意味深なタイトルと「CERO Zだなんてどうなっているのだろう?」という疑問が脳裏から離れないダークな雰囲気ながらも独特なビジュアルのゲームが発売されていました。これは遊んでみなくては、ということで、「2Dark」のインプレッションをお届けします。
メインビジュアルを見ると、おどろおどろしいのにどこかコミカルなキャラクターデザイン。イメージイラストを見た瞬間に、「これってコントなの? 怖いの?」と頭の中に「?」が発生し、心がちょっとざわつきました。
ドリフのコントからジャパニーズホラーまで、一歩間違えるとギャグにも恐怖にも転ぶような、微妙なラインというモノがあるとしたら、このゲームのメインビジュアルから浮かぶのはそんな感覚。
これはぜひ触れてみないと、と思い、ゲームソフトをお借りして、早速プレイしてみました。
DARKに染まれ!
「2Dark」は2Dタイプのステルスホラーアドベンチャー。ジャンル表記的には、「ステルス」と「ホラー」の2つの要素が乗っかっている「アドベンチャー」なわけですが、画面イメージは、若干俯瞰のマップを移動するアクション風のゲーム。
ストーリーを見てみると、とてもとても重い設定。主人公は孤独な生活をしている元刑事の中年の男性。彼は、かつては妻と2人の子どもがいる幸せな生活をしていたのですが、7年前のキャンプ中に妻を何者かに殺害され、2人の子どもはさらわれてしまいます。
そして、失意の中で職も失い、現在に至ります。
この哀愁という言葉では片づけられない悲しくも不幸な主人公は、それでも最近起きている子どもの連続誘拐事件に対して独自のアンテナを張り、まだ失われていない正義感、そして、もしかしたら家族に起こった不幸に関係しているのではないかと思い、事件解決に乗り出していきます。
プレイヤー自身が操作できるようになると、いきなり怪しい家の前。鍵を探して、正面突破で家に忍び込むと……ここは主人公のおうち。家族を失い、7年の月日の間に刑事の職を失い、失意の中で生活をしてきた男の家のわりには、何やらいろいろとありすぎです。
懐中電灯で明かりを灯しながら、部屋を探索していきます。ここは射撃を練習する部屋? 何やらネズミが出てきたぞ! もしかしてネズミにやられている?? ここでアイテムを使うの? こんな隠し部屋まであるの??
主人公のおうちの中をうろうろすることで、主人公自身のパーソナリティや生活を体感し、ネズミと格闘し、テレビのニュースで児童失踪事件のエリアを知り、怪しい現場に出動するまでの流れの中で、プレイヤー自身の気持ちが徐々に主人公へと歩み寄っていきます。
繰り返されるDARKな展開
グルーミーディッチ遊園地に着くと、中には容易に入れそうです。ここでやるべきことは、さらわれた子どもたちを見つけて無事に外に連れ出す事。室内に入ると中は真っ暗。ここは懐中電灯を点けて慎重に進んだところ……。
今度は、おばあさんが子どもを連れて入っていった入口に入ってみると、いきなりおばあさんに発見されてしまいました。ここは何とかしなくてはいけないと思い、おばあさんにひたすらパンチを連発。子どもが見ている前でパンチを連発。
おばあさんが倒れると子どもが泣き始めますが、これはやむを得ない正当防衛。ひたすら自分に言い聞かせながら、子どもを一人救い出します。何やら別の泣き声が聞こえますけど、よくわからないのでスルーしておきます。
改めて、最初に入った入口から内部へ侵入。今度は床の穴に気を付けながら、慎重に進んでいくと、障害物に当たって血をだらだら。暗闇でネズミが突っ込んできて、ダメージを受けてしまっているため、急いで先に進んでいると、今度は障害物に激突した瞬間にあっさりと……。
おじいさんに背後から襲い掛かると、全然ダメージを与えられず、逆にバールで殴られて……。
その後も、順調(?)に死を重ねていきます。
失敗すると即死のゲーム。それゆえに、このままでは全然先には進めませんけど、ノーセーブでゲームを進めるのは上級者のプレイ方法。ヘタレはこんなプレイをしてはいけません。このゲームではタバコを吸うことがセーブになっているため、タバコを吸ってプレイヤー自身が心を落ち着けつつ、セーブで一歩前進状態をキープしておきましょう。
あからさまにギミックを1つクリアした時や、子どもを助け出した直後など、ゲームの進展を感じた時にセーブをしておくと間違いありません。やり込みなんてことはまだ考えてはいけません。本当の意味で「ステルス」のプロになるのは今ではありません。
