2019年3月17日、「アズールレーン」のキャラクターと“ケッコン”を行うリアルイベント「アズールレーン×ケッコンVR」がエムツーとグラスパー共同で開催された。
Yostarが提供するiOS/Android用アプリ「アズールレーン」は、女の子に擬人化した艦船が多数登場するシューティングRPG。ゲーム内でキャラクターとの好感度を上げ、そのキャラクターに「誓いの指輪」というアイテムを贈ると“ケッコン”できるシステムが導入されている。今回のイベント「アズールレーン×ケッコンVR」は、VR技術を用いてゲーム内のケッコンをリアルで再現しようというもの。
会場となったのは、神奈川県横須賀市にある「セントラル ホテル」という施設。ホテルとはいうものの、宿泊だけでなくウエディングも行える。会場にリアルな結婚式場を用いるという点から、イベントの本気度を感じてもらえると思う。イベントは事前に行われたオリジナルグッズの通販で商品を購入した人が応募でき、その中から抽選で選ばれた指揮官が参加できる形式となっていた。
横須賀と聞いてついシ〇ンムーを連想してしまったが、この日は取材と同時に筆者も特別にケッコン式を挙げさせてもらえるとのことで、聖地巡礼マップを持っての観光は頭から追いやった。期待を胸にまっすぐ会場へと赴いたが、その一方、イベントが本格的過ぎて手のひらから体中の水分がすべて失われていきそうなほど緊張していた。
そんな様子はなるべく表に出さず受付へ行くと、エムツーのスタッフさんが迎えてくれた。そこで待っていたのは「どの娘とケッコンするか希望はありますか?」という当然の質問だ。
「ロンドンちゃんで!!」
と言いたくなるのをこらえ、赤城を選んだ。そう、この日ケッコン相手に選べたのは赤城、エンタープライズ、フッドの3人のうちいずれか1人なのだ。すでにゲーム内ではロンドンちゃん(すごくかわいい)とケッコンしていたのだが、かつて通勤時などの移動時間を3-4海域の周回に費やして迎えた赤城への想いも忘れられない。
ほかの女の匂いをさせていたり、赤城よりもほかの娘と先に話をしたり、そもそもほかの娘と会話している場面を目撃されようものなら、赤城からの確かで深い愛情を感じることになるのは承知の上。横須賀港から眺める海よりも深い愛情を一切隠さない、それが赤城の魅力ではないだろうか。むしろロンドンちゃん(すごく献身的)に襟を直されている姿を赤城に目撃され、あとで詰め寄られることが幸せにさえ思える。
勝手な妄想はさておき、新婦を選んだらケッコンVRへ進む。実際の流れとしては、まずフィッティングルームで正装に着替えることになる。サスペンダーなんて人生で初めてつけたし、戸惑いのあまり装着を手伝ってもらったのは今思い出しても本当に恥ずかしい。しかし、分からないまま進めて式中に恥ずかしい思いをするよりはマシだろう。式場のスタッフさんは非常に親切だったので、今後、何次元の相手と結婚する場合でも、分からないことは専門のスタッフに聞いてしまおう。
そして準備ができたら式場へ入場し、なかでヘッドセットを装着するとVRケッコン式が始まる。式では宣誓や指輪交換、誓いの口づけを行い、2人の愛を確かめ合う。指輪交換は専用のスマホを持たせてもらい、シーンが来たら画面をスライドする形だ。誓いの口づけは一歩前へ進んで相手に近づくと、スタッフさんがマシュマロをくっつけてくれる。にくい演出である。
VRのなかも教会風の式場になっていて、そんな場所で等身大の赤城と見つめ合うだけでも満足だが、誓いの言葉も指輪交換も口づけも、自分が行動していくことになる。用意された演出を眺めるだけのイベントではないため、恥ずかしさも緊張もあるが、その分、没入感や体験への思い入れがグッと高まっている印象だ。ちなみに、式では目の前の柔らかそうな赤城にばかり注目していたが、牧師役として三笠がイケメンボイスで「天の加護のもとに二人の結婚式を執り行う!」といった感じで進行してくれる。
こんな風にイベントを堪能してきたのだが、ケッコン式を挙げた指揮官のなかには女性の姿もあった。着物をバッチリ決め、気合の入った女性指揮官に参加してみての感想をうかがってみた。また、会場でエムツーのスタッフからイベント開催についての話が聞けたので、その内容もお届けしよう。
女性指揮官へのインタビュー
――ケッコンVRの相手に選んだキャラクターを教えてください。
重桜陣営の空母 赤城さんです。
――赤城のどういったところが好きでしょうか?
