セガホールディングスが3月30日・31日にかけてベルサール秋葉原で開催する「セガフェス2019」。本イベント内で行われた「龍が如く」ファンミーティングの模様をお届けする。
龍が如くスタジオとしては初めてになるという今回のファンミーティング。開幕は「龍が如く」シリーズ総合監督の名越稔洋氏が登壇して挨拶を行った。
名越氏はファンミーティングの開催について、「龍が如く」では体験会などさまざまなイベントを実施してきているが、こうした触れ合い方は機会が少なく、社内で「もっといろんなチャレンジをしてもいいのでは」という声が挙がったことで実施にいたったと話す。セガグループであるアトラスでは、いろんな形でファンと関わる機会を作り、ファンの期待を高めたうえで新しい作品を発売し、それが成功につながっている。ここからも刺激を受けたようだ。
会場のファンが期待しているであろう「龍が如く」最新作についての話題になると、「皆さんが一番欲しい情報だと思いますが、一番喋れない情報です(笑)」と、やや困った様子を見せる。ただ、龍が如くスタジオは“出せる情報はすぐ出したい”と考えているチームのようで、近いうちに進展が出せそうなことを示唆していた。
少しだけ名越氏から出た情報としては、「ゲームとして一段も二段も進化した」という内容がある。これまでもシリーズを続けていく中で“正当進化”であったり、“変化”というのがポイントになったりもしているが、どうしても“マイナーチェンジ”という感覚を持ってしまう人もいる。
しかし今回は、ゲームとして大きく変えたいという思いがあり「オンラインゲームで言うなら1.0から2.0になるような変わりかたです」と、大きな進化であることをアピールしていた。発表まで時間はかかっているが、初代「龍が如く」を作ったときのようなエネルギーを注いで開発をしているとのこと。
大きく変わったところとしては主人公がこれまでの桐生一馬から春日一番になったことが挙げられるが、このメリットについては「主人公が桐生一馬ではないことが最大のメリット」だとしている。というのも、人が変われば当然人格が違うため、行動原理も異なる。そして行動原理が異なれば、ゲームも変わるというのだ。主人公を変えるという点は、新しいものを作る、その道を切り開く大きなきっかけになっているという。
また、シナリオについてはメインシナリオのなかでも笑えるシーンが多くあるという。それが後々の感動にもつながっていくとのことで、このあたりにも新しいテイストが見え隠れしていそうだ。
関連情報として、シリーズ最新作では助演女優公募オーディションが実施される。4月21日まで応募受付が行われている本オーディションについては、こんな人に来てほしいというよりも「ゴシップのきっかけに使ってやろうでも、ゲームが大好きだから関わりたいでも、個人個人のなかに何か思いを持っている人に来ていただければいいなと思います」と、自分なりのモチベーションを持っていることが大事だとしていた。
続いては、「龍が如く」シリーズチーフプロデューサー 横山昌義氏と「龍が如く ONLINE」プロデューサー 堀井章生氏が登壇し、「龍が如く ONLINE」の情報コーナーに。事前に発表されていた通り、3月31日から初代「龍が如く」のストーリーが楽しめる「桐生一馬伝」が配信となる。
実装の経緯については横山氏から語られた。「龍ON」(「龍が如く ONLINE」)を立ち上げた時にいつかやると思っていたが、ゲームをよく遊んでいる人はそろそろ一通りの要素をプレイし終えており、このタイミングで遊べる要素を大きく増やそうと思ったのが理由のひとつだという。プレイデータを見ると、当初の想定から5倍ほどのペースでプレイされているとのこと。
また、サラリーマンとしては1月1日などよりも期の最後である3月31日のほうが特別感があることと、ちょうど「セガフェス」が開催されることから、タイミングを合わせようとしたというのもある。そのため、2日前に内容の確認の依頼がきたりと、かなりギリギリの進行で内部としては焦りもあったようだ。
ストーリーについては堀井氏から「今までのものを忠実に再現して、『龍ON』ならではの2D表現に落とし込むことができたと思います」と語られた。導入としては序章のクエストがあり、そこで「春日一番がとある人物から桐生一馬のことを聞く」という流れ。そのため、クエストだけ追加されて勝手に遊ぶことになるのではなく、春日と同じように桐生という存在は知っているが詳しく知らないという人でも入りやすい作りになっている。
「桐生一馬伝」の配信に合わせ、SSR桐生一馬も実装となる。SSR桐生一馬は敵単体に攻撃力700%で攻撃という単体向けのスキルを持っており、ボスバトルなどで活躍する強力な存在だ。同桐生が登場する「ピックアップ極ガチャ」が1日1回無料で引けるキャンペーンも4月15日まで開催されるので、毎日引いて狙っておきたいところ。
ゲーム情報コーナーのあとは、出演キャストを招いてのトークとなった。ここでは黒田崇矢さん、宇垣秀成さん、中谷一博さんが登場。この日の中谷さんは、ジャケットの裏地に「春日一番 中谷一博」と名前が刺繍された、アドトラックとTwitterのキャンペーン用に用意されるオーダースーツのサンプルとして作られたスーツを着ていた。それをネタに黒田さんと宇垣さんが「僕らは一度も衣装を作ってもらったことがない」といじるなど、開幕から軽快なトークを繰り広げた。
