「NOSTALGIC TRAIN(ノスタルジックトレイン)」を制作した畳部屋氏は、数々のAAAオープンワールドに携わった歴戦の背景デザイナー。同作が生まれた経緯と、背景のこだわりを語ってもらった。

2018年6月13日、Steamでリリースされたウォーキングシミュレーター「ノスタルジックトレイン」が静かなブームを巻き起こしている。特筆すべきは、Unreal Engine4で制作された美麗な背景グラフィックス。日本の田舎を舞台にしており、ただ美しいだけではなく、童心を刺激されるような懐旧に満ちているのが特徴だ。プレイヤーからも、好意的な意見が続々と生まれでているようだ。

ところで、そんな同作品を作り上げた畳部屋氏とはどんな人物なのだろうか。日本人であることは、SNSなどからなんとなく察しはつくが、バイオグラフィーは謎な部分が多い。そこで今回、ネット検索のみではまるで解析が進まない畳部屋氏へインタビューを試みた。

本文では畳部屋氏が自身の経歴や「ノスタルジックトレイン」に込めた思いを語っている。

ウォーキングシミュレーター「ノスタルジックトレイン」

――本日はよろしくお願い致します。弊サイトへは初登場となるので、まずは簡単に自己紹介をお願いします。

畳部屋氏:現在は海外のゲーム制作スタジオで背景モデラーとして働いています。元々は日本の小規模な会社でPS3やPS Vita向けのアクションゲームを開発していました。ただ私はオープンワールドゲームが好きということもあり、海外に行って、フォトリアルなAAAタイトルに参加したいという思いがずっとあったんです。

そのため国内の会社を辞めたあとは海外に移り、とある大型プロジェクトに関わり、その後もさまざまなタイトルの開発をし、今に至るという感じですね。

――記事には書けませんが、かなりの大型タイトルに関わってらしたんですね。ビックリしました。

畳部屋氏:そうですね。ただ大人数でAAAタイトルを作るのも良いんですけど、次第に、自分で好きなものを作りたいという気持ちも湧いてくるんですよ。インディーで「ノスタルジックトレイン」を作ろうと思ったきっかけも、その辺りが大きいですね。

――2018年6月13日に「ノスタルジックトレイン」がSteamでリリースされましたが、プレイヤーの反響はいかがでしたか?

畳部屋氏:個人的には、とてもマニアックなものを作っているつもりだったので、予想以上の反響に驚いています。背景や音楽に関する好意的な意見が多いのも嬉しいですね。

Unreal Engine4で描かれた美しい背景

――個人的な要望なのですが、コントローラーへの対応は考えてらっしゃいますか。現在はキーボードとマウスでの操作になるので、望まれている方は多いと思います。

畳部屋氏:今すぐ、というわけではなないのですが、今後配布するパッチでコントローラーへの対応は考えています。そんなに難しいことではないので、それほどお待たせすることもないと思いますよ。

――現在は日本語のみの対応になっていますが、外国語への対応についてはいかがですか?

畳部屋氏:翻訳にかかる費用を調べたら、予想以上にお金がかかってしまうことが分かったんです(笑)。なので、言語データだけを外に出して、自由に有志翻訳してもらえるビルドにすることくらいが、現状できる精一杯のアクションかなとは思っています。

「ノスタルジックトレイン」が目指したものは、密度の高いマップ

――日本の田舎を舞台にした作品は過去にもありましたが、ウォーキングシミュレーターのスタイルでこの手の作品てほとんどなかったと思います。そこでお聞きしたいんですけど、「ノスタルジックトレイン」はどういう部分から着想を得て作られたのですか。

畳部屋氏:私はこれまで、数々のオープンワールドゲームのプロジェクトに参加してきましたが、このような大規模な作品は個人では作れないし、広すぎるゆえにマップの密度が薄くなってしまうことも不満でした。

なので以前から、自分で作るのであれば、そういう部分(マップの密度など)をクリアにした作品にしたいと考えていたんです。そんな時、鉄道模型のようなレイアウトで、マップは小さくても密度のあるゲームを作れないかと、田舎のベッドで寝転んでいる時にフッと思いついたんです。

それが「ノスタルジックトレイン」の具体的なアイデアの始まりですね。私が、鉄道模型やジオラマが大好きだったからこそ生まれた発想かもしれないです。

列車がキーワードとなる本作

――SNSでも鉄道模型のレイアウトを意識しているとおっしゃっていましたが、まさにその通りの内容になっているのですね。

畳部屋氏:ちょっと歩いただけで景色が変わり、別の景色や建物が出てくるというウォーキングシミュレーターとしての体験を生み出したかったんです。狭いけど、色々な角度から見たら面白い。それってまさにジオラマだと思うんですけど、「ノスタルジックトレイン」ではそういう部分に力を入れています。

