スクウェア・エニックスより配信予定の「ロマンシング サガ リ・ユニバース」(以下、「ロマサガRS」)の、先行プレイレビューをお届けする。
舞台は「ロマサガ3」から300年後の世界
今作は、「ロマンシング サガ3」(以下、「ロマサガ3」)から300年後の世界が舞台。プレイヤーは、まずは最初の主人公となるポルカ・リン・ウッドを中心に描かれる物語を進めていくことになる。
いきなり最終皇帝(男)やポルカが、「ロマサガ3」の四魔貴族の一体であるビューネイと戦うという衝撃的なシーンから物語は幕を開ける。
ポルカがどういう物語を辿って、このシーンに辿り着くことになるのか、それはまだわからないが、「ロマサガ」ファンならばワクワクするオープニングだ。また、四魔貴族のうちの一体とポルカが対峙しているということは、もしかしたら今はまだ配信されていない他の主人公が、別の四魔貴族と戦うという展開になるのだろうか、という妄想も膨らむ。
”死食”や”アビスゲート”といったお馴染みの単語ものっけから端々に登場する。それだけでテンションがアップするところだが、「ロマサガRS」からシリーズに触れる人や既に記憶がおぼろげ、というプレイヤーのためにも、死食とはなんたるかという説明もきちんとされているので、安心してほしい。
その死食だが、今作の舞台は「ロマサガ3」から300年後――まさに300年に一度訪れる死食と重なる時期であることに注目してほしい。
死食の年に生まれた命は、人間だけに留まらず、魔物や植物の命すら全て死す。その中でたったひとつ生き延びる命は宿命の子と呼ばれ、宿命の子はアビスの力を制御することができる。アビスとは、すごくわかりやすく説明するならば異世界――それもどちらかというと魔界に近いような存在だ。
「ロマサガ3」の世界の中では、600年前の宿命の子は魔王となり、アビスへと繋がるアビスゲートを開けて四魔貴族を従えた。300年前の宿命の子は聖王となり、四魔貴族を追い返し、アビスゲートを閉ざした。
そして「ロマサガ3」の時代、宿命の子は”サラ”と”少年”の二人だったことから、結果的に様々な物語でもってアビスゲートを消滅させることが出来たのだが、そこについての”様々な物語”の詳細に興味がある人は、実際に「ロマサガ3」をプレイしてみてほしい。
つまり死食は「ロマサガ3」の中で8人の英雄たちによって退けられ、もう二度とやってこないはずだった。なのに、ポルカは最終皇帝と共に300年前に倒されたはずのビューネイと戦い、そうして世界には再び死食が訪れようとしている――というのが「ロマサガRS」のストーリーの導入部分となる。
ポルカは、「異界の戦士」たちと共に進んでいく
主人公のポルカの物語は、妹をさらわれてしまい、妹を探す情報を得るためにロアーヌ侯国の”塔士団”の入団試験を受けるところからスタートする。
塔士団とは、この世界に無数に現れた現れた謎の塔”グレイヴ”の調査を主としている者たち…つまりは騎士団のようなもので、グレイヴの調査のために”異界の戦士”の力を借りることができる。この異界の戦士として登場するのが、歴代「ロマサガ」シリーズのキャラクターたちだ。
メインストーリーに登場する異界の戦士たちは、ガチャで入手したか否かに関わらず登場するが、バトルに出せる異界の戦士は、ガチャでの入手が主となる。排出キャラクターは、A、S、SSの3ランクに分けられているが、少なくとも序盤においては、必ずしもSSのキャラが強いとは言えないようだ。
このゲームでは、同じキャラクターでもランクの違うものが存在し、例えばカタリナはSランクの「マスカレイド」スタイルと、SSランクの「ここはわたくしが!」という複数のスタイルがある。
HPや腕力、体力、知力、といった基本ステータスは”カタリナ”というキャラクターが共通で所持している。だが、その時のスタイルによって上がりやすいパラメータが違ったり、閃く技にも違いがある。
