目次
  1. ファンクションキーでリファレンスやゲームの呼び出しも可能
  2. 今もなお消えない熱量の高さに驚かされる
  3. ミニトークショーでは今風太氏や芸夢狂人氏など伝説のプログラマーたちが登場
写真左から郡司照幸氏と三津原敏氏。

1979年にNECから発売された8ビットパソコン「PC-8001」を手のひらサイズの1/4スケールで再現した「PasocomMini PC-8001」が1、0月5日から発売される。それに先駆けて開催されたのが今回のイベントだ。ちなみに9月28日は、「PC-8001」の発売日から「パソコン記念日」とも呼ばれているが、今回のイベント会場もNECが1976年に日本初のマイコン拠点であるBit-INN東京を開設した場所でもある。

改装前のラジオ会館には、以前は「パーソナルコンピュータ発祥の地」というプレートが飾られていたが、今回のイベントのために借りてきたものが会場内に飾られていた。

こちらが「パーソナルコンピュータ発祥の地」のプレートだ。

一般参加者向けのイベント開始に先駆けて、当日の11時よりハル研究所 取締役所長の三津原敏氏より「PasocomMini PC-8001 PCGセット」の発売について経緯が説明された。

8月5日に開催されたNEC-PCの40周年記念事業で、同社が開発した「PasocomMini PC-8001」が記念品として提供されることが発表された。「PasocomMini PC-8001」は、1979年にNECから発売された8ビットパソコン「PC-8001」を、手のひらサイズの1/4で再現した精密モデルに、マイクロソフト社製の「N-BASIC」をはじめとする当時の機能をそのまま再現したものである。

こちらの発表を行ったところ、多くの反響があった。中でも多かったのが、「PasocomMini PC-8001」を単体で発売して欲しいという意見であった。そこでNECと協議をした結果、ハル研究所より一般発売されることが決定し、9月28日より予約の受付を開始することになった。

この発売に際して、当時ハル研究所から発売されていたプログラマブル・キャラクタ・ジェネレータである「PCG8100」を1/4で再現したモデルである「PasocomMini PCG8100」を合わせて作成。こちらをセットにした商品「PasocomMini PC-8001 PCGセット」として今回発売されることとなった。価格は2万4800円(税別)で、「PasocomMini PCG8100」自体も単体商品として2480円(税別)で発売される。

こちらが「PasocomMini PC-8001」と「PasocomMini PCG8100」を組み合わせた状態だ。
会場には、「PC-8001」と「PCG8100」の実機も展示されていた。

パソコンミニのディレクターである郡司照幸氏からは、「PasocomMini PCG8100」についてはハル研究所より発売するために、あらかじめビズでスタッキングできるように作っていたと説明が行われた。これ自体に何かの機能が付けられているわけではないが、当時4万4800円とそこそこ高価だった憧れの「PCG8100」を装着した姿を再現できるというわけである(PCGの機能自体はソフト側に盛り込まれている)。

「PasocomMini PC-8001 PCGセット」は9月28日より予約受付を開始しされ、10月5日より順次手元に届く予定である。今回の発表に合わせて、公式サイトもオープン。そちらでもさらに詳しい情報が見られるようになっている。

パソコンミニ公式ウェブサイト
https://www.pcmini.jp/

ファンクションキーでリファレンスやゲームの呼び出しも可能

発表会と一般公開までの時間まで少しの時間であったのだが、そこで実際に「PasocomMini PC-8001」を触ることができた。さすがにベーシックコマンドは覚えていなかったのだが、F11キーを押すことで「クイックコマンドリファレンス」を呼び出すことができ、コマンドなどが確認できるようになっていた。

操作がわからない筆者に変わり、郡司氏がその場でリファレンスを確認しながらベーシックを入力していくという場面も。筆者も雑紙を見ながらベーシックのリストを入力していた世代ではあるが、この機能があの時代にあったら便利だったろうなという印象を受けた。

ベーシックのリストを入力している最中でも、リファレンスやキャラクターコード表、キーボードマトリックスなども表示することができる。

「PasocomMini PC-8001 PCGセット」には、あらかじめ16本のゲームソフトも収録されている。これらはF12キーを押すことでメニューが起動し、ゲームの操作や説明が見られるようになっていた。また、左右のキーでゲームタイトル自体の切り替えも行える。

F12キーを押すと、このような画面が表示され、収録されているゲームソフトが簡単に起動できるようになっていた。

ちなみにこれらのゲームは、キーボードだけではなくコントローラーにも対応している。どちらも操作性が悪いということはなかったため、好みで選ぶのがいいだろう。やや粗めのグラフィックで描かれた当時のゲーム画面と、ビープ音などを駆使して奏でられるサウンドを聞いていると、まるで当時の世界に舞い戻ったかのような気分を味わうことができる。

「PCG8100」の機能も盛り込まれているそうなので、この時代にベーシックで新たなゲームを作ってみるのも面白いかもしれない。

今もなお消えない熱量の高さに驚かされる

一般公開の12時を過ぎると、おじさまたち……いや、当時のパソコン少年たちが多数集まりだし、この会場で発売された「PasocomMini PC-8001 PCGセット」を購入したり、あるいは実際に体験したりといった様子が見られた。

ちょっとしたオフ会のような雰囲気にもなっており、あちらこちらで談笑する姿も。さらには、登壇者にサインを求めて集まったり、あるいは特別に展示されたケース入りCPUの写真を撮るために群がったりするなど、なかなか他では見られないような光景もあった。「PC-8001」の発売からちょうど40年が立つが、その当時の熱量をそのままこの会場にもってきたかのようである。

本物のIntel 4004など貴重なマイクロプロセッサを含む、宝石箱も!?

