ソニー・インタラクティブエンタテインメントジャパンアジア(SIEJA)は、2017年11月14日、東京・品川にてPlayStation 4(PS4)やPlayStation VR(PS VR)向けの最新タイトルを試遊できるメディア向け体験会を開催した。本稿では当サイトが特に注目した、以下の4タイトルのプレイレポートをお届けする。
ワンダと巨像
オリジナル版は、2005年にソニー・コンピュータエンタテインメント(現・SIEJA)よりPlayStation 2で発売された作品。「ICO」や「人喰いの大鷲トリコ」といった独特の世界観で多くのゲーマーを魅了するクリエイター・上田文人氏が手がけており、全世界で高い評価を得た。
2011年にはHDリマスター化を施したPlayStation 3版も発売されたが、2018年2月8日に発売を予定しているPS4版は、グラフィックを完全に一新したフルリメイク作品となっている。
プレイした際に感じたのは、やはり新たに作り直されたグラフィックの美しさだ。「ワンダと巨像」は元々、PS2版発売当時でも飛び抜けたグラフィック表現を実現していたタイトルだが、最新ハードであるPS4向けに作り直されたことで、さらに劇的に進化。
特にリアルなグラフィックであるにも関わらず、どこか現実離れした幻想的な雰囲気をまとったフィールドの美しさ、より生々しく感じられるようになった巨像の存在感は凄まじい。
既にプレイしている人はご存知かと思うが、本作にはシンプルながら非常に個性的なゲームシステムが採用されている。
本作にはレベルや装備によるパラメータとなった概念が存在せず、ミニマップに次の目的地が表示されるということもない。主人公であるワンダがR1ボタンを押して剣をかざすアクションを行うと、そこからいくつもの光が発せられるのだが、その光が一直線に集まる方向こそが向かうべき場所となっている。ワンダはその光だけを頼りに、魂を失った少女を救いだすための冒険に赴くことになる。
本作では「掴む」ことが非常に重要なアクションとなっているのも特徴。ワンダの行く手には、険しい崖や不安定な足場が待ち受けており、主に「ジャンプ」と「掴み」という2つのアクションを活用して乗り越えていくことになる。近年のアクション・アドベンチャーでは、この「掴む」という行為は自動化されていることが多いが、本作においては、例えばジャンプした後でどこかを「掴む」ためには、プレイヤーが自らボタンを入力する必要があり、慣れない内はうっかり「掴む」ことを忘れてしまうこともあった。
またワンダには、握力ゲージが設定されており、掴まった状態で一定時間がすぎると自動的に落下してしまう。こうした制限があるため、崖を乗り越えることにもなかなかの労力が必要。
本作は、いわゆる「雑魚敵」は存在しないという非常に珍しいゲーム。その巨像までの障害となるのがワンダの行く手を阻む広大な地形だ。この「掴む」必要性と握力の限界という存在が、巨像のいる場所へとたどり着くまでの道中を、アクション・アドベンチャーのような要領で、ほどよい苦労を味わいながら進むことができる。
目玉となる巨像との戦いでは、弱点となる部位を目指してその巨体を登っていくことになるが、巨像の身体は、掴むことのできる場所がある程度制限されている。そのため、無事巨像の身体に掴まることができたとしても、そこから次にどこに掴まるかというルートを探し出す必要がある。
巨像は身体を動かしてワンダを振り落とそうとしてくる上に攻撃力も非常に高く、一筋縄ではいかない相手。そうして長い時間をかけて、振り落とされながら何度も這い上がるという試行錯誤を繰り返しながら、最後の一撃を巨像に突き立てた時の達成感は格別で、スローモーションでゆっくりと巨像が倒れ込んでいく演出が印象的だ。
筆者はPS2版の発売当時放送されていたCMで流れていた「最後の一撃は、せつない。」というキャッチフレーズを今でもよく覚えているのだが、「強敵を倒した」という喜びだけではない、寂しさにも似た感情を抱く、本作独特の魅力を的確に表現した言葉だと改めて感じられた。