バトルで得たスタイル経験値を使って、道場でスタイルのレベルアップをさせることが可能なのだが、レベルを1つ上げるために必要な経験値が、Aランクのキャラは少なく、SSランクのキャラは多く求められる。よってSSランクのスタイルはなかなかスタイルレベルが上がらず、手っ取り早く戦力を整えたい物語の序盤では、AランクやSランクあたりのスタイルのほうが、育成が楽に感じた。
なお、キャラクターのHPや腕力、魅力、愛といったステータス自体は、あくまでバトルで戦うことによってアップするようになっている。技のひらめきやランクアップもバトル中でしか行われないので、道場でのスタイルレベルアップで技を閃いたりすることはない。キャラクターをきちんと育成するには、必ずバトルに出して戦わせる必要があるのだ。
物語も進んできて、育成自体にあまり苦労しなくなるようになるとSSのスタイルのほうが強いのだろうとは思うが、序盤で必死にSSを引こうをしなくてもよさそうだ。
また、スタイル経験値はキャラクターとして所持しているので、Sランクのスタイルで余らせていたスタイル経験値も、SSランクのスタイルが引ければそちらに注入できる。AランクやSランクのキャラクターをきちんと育成しておけば、そのキャラクターのSSランクのスタイルを手に入れた時に、既に基礎能力が上がっている上に、貯めておいたスタイル経験値も注入できるため、即戦力として前線に出すことが可能なのだ。
なので、序盤はあまりレア度にこだわらずに色々なキャラを育てておくほうが、結果的にどのような場面でも対処しやすいだろう。もちろんお気に入りのキャラクターに、ひたすら愛を注ぐのも悪くはないのだが、その場合、ボスなどの強敵とのバトル時に属性相性次第でどうにもならなくなる場合もあるので、注意が必要だ。せめて武器種は、できるだけ5人で被らないように育成するといいだろう。
余談だが、SSキャラは出現時に下記スクリーンショットのような、特別な演出が入る。ストーリーを進めれば仲間になるSSスタイルのキャラクターもいるため、誰もが比較的早い段階でこの演出を目にすることになるはずだ。この一連の演出はかなりテンションがあがるので、ぜひ見てみてほしい。
バトルは圧倒的なまでの「ロマサガ」!
「ロマサガRS」は、基本的にシナリオのチャプターとバトルのチャプターが、ほぼ交互にくるようになっている。シナリオのチャプターではバトルは発生せず、ストーリーを読み進めていくのみ。逆にバトルのチャプターでは、バトルしか発生しない。そして当然だが、そのバトルをクリアできなければ次のシナリオには進めない。
バトルは、オートモードも搭載。通常攻撃だけを繰り返す”通常AUTO”と、その時に使える一番威力の高い技を出し続ける”全力AUTO”の二種類の他、前のターンと同じ行動をそのまま繰り返す「All Repeat」も出来る。雑魚しか出てこないバトルならば、ほぼ「全力AUTO」だけで乗り切ることが出来るだろう。
技を出すために必要な”BP”は、ユニット個人個人で所持し、毎ターン少しずつ回復する。難易度の高いバトルほど、現在の所持BPと先に待つバトルと相談をしながら進めていかなければならないので、ボス戦があるバトルでは「全力AUTO」に頼り切らないようにしなければならない。
しかし、順調にクエストが進んでいたと思っていたら、突如まったく歯が立たないチャプターに出くわすことがある。そういう時はひとつ手前のバトルを周回して、各種ステータスを上げたり、技のランクアップや、道場でのレベルアップを行うと良い。バトル周回時はそれこそ「全力AUTO」でひたすら回しておけばいいので、気が付いたらステータスが結構上がっていたりして、大変に便利。
他の要素として、武器や防具などを装備するという強化方法もあるが、どうやら現状武器や防具はクエストバトルでのドロップ品しか入手手段がないようなので、そう簡単に目的のものを入手できなかったり、強化も容易くはない。ステータスアップのためバトルを周回するついでに装備品のドロップもねらう、くらいが順当なところだろう。
だが、ボスバトルは、相当ステータスを上げ、それなりの装備品を身につけさせ、準備万端で挑んでも、攻撃属性との相性などが合わないとまるで勝てない、ということも多々あった。