ミニトークショーでは今風太氏や芸夢狂人氏など伝説のプログラマーたちが登場

ミニトークショーのゲストとして最初に登壇したのは、今風太(こんぴゅーた)氏だ。大学1年の1980年に「PC-8001」を購入し、ゲームを作っていたという同氏。これまでメディアにも登場してこなかったそうだが、元々はラジオ少年でその当時デジタルICが出てきてハードウェアで野球ゲームやサッカーゲームを作っていたとう。高校生のころ、NECの「TK-80」を見て、これまでやってきたデジタルICゲームの延長線上にあると考え、「PC-8001」を36回ローンで購入したそうだ。

今風太氏。

今風太氏は、今回の「PasocomMini PC-8001 PCGセット」にも収録されている「SUB-MARINE」「PARACHUTE」「SPACE SHIP」「CHECK P.」「ROCKET BOMB」「MARIBE BELT」の順にゲームを作っていったのだが、最初の作品である「SUB-MARINE」を作ったのはパソコンを購入してから1年後だった。

プログラムはベーシックからはじめたものの、遅すぎることからマシン語を学んで1年かけて作られたそうだ。今風太氏が作ったゲームはこの7本のみだそうだが、そのすべてが収録されていることになる。

ちなみに今風太氏のプログラムが「I/O」の本誌に掲載されたのは、1980年7月号のみだ。それ以外はなぜか「マイコンゲームの本」専門であった。当時はカセットテープと自分で書いた記事を封筒に入れ編集部に送っていたそうだが、編集部側で「I/O」または「マイコンゲームの本」に振り分けて掲載されていたのだという。

今回のイベントのゲストでもある芸夢狂人氏が師匠だったという今風太氏。他には、中村光一氏が作った「スクランブル」に影響を受けたそうだ。

「PC-8001」の魅力については、電源ONでベーシックが動き誰でも扱いやすかったところと、Z80のマシン語がわかりやすかったところだという。また、先人たちが数多く解析しており、情報も世の中にたくさんあった。また、この当時は企画・デザイン・プログラム・デバッグをひとりでこなせる良い時代であった。さらには、こうして作られた作品を世の中に出せる雑紙の存在が大きく時代とマッチしていたと語った。

予定にはなかったが、会場に遊びに来ていた「FANFUN」作者の宮田康宏氏も飛び入り参加。当時のプログラムは大学ノートに書いていたため、ソースコードは残っていないのだという。

ふたり目のゲストとして登壇したのは、芸夢狂人氏だ。本来は「げいむきよと」と呼ぶそうだが、「げいむきょうじん」という呼び方の方が定着してしまったそうだ。ちなみにペンネーム自体は機種によって変えており、芸夢狂人は「PC-8001」のときに使用していたものである。そのため、同じ号の雑紙でありながら、別のペンネームの投稿も掲載されていることがあったのだとか。

初めて触ったコンピューターはソードの「M100」で、雑紙で見かけた売ります買いますコーナーから10万円ほどで入手。その後「PC-8001」が発売されたため、そちらに移行している。プログラムは自力で学び、雑紙「I/O」に「TK-80」用「インベーダー」のアセンブルリストが説明付きで掲載されており、それをすべて覚えて学んだそうだ。

芸夢狂人氏。

ゲームは作るが、あまり遊んでいなかったという芸夢狂人氏。今回収録されている「SPACE MOUSE」はものすごく優しく作られているが、これはいろんなマネをしてきたおかげだという。最初はマネからはじめるが、最後はオリジナルをちゃんと入れないとただの模写になってしまうと持論を語っていた。

アドベンチャーゲームやRPGなどじっくり遊ぶゲームは苦手だそうだが、そんな芸夢狂人氏が係わった作品にエニックス(現・スクウェア・エニックス)から発売されたSFアドベンチャーゲームの「ジーザス」がある。本人はあまりやりたくなかったそうだが、プログラマーが必要ということから参加している。

その後、2~3年掛けて「ジーザス2」を制作している途中でアメリカに留学。そのときにプログラマーも変わってもらい、自身も心機一転ということでプログラマーから引退している。「PC-8001」の魅力については、一番いいときに出たことだと語っていた。

このあとも多数のゲストが登壇し、賑やかな雰囲気の中イベントの幕が閉じた。今回発売される「PasocomMini PC-8001 PCGセット」は、「PasocomMini MZ-80C」に続く第2弾だが、今後の展開にも注目していきたい。

※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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