2018年8月25日、カプコンは「モンスターハンター オーケストラコンサート 狩猟音楽祭2018」の東京公演を東京国際フォーラムにて開催した。
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人気ハンティングアクションゲーム「モンスターハンター」シリーズを彩る歴代の楽曲が、フルオーケストラでの生演奏で蘇る「モンスターハンター オーケストラコンサート 狩猟音楽祭」。8月25日に実施された東京公演は、日本を代表するプロオーケストラである「東京フィルハーモニー交響楽団」と、マエストロ・栗田博文氏による指揮のもと行われた。
前半では、歴代のシリーズ作品を彩った様々な楽曲が蘇る
そんなコンサートは「モンスターハンター4」などの作品でメインテーマにも採用された「旅立ちの風」とともにスタート。疾走感と開放感に溢れた爽やかなメロディが、心地よく会場中へと響きわたると、客席から盛大な拍手喝采が沸き起こり、コンサートの幕開けを見事に飾る。
最初のMCでは、「モンスターハンター」シリーズプロデューサーである辻本良三氏が登壇。辻元氏は、今年も引き続き狩猟音楽祭を開催できたことへの喜びを語りつつ、最新作「モンスターハンター:ワールド」のアップデートで、多くのハンターを苦戦させている強敵「極ベヒーモス」にも触れ、「帰ったら是非挑んでみてください」と会場の笑いを誘う。
そんな「モンスターハンター:ワールド」の楽曲も、昨年の音楽祭から引き続き演奏されることになるが、今回は発売前だった前回とは異なり、すでにゲームで聞き馴染んだ状態となっていることから、「ゲームのワンシーンも思い出しながら、楽しんでもらえれば」とメッセージも送っていた。
続く「『モンスターハンタークロス』村メドレー」では、ココット、ポッケ、ユクモ、ベルナという『モンスターハンタークロス』に登場した4つの村のBGMがラインナップ。演奏には、ゲストとして和楽器ユニット「HIDE×HIDE」の石垣秀基氏&尾上秀樹氏、ギタリストの宮﨑大介氏らも参加し、尺八と三味線、フォークギターというオーケストラでもなかなか見られない楽器達の音色が加わる驚きのコラボレーションにより、穏やかで心地よいメロディが奏でられた。
さらに「閃烈なる蒼光/ジンオウガ」からは、そこにギタリストの森空青氏によるエレキギターも加わり、和洋折衷の様々な楽器のテイストが違和感なくシンクロ。激しいロックチューンの中にも品のある音色が交じる、ゲーム中とは一味異なるアレンジで紡がれる音楽に、ジンオウガが繰り出す強烈な攻撃の数々が、自然と脳裏へと蘇る。
その後に続くのは、「嵐に舞う黒い影/クシャルダオラ~炎国の王妃/テオ・テスカトル&ナナ・テスカトリ」、「光蝕む外套/ゴア・マガラ~剛き紺藍/ブラキディオス」という、歴代シリーズを通して多くのハンター達を苦戦させてきた、最強クラスのモンスター達のテーマソングのメドレー。フルオーケストラならではの低音の効いた重厚感溢れる楽器の音響が、その迫力を一層引き立てていた。
前半戦のラストを飾る「動く霊峰~勇者のためのマーチ 2017Version」と「銀翼の凶星/バルファルク」の2曲では、「狩猟祭2017」でも好評を博した、コーラス隊が引き続いて参加。オリジナル版でも共にコーラスが印象的な楽曲として人気の高い2曲だが、ゲーム中のイメージはそのままに、生声ならではの厚みが加わったことで、強大なモンスター達の存在感と、それに挑むハンターの勇猛さをあますことなく表現しながら前半を締めくくる。
後半からは「モンスターハンター:ワールド」の楽曲が目白押しに
後半最初の曲となった「新大陸への礎~調査拠点アステラ」は、「モンスターハンター:ワールド」で何度も耳にすることになる拠点でのBGM。日常の楽曲ながら、穏やかな入りから盛り上がりまで、様々なメロディが含まれており、特にフルオーケストラの演奏ではその壮大さが顕著に表現され、ゲーム中には気づけなかった新しい魅力にも気付かされることに。
MCでは、そんな「モンスターハンター:ワールド」の楽曲を手がけた、牧野忠義氏と小見山優子氏、メインコンポーザーの成田暁彦氏の3名が登壇。これまでも「モンスターハンター」シリーズの楽曲を複数手がけてきた面々だが、3人が一緒に担当するのは、現在の「モンスターハンター」シリーズの人気を確立させたタイトルといっても過言ではない「モンスターハンターポータブル2ndG」以来、約10年ぶりのことだったのだという。
また、実は開発がスタートした頃のメインコンポーザーは、まだカプコンに在籍していた頃の牧野氏であり(後に独立し、株式会社スピンソルファの代表に)、当初はどんなゲームになるか、まったく見当がつかない状態だったという。
