ソニー・インタラクティブエンタテインメントより2017年12月14日に配信されるPlayStation 4用(PlayStation VR専用)ソフトウェア「人喰いの大鷲トリコ VR Demo」を、一足先に体験する機会を得た。ここでは、そのインプレッションをお届けする。
主人公の「少年」自身の視点から、「トリコ」の世界を隅々まで見渡せる
ソニー・インタラクティブエンタテインメントより発売中のPS4ソフト「人喰いの大鷲トリコ」。独特の世界観で多くのファンをもつクリエイター・上田文人氏が手がけるアドベンチャーゲームで、全世界のゲーマーから高い評価を得ているタイトルだ。「日本ゲーム大賞 2017」年間作品部門 優秀賞にも選ばれた。
今回プレイすることができた「人喰いの大鷲トリコ VR Demo」は、ゲーム序盤にあたる一部分をVR対応させたもの。三人称視点である本編とは異なり、主人公である少年の一人称視点へと変更されている。
またコントローラーとしてDUALSHOCK 4も使用するが、アナログスティックを用いての移動やジャンプではなく、PS VRを使ったアクションになっているのが大きな違い。マップに配置されている、移動が可能なポイントやオブジェクトに、頭とカメラの動きが連動したPS VRで、そのポイントに視点をあわせることで、移動やアクションを行うことができるようになっている。
DUALSHOCK 4での操作は、メニューを開いたり、オブジェクトを選択した際の決定など、補助的なものに留まっており、PS VRを前提とした操作形態へと変更されている。
今回のプレイでは、トリコと少年が、一見行き止まりのように見える遺跡の出口を探すシーンからスタート。この時、プレイヤー(少年)の視界には、間近でトリコが現れることになるだが、そのインパクトはかなりのもの。特に、トリコがその鼻先をプレイヤーに近づけてコミュニケーションをとる場面では、本当に自分の目の前にトリコが存在しているとしか感じられず、その迫力に思わず後ずさりしてしまった。
元々、トリコのしぐさは非常にリアルな動物に近いものとなっていることもあり、まさにペットと触れ合っている時の感覚そのものだった(もっとも、現実にこんな大きなペットはいないが)。
部屋の中には、いくつかのタルが置かれており、それをトリコの方へと投げると、トリコが樽を食べて動き回り、その背中を登って建物の2階へと移動することができるようになるのだが、最初は「トリコとコミュニケーションを取るミニゲームなのか?」と勘違いしてしまい、しばらくの間さまざまな角度からトリコを眺めたり呼んだり、触れ合ったりして楽しんでいたほど。
元々、トリコの仕草は非常にリアルの動物に近いものとなっていることもあり、動物好きならその動きを眺めているだけでも楽しめる。VRとの相性は抜群で、今後、動物とコミュニケーションを取ることを目的としたジャンルのゲームもリリースされるかもしれない。
トリコの力を借りて、遺跡から脱出したあとは、がらりとシーンが切り替わり、今度は不安定な足場を移動しながら、トリコを呼び、時には背中に乗って移動することに。
今回のVR版は、360度を自由自在に見渡せるようになったことで、自分が今とんでもなく高い場所にいるという臨場感を実感として感じられるようになった。
とくにトリコの背中に乗って、足場と足場の間をジャンプで超えるシーンは、高所恐怖症の人なら身体がすくんでしまうのではと思えるほどの迫力とリアルさ。こうしたVRならではの臨場感は、3人称視点でプレイしている時とは比較にならない。ゲーム中の主人公が実際に体験していたであろうものに近い感覚を抱くことで、より深くゲームの世界へと没入することができた。
上田文人氏が作り上げた、「人喰いの大鷲トリコ」の幻想的で美しい世界の中に自分自身が存在しているという感覚も、ファンにとってはたまらないはずだ。
視点が固定されていることで、「3D酔い」が起こりにくい作りに
その後、トリコと別遺跡の入り口らしき場所にたどり着いたところで今回のプレイは終了。無料配信ということもあり、ゲームとしてのボリュームは控えめだが、目の前に存在するトリコのかわいらしさ、大きな巨体から来る存在感は、「もし現実にトリコがいたら」という妄想を具現化したようなもので、本作でしか体験できない要素だ。驚きや愛らしさといった様々な感情を抱けるようになっているのは間違いない。
また今回の体験で個人的に驚いたのが、トリコの上に乗ったりジャンプしたりといった、大きく視点が動く演出が入るにも関わらず、「3D酔い」というものがほとんど起こらなかったことだ。
例えば一部のVRゲームでは、視界の動きがほぼ現実と同じなのに対して、身体の動きはコントローラーで制御するため、頭と身体の動きが連動しておらず、微妙な違和感を感じることが少なくなく、人によっては、「3D酔い」してしまうことがある(事実、VR開発者の方にインタビューさせていただいた際には、この部分をどうやって解消するかの工夫が語られることが多かった)。
一方、本作で視界が移動するタイミングは、トリコの上に乗っている時に限定されており、基本的な立ち位置はその場で固定されているので、乗り物に乗っている時の感覚とそう変わらないのだ(少年が指定した場所に移動する際は、暗転が挟まるため視界が動くことはない)。
ここからは筆者の予想になってしまうのだが、「トリコ」に関していえば、アナログスティックで少年を動かせる仕様を残し、視点を一人称に変更するのみに留めた方が、対応作業としての手間は少なかったのではないかと思う。
本作でわざわざそれを避けたのには、「少年の動きと、プレイヤーの視点の動きが連動していない」ことから発生する違和感を排除した、「3D酔い」が発生しにくいゲームデザインを目指して開発されているからではないかと推測できる。
本作は無料配信のコンテンツで、かなり気軽にプレイできる内容ながら、VRのもつインパクトをしっかりと味わえるようになっているので、VRゲームの入門用としてこれ以上最適なコンテンツはないはずだ。
10月14日には新型も発売され、徐々に品薄も解消されつつあることで、そろそろ本格的にPS VRの購入を検討している読者も多いハズ。この機会にPS VRを購入したり、既にPS VRを所持しているという人は、是非とも本コンテンツを体験してみて欲しい。