だが、異界の戦士はガチャで入手するということもあり、なかなか思うように良い相性のキャラクターが揃わない場合もある。ステータスの上がりも悪くなってきたし、防具も一通り揃えたのに、やはり勝てない…そんな時に試してみてほしいのが、陣形だ。
今作でも陣形はもちろん健在で、陣形次第で防御力を上げたり、素早さを上げたり、様々な効果を得ることが出来る。最初はフリーファイトしか選べないが、ストーリーを進めていくなどで、使える陣形は増えていく。
比較的早く入手できる陣形”インペリアルクロス”は、味方5人で十字を描く陣形。一番前方に来るキャラクターが最も狙われやすくなるが、その反面残りの4人を生かしやすい、という長所がある。あえて一人を犠牲にすることで4人で倒し切る、といった戦法もあるので、どんなにステータスを上げても勝てない、という時には陣形を変えることを思い出してほしい。
また、陣形によってステータスに影響を受けるキャラクターも重要なので、陣形を変えるときはキャラクターの並び替えも必ずセットで行うようにしよう。
そして連携技も健在。連携が発動するかどうかはランダムだが、連携が発生した時のダメージは通常の攻撃時より多くなる。発生が完全にランダムだと思われるのでこれに頼っての攻略は得策ではないが、どうしてもクリアできないという時は連携が出ることを祈ってみるのもひとつの手だ。
なお、今作には「オーバードライブ」というシステムがある。オーバードライブ(以下、OD)ゲージは敵への攻撃や、敵からの被ダメージで蓄積されていき、OD状態になったキャラクターらで同時にODを発動させると、意図的に先制攻撃でOD連携を出すことが可能なのだ。
だが、ボスバトルの時などは、ボスに辿り着く前の雑魚戦で「全力AUTO」を使用していると、せっかくODゲージが貯まっているのに、技を出すためのBPが足りずに連携が出来ない、ということもありえるため、強敵に挑む時はオート機能に頼らず、BP管理をしっかりして、ボスに辿り着くころに万全の状態になっているようにしておきたい。
「ロマサガ」シリーズでお馴染みのLP(ライフポイント)は、今作にも存在しているが、勝手は少し変わっている。LPはHPがゼロになった時に1減り、死亡状態の時にダメージを受けると、そのたびに更に1ずつ減っていく。そして0になると、その戦闘ではもう復活することが出来なくなってしまう。
通常の敵は既に死亡しているキャラクターを狙って攻撃してくることはないため、LPが0になってしまうことは滅多にないのだが、中には全体攻撃や、範囲攻撃を使用してくるような敵もいるため、そういう時は死亡キャラにも攻撃が当たってしまい、LPが1減ってしまう。
序盤のうちはそもそも蘇生方法がないと思うのであまり気にしなくてもいいと思われるが、蘇生手段を得たら意識したいのがLPの残量だ。
ちなみにLPはキャラクターによって最大数が違っているが、手持ちのキャラを確認したところ、Aランク、SランクのスタイルはLP4、SSランクのスタイルはLP5に設定されているようだ。余談にはなるが、筆者はたまたまAランクのソウジを引けていたのだが、ソウジのLPも4だったのは温情なのだろうか。ソウジにはLP1であってほしい、と思う気持ちもなくはない。
イベントボスなども用意されており、今回遊ばせてもらったバージョンでは「ロマンシング サガ2」の七英雄の一人であるスービエと戦うことが出来た。ゲームを始めて比較的すぐに挑んだ時はスービエのHPを1ミリすら削ることもできずに全滅したのだが、3章が終わった時点でもう一度挑んだ時はかなりあっさりと倒すことが出来て、キャラクターの成長を感じられた。
デイリークエストは、スタイル経験値稼ぎクエストや、お金稼ぎクエストなどがあり、曜日限定のイベントバトルやダンジョンなどもある。チャレンジ系のバトルは、勝ち抜いていくと限定スタイルをゲットできたりするので、飽きることなく遊ぶことが出来る。
イベントは、「ロマサガ」ファンならば滾るものばかり!