懐中電灯で人を照らしても問題ありません。いずれ、懐中電灯をタイミングよく消せる男になればいいだけのことです。
バタバタ歩いて発見されても問題ありません。いずれ、忍び足をすればいいだけのことです。
恐ろしい光景を見ても恐れてはいけません。
むしろ、どんなシチュエーションなのか、想像できる人間になりましょう。
想像したところで恐怖が消えるわけではありませんけど、解決しなくてはならない問題として認識でき、子どもたちを助けるための力になっていきます。
ギミックだって運任せでも構いません。一度覚えたギミックの使い方はいずれほかの場面でも役立つはずです。
プレイヤー自身が7年間苦しんだ男とそんなに簡単に、完全にリンクするなんてことは無理です。今は1つ1つのことをこなしていけばいいのです。時には大胆に、時には泥臭く、隠れる、逃げる、落とす、食わせる、などなど、適度に頭を使いながら先へ先へと進んでいきます。
子どもを発見したら、近づいたり、アメで呼び込んだり、言葉で導いたり、足止めさせたり、掴んで直接運び出したりして、安全地帯を見つけるなどして、慎重に進んでいきます。
ゲームの中では「こっちだ!」と「静かに!」で子どもを誘導しますが、心の中では「おじさ……お兄さんは正義の味方なんだよ?」と念じています。
時には獣、時には悪人どもが立ち塞がりますが、彼らがいつも敵とは限りません。やり方次第ではガブガブと助けてくれることも(本人に助けている認識があるかどうかは秘密)。
そして、かなりバッサリと途中経過は省きますが、子どもを全員助け出すことに成功しました。
全てが終わると評価が下されます。今回は、「エリアをクリア!」と「子供たちを全員救出した!」の2つは成功していますけど、「キャンディを全部集めた」「犠牲者を出さなかった」「すべての条件を達成したい」は条件を満たさず、★2つという評価になりました。
キャンディはかなり慎重に建物の端々まで調べないと集められないし、犠牲者は……最初におばあさんを撲殺してしまったことが問題だったのでしょうか。ライオンに食べさ……いやいや、なるべく犠牲者を出さないで子どもを助け出す事こそ正義ということなのでしょう。これは後程の課題となりそうです。
こんな感じで、最初のエリアはクリアになり、ゲーム自体は次のエリアでの救出劇へと進んでいくのですが、当然ながらこのエリアを再プレイしてコンプリートを目指すような遊び方もできます。
そして、DARKの先には……
すでにここまで読んでいただければわかるように、とにかく死にます。死にまくります。しかし、死ぬことで経験を積んで知識を蓄え、数々の困難を乗り越え、時にはセーブをして刻みながら目的を達成していき、いずれはセーブをせずにすべての工程をこなせるダークマスターになるべくやり込みを実現していくことは本当に楽しいのです。
当然ながら、主人公には重いバックボーンがあり、ただ死ぬだけでなく、やり方によってはいろいろな残酷シーンがあり、その行いはクレバーだったりクレイジーだったりと、プレイヤーに合わせて多種多様。ある意味、プレイヤー自身もとことんダークに堕ちたうえで、いかにして這い上がり、子どもたちを助けていく中で、どんな展開になっていくのか。狂気の先にこそ、きっと希望の光が待っている……はずです。
先に行けば行くほど怪しいヤツらが登場し、何が行われているか安易に想像するのは危険ですが、ダークのその先に何があるか想像しただけで涼しくなるので、暑い夏の夜長にぜひぜひプレイすることをおすすめします。きっと、忘れられない夏を過ごすことができるのではないかと。
なお、ゲームを借りてプレイしていたはずが、いつの間にか購入してしまったことをここで併せてご報告させていただきます。
プロフィール
酒缶(さけかん)/ゲームコレクター
15000種類以上のゲームソフトを所有するゲームコレクターをしつつ、フリーの立場でゲームの開発やライターなど、いろいろやりながらゲーム業界内にこっそり生息中。「東京エンカウント弐」「ゲームラボ×仮面女子 ゲーム実況」にゲームアドバイザーとして協力。関わったゲームソフトは3DSダウンロードソフトウェア「ダンジョンRPG ピクダン2」「謎解きメイズからの脱出」など多数。価格コムでは、ゲームソフトとAndroidアプリのプロフェッショナルレビュアーを担当している。
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