「Caligula -カリギュラ-」シリーズなどで知られるゲームクリエイターの山中拓也氏による、ゲームインタビュー企画「山中拓也のGamer交遊録」。第2回は声優の田中美海さんにお話を伺いました。後編では、前編では触れられなかった思い出のゲームのエピソードや、“推しキャラ”などについて聞いています。
目次

プロフィール
田中美海
81プロデュース所属
誕生日:1月22日
出身地:神奈川県
主な出演作品:「異世界チート魔術師」ミューラ、「ひとりぼっちの○○生活」砂尾なこ、「ゾンビランドサガ」星川リリィ、「Caligula -カリギュラ-」神楽鈴奈など
インタビュー:山中拓也
文・構成:近藤智子
熱中したゲームは「星のカービィ」「MHP3」ほか多数!
山中:では、過去を回想していきましょうか。有名どころは遊んでるかと思うんですけど、今までの人生で熱中したとか、ハマってたゲームをいくつでもお話しいただければ。
田中:まずは「星のカービィ」シリーズですね。私たちの世代は「星のカービィ 夢の泉デラックス」だと思うんですけど。私は小学校の時は学童に通っていて、GBAを持ち寄ってコードで繋いで4人で一緒に遊んでました。「伝説のスタフィー」もプレイしてましたよ。
小学2~3年くらいのときに、一番最初のニンテンドーDSが出たんですよ。あれを持っている子は人気者でしたね。みんなで「さわるメイド イン ワリオ」を回しながら遊んでいました。
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「さわるメイド イン ワリオ」公式サイトより https://www.nintendo.co.jp/ds/azwj/ |
山中:宗悟は同世代だったからほぼ似たような感覚だったけど、話を聞いていると時代に恐怖を感じますね……。ゲームは1人で遊ぶより、みんなで遊ぶタイトルのほうが多いんですか?
田中:そうですね。「大合奏!バンドブラザーズ」を通信しながらみんなで演奏するとか、そういうのが多かったです。子供の頃はゲーム機を持ち寄って遊ぶのが多かったですね。
山中:だいぶアウトドアにインドアを楽しむタイプなんですね。
田中:そうかもしれないですね。「モンスターハンター」にもハマって、そこからオンライン通信に徐々に移行していくような感じです。
山中:なるほど。オンラインも含めて、普段から一緒に遊ぶメンバーはいるんですか?
田中:妹が多いですね。私がハマって家で遊んでいると妹も興味を持ってくれて、一緒に遊ぶみたいな感じです。あとは同い年のいとことも、よく夏休みに遊んでました。
山中:僕は人見知りな部分もあるので、いわゆる野良でのオンラインプレイがちょっと怖いんですよ。全然平気なの?
田中:全然平気でーす! 小学生の時はハンゲームのRPGの「チョコットランド」にすごくハマって、そこでのチャットでタイピングが鍛えらましたし、コミュニティでの距離感の取り方とかも上達しました。
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「チョコットランド」公式サイトより http://casual.hangame.co.jp/chocotto/ |
山中:物心ついたころからPCが家にある世代ですか。
田中:そうです! 基本的に私しか使っていないPCがありました。
山中:僕は高校生の頃、家にPCがなかったから電気屋のPCでmixiをしてましたよ。お絵描き掲示板もマウスで絵を描いてて。そこが僕のオンラインお絵描きの始まりで……時代の違いに悲しくなってきたな。
今「モンスターハンター」シリーズの話が出たけど、最初に遊んだのはどのタイトルですか?
田中:プレイステーション・ポータブルの「モンスターハンターポータブル 3rd」かもしれません。その時「モンスターハンター」ってすごく世間で流行っていて、そこで始めてモンスターから素材をはぎとって自分の武器を作るっていう体験をしたんです。そこからは全部のシリーズを遊んでいます。面白いですよね。
山中:プレイが難しいとか、そういうのはなかったんですか。
田中:カメラの動きもすぐ慣れて、大丈夫でした。妹もハマってくれて、いとこと夏休みはひたすら遊ぶみたいな感じでしたね。
山中:じゃあ、得意武器も聞いておいていいですか。
田中:初期はハンマーでしたけど、今は双剣です! 妹は弓ですね。
山中:“弓使いの妹”かぁ……“弓使いの妹”って、全プレイヤーが求める言葉の響きですね。最高に楽しいプレイができそう。発売当時っていくつくらいでした?