さらに追加ゲストとして、「龍が如く」好きの芸人であるペンギンズとNOモーションも登場。黒田さんから「シルエットがどうなんだろう」とツッコミを入れられつつも、NOモーションの2人が桐生と真島に扮した姿でステージに現れたりと、掴みから会場の笑いを誘う。
メンバーが揃ったところで、黒田さんとNOモーション・矢野さんが“桐生コンビ”、宇垣さんとNOモーション・星ノさんが“真島コンビ”、中谷さんとペンギンズ・ノブオさんが“龍ONコンビ”として3組に分かれ、チーム対抗のカルトクイズが行われることに。ちなみにペンギンズ・アニキさんは唯一「龍が如く」に詳しくないとのことで、ステージ上から「なんで来たんだ!(笑)」と総ツッコミを受けながらも、クイズの出題時にとある役目を任される立場で参加となった。
最後のコーナーは、事前にファンから寄せられた質問に答えるというもの。ここには名越氏と横山氏、キャスト陣の3人が参加し、さまざまなトークを繰り広げた。一部ストーリーの核心に触れる内容もあるので、未プレイ作品がある方はご注意いただきたい。
――「龍が如く」に関わる前と後で変化したことは?
黒田さん:いろんなインタビューでも答えていますが、自分の名前がもうひとつ増えた感じです。街中で「黒田さんですか?」と言われることはあるんですが、「桐生さんですよね?」と言われることが増えました。それだけいろんな方に認知してもらっていることが嬉しいですね。
宇垣さん:僕も外を歩いていて「真島さんですよね?」って。
黒田さん:聞かれないでしょ(笑)。
宇垣さん:それはないんですけど(笑)、スタジオで後輩から「兄さん!」と言われたりします。今までいろんなゲームなどもやってきましたが、ここまで言われるのはなくて、それぐらい強い印象を受けてもらったのかなと思いますし、やっていてありがたいなと思いました。
中谷さん:僕はオーディションに受かったのが「龍が如く」の錦山役が初めてでした。僕の耳にはあまり直接入ってこなかったんですが、錦山は人気があるというのを人づてに聞いて、そういうのを聞くと錦山が生きた証としてよかったなと。役者としていいきっかけを与えてくれたものになりました。
名越氏:僕は小学生とかから「龍が如くだ!」って言われるんですよ(笑)。正しいと言えば正しいですが、僕は「龍が如く」ではなくて…でも「違うよ」って言ったら子ども泣いちゃいそうですし、「ありがとう」って答えます(笑)。昔からゲームを作っていますが、飽き性なのであまり続けて同じものを続けて作りたくないんです。それがここまでずっとやってきたのはひとつの努力であり、サービスとしても仕事としても価値があるかなと。人生の後半になって、“続ける”という自分が得意としてなかったことにチャレンジすることになったのは、精神修練みたいなことも含めて意味があったなと。それがあってもう一段大人になれた、そのきっかけが得られたと思います。
横山氏:僕は初代のとき27歳だったんですよね。それが今は42歳で、15歳も年を取るのってすごいなと。ここにいる人も等しく15歳年を取っているし、桐生たちも年を取っているじゃないですか。リアルタイムで自分もタイトルも時代を重ねているから、自分が老いたことが嫌じゃない。だから正しくゲームに反映できるのが嬉しいです。
――「龍が如く」は毎回迫力ある俳優さんが参加されています。これまでに一番緊張した共演者は誰ですか?
横山氏:渡(哲也)さん。
黒田さん:渡さん。
中谷さん:小沢仁志さん。
宇垣さん:僕も小沢さんなんですけど、実は前にラジオをやっていたときに、泉谷しげるさんがゲストに来ると事務所で聞いたんですよ。「えっ、やべえ。怖い!」と言ったら、マネージャーが「すごくいい人ですよ」って。実際に現場でお会いしたら本当にいい人で助かりました。
黒田さん:渡哲也さんってものすごくいい人で、私ごときでも立ち上がって挨拶してくれる。全然威圧とかはないんですが、ただひたすらオーラがすごくて、勝手にこっちが委縮しちゃう。初めて買ったレコードが渡さんの「ひとり」という歌で、その渡さんと初めて会ったときはもうド緊張でしたよ。
名越氏:僕もみなさんとお会いするのは毎回緊張するんですが、渡さんに出演いただいたのは最初の作品でしたから。でも渡さんとご一緒したという経験があって、メジャーな人とやるのってこういうことなんだと。渡さん本人ではないですが、石原プロモーションの小林専務という方がいらっしゃって、現場に1分遅刻したら「遅刻する人間とは仕事できない」とすごく怒られました。でも正しいと思ったので、次は死んでも早く間に合うように2時間前から周りをウロウロしてて、そうしたら今度は「ずいぶん前から下にいたね」って言われて(笑)。いろいろ教えていただきました。
宇垣さん:質問に「俳優」って書かれてるじゃないですか。俳優を抜きにしたら俺は名越さんですけどね(笑)。
――「龍が如く6」の桐生の最後が気になって仕方ありません。彼が幸せなエンディングを迎える続編は希望薄でしょうか?