Hidden Agenda ―死刑執行まで48時間―
「Hidden Agenda ―死刑執行まで48時間―」は、「Until Dawn ―惨劇の山荘―」の開発チームが手掛ける複数人でのプレイを可能としたまったく新しいタイプのサスペンスアドベンチャーゲーム。
特筆しているのは、ワイヤレスコントローラー(DUALSHOCK 4)ではなくスマートフォンやタブレットをそれぞれのコントローラーとして用いることで(端末にはそれぞれ専用アプリのDLが必要)、連続猟奇殺人事件の真相に迫るという事件の解決を目指すストーリーモードの他、物語の主導権を握り点数を競い合う対戦モードが存在。今回は対戦モードを、実際に4人でプレイすることができた。
犠牲者の遺体に罠を仕掛け、第一発見者までも狙うという極めて残忍な手口で殺人を行う「トラッパー」連続猟奇殺人事件。プレイヤーは警官ベッキー・マーニーと検事フェリシティ・グレイブスの視点から、「トラッパー」事件の真相に迫る……というのが本作の主なストーリーだ。
本作では基本的にプレイヤーが直接キャラクターを操作するのではなく、映画を見るような流れで自動的にゲームが進行する。ストーリーの重要な場面では、選択肢が表示されることがあり、選択肢のどちらを選ぶかを、スマートフォンのタッチ操作でカーソルを動かし、多数決の投票を行う形で決定する。
もちろん、その際に選ばれた選択肢によってストーリーは大きく変化する。例えばトラッパー事件の犯人が立てこもる部屋へとベッキーが突入する場面では、同時に窮地に陥った人質と相棒のどちらかを優先するかの選択が出現し、今回のプレイでは人質を救出することに。すると主人公と一緒に突入した相棒は死亡してしまい、その後のストーリーは相棒が死んだ状態で展開されていた。
その他にも、どちらかの選択肢を選ぶという投票形式だけではなく、もっとも早くカーソルを合わせたプレイヤーがゲーム中で使用可能な「テイクオーバーカード」を獲得できるという特殊なギミックもある。対戦モードでは、獲得ポイントが最終的にもっとも多かったプレイヤーがゲームの勝者となる。
そのポイントの獲得にもっとも大きく影響するのが、全プレイヤー中1人だけに下される「秘密の指令」。指令を受けた1人は「秘密の指令」で課せられた内容を成功させることで、残るプレイヤーは誰が指令を受けているかの推理を的中させることで、それぞれ大幅にポイントを獲得できる。
ゲームの最中には、他のプレイヤーの意向を無視して、選択肢を強引に決定することのできる「テイクオーバーカード」が配布されることもあり、これを使うことで、強引に指令を成功させることも可能だ。
だが、このテイクオーバーカードは「後から使用したプレイヤーが優先される」のが面白いところ。例えば自分が指令を受けたと疑う人物がカードを使用して強制的に選択肢を選ぼうとした際には、後から自分がその効果を上書きすることで、指令を失敗させるといった使い方もできる。
逆に、指令を受けていないプレイヤー同士が疑心暗鬼となってカードを消耗しあい、最後に様子を見ていた指令を受けたプレイヤーが一人勝ちする……などの状況も当然起こりうる。「テイクオーバーカードをどんなタイミングで使い、他のプレイヤーにどんな印象を与えるか」というプレイヤー同士の駆け引きはかなり重要で、プレイヤーの中の裏切り者を探し当て、1人はそれが露見しないように行動する「人狼ゲーム」に通じる楽しさがあるだろう。
今回のプレイでは、一回目の指令では情報量の少なさから指令を受けたプレイヤーを一切推測することができず、まんまと指令を達成されてしまった。
一方、勝手が分かってきた二回目の指令では、明らかに選択肢を選ぶタイミングが早かったり、他のプレイヤーと異なる選択肢を選んでいるプレイヤーに不審感を抱いたことで、三人全員が指令を受けたプレイヤーを的中させることに成功し、指令も阻止することができた(もし指令が達成されていた場合でも、推理を成功させたプレイヤーはポイントを獲得できる)。
誰が指令を受けているかは、それまでのどの選択肢を選んでいたか、どんなそぶりでカーソルを合わせていたかなどから推理することになるが、それだけで犯人を割り当てるのはかなり難しい。