田中:中学1年~2年くらいですね。
山中:うわあ……我々はつい一昨年くらいの感覚でいましたけど……。でも「モンスターハンター:ワールド」ですら1年経ちますしね。ゲームの歴史の進み方みたいなものが、すごく加速してますよね。怖くなるくらい。
“推しキャラ”は誰?気になる新作をピックアップ
山中:続編が出ないかなって願っているタイトルって、どんなものがありますか?
田中:うーん、続編は……私が好きな作品って、かなり続編や移植の展開があるんですよね。
山中:これまで聞いた中だと、わりと大型タイトルを遊ばれてるイメージなので、そういう展開にも恵まれてそうですよね。
田中:「Fate」はプレイステーション2の「Fate/stay night[Realta Nua]」から遊び始めたんですけど、「Fate」シリーズってずっと続いてますし。あと「うたの☆プリンスさまっ♪」シリーズは初めて遊んだ乙女ゲームなんですけど、これもまだ続いていますしね。テキストアドベンチャーの始まりはこのあたりですね。
山中:じゃあこれから出るゲーム、発売を待っているアプリやゲームで注目しているものはありますか?
田中:アプリで気になるのは「ヒプノシスマイク -Alternative Rap Battle-」ですね。どんなゲームになるのか……。
山中:満天星 呂駒呂(どうだんつつじろくろ)のインパクトはすごかったですね。美海ちゃんには全然関係ないんだけど、僕が女性向けで気になっているのは「ウインドボーイズ!」という作品なんですよ。吹奏楽をテーマに高校生の青春を描いていて……ゲームやアニメを好む女性って、吹奏楽の経験者が結構多いんじゃないかなって思って。
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「ウインドボーイズ!」 http://windboys.jp/ |
田中:知ってます!! 私は、こういうゲームの公式サイトを見て“推しキャラ”を見つけるのが好きなんですよ。前に見たときより、ずいぶんキャラクターが増えてるんですね。今だと…………3年生の佐野愛実くんですね。
山中:キャラクターのデザインも上品ですよね。僕ももう“推しキャラ”は決めてるんですよ。韓流アイドル留学生のソムン イジョン君。僕は心にOLがいるので、発売前にこういう“推しキャラ”を探すのがすごい楽しいです!!
ちなみに、こういう女性向けタイトルって色んなタイプのキャラクターがたくさんいますけど“こういうタイプが好き”みたいな傾向ってあるんですか?
田中:ありますね。私はツンデレでヤンキーみたいなタイプが好きです。
山中:「A3!」でいえば摂津万里みたいな?
田中:彼も好きなんですけど、どちらかというと兵頭十座くんですね。十座くんから入ったんですけど最終的には夏組に落ちて……皇天馬くんも好きです。
あと気になってるのは、来年3月に「あつまれ どうぶつの森」が出るじゃないですか。これが楽しみです。初期のころから遊んでいるんですけど、段々大変な運命になっていきますよね。今度は無人島ですから、どうなるのか……。Nintendo Switchの携帯モードが好きなので、そちらで遊びたいです。
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「あつまれ どうぶつの森」 https://www.nintendo.co.jp/switch/acbaa/ |
山中:ちょうど、携帯専用の「Nintendo Switch Lite」が発表されましたね。もともとNintendo Switchを持っていても「ポケットモンスター」シリーズとか「どうぶつの森」シリーズは携帯で遊びたいっていうのはありますね。
田中:私も、たぶん「あつまれ どうぶつの森」と同じタイミングでNintendo Switch Liteを買うと思います。
山中:ほかにもバッテリー持続時間が長くなった新モデルも発表されましたよね。これも買っちゃうんじゃないかな。
田中:それも気になりますよね。新幹線とかで遊んでると、バッテリーがすぐなくなってしまうので。
山中:従来のサイズだと、新幹線とかで「こいつゲームしてるな」ってのが丸わかりで……ちょっと抵抗があったから、小さいモデルはいいですね。
田中:分かります!
思い出の出演作は「Caligula-カリギュラ-」「Death end re;Quest」
山中:では少し話題を変えて、今の声優という職業を目指そうと思ったきっかけはいつ頃なんですか?