そんな時、「モンハン」シリーズの中核スタッフである藤岡要ディレクターから「『ワールド』は今までのモンハンからまったく違う、良い意味でファンの期待を裏切るゲームになる。その分、音楽では従来のファンに安心感を与えられるものしたい」という言葉を受け、古くからシリーズに関わっている小見山氏と成田氏と共に、楽曲を作ることを決めたという経緯が明かされていた。
その直後に演奏された「古代樹の森メドレー」は、「ワールド」で最初に作曲されたBGMだという。作曲を担当した小見山さん自身が「初代『モンスターハンター』の「咆哮」を聞いた時に受けた衝撃を『ワールド』でもう一度与えたい」という思いの元で制作した曲でもあるのだとか。静かな始まりから一転、モンスター達の鼓動を感じさせるようなメリハリの効いた構成は、まさに筆者が少年時代に始めて初代「モンスターハンター」をプレイした時、大型モンスターと遭遇した時のドキドキとワクワクを思い出させてくれた。
その後には、成田氏と小見山氏が作曲した「飛来せし気高き非道~バゼルギウス」と「黄泉を統べる死を纏う者~ヴァルハザク」、「古龍を脅かす獣牙~ネルギガンテ」という、「ワールド」の中でも強大な存在感をもつモンスター達のテーマが続き、その威圧感にあふれた楽曲群の数々に、客席も圧倒されていく。
中でも「ネルギガンテ」は、モンスターのデザインが完成する前に作られた曲で、「魔王」「足が速い」「再生」という3つのキーワードだけを頼りに、小見山さんが作り上げていったもので、モンスターの完成まで約一年間もの間寝かされていたという裏話も明かされていた。
ラストの楽曲となったのは、「ワールド」のメインテーマである「星に駆られて」。作曲を担当した牧野氏は「ワールド」は世界中のユーザーに向けた作品であるために、その音楽性も海外に寄せるべきか葛藤の末、最終的には、日本人らしい感覚を信じて楽曲を送り出す決断をしたこと明かす。また「星に駆られて」という曲名は、牧野氏がメインコンポーザーを降板した後、成田氏によって命名されたそうで、「すごくいい曲名をつけてもらったなと、感動しました」と、牧野氏にとっても思い入れのある楽曲となっていた様子だった。
そんな本曲は、穏やかさと勇ましさ、もの悲しさなど、「ワールド」の世界観を総括するような豊富なメロディが組み込まれた楽曲となっており、スクリーンに次々と映し出される「ワールド」のシチュエーションの映像と合わさり、様々なゲームでの思い出が自然と脳裏に蘇ってくる。
その後には辻元氏が再び登壇し、「来年で15周年を迎る『モンスターハンター』シリーズですが、まだまだ成長し続いけていきますし、今後もゲーム以外の部分でも、『モンハン』の世界を味わえるような施策を考えていきたいと思います」と今後のシリーズ展開と、開催10年目となる来年の狩猟音楽祭の開催に向けての期待を高まらせるメッセージを送る。最後は鳴り止まない拍手に答える形で、アンコールの演奏も行われ、大盛り上がりとなったコンサートは締めくくられた。
フルオーケストラで行われた生演奏により、「モンスターハンター」シリーズの楽曲がもつ魅力に改めて気付かされた今回のコンサート。元々、「モンスターハンター」シリーズにはオーケストラ調の楽曲が多いだけに、その相性の良さは言うまでもなく、ゲーム中のイメージに準拠したアレンジで、一味違う魅力を高めているのもたまらないポイントとなっていた。
2018年9月9日には、「関西フィルハーモニー管弦楽団」による兵庫公演も予定されているので、東京公演に参加が叶わなかったというファンもお見逃しなく。
「モンスターハンター オーケストラコンサート 狩猟音楽祭2018」東京公演セットリスト
01.「旅立ちの風」
02.「『モンスターハンタークロス』村メドレー」(ココット村~ポッケ村~ユクモ村~ベルナ村)
03.「閃烈なる蒼光/ジンオウガ」
04.「嵐に舞う黒い影/クシャルダオラ」~「炎国の王妃/テオ・テスカトル&ナナ・テスカトリ」
05.「光蝕む外套/ゴア・マガラ」~「剛き紺藍/ブラキディオス」
06.「動く霊峰~勇者のためのマーチ 2017Version」
07.「銀翼の凶星/バルファルク」
08.「新大陸への礎~調査拠点アステラ」
09.「古代樹の森メドレー」(小型モンスター~中型モンスター~森を牛耳る蛮顎の竜)
10.「飛来せし気高き非道~バゼルギウス」
11.「黄泉を統べる死を纏う者~ヴァルハザク」
12.「古龍を脅かす獣牙~ネルギガンテ」
13.「星に駆られて」