2017年8月30日、パシフィコ横浜で開催中のCEDEC 2017にて、プラチナゲームズの開発者によるセッション「アクションゲーム・アニメーションの極意!-制作環境とこだわりについて-」が行われた。

今回は、プラチナゲームズの代表作である「ベヨネッタ2」をベースに、プラチナゲームズ 企画開発グループ 副グループ長 / リードアーティストの山口孝明氏がアクションゲームにおけるアニメーションの重要性を語った。

アクションゲームといえばプラチナゲームズというほど、そのクオリティの高さをゲーム業界やユーザーからも評価されているだけに、細かいこだわりが詰まった講演の内容は必読だ。

ただし今回のセッションは、2017年2月に大阪で開催された「GAME CREATORS CONFERENCE」で山口氏が行った講演のアップデートバージョン。既にそちらを見た人は、重複する内容が多いので、ご注意願いたい。

プラチナゲームズ 山口孝明氏

山口氏は長い間アクションゲームを作ってきており、「デビルメイクライ」「大神」「ベヨネッタ」「ヴァンキッシュ」「ベヨネッタ2」などなど、数々の名作アクションゲームにその名を連ねている。

アニメーションに関わる仕事はほぼしてきたという山口氏だが、実際、キャラクター制作、制作環境構築、マネジメント、アウトソース管理、スクリプト作成と、これまでに関わってきた業務内容は多岐に渡る。

今回はアクションゲームにおけるアニメーション、その制作環境について、山口氏の視点で語られた。

プラチナゲームズはアクションゲームを開発するのに最適な環境

今回は「ベヨネッタ2」の中でも、アクションゲームの遊びの中心ともいえる敵とのバトルについて絞って、その重要性を知ってもらいたいと、山口氏。

アクションゲームにおける敵とのバトルとは一体どのようなものか、それを言葉にすると「緊張と解放」であり、これがゲーム性の基本となるという。敵の攻撃が「緊張」であり、それをうまく回避できれば「解放」されるという、短いサイクルになっているのがアクションゲームならではの特徴と言える。その緊張と解放に深く関わってくるのがアニメーションであり、どの敵がどんなタイミングでどんな攻撃をしてくるのか、そのシルエットやテンポが、情報として大事なところだというわけだ。

では、いかにそのサイクルをテンポよく回すかという点が重要なのだが、その要素を作り出す大きな要因が、プラチナゲームズ独特の制作環境にあるのだと、山口氏は語る。

ゲームのアニメーションに関わってくるセクションをあげると、ゲームデザイナー、コンセプトアーティスト、キャラクターモデリングアーティスト、アニメーター、アプリケーションプログラマー、VFXアーティスト、サウンドデザイナー、と、ざっと挙げただけでもこれだけの数になる。

どのセクションも重要だが、プラチナゲームズとして特に重要な部署は、ゲームデザイナー、アニメーター、アプリケーションプログラマー、この3つのセクションだそうだ。

まずはゲームデザイナーがコンセプトを各セクションに伝えるところから始まるが、ここで驚きなのは、戦闘を作る上でゲームデザイナーは仕様書を書かないという点だ。

攻撃の数や、アニメーションの種類なども、ゲームデザイナーから発注が来ることはないのだという。コンセプトを受け取ったアニメーターとプログラマーが実機上で仕様を固め、何を作るかを自分達で相談して、アニメーターがアニメーションを出し、プログラマーがそれを実装する。そのやり取りを繰り返していくのが、流だというから驚きだ。

そうしてそれがある程度形になってきたところで、いよいよゲームデザイナーなどの他の部署の人たちにチェックをしてもらう。プラチナゲームズの場合、ゲームデザイナーは全体を見渡しながらコンセプトからずれていないか、きちんと面白くなっているかという部分をチェックするのが主な仕事であり、サブディレクターみたいな立場になるのだそう。

だからこそ、プラチナゲームズではアニメーターとアプリケーションプログラマーが重要なセクションであり、「こんなことが出来たらいいね」という話で終わらせるのではなく、実際に色々と案を試してみることで実現可能か不可能かを現場が判断していることになる。

つまりアニメーターとアプリケーションプログラマーは、一般で言うところのゲームデザイナーを兼任している。これがプラチナゲームズのアクションゲームの作り方というわけだ。

具体的にどういうメリットがあるのかというと、まずアニメーターとアプリケーションプログラマーの二人が合意すればネタが入れられるので、実行速度が速く、一日に何個もの案を試すことができる。

他の人に指示や仕様を作ってもらうことがないので、自分自身が発案して自分で試すことが可能で、失敗を恐れずにチャレンジすることが可能である。

そして、当事者意識を持つことが出来、おもしろい敵を作ってやろう、というようなモチベーションが生まれやすい。また、データやプログラムを直接触ることができるため、アクションゲームに必要な細かい調整を感覚的なレベルで追求できるという。

実際の制作におけるこだわりをアニメーター視点で紹介

次に、実際にどのように敵のアニメーションを作成していくかについて紹介していった。

今回は「ベヨネッタ2」に登場した敵の中ボス「ファンタズアラネア」の場合を例に挙げて紹介。まずはファンタズアラネアが中ボスであること、1対1で戦うこと、重量級のモンスターであること、遠距離が得意な敵として作ってほしいと、ゲームデザイナーから口頭で告げられるのだという。

