2019年12月12日にマーベラスより日本語字幕対応版の発売が予定されているPS4用ソフト「CONTROL」。その発売に先駆け、本作をプレイする機会を得たので、インプレッションをお届けする。
目次
次第に謎が解き明かされていくミステリアスなストーリー
「Alan Wake」や「Quantum Break」で知られる、デベロッパー・Remedy Entertainmentが送り出すアクションアドベンチャーの最新作となる「CONTROL」。Remedy Entertainmentのタイトルといえば、アクションよりもシナリオ表現がゲームの中心となっていたが、本作はゲームプレイ面にも注力して開発されており、「Alan Wake」や「Quantum Break」とは一風異なるアクションアドベンチャーとなっている(その開発経緯などが語られたインタビューはこちら)。
プレイ面に力を入れたとはいっても、本作でも濃密なドラマが展開するストーリーパートはもちろん健在。あらすじを大まかに説明すると、プレイヤーは主人公「ジェシー・フェイデン」となり、とある組織の指揮官として「ヒス」と呼ばれる謎の敵に、超能力を駆使して立ち向かう……といった流れになっている。だが、実際にプレイしてみると、本作のストーリーは一筋縄ではいかない作りとなっていることが分かる。
物語の冒頭では、世界観やキャラクターへの説明がほぼ行われないまま、建物内を捜索することになる。そのため、「ここはどこで、ジェシーは何のためにこの場所にいるのか」よくわからない状態のまま、さまざまな不思議な出来事に遭遇し、物語は次々と新たな展開を迎えていくのだ。
映像表現的な部分でも挑戦的な内容となっており、時折挿入されるジェシーの回想や心理描写のシーンでは、謎の映像が断片的に切り替わるなど、サイコサスペンス的な雰囲気が色濃く漂う。そのため、その手の映画などに不慣れなプレイヤーにとっては、何が起こっているのかを把握できず、序盤の展開はかなりとっつきが悪く感じてしまうかもしれないが、いきなり物語を理解する必要はない。ゲームが進むにつれ、徐々に過去に提示された謎が明らかになり、物語の全体像を掴めていくような作りになっているからだ。
例えば主人公のジェシーが、まるで画面の向こうにいるプレイヤーに対して、直接話しかけてくるかのような、意味深な台詞やシーンが度々挿入されるのもその一つ。ジェシーが話しかけている存在が何なのか、ジェシーの過去に何があったのか、ゲームを進めていくことで明らかになっていく。
そんな本作の物語や世界観を理解するための手助けとなってくれるのが、フィールドの各所に配置されている「収集物」。この収集物の多くは、異変が起きる前に人々が残していたさまざまな記録で、これらを読み込んでいくことで、世界観や物語をより理解しやすくなる。こうしたTIPS的な要素は、他のアクションアドベンチャー系のタイトルでも頻繁に見られるが、本作はその数がとにかく膨大だ。
今回プレイした序盤の範囲で入手できたものだけでも、メインストーリー部分よりも収集物の方がテキストの総量が多いのではないかと感じたほどで、読み応えは十分。登場人物たちの会話や収集物から、それまで理解できなかった謎が明らかになっていくという流れは、ミステリー的な構造が好きな人にとってはたまらない構造になっていた。
さまざまなモードに変形する銃「サービスウェポン」と、数々の超能力を駆使して戦う
本作では、主に「オールデスト・ハウス」とよばれる建物の内を探索し、さまざまな事態を解決するべく奔走することになるが、異世界から現れた謎の生命体「ヒス」に寄生され、精神を狂わされり、異形と化した人々などの敵が出現することもある。
ヒスに対抗するための武器として最初に使用可能になるのが、「サービスウェポン」と呼ばれる特殊な銃。TPSである本作においては、銃を使った遠距離攻撃がもっとも基本的な攻撃手段の一つとなるのだが、本作でジェシーが使用できる銃はサービスウェポン1種類のみだ。
その代わり、サービスウェポンには状況に応じて武器としての形態(フォーム)を一瞬で変化させられるという特性があり、ハンドガン、ショットガン、マシンガンといった銃器の役割を一丁でこなせるようになっている(ゲーム中では、ハンドガンは「通常」、ショットガンは「粉砕」、マシンガンは「連射」といったモード名を持つ)。
またサービスウェポンには、弾を銃自らが精製できる性質があり、一定時間が経過すると自動で弾数が回復するため、リロードという動作が存在しない。ただし好きなだけ撃ち放題かというとそうではなく、一度に装填しておける弾の数には上限が決められており、全弾を撃ち尽くしてしまうと弾の回復までかなりの時間が必要になる。本作では、一度に多数の敵を相手にする場面が非常に多いため、サービスウェポンだけで戦おうとすると、弾の回復が追いつかなくなってしまうことも珍しくない。
そういった際に役立つのが、ジェシーがもつさまざまな超能力だ。超能力は「エネルギー」(こちらも時間経過によって回復)を消費することで使用でき、銃の内の弾を使用するサービスウェポンとはリソースが完全に別になっているため、サービスウェポンの弾が回復するまでの時間を補う役割も果たす、もう一つの重要な攻撃手段となる。
