インディーメーカーCherrymochiの処女作「東京ダーク」が完全版になってPS4/Nintendo Switchに登場。そのインプレッションとインタビューを掲載する。

目次
  1. 【プレイインプレッション】マウス操作からコントローラーに変わっても違和感なくプレイが可能!
  2. 【インタビュー】ファンの期待に応え、主人公と相棒の馴れ初めを追加!

2017年9月7日にSteamで配信された探索型ミステリーアドベンチャーゲーム「東京ダーク」。独特な世界観や「SPIN」と呼ばれる特徴的なシステムで人気を博した本作の完全版が「Tokyo Dark – Remembrance –」としてPS4/Nintendo Switchで発売される。ここでは一足先に本作をプレイしたインプレッション記事と、本作を手がけたCherrymochiのプロデューサーであるウィリアムズ真保さんと本作のマネージメントを務めるメビウスの喜多村明夫氏へのインタビューの模様をお届けしよう。

【プレイインプレッション】マウス操作からコントローラーに変わっても違和感なくプレイが可能!

警視庁の女性刑事となって、恋人でもある同僚の刑事に襲いかかった奇怪な事件の謎を解くため、東京の各地を巡って捜査をする「Tokyo Dark – Remembrance –」。ホラーをベースに地下アイドルやヤクザ、日本神話など多彩な要素がごった煮のように詰め込まれた不思議な世界観を持つ作品です。神経症である主人公の目線を通して描かれる物語も独特で唯一無二の体験を味わうことが出来ます。

精神が不安定な主人公は幻覚を見ることもあり、現実と空想が入り乱れた不思議な世界に。
イギリス人のクリエイターであるジョン・ウィリアムズ氏の視点から見た日本の姿が描かれます。海外ならではの目線はどこかいびつで新鮮です。

ゲームシステムは横スクロール型のアドベンチャー。もともとのPC版はマウスでの操作でしたが、今回はコントローラーでの操作に変更。十字キーでオブジェクトに対するアクションを選択して物語を進めていくことになります。オリジナル版と同様に画面全体を調べる必要は無く、選べるオブジェクトを切り替える形式なので、ストレス無くゲームを進めることが可能となっています。

コンソール版の操作方法。LとRでオブジェクトの対象を切り替えることができます。
調べられるものを選ぶだけなので迷う心配はありません。また、どんな選択をしても途中で詰まることはなく、なにかしらのエンディングに到達することが可能です。

一方で、画面に隠れているネコを見つけるという新要素も追加。こちらはネコの近くに寄って特定のボタンを押すことで捕まえることができます。すべてのネコを見つけると特殊なエンディングが見れるそうですが、どのネコも背景に溶け込んでいて見つけるのが大変(笑)。それだけに発見できたときはうれしく、おもしろいやり込み要素になりそうでした。

オリジナルをプレイした人はご存知だと思いますが、本作のポイントとなるのが「SPINシステム」。このSPINシステムは、“SANITY(正気度)”、“PROFESSIONALISM(職業倫理)”、“INVESTIGATION(調査能力)”、“NEUROSIS(ノイローゼ)”の4つのパラメータが、主人公の行動によって変化するというもの。

たとえば、本作では鍵のかかったゴミ箱を開けるときに鍵を入手して開けるか拳銃を撃って鍵を壊して開けるかの2種類のルートが存在しますが、どちらを選んだかによってSPINの数値が変動。その後の行動に影響します。

その時点のSPINの値によってはどちらか一方の選択肢しか選べない場面も。本作の1周目はオートセーブで進行するので途中から物語をやり直すということは不可能。自分の直感によって進んだルートでどのような結末を迎えるのかドキドキしながら物語を進めることができます。ちなみに“SANITY(正気度)”が下がりすぎるとステータス画面の主人公の顔が醜く歪むのですが「主人公がこんな顔をしていいの!?」と思えるぐらい不気味に。そういう突き抜けたところも本作の魅力になっています。

さらに、「Tokyo Dark – Remembrance –」には主人公と相棒の過去の馴れ初めがわかる新規シナリオも収録。こちらは2周目の随所に導入され、より主人公の立ち位置に感情移入しながら物語を進めることができるようになります。そのため、オリジナル版をプレイした人も新鮮に遊べるようになっています。いちどプレイした人もぜひ本作に触れてみてほしいですね。

新たに追加されたエピソードでは主人公の過去が明らかに。どのように相棒の田中に惹かれていったのか分かる内容になっています。

【インタビュー】ファンの期待に応え、主人公と相棒の馴れ初めを追加!

