「トゥームレイダー」シリーズ最新作となる、PS4/Xbox One/PC用ソフト「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」がスクウェア・エニックスより2018年9月14日に発売されることに合わせ、2015年にXbox One/Xbox 360版、2016年にPS4/PC版が発売された「ライズ オブ ザ トゥームレイダー」のプレイレビューをお届けする。
シベリアに眠る秘宝「神秘の泉」を巡って描かれる、壮大な「父と子」の物語
女探検家「ララ・クロフト」の冒険を描いたアクションアドベンチャーゲーム「トゥームレイダー」シリーズ。「ライズ オブ ザ トゥームレイダー」は、若き日のララ・クロフトに焦点を当て、ゲームシステムを大幅に一新した「トゥームレイダー」(2013年)の続編となる、リブートシリーズの2作目にあたるタイトルだ。
基本的なゲームシステムは前作「トゥームレイダー」から引き継がれており、様々な道具を駆使して未知のルートを探索、パズル的なギミックを突破し、時には障害となる敵との戦闘をこなしながら、物語を進めていくことになる。
四苦八苦しながら隠されたルートを見つけ出し、道なき道を進むことができた時の喜びはもちろん健在。その一方で、最初の頃こそどの足場に飛び移ることができるのか、どのアクションを使えばいいのかの判断で苦労することになるが、ゲームプレイを重ねていくことで、概ねどの足場に飛び移れるか見分けがつくようになり、プレイヤー自身の成長も実感できるようになる。
本作のララは、秘密結社「トリニティ」によって暗殺された父親の無念を晴らすため、かつて父が研究していた伝説の秘宝「神秘の泉」を求めて、極寒のシベリアの地へと赴くことになる。漂流した孤島で、生き残るための戦いを余技なくされるサバイバル色の強い前作「トゥームレイダー」、トリニティとの対立が主になる続編「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」と、同じリブートシリーズのタイトルと比較すると、秘宝を巡って展開するドラマという、もっとも冒険映画らしい王道的なストーリーが展開されるのが特徴だ。
そんな本作の物語全体を通してテーマとして描かれているのが「父と子」。本作では、既に故人となっているララの父、リチャード・クロフト伯爵と、ララ自身の幼少期の頃の思い出なども描かれ、幼い頃のララがどうして考古学に興味をもち、冒険家として活動するに至ったのかというエピソードが明らかになる。「トゥームレイダー」は過去に映画化も行われた有名作品だけに、ララ・クロフトというキャラクターを知っているプレイヤーは多いと思うが、そのバックボーンを知ることにより、主人公への感情移入度がグッと高まり、よりドラマを楽しめるようになる。
またストーリーが進行すると、ララはトリニティ教団に捕まっていた現地の男性・ジェイコブを救出、行動を共にする一幕もある。このジェイコブは物語のカギを握るキーマンであり、ゲーム中明言されているわけではないのだが、ララはこのジェイコブに亡き父の面影を重ねている節があると筆者は考察している。とある身近な人物からの裏切りにあったララは、当初はジェイコブのことを信用していなかったのだが、行動を共にするに連れ、その関係性が変化していくのも、大きな見どころとなっている。
なお前作のララは、普通の女性として描かれたため、精神的にも未熟な面が多かったのだが、既に修羅場をくぐり抜けた後である本作のララはとにかくたくましい。トリニティから命を狙われたり、現地住民からの警告を受けたりと、散々な目に合わされるのだが、”父親の無念を晴らすために秘宝を見つけ出す”という目的を果たすため一切のブレがない。足場が崩れて高所から落下した回数は数知れず、物語上では何度も「これは死んだ」と思うような危険な場面に出くわすのだが、そんな苦境に立たされても弱音一つ吐かず、黙々と窮地を突破していく(プレイヤーが操作ミスをすると、あっさりと死んでしまうこともあるが。死亡時のバリエーションも驚くほど豊富だ)。
本作の主な舞台となるシベリアは、当然ながら極寒の地。探索においては、水中を移動せざるを得ない場面もでてくるが、ララは極寒の海に飛び込んでもダメージを受けることもなく平然と泳いで進んだり、ゲームシステム的にも非常にタフだ(水から上がった時は、流石にものすごく寒そうにはしている)。
物語の黒幕的な存在である、本作でのトリニティを率いる人物は、ララの存在を警戒しており、執拗に味方へと引き入れようとするのだが、その目は正しいと評価せざるを得ない。確かにこんな精神的にも肉体的にもスキがない存在を相手にしては勝ち目も薄いだろう。
どの景色も思わず見とれてしまうほど美麗なグラフィックとなっているが、 中でもインパクトが強かったのが雪の表現。積もっている雪の深さによって ララの歩行モーションがしっかりと変化するようになっており、しっかりとしたリアリティを感じられる。 |
次から次へと行きたい場所が増えていく、やりごたえ満載の探索要素
広大なフィールドを自由に歩き回ることができるのも本作の特徴で、マップの探索がとにかく楽しい。フィールドでは、武器の強化や装備の作成に使用できる素材を回収できる他にも、NPCからのミッションを受注できたり、レリックと呼ばれるコレクションアイテムを入手することができる。レリックにシステム的な利点はないのだが、キャラクターが何を考えていたのかの独白や、その地域の歴史といったストーリーの裏側的な側面を知ることができる。
個人的に秀逸だと思ったのが、レリックで知ることができる世界観のバックボーンが、ストーリーが進むにつれ意味をもつようになってくること。レリックで語られていた、一見物語の大筋に関係がなさそうなエピソードが、ストーリーの終盤で伏線として回収された時には、「あの話がこれに繋がってくるのか!」と思わず感心させられた。キャラクター達の心情を知り、その印象がガラリと変わることもあり、世界観を深く知るというファン向けの要素に留まらず、物語そのものをより楽しめるようになる作りとなっている。