本作ではオンラインを介さない、ローカルでのマルチプレイが前提となっているため、選択肢を選ぶ際のプレイヤー同士の相談や、ストーリーを眺めている際の何気ない会話などから、いかに他のプレイヤーから情報を引き出すかのやりとりも重要になってきそうだと感じられた。
なお、モバイルデバイスにはただのコントローラーとしての機能だけではなく、物語の流れや登場人物の情報、どこでストーリーが分岐したかなどを、それぞれの端末でいつでも振り返ることができる機能も含まれている。
今回は最後までプレイすることができなかったのだが、かなりスピーディにストーリーが進むため、おそらくクリアまで必要な時間もそれほど長くなく、ちょっとした映画を楽しむような感覚でプレイできる作品だと推測できる。
アドベンチャーゲームにアナログゲーム、さらには映画という、様々なジャンルの要素が詰め込まれた、まさに未体験と呼ぶべき楽しさが詰め込まれた本作。ある程度人数を揃えるのは敷居が高いかもしれないが、これまでにない新鮮なゲームを求めるプレイヤーには、是非とも一度体験してみて欲しい作品だ。
バイオハザード7 レジデント イービル 無料DLC「Not A Hero」
全世界で大ヒットしたサバイバルホラー「バイオハザード7 レジデント イービル」の無料DLC「Not A Hero」を、PS VRで一足先に体験することもできた。
「Not A Hero」では、シリーズ屈指の人気キャラクター、「クリス・レッドフィールド」が再び主人公となり、ベイカー邸で起こった惨劇・事件の結末へと迫るエピソードが描かれることになりなる。
PS VRを装着してゲームが始まった際に最初に驚いたのは、左右に画面に表示された武器の残弾や体力を表示するゲージなどのUIが、背景から浮き上がるように表示されていたこと。
これはなかなか実際に体験してみないと分かりにくいのだが、ヘルメットの内側にウィンドウが直接投影されているような、SF映画の登場人物が使うような装備を使っている時のような気分を味わえる。
PS VRをかぶっている際には、やはり裸眼とは異なる器具の重みというのをどうしても感じざるをえないのだが、その点をゲーム内でもヘルメットを装備したキャラクターとリンクさせることで、より大きな没入感を出すことに成功している。没入感を高めるために、ゲーム的な要素を連想させるUIを極力排除していた「バイオ7」本編とは正反対の試みながら、かなり効果的な演出となっていると感じられた。
また「バイオ7」本編の主人公のイーサンとは異なり、今回のプレイヤーキャラクターであるクリスは対バイオテロ部隊「BSAA」の隊員という対ゾンビ戦のプロフェッショナル。そのため使用感もイーサンとは大きく異なり、ゲームを開始した状態からハンドガンにショットガン、グレネードにナイフといった豊富な武装を所持している。
弾薬に限りこそあるものの、マップ内を探索すれば弾薬は比較的入手しやすい上、肉弾戦による攻撃でもダメージを与えていくことが可能。「Not A Hero」では、序盤からかなりのクリーチャーを相手にすることになるのだが、ガンガン敵を蹴散らしながら進むという、シリーズの「4」や「5」に近い、ガンシューティング的な感覚でプレイすることができるようになっていた。
個人的に面白いと感じたのが、やはりPS VRをかぶった状態だと、追い詰められた際の緊迫感が通常のプレイとは比較にならないということ。プレイを進めていると、部屋内のウィルスにより空気を取り込めなくなり、酸素残量が尽きる前に部屋から脱出しなければならないというシチュエーションが発生したのだが、脱出口を探してウロウロと彷徨っている間にあえなくゲームオーバーになってしまった。
というのも、行き止まりと思っていた場所のほんの目と鼻の先に、違う部屋につながる扉があったのだが、悪化した視界と、凄い速度で減り続ける酸素残量を見ると、本当に自分が危険な状況に追い込まれたかのような危機感に駆られるあまり、それに気づくことなく引き返してしまっていた。