ゲームを開始してしばらくは、ジェシーの超能力はまだ発現していないため使用できないのだが、ストーリーを進めて「パワーオブジェクト」と呼ばれる存在に接触することで、新しい超能力を使用できるようになっていく。銃と超能力の2つが使用できるようになってからは、アクションの自由度が大幅に増え、バトルが劇的に楽しくなる。
そんなさまざまな超能力の中でももっとも使用頻度が高いのが、フィールドに存在するさまざまなオブジェクトを任意の場所に投げ飛ばすことができる「投擲」。
投擲したオブジェクトは、敵に直接ぶつけてダメージを与える攻撃手段として利用できるようになっているのだが、筆者が驚いたのは、とにかく投げられるオブジェクトの種類が尋常ではないこと。
マップ中におかれているコンテナやブロック、テーブルや椅子といった置物はもちろん、一見何もないように見える場所でも、壁を剥ぎ取って投擲することも可能なので、投げるものに困ることはまずない。
本作では、攻撃によってもオブジェクトが破壊され、地形が頻繁に変動するので、投擲を積極的に活用しながら戦っていると、それまでの地形の跡形が残らないほど。敵の投げたグレードなどの爆発物を爆発前に超能力で受け止めて、そのまま投げ返してダメージを与える……といった、通常のTPSではできない戦い方も可能になっているのが楽しい。
銃弾のダメージを大幅に減衰させるバリアを所持している敵が登場することもあるが、超能力による攻撃はバリアの耐久を大きく削ることが可能な特性を持っている。銃に比べると少し攻撃の発生が遅く、隙ができてしまいやすいという弱点もあるが、その分攻撃力は高く、状況や敵に合わせて攻撃手段を使い分けていくことが重要になっている。
物が当たればガラスが砕け散り、書類は宙に舞い上がる。物理演算による膨大な処理が行われていると推測できるが、フレームレートは高いレベルで安定しており快適に操作できる(多数の敵を相手にするような状況で投擲を使用しようとすると、フレームレートが一時的に低下することはあった)。 |
「投擲」の他にも「回避」「シールド」「洗脳」といったさまざまな超能力が登場するが、「投擲」と並んで主力となるアクションが「回避」だ。回避は、一瞬無敵時間をまといながら任意の方向に向けて高速移動する、いわゆる緊急回避的な役割のアクションで、習得後は非常にスピーディな戦いが可能になる。
ただしその際に消費するエネルギーは「投擲」などの超能力と共通のため、とくに最大値の低い序盤は、積極的に超能力を使っているとあっという間にガス欠に陥ってしまうことも。とくに投擲と回避の2つは、併用しながらのエネルギーのやりくりがなかなか難しいため、筆者はサービスウェポンをショットガン的な使い方のできる「粉砕」モードに切り替えて「回避」を使用し、敵に一瞬で接近しながら至近距離で散弾を叩き込み、再度「回避」を使って離脱するという、エネルギーを主に回避にまわし、攻撃には銃を主軸にする戦闘スタイルを採用していた。
攻撃やアクションの自由度がかなり高いため、銃とさまざまな超能力、どれを中心にして戦うかは、個々のプレイヤーによって大幅に変わってくることになりそうだ。
HPにあたる「ヘルス」を回復する手段が限られているのも本作のバトルの特徴。 自動回復は行われず、敵を倒した際にその場に落とす「ヘルス要素」を回収する必要がある。 敵を倒した位置によっては、回復のため危険な位置に移動しなければならないことも。 |
フィールドを探索して行動範囲を広げつつ、素材を集めてジェシーを強化
本作のゲームプレイの中でも、ストーリー・バトルと並んで大きな比重を占めるのが、舞台となる「オールデスト・ハウス」内の探索だ。「オールデスト・ハウス」内では、世界観をより理解するようになるためのさまざまな収集物が発見できることは既に述べたが、同じようにフィールド内で回収できる「クラフト素材」を使って、ジェシーを成長させていけるようにもなっている(「クラフト素材」は戦闘で入手することも可能)。
「アップグレード」では、クラフト素材を消費して、新しいサービスウェポンのフォームの開発や強化を行うことが可能。サービスウェポンのフォームが増えると戦い方の幅がグンと広がるので、最優先で行いたい項目だ。 |
またサービスウェポンやジェシーには、それぞれ個別に「連射速度ブースト」「ダメージブースト」といった、それぞれの能力や効果を向上させることができる強化アイテムをセットすることもできる。強化アイテムは、「アストラルビルディング」でクラフト素材を消費して作成するほか、フィールド内で発見できるアイテムボックスや敵のドロップから直接入手することも可能。作成やドロップで手に入る強化アイテムは基本的にランダムなので、優秀な強化アイテムをもとめてフィールドを探索して敵を倒し続ける、ハック&スラッシュ的な楽しみも用意されている。