本作を手がけたCherrymochiのウィリアムズ真保さん。インタビューには「Tokyo Dark – Remembrance –」の開発であるメビウスの喜多村明夫氏も同席。

――本作はPC向けゲーム「東京ダーク」にシナリオなどを追加した完全版にあたるタイトルですが、もともとのPC版のユーザーからの評価はいかがでしたか?

ウィリアムズ真保さん:「東京ダーク」はキックスターターのクラウドファンディングで始動したタイトルでしたが、最初からバッカーさんたちから期待してもらっているタイトルでした。発売後もSteamでのユーザー評価が「非常に好評」となっており、とてもうれしく思っています。

――「東京ダーク」はホラーやサスペンス、日本のカルチャーなど多彩な要素が盛り込まれており、クリエイターの好きなもの、作りたいものを詰め込んだ作品に感じます。そのなかでとくにいちばんやりたかったこと、表現したかったことはなんでしょうか?

ウィリアムズ真保さん:本作はわたしの夫であるジョン(ジョン・ウィリアムズ氏)による小説のアイディアが原案です。その小説のアイディアと、「日本に住んでいる外国人から見た日本の風景」を組み合わせたものが根幹のテーマになっています。小説の内容は今回のゲームとはまったく異なるのですが、「日本に住んでいる外国人が伝えたいこと」というコンセプトはつながっています。

ゲームは女性の刑事である伊藤絢美(いとう・あやみ)が主人公だが、小説のアイディアはその部分も異なるということ。

――今回、PS4とNintendo Switchで完全版を発売することになった経緯をお聞かせください。

ウィリアムズ真保さん:もともと「東京ダーク」はキックスターターでPC版を発売することを目標としていましたが、プレイしたユーザーさんから好評をいただいたためコンソール版も発売することができることになりました。

――なるほど。「東京ダーク」はインディーでありながら大手メディアにも取り上げられることが多かった印象です。

ウィリアムズ真保さん:ありがとうございます。もともと使っていたゲームエンジンがコンソールと相性が悪かったため移植は諦めていたのですが、UNTIESさんやメビウスさんが尽力してくださって実現することができました。

――今回、開発を手伝っているメビウスさんは「東京ダーク」のどのような点に惹かれたのでしょうか?

喜多村明夫氏:自分は2016年の「BitSummit 4th」でトレンチコートを着た主人公の絢美がポケットに手を突っ込んでいるビジュアルを見たときから一発で本作に惹かれました。その後、Tokyo Sandboxで共通の知人からジョンさんと真保さんを紹介してもらい、「ぜひメビウスで手伝わせて欲しい」とお願いしたんです。

――かなり初期から目を付けていたんですね。

喜多村明夫氏:そうですね。コンソール版はそのままの移植が難しかったのでUnityで製作していますが、オリジナルと遜色の無い出来になっていると思います。

――コンソールへの移植にあたり、どのような点をブラッシュアップしようと思いましたか?

ウィリアムズ真保さん:喜多村さんからはテキストを読みやすくしたいという要望をいただきました。そのため、オリジナル版から言い回しを改めたり改行を変えたりして読みやすくしています。

――オリジナル版も味があってよかったですが、確かに表現が変なところもありましたね。

喜多村明夫氏:はい。より多くの人が楽しめるようにテキストをブラッシュアップさせていただきました。

ウィリアムズ真保さん:アートに関しても改良しています。もともとのオリジナル版は外国人のアーティストが制作しているのですが、改めてメビウスさんに所属している日本人のアーティストに見ていただいて、「ここはこうしたほうがリアリティが出る」という部分を教えていただいて、その点を修正しています。そのため、背景の描き込みが増えています。

喜多村明夫氏:それと男性キャラクターのグラフィックもリファインしていますね。オリジナル版は警部のキャラクターなどが若くみえてしまっていたので、年相応のグラフィックにして見た目でわかりやすくしています。

ぜひプレイヤーの思うままの選択でプレイして欲しい

――本作では「SPIN」の数値や選択肢によって展開が変わる独特なシステムが搭載されていますが、コンソールではじめてプレイする人にオススメのルートなどはありますか?