ボスやステージなど複雑なものの場合はミーティングルームでディスカッションをすることもあるそうだが、中ボスクラスの敵はほぼ現場に任せられるそうだ。

コンセプトが決まると次はコンセプトアートを描くが、今回のセッションで事例として紹介しているファンタズアラネアは「ベヨネッタ」にも登場したためコンセプトアートはすでにあったので、そのコンセプトアートを元にモデラーの作成を依頼する。

アニメーターが作る仮モデルは全要素が仮で、もう一度作り直す前提で3日から1週間ほどで制作される。きちんとしたものを待っていると何ヶ月もかかる上に、仮モデルでも実際にゲーム画面においてみるとモデルやアートの問題点が明らかになる場合もあるので、早い段階での仮モデル制作はとても重要と、山口氏は説明していた。

コンセプトとアートが出たら、仮モデルの完成を待たずにアニメーションデザインがはじまり、どんな動きをするのか具体的に案を出していく。

ゲームに登場するモンスターは現実には実在しないものの、実在する何かをモデルにすることが多いため、資料集めも重要になる。最近は映像資料をとしてYoutubeなどをつかうことも多いそう。また、アニメーターをやるならば、運動力学なども勉強しておくと良いとのことだ。

モデラーから仮モデルが届いたら、いよいよアニメーション制作が開始される。ここからゲームを組み上げていくが、何日目に何を実装したかなどがフローとして解るように図にしたものが下記資料だ。

たった数日の間にどんどん敵の行動アニメーションが増えていくのが解るが、早いものならば数十分で実装されることもあるのだとか。

ここで実装されるのは仮アニメーションで、ゲームを素早く作るのに特化したアニメーション。山口氏によれば、発案から数時間で出すのが理想とされる。クオリティよりも時間の早さが求められるが、キャラクターのイメージに合わないアニメーションはノイズとして扱われるので、不可となるそうだ。

待機、攻撃、ダメージのアニメーションを更に深く掘り下げていく

アクションゲームとしてのアニメーションのこだわりの具体的な部分として、待機(※戦闘行動に入る前の状態)、攻撃(※実際に戦っている時の敵の攻撃)、ダメージ(※プレイヤーが与えるダメージによって生じる怯みなど)、それぞれのアニメーションについて更に深く掘り下げていく。

待機は土台となる部分で、全ての基準となるアニメーション。

左がボツ、右が実際に採用された待機のアニメーション。

素人目には右の爪を上げているか下げているかの違いでしかないこの待機アニメーションだが、左の青いもののほうが攻撃性が薄く感じられるという。

そして攻撃は、アニメーションの中心部分。「ユーザーが納得できない攻撃は不可で、プレイヤースキルがあればノーダメージクリアができるような難易度がアクションゲームとしてはちょうどいい」と、山口氏。視認性、避けやすさは非常に重要で、コントラストやリズムも大事にしているそうだ。特にリズムの部分は実際に試作をプレイしてみないとわからないので、ここから何十回とプレイをして、調整をかけていくとのこと。

画面外に出てしまうほどの大ジャンプ攻撃をさせないようにしたり、プレイヤーがどこにいても敵を視認できるようにカメラの角度や距離感なども、ここで細かく繊細な調整をしていく。

ほんの僅かな差と思われるような部分をきちんと調整することで、アクションゲームとしての完成度が変わっていく。そこにかけるこだわりこそがアクションゲームのアニメーションの醍醐味であり、自分でプレイをして自分がやりにくいから直すというのが、このプラチナゲームズ流の作り方の最大のメリットだと山口氏は語った。

最後はダメージのアニメーションだが、ここはプレイヤーをいかに気持ち良くするかが重要なのだそう。前述の「アクションゲームの面白さは緊張と解放」という、その「解放」に当たるのがこのダメージアニメーションの部分で、ここでユーザーに爽快感を持たせることが必要になってくるのだ。

ゲームの機能としては不要だが、ダメージアニメーションのバリエーションを増やすことによって、ユーザーにプレイした時の満足感を与えるという。

そして敵の中で一番重要になるのは、最初から最後まで出てくる雑魚敵。雑魚敵はとにかく多くのダメージバリエーションを作り、それをほかの雑魚敵にもあてはめていく。

この雑魚敵のダメージバリエーション数は、なんと130。

日々、そのような細かい調整を重ね、作品をより良いものにするのがブラッシュアップと呼ばれる作業だ。アニメーターは、全体の締切が近づいてきても、最後まで表現を追求するために詰めの作業を行なっていくのだという。

単純なパターン化で倒せてしまうボスばかりではつまらない作品になってしまうため、色んな攻略法を持たせるのも必要になってくる。

こうした作業を重ねてついにゲームは完成するが、アニメーターにとってはマスターアップは時間切れという感覚だそう。満足できるまでやりきった、ということは滅多にないが、アニメーターが飽きないくらいにまで調整を重ねたということは、十分なクオリティであるということの証でもあると、山口氏。

山口氏は最後に、アクションゲームは細かいこだわりのアニメーションが大きく影響するものであり、アクションゲームの制作環境ではアニメーターがゲーム性を担う担当者としてこだわれることが重要である。

そしてアニメーターはアニメーションだけでなく、ゲームデザイナーでもあるという認識が必要であり、ゲーム制作に合った環境、そこで発揮されるゲームへのこだわりが重要なのだと、締めくくった。

※画面は開発中のものです。

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