またゲーム開始時は、「オールデスト・ハウス」のほとんどのエリアはヒスによって支配されているのだが、それぞれのエリアに存在する「コントロールポイント」と呼ばれる場所を浄化することで、そのエリアの制御権(コントール)を取り戻すことができる。
コントロールポイントを取り戻せば、体力の回復や他のコントロールポイントへのファストトラベルが可能になり、ゲームオーバーになった際のリスポーン地点にもなるなど、探索における拠点のような役割を果たしてくれる。コントロールポイントの浄化は、ストーリー進行の目標になることも多いので、戦闘や探索をこなしてクラフト素材を集めつつ、各地のコントロールポイントを浄化して、自身の行動範囲を広げていく……というのが、主な本作のプレイサイクルになる。
またゲームを進めていくと、さまざまなミッションが課せられることも。
「条件クリアミッション」は、「近接攻撃で敵を○体撃破」「一度も倒されない(生存した状態)まま敵を○体倒す」などの「指令」をプレイヤーが受注し、条件を満たしていくことで報酬を獲得できるシステム。一部を除いて、プレイヤーが選択可能な指令の候補はランダムで選ばれるようで、断念すると新しい指令がすぐに出現するようになっている。
条件が厳しいものほどいい報酬を獲得できるが、どうしても面倒だったり、自分のプレイスタイルや次に行きたい場所と噛み合わないときは、断念を選ぶことで別の指令と入れ替えることができるので、この手のシステムにありがちな“やりたくない行動を強制される”煩雑さを感じることがない作りになっているのが嬉しい。
ヒスの攻撃を受けている味方の救出など、時間制限つきの「緊急ミッション」が、ランダムで発生することもある。ミッションをクリアするとジェシーを強化するためのポイントを獲得できるが、制限時間を越えるか、一度自分が倒れてしまうとミッション自体が消滅してしまうので、挑む際には焦らずに万全の準備をして臨みたいところ。
全体のプレイを通して感じたのは、ストーリーとゲーム的要素が非常にいい塩梅で融合しているということ。事前にサンドボックス要素を取り入れたという話を聞いていたこともあり、ストーリー性がやや薄味になるのではないかという危惧もあったのだが、本作はしっかりと物語がゲームを主導してくれるため、「何をすればいいかわからない」という状態に陥ることはなく、ゲーム内に散りばめられた謎を解き明かしたいというモチベーションが自然と湧いてくる。
一方で本作の舞台となる「オールデスト・ハウス」は、ゲームの序盤は通行できない箇所がいくつもあり、徐々に行けるエリアが広がっていくようになっているので、オープンワールド的な自由度を求めるプレイヤーには物足りない面も存在する。しかし、ゲームの進行にあわせて新たなコントロールポイントを開放してマップを埋め、出現する敵を倒してより強力な強化アイテムを集めていく流れは、ダンジョンRPGの探索にも通じる楽しさがある。主軸であるアドベンチャー要素はそのままに、探索などの寄り道要素を増やすことで、ゲーム的な楽しみの幅が大きく広がったという印象を受けた。
銃と超能力というメインウェポンとなる攻撃手段が複数存在することで、独自のアクション性が確立されているのもポイント。とくにフィールドに存在する大半のオブジェクトを攻撃手段として使えるのは新鮮で、性能面でもしっかりと銃との差別化がされている。
ハック&スラッシュ的な要素がある都合上、敵とのバトルを何度も繰り返すことにもなるのだが、キャラクターがキビキビと動いてくれる操作の気持ち良さ、敵や地形によって戦い方がガラリと変わることもあり、バトルだけを延々と繰り返しているだけでも飽きが来ないほど、アクション面もしっかりと作り込まれている。
ドラマにアクション、探索の面白さが見事なバランスで融合を果たした「CONTROL」。これを機会に、是非ともプレイしてみて欲しい。
Developed by Remedy Entertainment, Plc. Published by 505 Games. Licensed to and published in Japan by Marvelous Inc. The Remedy logo and Northlight are trademarks of Remedy Entertainment Oyj, registered in the U.S. and other countries. Control is a trademark of Remedy Entertainment Oyj. 505 Games and the 505 Games logo are trademarks of 505 Games SpA, and may be registered in the United States and other countries. All other marks and trademarks are the property of their respective owners. All rights reserved.
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