ストーリーのネタバレはあまり語れないが、少なくとも先行でプレイさせてもらった部分では、「ロマサガ」シリーズを知っているのならば、「えっ」と驚きの声をあげてしまうイベントがたくさんあった。その断片を、いくつか紹介したい。
シフは、「アルベルトを探している」と語る。どうやらこの世界のシフは、既にアルベルトと出会っており、そうして何らかの事情で離れ離れになってしまったようだ。未だにどういう状況かは見えてきていないが、二人がこの先いつかどこかで再会できた時の内容を、色々想像してしまう。
ハーマンとブラックが同じ場面の中に居るというシーンには、様々な感情が過って、テンションが上がったり下がったりと、実にジェットコースターにでも乗っているような気分にさせられた。この後に続くイベントは、「ロマサガ3」ファンならば、断言しよう、泣ける。
ここはあくまで「ロマサガ3」の舞台の300年後なのだということ、グレイヴで見るものは過去の異界の戦士の記憶、何もできずに過ぎ去るだけのものであると知りつつも手を差し伸べたい、なのにそれが出来ないもどかしさもあって、胸を打たれる。
そして「ロマサガ3」の8人の英雄の中のうち、何故か全員サラのことを思い出せない、という会話が交わされるシーンでは「どうして」というつぶやきが零れ、そしてこの世界に何が起こっているのかを、改めて考えさせられた。
どうしてその場にいる全員が、300年前に世界を救ったはずの、8人目の英雄のことを思い出せないのか。8人いるという事実は知りつつ、8人目のことは全員の記憶から失われている。
やがては「ロマサガ3」のサラ以外の主人公7人がこの300年後の世界に集い、消されてしまったサラの記憶を取り戻していく、というイベントなどもあるということなので、これは「ロマサガ3」のファンならば必見のイベントとなるのではないだろうか。
他にも、ジェラールの口からは、「ロマサガ3」に登場した「ポドールイ」の地名が出てくる。ポドールイと聞けば、必然的に600年を生きてきたヴァンパイアのことも彷彿させられる。600年を生きたヴァンパイアならば、300年後の世界でも生きているはずだが――?
ロアーヌ侯国の現在の王は、ゼノン。もちろん、ミカエルの末裔だ。ポルカは塔士として、ゼノンからの勅命で様々な地に赴くことになるが、ポルカが塔士になった目的はあくまでさらわれた妹の情報を得るため。ポルカがどのような道を辿っていくのかも、今後のストーリーの楽しみのひとつ。
…と、試遊の範囲だけでも実に様々な過去作のキャラクターや、縁のあるキャラクターが登場し、展開が気になるイベントがてんこ盛りだ。試遊ではわからなかった謎も多く、一体話がこの先どうつながっていくのか、正式な配信日が待ち遠しい。
ソーシャルゲームならではというのもあり、いきなりストーリーを最後まで遊べるわけではないからこそ、その時間で様々な考察を重ねてみたくなる。「ロマサガ」シリーズのファン同士で、「これはこういうことではないか」と色々話し合ってみるのも楽しいのではないか。現に筆者は、この試遊で遊べたストーリーの部分について、誰かと語り合いたい気持ちでいっぱいなのだから。
なお、音楽はもちろん新曲もあるが、過去の「ロマサガ」シリーズの楽曲も多数使用されている。新曲もすべて伊藤賢治氏が手掛けているので、ぜひ期待していてほしい。また、バトル終了後のロード画面などに、小林智美氏がこれまで描いてきたシリーズのイラストが表示されるので、思い出を振り返りたいファンには嬉しいサービスだ。
様々な要素があるため理解するまでの時間は少々かかるものの、スマートフォン専用作品となっても「ロマサガ」らしい作品だと感じられた。「ロマサガ」シリーズのファンには、ぜひとにかく一度遊んでみてほしい。