その他にもフィールドには、言語レベルを上げることで解読できるようになるモノリス(レリックなどのアイテムの位置が表示される)や、金貨(武器や装備の購入に用いる)の位置が分かるようになる「探検家の小型カバン」や、「○○を10個破壊」などの条件に挑戦する「チャレンジ」が隠されていることも。一部のフィールドでは、こうした要素が導線のようにつながっており、「これが終わったら先に進もう」と考えていた矢先に別の要素を発見して、止め時を見失ってしまう……といった流れも珍しくなく、次から次へと新しい目的が発生するので、なかなかやることが尽きない。筆者もプレイ途中、ストーリーを進めることをすっかり忘れて、探索に没頭していたほどだ。
一方で、ララの行く手を阻むトリニティの兵士たちや、野生動物との戦闘が発生することも。この戦闘も、落ちている瓶を改造して手榴弾のような爆発物として使ったり、配置されている爆薬を引火させたり、高所から落下してステルスキルを狙ったりと、環境を活かしたアクションが豊富で楽しい。
個人的にインパクトが強かったのが、野生動物として登場するクマだ。クマは主にフィールド内にある洞窟の奥に生息しており、ララを見つけたら必ず攻撃を仕掛けてくる危険な相手なのだが、洞窟の奥には貴重な素材やレリックが入手できることが多いため、隅々まで探索しようとすると否が応にも戦わざるを得ない。そのタフさは本作に登場する敵の中で群を抜いており、ショットガンなどの強力な銃を使っても倒すのは一苦労。毒を付与する弓の特殊弾などをフル活用して戦う必要があり、武装した人間よりも遥かに手強い相手となっていた。これほどまでに、野生動物の強さを実感できるゲームというのはなかなかない。
また、戦闘をこなして経験値を貯めると、ララのレベルが上昇し、スキルポイントを獲得できる。フィールドの各地に配置されたベースキャンプでは、このスキルポイントを消費することで、新しいスキルを習得できる。本作のスキルはファイター(戦闘系)、ハンター(戦闘補助・資源回収系)、サバイバー(クラフト・探索系)の3種にカテゴライズされており、スキルを習得していくと、より効果の高い上位スキルが開放されることもある。
例えば、ロックオンした2体の対象を同時に弓で攻撃できるハンターのスキル「ダブルショット」は、最大3体までの敵を狙えるようになる「トリプルショット」、ロックオンした対象の頭部を狙ってくれるようになる「トゥルーショット」と組み合わせることで、最終的に複数の敵を遠距離から同時にステルスキルできるようになるという、強力なスキルになる。経験値は、敵や動物を倒す以外にも、レリックや素材を集めるなど、様々な行動で入手できるので、探索を繰り返すことで、自然とララ自身も成長し、その後のゲームの進行が楽になっていく。
なお比較的序盤から入手できる武器である弓は、連射の効く銃と比べると、戦闘面ではやや使いにくいのだが、その分上記で上げたような強化スキルや特殊効果が豊富という差別化がされており、ゲーム全体を通して様々なシチュエーションで役立つ武器として調整されていた。
ベースキャンプでは、ファストトラベルにより一度到達したベースキャンプに戻ることもできる。 特にゲーム中盤に訪れる「ソ連の基地」はとくに探索要素が多く、 新たな装備を獲得してから訪れると、さまざまな発見がある。 |
探索の中で個人的に楽しかったのが、ストーリーが進み、探索に使える装備が増えるにつれプレイヤーが取れるルートの幅も広がっていったこと。ゲームの序盤から中盤は、移動の手段も限られるため、ルートが一つしかないことが多かったのだが、終盤は同じ場所にたどり着くにも、下からグラップルアックスを引っ掛けたり、上の別の高い足場から飛び移ったりと、様々な手段で移動することができるようになる。
また、各地に隠されている「チャレンジトゥーム」をクリアすると、特殊なスキルを獲得できる。このチャレンジトゥームには、パズル的な仕掛けが用意されており、かなり難易度が高い。インスティンクトで得られるヒントを活用しても、クリアにはある種の「ひらめき」が必要になことが多く、その解法に自力で気づいた時の喜びと達成感は一塩だ。習得に骨が折れる分、獲得できるスキルはどれも優秀な性能なものが多いので、挑戦してみる価値はある。
本編だけでも、こうした隠された要素を極めて行くと、かなりのボリュームとなっているのだが、本作には、空腹や体温といった新たなパラメーターを追加し、サバイバル面に特化した「エンジュランスモード」、クロフト邸の謎を解き明かすホラー色の強い「一族の系譜」など、本編とはゲーム性がまったく異なるモードや、一度クリアしたチャプターをもう一度プレイできるモードなども用意されている。
これらのモードでは、本編中にチャレンジ達成などで入手できるクレジットで購入可能な「探索カード」をセットすることで、様々なボーナス効果を得られるというシステムもあり、ゲームをやり込めばやり込むほど効率的なプレイができるようになる。メインストーリーを終えた後も、やりこみ要素は豊富に残されており、ゲームボリュームはかなり膨大だ。
見事なリブートに成功した前作をさらに洗練させた「ライズ オブ ザ トゥームレイダー」。ストーリーの位置づけとしては、3部作の中編にあたるが、基本的に物語は本作の中だけでも完結しているため、いきなり本作をプレイしてもまったく問題ない。ただ前作を含め、3部作を最初からプレイしておけば、さらに最新作「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」の楽しみがより深まるのも間違いないので、興味がある方は最新作の予習も兼ねてプレイすることをオススメしたい。