VRで自らの視点を動かして周囲を確認することにまだ慣れていたなかったこともあるが、目の前で変化が起こるからこそ発生する焦りや怖さというのはこれまでなかった経験で、VRとホラーゲームとの相性の良さを改めて実感することができた。
とはいえ、全体的な印象としては芯に迫るようなホラー演出は本編よりもやや抑えられている印象で、どちらかというとアクション系のスリルが強めになっているようにも感じられた。「7」本編が怖すぎてプレイできなくなってしまったというプレイヤーにも楽しめるDLCとなっている。
Detroit Become Human
最後に紹介するのが、「HEAVY RAIN -心の軋むとき-」や「BEYOND: Two Souls」といった、傑作アドベンチャーゲームを生み出してきたQuantic Dreamの最新作「Detroit Become Human」。今回は残念ながら実際にプレイすることはできなかったのだが、スタッフによるBCDセッションが行われており、その模様を見学することができた。
本作の舞台となるのは、人間とそっくりなアンドロイド達が当たり前の存在となった近未来の世界。プレイヤーは3人のアンドロイドを操作し、人間とアンドロイドが共存する世界が抱える様々な問題に直面していくことになる。
今回プレイヤーキャラクターとなったのは、若い女性型の家政婦アンドロイドである「カーラ」。カーラは父親のトッドとその娘のアリスという二人暮らしの家庭で働いているのだが、その境遇はお世辞にも恵まれているとはいえない。職を失い妻に逃げられたトッドは薬漬けの毎日で、その苛立ちを娘のアリスにぶつけ、暴力を振るおうとする。
その際、カーラの中で「アリスを助ける」か、「指示に従う」かという2つの選択肢が出現。カーラはアンドロイドのため、本来は主人であるトッドの命令に逆らうことはできないはずなのだが、その中には自我をもつ「変異体」と呼ばれるアンドロイドが発生することがあり、カーラもその一体なのだという。
会場では、どの行動を取るかを決める際に参加者の多数決が行われ、結果は満場一致で「アリスを助ける」が選ばれることに。逃げ回るアリスをトッドよりも先に発見すると、今度はアリスと共にトッドから身を隠すことになるのだが、いくつもある部屋の中からどこに隠れるか、どのタイミングに部屋を出るかなどの選択もプレイヤーに委ねられる。今回のプレイでは、途中でトッドに見つかってしまい、争いになる場面も発生するも、どうにか隙をついてアリスを連れ出し、無事その元から逃げ出すことに成功していた。
さらに会場では、選択肢による変化を見せるため、先程選ばれなかった選択肢を選んだルートのプレイも行われた。
2回目のプレイでも、暴走するトッドの元からアリスを連れて逃げるという大筋は変わらなかったのだが、こちらの展開では、カーラが銃を持ち出し、激しい揉み合いの末にトッドがアリスから撃たれるという、先程とはその過程が全く異なる結果となり、「カーラが大きなダメージを受けた」、「トッドが撃たれた」という状態が発生したままゲームが進行することに。こうした要素はその後のチャプターへと引き継がれ、今後の展開にも影響を及ぼすのだという。
今回プレイしたチャプターに関しても、カーラ自身が銃を発砲する、カーラがトッドに壊されてしまうなど、まだまだ異なる展開が存在しており、選択肢と選択肢の組み合わせで変化する物語のバリエーションは凄まじい数に上る。結果によっては、それぞれの登場人物から受ける印象もガラリと変わるといったこともあるそうで、プレイヤーの数だけ異なる物語が存在することになる。
なお今回確認できた、トッドが襲いかかってくるアクションシーンは、タイミングに合わせて指示されるボタンやアクションを入力する、俗に言う「QTE」のような形式となっていたが、チャプターによってはまったく異なるゲーム性を要求されることもあるという。どんなシチュエーションがプレイヤーを待ち受けているのか、非常に気になるところだ。
現在は開発の佳境に差し掛かっている段階とのことなので、着実に迫る発売に向け、引き続き続報にも注目して欲しい。