横山氏:僕自身は「6」の形が正しいと思っています。「幸せなエンディングを迎える続編」という言い方になると、別に今のところそういうのはないと思っています。ただ桐生という人が何しているとか、生きているのか死んでいるのかというのはありますが、物語が続いていけば彼は何かあった時に必ず出てくるとは思っています。
名越氏:「幸せなエンディングを」というのは気になりますが、二度と出ないとか、二度と続編がないとは言っていませんので、そこに関しては希望薄ではないのではないでしょうか。と、あんまり言うと裏で黒田さんに「本当ですか?」って言われちゃうので(笑)。
黒田さん:俺はこれに関しては、やっぱり桐生って結局遥や、遥の子どもが幸せなら幸せなんじゃないかなと思いますよ。だからある種幸せなエンディングだったのかなと思います。
――みなさんのように堂々としたふるまいを身に着けたいのですが、どうしたらそうした風格が出ますか?
横山氏:じゃあ名越さんから。
一同:(笑)。
黒田さん:歩く龍が如く!
名越氏:堂々としているとは言われないですけど、人から「オーラがありますね」と言われる機会が多くて、オーラってなんだろうと考えたときがあるんです。結局、一言で言うと自信なんですよ。でも過剰な自信はみっともないというか、軽い。じゃあどう考えるべきなのかなと思ったとき、正直に生きていることかなと。後ろめたさがなければ隠し事がなくなるので、隠し事がないことが一番堂々とした状態でいられると僕は思います。常に自分に対して正直に生きていて、人に対しても誠心誠意やり取りをする、それだけでいいんじゃないかなと。どうしたら風格が出ますかと考えること自体が、よく見せようという考えが出ちゃう。それを見透かされた瞬間に大したことないと思われちゃうので、こういう考え方を捨てることが最初かなと思います。
黒田さん:名越さんの言ったこと、頷きました。等身大でいることです。
横山氏:黒田さん普段からその格好ですもんね。
黒田さん:ずっとこのままですよ。だから大きく見せようと思わないし、逆に小さく謙虚に見せようとも思わないし、好きになってくれる人は好きになってくれるし、嫌いになる人はなる。それでいいと思っているから、飾らないで普通にいることだけをずっと何十年もやってきています。
横山氏:みなさんが思う以上にびっくりするぐらい黒田さんは普段も同じです。前にセガがあった大鳥居に来た時もそうですし、ご飯を食べに行くときもそうですし。
――ゲームを作る過程で、企画時と実際に登場した時で設定が大きく変わったキャラクターはいますか?
横山氏:いっぱいいますね。代表例では「龍が如く4」の城戸で、最初はチンピラBという役でした。シナリオを書いている時にチンピラBがいっぱい喋ってる、これいいキャラだなと思って2章ぐらいから名前に書きかえて、主要キャラにした経緯があります。秋山が出てきて、カウンター的な感じでよく喋る立場の人間だったんですが、それがどんどんキャラクターとして育っていったというのがあります。真島も初代で大人気だったからそれ以降の展開もあるわけですし、ファンの皆さんが作ることも往々にしてあります。
名越氏:ちょうど今は一番君を育てつつあるわけです。育つと「もっとこうしたほうが面白い」という発想が生まれる。そうするとゲームは「もっとこうしたほうがいい」となっていく。伸び代が見えた瞬間の発想っていうのは、そこまでの積み上げから生まれた発想なので、大体やったほうが面白くなるんです。物足りないなと思って、「こういうの入れとけ」という発想とは違い、自然に育っていくので。
横山氏:「龍が如く5」で冴島が刑務所に入っていて、あまりにも街のことを想像しすぎて妄想で街に行くという内容があったんですけど、それもシナリオミーティングのなかで「刑務所のなかにいるだけだと面白くないんじゃ」「なら妄想で街に飛べるようにしましょうか」となって、名越さんも「超くだらないけど、こうやって思いついていいと思った時は大体やるものだよ」といってやることになったんです。最初の思いつきやパッションってすごく大事で、それを頑張ってゲームに投影するんですよ。
――自分以外のキャラクターを演じるなら誰を演じてみたいですか?