ウィリアムズ真保さん:いえ、そこはプレイヤーが感じたままに行動を決めてもらいたいんです。本作の1周目はオートセーブになっていて後戻りができないようになっているのですが、それはプレイヤーごとの体験をしてもらいたいからなんですよ。2周目からは任意でセーブもできるようになるので、そこでいろいろな展開を見てみてもらいたいですね。さらに本作「Tokyo Dark – Remembrance –」では2周目から絢美の過去がわかる新規シナリオも楽しめるようになり、より深みのある物語が楽しめるようになっているので、そこも注目してもらいたいです。

――新規のシナリオはどのような内容になっているのでしょうか?

ウィリアムズ真保さん:オリジナル版をプレイしたユーザーからは田中と絢美の馴れ初めをもっと見たかったという声をいただきました。そのため、絢美がなぜ田中をそこまで追い求めるのか、その理由がわかるようなシナリオを追加しました。

喜多村明夫氏:Steam版をプレイした人にはぜひコンソール版をプレイしてどこが変わっているのかチェックしてみてもらいたいです。オリジナル版は海外クリエイターの作品でしたが、コンソール版は日本のクリエイターも制作に参加しているので、オリジナル版とはまた違った魅力のある作品に仕上がっていると思います。どちらが正解というわけではなく、どちらも違った魅力があるので、ぜひ比べてみてもらいたいです。

――新規シナリオにあわせて新しいエンディングも追加されているのでしょうか?

ウィリアムズ真保さん:はい。田中と絢美の関係性を描いたシナリオの先にある、新たな結末を用意しています。

――それは楽しみです。今回のコンソール版でさらに「東京ダーク」にファンが付いたら真保さんは続編のようなものも作ってみたいですか?

ウィリアムズ真保さん:はい! 伊藤絢美というキャラクターは私たち夫婦にとってとても思い入れの強いキャラクターです。今後も彼女に活躍できる場があるとうれしいですね。

――ほかにCherrymochiさんで挑戦してみたいジャンルなどはありますか?

ウィリアムズ真保さん:RPGです。私たちは普段からゲームをはじめいろいろなエンターテイメントに触れるようにしているのですが、やはりゲームの王道であるRPGにはいちど挑戦してみたいです。わたし自身も「ペルソナ」シリーズや「幻想水滸伝II」がすごく好きで、夫のジョンも「ファイナルファンタジー」シリーズの大ファンなんです。飼っている2匹のネコの名前もティファとモグというぐらい(笑)。だから、いちどRPGを作ってみたいです。

アドベンチャーやRPGだけでなくTPSなどもプレイする根っからのゲーマーである真保さん。とくにお気に入りにゲームは「ひぐらしのなく頃に」とのこと。

――最後に記事を読んで「Tokyo Dark – Remembrance –」が気になった人にひと言お願いします。

喜多村明夫氏:私自身も、もともと作品のファンだったので、この作品にはとても思い入れがあります。今、日本にはホラーゲームが少ないですが、ぜひ本作でこのジャンルのおもしろさを知っていただけたらうれしいです。

ウィリアムズ真保さん:多くの方に応援していただいてコンソール版を発売することができました。ぜひプレイしてもらえるとうれしいです。よろしくお願いします!

TOKYO DARK -Remembrance-

ソニー・ミュージックエンタテインメント

PS4ダウンロード

  • 発売日:2020年1月10日
  • 15歳以上対象

TOKYO DARK -Remembrance-

ソニー・ミュージックエンタテインメント

Switchダウンロード

  • 発売日:2019年11月7日
  • 15歳以上対象

※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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