最初から好感度MAXみたいな態度と、それ以外の時の真面目さやお茶目さ、苛烈さのギャップが好きです。インパクトの塊。かと思うとストーリー内では儚いと思える描写もあって、掘り下げられるたびに考察が止まりません。好きです。ほかにもあげたらキリがありません。
――赤城にまつわるエピソードがあれば教えてください。
入手方法がドロップ限定だったので、戦力を十分に揃えて3桁周回の覚悟を決めて周っていました。「どうせ出ないだろう」と高を括って音声を切っていたら目を離した隙に。初入手だったのに着任ボイスが聞けなくて虚しい思いをしました。
――ケッコンVRを体験する前の心境を教えてください。
はちゃめちゃに楽しみでした。当選メールが届いてから当日まで、まるで初彼女と初デートするみたいなウキウキ具合で、当日までの何もかもが楽しく過ごせました。
――ケッコンVRを体験してみての感想を教えてください。
誰かに徹底的に自慢したいくらい楽しかったです。楽しい以外の感想が持てない自分の語彙力のなさに怒りを覚えるくらい素敵な体験でした。ビバ赤城さん。
――今後の展開への要望はありますか?
我儘レベルの要望になりますが、男性女性の表記をどうにかぼかして、どちらが体験しても違和感ないような台詞を聞いてみたいです。
エムツーへのインタビュー
――今回ケッコン相手は赤城、エンタープライズ、フッドの3人でしたが、誰の人気が高いなどはありましたか?
女性の方だと赤城の人気が高いといった傾向はありましたが、どのキャラクターもまんべんなく人気がありました。
――イベントはどのように立ち上がったのでしょうか?
2年前にPCゲームメーカーのhibiki worksさんと「新妻LOVELY×CATION」というタイトルでVR結婚式を開催しまして、弊社としては2回目となるのですが、今回は弊社主体でやらせていただきました。近年、戦艦をモチーフにしたゲームが盛り上がっている中で、「アズールレーン」はケッコンというヒロインと添い遂げるようなシステムがあります。それをゲーム中ではなくリアルイベントとして具現化させたい、その思いからプロジェクトが始まっています。
――当初はクラウドファンディングでプロジェクトを実施していましたが、一度中止になりました。そこから仕切り直すにあたり、掲げた目標や意気込みはありますか?
クラウドファンディングではいろんな方にご迷惑をおかけしました。そこからの仕切り直しをいたしまして、今回は公平な形で進めたいということで、抽選という形式をとらせていただきました。イベントについては海軍ゆかりの地で、赤城の母港である横須賀においてVRの結婚式を挙げる、ゲームのケッコンを再現することに絞って全力でやらせていただくことを考えて進めてきました。
2016年は「VR元年」と言われて盛り上がりましたが、満足いく解像度まで足りないですとか、VR酔いをしてしまうなど、まだ技術的に未熟な部分は残っています。そうしたなかでVRをどうしたら皆さんに楽しんでいただけるかを考え、世界観から作っていく必要があると気付きました。ですので開催地には海軍ゆかりの地である横須賀を選びましたし、イベントではタキシードで正装し、実際の式場を使うことで、没入感が高まって現実のものと錯覚するぐらい盛り上がれる体験を提供したい、そういったイベントを目指しました。
※クラウドファンディングの経緯はこちら:http://vigorball.com/activity_detail/s/project_id/29/report_id/57
――イベントの定員は60名でしたが抽選になったのでしょうか?
はい。グッズを購入いただいた方のおよそ半分の方からご応募いただきました。結果的に狭き門となってしまったため、イベントに参加いただけなかった方には大変申し訳なく思っています。
――実際にVR結婚式を実施してみての感触はいかがですか?
お客様にはタキシードに着替えていただいて、本当の式のように緊張して、そのうえで楽しい体験をしていただけたかなと思っています。なかには着物で来ていただいた方もいますし、本気で楽しもうとしてくださるお客様に我々としても感謝の気持ちでいっぱいです。
――このVR結婚式のイベントシーンはやはり今回のイベントだけでの公開でしょうか?
そうですね。VRはイベント用に作った物を単純に別のVRプラットフォームに展開すればいいというわけではなく、そこが課題です。アプリ化などで幅広く楽しんでいただくことはできないかと悩んだりもしたのですが、現状では公開の予定はありません。
それでも、多くの方に「ケッコンVR」の世界観を楽しんでいただきたいという思いから、触れる等身大デジタルサイネージ「E-mote Communicator ケッコンVR」を作成して、Azurlane 1st Anniversaryやアズールレーン ポップアップストア in AKIBAで展示させていただきました。これも2Dイラストをそのまま動かせる「E-mote」の技術をベースとし、原画の質感を損なわず新婦を表情豊かに動かせたこともあってか、非常に多くの好評をいただきました。
――エムツーさんとして「E-mote」やVR事業の今後の目標はありますか?
ゲームでの活用だけでなく、もっと幅広くイベントなどでも「E-mote」が使われていくといいなと思っています。そのためにも新しい体験ができるような技術を開発していきたいですし、今後も面白そうな企画を提案していけたらと思っています。