――田舎の駅に関しても、日本人であれば誰でも共感できそうな要素ですよね。実家やおばあちゃんの家を思い出す人もいるでしょうし、ほとんどの人が懐かしいと感じられる。

畳部屋氏:狭いマップの中になるべく色々な要素を入れるようにしました。神社とお寺もあるし、駅前に小さな商店街も並んでいる。川や滝、学校もあります。小宇宙というか、その中で人生が完結するような、全てが詰まっている設定にしたかったんです。ゲームの世界なので現実には存在しないけど、プレイヤーの思い出の中にある「田舎」に近い景色が見つかればいいなと思っています。

趣のある鳥居

――田舎を舞台にした作品は決して少なくないですが、本作はウォーキングシミュレーションということで一人称視点も特徴ですよね。

畳部屋氏:そういう形にしたのは、単純に技術的な制約があるからです。キャラモデルを作って、それを満足のできるクオリティで動かすというのは大変なことです。なぜインディーゲーム制作者がウォーキングシミュレーターを作るのかっていうところに繋がってくると思うんですけど、それは、背景を作り、テキストを用意すればジャンルとして成立するから。個人的にはキャラクターも作りたかったんですけど、現時点では技術的に難しいかなと思い、断念しました。

――シナリオは「神隠し」が1つのテーマになっていますが、人がいないというのは、そういう制作上での背景があるからなんですね。あと本作では、列車に乗ると違う世界に行けますよね。見た目は同じだけど、実は違う世界に移動している。この辺りの着想はどういったところから出てきたのでしょうか。

畳部屋氏:もともと、マップを鉄道模型のレイアウトのようなテイストにしたいと思っていたんです。なので、ストーリーもそれにカチッとハマるような内容が良いだろうと考えていました。さらに、マップのギミックを利用できればより面白くなる。

そんなとき、鉄道模型のレイアウトがループしていることを利用できないかと思い、そこから、ループする列車で違う世界に移動できるというアイデアが生まれました。その内容ならば、ストーリーとも上手く繋げられますし、せっかく電車があるので上手く利用したい。

なので順番としては、最初に描きたいマップがあって、そこに書きたいストーリーを上手く繋げることが来ています。列車が同じ駅に戻ってくるだけじゃなく、一見同じ風景なんだけど、実は違う世界になっていたら不思議だし、面白いなって。

――ストーリーは和風幻想テイストですが、この辺りは元々のアイデアとしてあったものなんですか?

畳部屋氏:和風幻想にしようと思ったのはマップができてからですね。神社や学校もあるし、それらがお話と絡んでくれば、マップも生きてくる。あと、個人的にちょっと悲しくて切ないストーリーが好きというのもあります。

アイデアを自由に盛り込める、インディー制作ならではの良さ

――畳部屋さんは現在は海外で活動してらっしゃいますが、日本と海外のインディー制作者の違いについて、何か感じる部分はありますか?

畳部屋氏:日本はキャラクター志向の3Dデザイナーやアーティストが多い気がします。アニメや漫画から入って、そこからイラストを描くことに移って、それを3D化してモデルにする。なのでメインはキャラクターであり、背景は嫌々作っている人が多い印象ですね。

でも僕は油絵で背景を描くのが好きだったし、ゲーム制作でも、もともと背景がやりたかったんです。海外では背景や世界観を作りたいという方が多いんですよ。pixivを見ると、日本人はキャラクターを描いている人が多いのに対し、海外の方はファンタジーのお城を描いていたりとか、そういう違いは感じますね。

――個人制作の良かった点と苦労した点を教えてください。

畳部屋氏:デバッグ作業が大変でした。2Dアドベンチャーならコマンド数が限られているし、移動できる場所もある程度制限されています。

でも3Dマップは広いし、歩くべき場所と歩くことが必須ではない場所があるから、リリースしたら、デバッグの時に歩かなかった場所を歩いたプレイヤーから「道にハマっちゃいました」という報告もありました。発売してからパッチで修正することもあって、一人でデバッグすることのキツさを痛感しています。

――デバッグ作業は気が遠くなりそうですね、逆に良かったところはありますか。

畳部屋氏:良かったところは、やはり自分の作りたいものを自由に作れることかなと思います。大きなチーム制作だと、自分は組織の歯車になってしまいますし、意見を言って採用されることもありますが、されないことも多い。

なので、自分のアイデアが、自分の技術次第で実装できるのはやっぱり嬉しいですね。チームで「ノスタルジックトレイン」を作っていたら、社長から「こんなんじゃ売れないよ」って言われるかもしれないし(笑)。

――それでは最後に、読者へメッセージをお願いします。

畳部屋氏:「ノスタルジックトレイン」は私の背景へのこだわりが詰まった作品です。竹やぶや草むらのなかに、あぜ道のような小さな道が作ってあるんですけど、メインの道だけではなくて、そういうところも散歩してほしいです。小道を抜けたら開けた場所が広がっていて、そこに列車が通っていたりとか、そういう素敵な景色も多いので。

マップ自体は広くないですが、その中で、高密度な景色と様々な発見をしてほしいですね。

Steam配信ページ
https://store.steampowered.com/app/801260/NOSTALGIC_TRAIN/

(C)2018 Tatamibeya All Rights Reserved.

※画面は開発中のものです。

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