田中:小学生ですね。最初は普通にアニメが好きで見ていたんですけど、高学年になると「アニメの声って声優さんという職業の人が演じてるんだ」と実感し始めて、とても素敵で楽しそうだなと思ったのが最初のきっかけですね。そこまではケーキ屋さんとかパティシエとか、ふわっとした夢だったんですけどね。私の通っていた学校では卒業式の修了証を貰う時に将来の夢を言っていたので、そこで「私は声優になります!」と宣言しました。
そこから中学生では演劇部、高校生では放送部に入って、高校在学中に専門学校へ行くためにアルバイトでお金を貯めていたんです。そんな時にオーディションを見つけて、そこで受かったという……ただただ運がよかったなと思います。
山中:そこから、実際にアニメやゲームのキャラクターに声をあてる存在になってるんですね。
田中:ふと我に返って、すごいことしてるなって思います(笑)。
山中:職業としては違いますけど、僕も似たような感覚ありますね。こういう仕事をいただいたりして恵まれていますけれど、今の立場が自分の実力だなんて1度も思ったことないですから。これまでのゲーム史を聞いていると、ごく一般的なアニメやゲーム好きの少女という感じですから、そういう方に勇気や夢を与えられる人生だと思いますよ。
田中:そうだったら嬉しいですね。インドアな私にとってゲームは大切な遊びでしたから、切っても切り離せない存在ですしね。
山中:せっかく声優さんにお話しを聞いているので、ご自身が出演されたゲーム作品で思い出深いものとか、印象に残っているものも伺っていきたいんですけど。
田中:やっぱり感情を揺さぶっていく系のゲームが好きなので、2つあるんですけど……まずは「Caligula-カリギュラ-」ですね。
山中:お上手でいらっしゃる(笑)。「言って」って言ったわけじゃないんですよ読者の皆様……。
田中:「Caligula-カリギュラ-」の収録は、本当にすごく印象に残っているんですよ。コンシューマ作品でメインのキャラクターを演じるって、なかなかなかったので。「こんな企画書があるんだ!!」とか。
山中:「Caligula-カリギュラ-」はちょっと特殊ですけどね(笑)。
田中:そうなんですか?! そうした設定資料を見せていただいたこととか、ストーリーを通してキャラクターが成長していくところとかが、演じていてすごく楽しかったんです。「Caligula Overdose -カリギュラ オーバードーズ-」が発売すると聞いた時も「やったー!!」って思いました。また演じられるんだって。
山中:美海ちゃんは、収録の時から「こういうのが好き」というのを直接伝えてくれていて、僕の作る「Caligula-カリギュラ-」のターゲットはこういう人なんだなと思っていました。僕の中でも全国にいる田中美海と同じ魂の人間に刺されば間違いないという指標になりましたね。
田中:ストライクだって思いましたよ!
山中:たまに意見も聞きましたよね。「こういうものを考えてるんですけど……」って聞いて、その時に返ってくる反応で「これなら刺さるな!」って。演じてもらった神楽鈴奈は、とても現代的でリアルなキャラクターでしたよね。
田中:そうですね。すごく身近な感じで、抱えているものも共感しやすいものだったので、そういうのも含めて「幸せにしてあげたいのにな……」って思ったんですけどね。なんでこんなことになったのかな……。
山中:そう思っても……ね。本当にそうなんですよ。収録の時に、楽士ルートでも鈴奈だけは最後まで主人公を信じておいてください、みたいな話しましたもんね。追い詰められても彼女は他の思考を採用する勇気は出ない、みたいな。。
田中:「ひどい!!」って言いましたよ。でも、確かに……ってなっちゃうんですよね。一番似合うんですよね。鈴奈は、ずっと一途に想っていたじゃないですか……そんな子をヒドイですよね。
山中:本当に。誰がそんなこと考えるんでしょうね、ヒドいですよね。 前回この企画に出てもらった宗悟も「Caligula-カリギュラ-」に出てもらったんですけど、そもそもコンシューマってベテランの役者さんを起用する風潮がありますよね。この作品については、一緒に大きくなってくれるような若い人を中心にお願いしたんですが、みなさん「Caligula-カリギュラ-」を置いて一瞬で大きくなられて……。
田中:企画書を見たときに知ってる方が何人もいらっしゃって、世代の近い方が多いなって思いました。こういう収録はまだ全然経験なかったので、うえしゃま(上田麗奈さん)とか、周りの先輩たちにお話しを聞きました。