黒田さん:いやー……桐生が好きですよ。やっぱり真島が一番人気でも、真島は秀ちゃんにしか演じられないので、俺はずっと桐生がいいですね。でも桐生以外だったら…春日一番ですかね!
中谷さん:そういう流れやめてもらっていいですか(笑)。
宇垣さん:人気投票やっても私が一番なんですが、やっぱり桐生一馬みたいに長いこと主役をやるのがいいなと。でもそれが終わってしまった。…なら春日一番!
中谷さん:どう落とせばいいんですか(笑)。これ結構聞かれることが多かったりするんですけど、サブシナリオのはっちゃけたキャラクターとかをやってみたいなと。ポケサーファイターとか「カズマくん!」みたいなものをやりたいです。自分の普段出せないことをスタジオでやってみたいというのはありますね。
名越氏:HD版とかで、ガラッと全員役を交換してセリフを吹き込んでみるバージョンとかあっても面白いですよね。
黒田さん:面白い!
横山氏:面白いって言ってくれます?前にそういうアイディアがあったんですけど、愛着があるからみなさん怒るかなと思って。
黒田さん:全然。楽しみ。喜んでですよ。
――これまで参加してきたシリーズ作品で一番達成感や手ごたえを感じた作品はどれですか?
黒田さん:ひとつに絞るのは難しいけど「維新」かな。個人的に大きな手術をしたあとで最後まで保つかなというのもあったし、あとストーリーが大好きだったので、「やり遂げた!」という感じで「維新」ですかね。
宇垣さん:僕はやっぱり「0」ですね。
中谷さん:達成感は黒田さんと同じ「維新」ですけど、手ごたえは「0」ですね。山の中の錦は名越さんから直接メールでお褒めの言葉をいただいて、家でガッツポーズしましたね。やっぱりこの2つがすごく僕の中では大事です。
名越氏:好きな作品と聞かれたら初代か「0」と言うんですけど、手ごたえや達成感という意味で言うと「0」ですね。「0」はストーリー自体のゴールが早い段階で見えていたんです。こういう話でオチがこう、という着地点があって、最後までやりきったら素晴らしい作品になる。真島と出会うところとか、理解しているけど認識はできないというダンディズムというか儚さみたいな終わりは分かっていたので、不思議な手ごたえがあった作品です。
横山氏:僕は「5」です。あれはゲーム史上稀に見ることをやったと思っています。野球とアイドルとヤクザと囚人ですからね。「無理だ」という状況に何回も追い込まれましたが結局やりきりましたし、ゲームとしても日本のコンソールで面白いと言われているジャンル、音ゲーとか謎解きとかアクションを全部入れてみようと思って、どうにか入れた奇跡の作品だと思っています。僕が初めてプロデューサーをやったタイトルでもありますし、忘れられない。今見ても狂ってるなと思うぐらい(笑)。
――最後にファンへのメッセージをお願いします。
黒田さん:ずっと「龍が如く」を応援してくださって本当にありがとうございます。これからも中谷君が中心となって続いていくと思いますので、今後も「龍が如く」という作品を応援してくれたら嬉しいなと思います。今まで応援してくださってありがとうございました。そしてこれからもよろしくお願いします。
宇垣さん:本当にみなさんがいたからこそ、ここまで突っ走ってこれたと思います。これからもまた突っ走っていきたいと思っているので、応援のほどよろしくお願いします。最後に、ここに合うセリフを言いたいと思います。
「お客様は神様ですから!」
中谷さん:こうして今日は「龍が如く」を愛してやまない皆さんと盛り上がって楽しめましたし、久しぶりに黒田さん、宇垣さんとご一緒させていただいて嬉しかったです。「龍が如く」が次の元号になっても、新しい時代になっても愛していただけるように一生懸命頑張りますので、これからも「龍が如く」を愛してください。よろしくお願いします!
横山氏:これまでいろんなイベントをやってきましたが、ファンミーティングも数多くいろんなところでやっていければと思っていますし、このタイトルは本当にファンの皆さんの支えでここまでこれたと思っています。これからも共に歩んでいければと思いますし、今は皆さんが全く考えていないものを作っていますので、そこもご期待ください。
名越氏:横山たちスタッフ、素晴らしいキャストのみなさん、その出会いがあってここまでやってこれたと思います。ファンの皆さんのために作っていますので、心をこめて、ここからも作品を作っていきたいと思っています。冒頭でチラッとしか申し上げられませんでしたが、新しい「龍が如く」はいいゲームになっていますし、さらに高めて磨いていきますが、皆さんのお目にかかれる時までそんなに時間はかからないと思いますので、もう少しだけお待ちください。これからもよろしくお願いします。