そもそも本作の導入部のストーリーは、バレンタインに意を決して意中の女の子へと告白したところ、見事成功! その女の子の家に誘われてしまう…というもので、ホラーというよりは恋愛ものの導入に近い。女の子も、顔が影になっていてわからないものの、顔の中でも確認ができる口の形や服装、髪型などから確実にカワイイと思える容姿。この時点では、まったくホラーとは思えない導入だ。

では、怖くないのかといえば、そんなことはない。何故なら、常に「何か裏があるのでは…?」と勘ぐってしまうような、不穏な雰囲気に満ちているからだ。フェミニンでガーリーな印象を受けるグラフィックにしても、歪んだようなエフェクトがかけられていて、どことなく不気味さを感じさせる。また、脱出の舞台となる部屋には、部屋の印象に明らかに反した不自然なモノが置かれていて、違和感を覚えてしまう…。

こうした演出の積み重ねによって。「今目に見えているものはウソで、正体に気づかないとヤバいことになるのでは…?」と感じてしまう…。これこそが、本作の怖さ。恐怖現象に遭遇して全身が粟立つような恐怖ではないが、どこか地に足がついていないような恐怖感を味わえる。

ネタバレを避けるため細かい言及はしないが、ゲームが進行すると、やがてそのうっすらとした恐怖感が、徐々に現実味を帯びてくる。そして、最終的には全プレイヤーが真相に気づかされる。だが、気づいた時には事態が手遅れになっていて引き返せない…。まさに、「気づくと怖い」のだ。

自らドツボへとハマっていく怖さが秀逸!

また、「気づくと怖い」という本作の恐怖にプラスして、筆者が本作をプレイした上で感じた恐怖が「ドツボにはまっていく恐怖」だ。

脱出ゲームといえば部屋に閉じ込められてしまう…というのが王道設定だが、実は本作、閉じ込められてはいない。扉を開けていつでも出て行っていいのだ。しかし、主人公は女の子からあるゲームを持ち掛けられている。「自分と付き合いたいなら、部屋に仕掛けた謎を解いて自分を理解してほしい。謎解きを諦めて出ていったら、二人の関係はそれまで」と。だから、自分の意志で引き返せないのだ。

客観的に考えると、その後の展開はどうもヤバそうだから、とっとと部屋を出ていけばいいじゃん…と思える。しかし、誰しもがこうした、怖さや不安を感じるから行動を起こした方がいいんだけど、ついつい欲望を優先して行動を起こせない…という経験を持っているだろう。たとえば、痛みを感じるから病院行った方がいいんだろうけど、実際に病気だったら怖いから行かない…だとか、今月のお金がそろそろキツいので節約した方がいいのにも関わらず、欲望に負けて出費しちゃったりだとか…。

こうした、大抵の人が持っている普遍的なシチュエーションが描かれているから、ドツボにハマっていく本作の主人公に「言わんこっちゃない」と思いつつも、共感してしまう…。そして、共感してしまうからこそ、怖さも実感できるのだ。

より多くのことに気づくため過去作を一通りプレイしてからの挑戦がオススメ!

本作には「恐怖現象でビックリ!」や「狂気を帯びた人間の異常性」といった、直接的な恐怖表現がないため、「いかにもなホラー」を求めている人には、もしかすると物足りないかもしれない。しかし、「気づくと怖い」という怖さや、「ドツボにはまっていく」という怖さは、本作だからこそ楽しめるユニークなもので、ホラーの新たな一面を見せてくれる。作品世界をしっかり味わってプレイするタイプの人には、堪能できる作品だと感じた。

なお、本作の持つ「気づくと怖い」には、同社の過去作を知っているからこそ気づけるという部分が存在している。このため、本作をプレイする前に、「呪巣」シリーズや「赤い女」といった作品をプレイしておくことで、「気づく怖さ」をより一層楽しめるはずだ。本作プレイ後に過去作をプレイする…という形でも楽しさはアップするが、筆者としては事前に過去作を遊び、予備知識を持った上でのプレイを推奨したい。

脱出ゲーム:ギフト

EDGES

AndroidアプリAndroid

  • 配信日:2017年6月5日
  • 価格:基本無料

    脱出ゲーム:ギフト

    EDGES

    iOSアプリiOS

    • 配信日:2017年6月22日
    • 価格:基本無料

      ※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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