あともう1つは、コンパイルハートさんの「Death end re;Quest」です。これも喜怒哀楽の感情がテーマになっていて、私の演じたアル・アストラは悲しみを忘れてしまったというか……とても明るいムードメーカーだったんですが、ある事情を抱えていて。そんな中で悲しみを爆発させるシーンがあったんですけど、そうした演技はやったことがなかったので印象に残っています。
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田中さんが演じたアル・アストラ https://www.compileheart.com/derq/chara/?page=al |
山中:なるほど。「Caligula-カリギュラ-」もどちらの作品も、すごく尖った試みをしていると思います。既存のJRPGの枠組みの中でなにか「爪痕残してやろう」みたいなスピリットを感じる作品でしたね。
田中:そうですね。素敵な出会いだったと思いますし、どちらもストーリーがすごく私に刺さったんですよ。ほかのキャラクターも知っている子が出ていたので「こんな演技をするんだ!」と勉強にもなりました。一プレイヤーとして遊ばせてもらったので「こんなシナリオあったんだ!」とか、自分の出ていない部分も楽しかったです。
山中:作っている人間としてはめちゃくちゃ嬉しいですよ。ありがとうございます。
夢はVR&ヤンキーの乙女ゲーム!
山中:ここから夢物語なんですが、こんなゲームあればいいのになっていう理想をぜひ聞きたいんですが
田中:じゃあ……VR乙女ゲーですね。いくつか出ていますけど、もっと長編ものとか……実現したらもう家からでなくなっちゃうかもしれないんですけど(笑)。
山中:VRの長編アドベンチャーといえば「東京クロノス」も出ましたし、時代としてはすぐ近くまできている感じですね。あと、例えば「FGO」で親交も深い悠木碧さんなんかは自分で色々な作品をプロデュースされているけど、美海ちゃんはそういう展望はないんですか?
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「東京クロノス」 https://tokyochronos.com/ |
田中:やれたらやりたいですね。そしたら……「HiGH&LOW」とか「ごくせん」みたいな、ヤンキーが出てくる「ヤンキー学園(仮)」みたいな乙女ゲームがやりたいですね。シナリオとか具体的なものは浮かばないんですけど。選択肢によっては野球もできる、みたいな!
色々なヤンキーを取り揃えたいですね。インテリ系とか、まさにっていうヤンキーとか、少年もいたり。モヒカンとか、寡黙な人とか、何でもぶち壊したいタイプとか。
山中:脚本は振っていただければ協力しますので……(笑)。ご興味のあるクライアントの方にまとめてお仕事募集しましょう!
あと花江夏樹さんなんかが有名だけど、最近の声優さんってゲーム実況をされる人もいますよね。そういうお仕事をやりたいとは思われてるんですか?
田中:めちゃくちゃやりたいです! もういつ振られてもいいように、自宅では実況しながらゲームを遊んでます(笑)。
山中:そんな素振りの仕方が……?! 僕もたまに配信でゲームしてるんですけど、1人だと単調でつい眠気に襲われる作業を繰り返すような場面でも誰かの反応があると楽しいんですよね。なのでぜひ、そんなお仕事もやってほしいなと外野から思ってます。
田中:いくらでもやりたいです!!
山中:では時間も迫っているので……最後に“田中美海にとってゲームとは”を聞きたいんですが。
田中:私にとってゲームは……ちょっと大きいかもしれないですけど“人生”ですね。一緒に歩いてきて、懐かしい昔のゲームを思い返すと、その時にあったこととかも一緒に思い出せますし。思い返すとその時の自分になれるって、すごくゲームに熱中しないとできないですから、そうしたゲームを受けての自分の想いとか、感情は大事にしていきたいです。
山中 拓也
ゲームの企画、脚本、プロデュース、ディレクションなどで活動中。代表作はアニメ化も果たした「Caligula -カリギュラ-」シリーズで、直近の仕事は機動戦士ガンダム40周年プロジェクト「SDガンダムワールド 三国創傑伝」の脚本。元カウンセラー志望で心理士資格を取得している。
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