スマホ向けRPG「うたわれるもの ロストフラグ」をレビュー。人気シミュレーションRPG「うたわれるもの」シリーズの最新作としてリリースされた本作の内容について紹介する。
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「うたわれるもの ロストフラグ」は、アクアプラスからリリースされたスマートフォン向けRPG。人気シミュレーションRPG「うたわれるもの」シリーズの最新作だ。「うたわれるもの」といえば、和風の世界、ケモノ耳やシッポといったデザインが特徴的なキャラクターたち、そしてSFテイストとミステリー的な要素がけん引するストーリーなどのユニークな魅力を持った作品。そんなシリーズの最新作だけあって本作はリリース前から注目を集めており、事前登録者数も47万人突破という数字を叩き出していた。では、その内容はどのようなものに仕上がったのか。リリースされた本作のプレイレビューをお届けしたい。
シミュレーションRPGではなく正統派のスマホRPG!バトルはオート進行
PCや家庭用機向けにリリースされていた「うたわれるもの」シリーズはシミュレーションRPGになっており、バトルはマス目で区切られたフィールド上でユニットを動かすタクティカルバトルとなっていた。最新作である本作もこのバトルを引き継いでいるのかと言うと、そうではない。
本作のバトルは、オートによる通常攻撃と、手動によるスキル発動とを組み合わせた形式。スマホ向けRPGでスタンダードなものになっている。倍速ボタンによってバトルスピードを早めたり、AUTOボタンでスキル発動をオートにすることもできる。
ただ、フィールドそのものはマス目で区切られており、スキルの効果範囲に影響を与えている。このため、各ユニットが持つスキルの攻撃範囲を意識した上で配置するのが重要だ。マス目の移動要素こそなくなったものの、攻撃範囲という部分でタクティカルバトルを引き継いでいてる。
とはいえ、これまでのタクティカルバトルと比べると、戦術性は強くない。攻撃範囲についても、ユニット配置を考えに考え抜かなければバトルに勝てないというレベルではなく、攻撃範囲の広い攻撃向けキャラは敵と接しやすい前衛中央寄りに配置し、回復キャラは攻撃を受けにくい配置に…といった大まかな配置でも十分勝利することができる。AUTO機能の性能もよいので、フルオートで放置RPG的に楽しむことも十分可能だ。
これぞ「うたわれるもの」!メインの魅力は「ストーリー」
従来の「うたわれるもの」から、スマホ向けRPGとして大胆にアレンジされたバトルシステムに対し、ストーリー部分は従来からのファンの期待に応えたものになっている。
物語は、名前を持たない主人公が、瀕死の少女「ミナギ」を救うところから始まる。「ミナギ」の命を救った主人公だったが、記憶がなく、自分が誰かもわからない。そこで「ミナギ」の母が「織代」を務める教団へと身を寄せることに。「織代」とは神と呼ばれるほど奇跡的な力を使い、様々な人間の持つ願いを叶える存在だという。しかし誰の願いをいつ叶えるか、すべては「織代」次第。「織代」はあがめられてもいたが、一方で「織代」の願いによって人生を壊される者もおり、教団への復讐を企てる刺客も存在した。
主人公は、そんな刺客から「ミナギ」を守ったことをきっかけに「織代」と面会。「織代」と「ミナギ」とのやりとりに介入したことで、「アクタ」という名前と領内のもめ事を解決する役「調停者」の立場を得る…。
過去の文明の遺産、記憶喪失の主人公、徐々に居場所を得ていく主人公…といった要素はいずれも、「これぞ『うたわれるもの』」と言えるもの。さらに、エルルゥ、アルルゥやベナウィなど過去作のキャラクターも序盤から姿を見せてくれる。「うたわれるもの」ファンであれば確実に楽しめるストーリーだ。
また、その見せ方からも、本作がストーリーを重視していることがよくわかる。本作は、ゲーム内のモードとしてストーリーとバトルとが明確に分けられているのだ。
感情移入できるバトルと夢のバトルを両立!「ストーリー」と「出陣」
本作は、ストーリーは「ストーリー」、バトルは「出陣」という形でモードが分割されている。とはいえ、完全に分割されているわけではない。「出陣」でバトルをこなしていくことで、「ストーリー」がアンロックされていくという形でゆるやかに連携している。このため、バトルだけ連続でプレイしたり、ストーリーだけガッツリ読み進めたり…ということが可能だ。
「出陣」は純粋にバトルだけをプレイするモード。バトルに勝利することで次のステージがアンロックされていく…という形だ。また、ガチャで獲得したキャラクターを自由に編成できるというのも特徴だろう。獲得できてさえいえれば、序盤から「うたわれるもの」シリーズのキャラを混合した夢のメンバーでプレイ可能だ。
一方「ストーリー」は、ストーリーを読み進めていくノベルゲーム的なモード…なのだが、実は「ストーリー」モードでもバトルは発生する。このバトル、システムそのものは「出陣」でのバトルと同じ。ただし、メンバーはストーリー側で設定される。
このため、ストーリーとバトルがシンクロする。ストーリー上で主人公が孤立無援と言う状況なのに、一旦バトルに入ればガチャで獲得したSSRキャラ数名で敵をフルボッコ…的な状況になることはない。このため、ストーリー上のバトルも感情移入した状態で楽しめるのだ。ストーリーが魅力となっている「うたわれるもの」において、このシステムが採用された意義は大きいと思う。
バトルシステムに一抹の残念さは感じるもののまごうことなきシリーズ最新作!
「うたわれるもの」シリーズの世界観を大事にしているという意味では、ビジュアルの統一感についても触れておきたい。本作はキャラクターはもちろんのこと、背景グラフィックとっても非常に美しく、かつ「うたわれるもの」シリーズの息吹を感じさせるものに仕上がっている。しかも、ビジュアルの枚数が多い。場面展開に応じてしっかり背景が代るし、スチルもしっかり用意されていることに驚いてしまった。
最後にまとめると、世界観やストーリー、ビジュアルといった側面では、まごうことなき「うたわれるもの」最新作といえる。ただ、タクティカルバトルも含めて「うたわれるもの」と考えていた筆者としては、一抹の残念さを感じたことは否めない。とはいえ、ストーリーのクオリティは非常に高い。一度プレイすると、ぐいぐい引き込まれてしまった。なので、過去作のファンもまずはプレイしてほしい。
また、これまで「うたわれるもの」を知らなかったプレイヤーは、むしろバトルシステムに惑わされることなく本作の素晴らしい世界観を楽しめるので、是非オススメしておく。本作リリース前に、アドベンチャーゲームとして「うたわれるもの」過去作が公開されているので、そちらと合わせてプレイするといいだろう。