「Sky 星を紡ぐ子どもたち」をレビュー。「風ノ旅ビト」を手がけたthatgamecompanyの新作タイトル。iOS版に続き、この度Android版がリリースされた本作。その魅力を詳しく紹介する。

目次
  1. 落ちた星々を再び星座へと帰す物語
  2. 無料ゲームとは思えない没入感!世界を体験するアドベンチャー
  3. 賛否両論!?ソーシャル要素
  4. 画像をキレイだなと感じたらDL推奨!プレイしないのはもったいない作品

「Sky 星を紡ぐ子どもたち」は、thatgamecompanyから配信されているスマホ向けソーシャルアドベンチャーゲーム。thatgamecompanyは、「風ノ旅ビト」「Flowery」「flOw」といった作品を手がけており、本作「Sky 星を紡ぐ子どもたち」も、これらの作品と通ずる作家性を持った作品だ。本作は2019年7月にiOS版が先行して配信されており、今回、Androdi版が12月15日に配信開始。ついに、スマホであればOSを問わずプレイできる環境が整った。そこでこの記事でその魅力をお伝えしたい。

落ちた星々を再び星座へと帰す物語

本作の目的は、過ちを犯し、天から落ちてしまった星々を、再び天へと返してあげること。星々を天へと帰すことで、星座が蘇る。また、星々を帰していく過程で、地上の荒廃した王国も希望を取り戻していく。…と、ここまでの物語を読むと、とてもストーリー性の高いゲームのように思えるかもしれない。いや、実際本作のストーリー性は高いのだが、とはいえ作中、物語が言葉で説明されるのはオープニングだけ。セリフは一切存在せず、ストーリーはビジュアルによって語られていくという形式だ。

これは、「ナラティブ」と呼ばれる形式。ゲームキャラの物語をプレイヤーが体験するのではなく、プレイヤー自身の物語を体験することを目指した形式だ。プレイヤー自身の物語を体験する…というと、VR的なもののように思えるかもしれない。しかし、そうではない。たとえば、ゲームの中で主人公の仲間キャラが死んだとしよう。主人公は「仲間を殺しやがって…許さない…!」なんて怒りに震えている。だがこの時プレイヤーはどういう心境だろう? もちろん、プレイヤーが主人公へと感情移入していれば、主人公同様怒りに震えるかもしれない。けどぶっちゃけた話、心に何の変化も起きない場合もあるだろう。具体例を挙げるなら、死んだのがゲーム的に使えない仲間キャラだった時とか。

あるいは、ストーリー重視のゲームだと、プレイヤー的にはカンタンにクリアできたステージだったのに、シナリオ上、負けたことになってしまう…なんてこともある。つまり、たいていのゲームは、ゲームキャラの物語と、プレイヤーの物語が二重構造になっているのだ。

これに対して、ゲームキャラの感情表現を極力排し、背景や敵といったゲーム内の環境がどう変化していくかのみで物語を語ろうとするのが「ナラティブ」形式だ。ゲーム内の環境に対して、どう思うかはプレイヤーの感情に任される。キレイと思うか、不気味と思うか。強敵と思うか、ザコだと感じるか。プレイヤーの感情の積み重ねが物語になる。このため、「ナラティブ」形式のゲームはセリフを使わないことが多い。

本作もセリフではなく、ビジュアルによってプレイヤーの感情を揺さぶることでストーリーを作り上げている。たとえば、地に落ちた星の精霊たちは、それぞれ異なる行動を取っている。たとえばある精霊は「儀式で使われるツボを祭壇へ運んでいる」。ただこれは、筆者が感じたことであって、ゲーム内で明確に説明されたことではない。ビジュアルを見て、「見た感じ、ツボっぽい形状のものを持っている」だとか、「運んだ先がなんとなく祭壇っぽい」だとかいった印象をつなぎ合わせて、筆者が感じただけに過ぎないのだ。だからこそ、この記事を読んで「いや、あそこはそういう意味じゃないだろ?」と思う人もいるかもしれない。それでいい。プレイヤーの解釈に任されているということは、正解がプレイヤーの数だけあるということ。その人が感じた物語が、その人にとっての正解なのだ。

無料ゲームとは思えない没入感!世界を体験するアドベンチャー

物語と感情がプレイヤーに任されていることで、本作は高い没入感を実現している。無料ゲームというと、短時間でサクッとプレイするタイプのものが多いが、本作は気づくと数十分経ってた…というレベルで没入してしまう。無料ゲームとは思えない没入感だ。

本作でプレイヤーが行うことの基本は「探索」。星々を探して、マップを探索する。移動は360°自由に行うことができ、地上ではジャンプ、地面がないところでは飛行が可能だ。これに加えて、キャンドルを使って光を集めたり、集めた光を精霊に渡したりといったアクションができる。

大きな谷をタイミングギリギリでジャンプしたり、強力な敵を回避しなければならなかったり…といった激しいアクションは出てこない。集中力が必要なシーンはほとんどゼロ。なのに何故没入感が強いのか。それは、本作のアートワークが魅力的だからだ。

見てほしい、このスクリーンショットを。色使いやぼかしを使ったエフェクトが美しいが、それだけじゃない。ちょっとした場面ひとつ切り取っても、一枚の「絵」として成立してしまう。構図の見せ方が見事。まるで観光名所を歩いているようだ。

それだけじゃない。光と闇の使い方が素晴らしい。朝のように明るいシーンが続いたかと思うと、深夜のように暗いシーンへ。狭く薄暗いシーンが続いたかと思えば開放された明るいシーンへ。このメリハリが絶妙なので、ただ移動しているだけでも風景の美しさにハッとさせられる。また、暗い所から明るい所へ出た際視界が真っ白になり、徐々に風景が見えるようになっていくなど、細かい演出まで手を抜いていない。非常に完成度が高い。だからこそ、時間を忘れるほど没入してしまう。

賛否両論!?ソーシャル要素

ここまで本作の「アドベンチャーゲーム」としての魅力を紹介してきた。しかし本作は単なる「アドベンチャーゲーム」ではない。「ソーシャルアドベンチャーゲーム」と銘打たれている。何が「ソーシャル」なのかといえば、本作にはオンライン要素が用意されているのだ。

本作の持つオンライン要素は、ゲーム中に他のプレイヤーが見れるだとか、他のプレイヤーと間接的にメッセージのやりとりができるといったゆるいものから、他のプレイヤーと行動しなければならない部分があるといったダイレクトなものまで存在している。アドベンチャーゲーム…それも本作のように世界に没入するタイプのものは、一人でじっくりプレイしたいと考える人もいるだろう。なので、オンライン要素そのものについてネガティブな印象を持つ人もいるかもしれない。

ただ、筆者がプレイした限り、ゆるめのオンライン要素について没入感の妨げには感じなかった。むしろ、セリフが極力排除されている中で読む他プレイヤーのメッセージからは、暖かさのようなポジティブな印象を感じたくらいだ。ただ、他プレイヤーとともに行動するというシチュエーションでは、なかなか他プレイヤーとマッチングせず、結局プレイすることができなかったので、この点はちょっと残念に感じてしまった。

画像をキレイだなと感じたらDL推奨!プレイしないのはもったいない作品

ソーシャル要素についてはちょっと引っかかりを覚えたものの、それも本作の魅力に比べてば小さなこと。何せ、これほど濃密な世界観を持ったアドベンチャーゲームが無料で遊べてしまうのだ。本記事に掲載しているスクリーンショットを見て「キレイだな」と感じたら、絶対に一度はプレイした方がいい。この美しい世界に没入できる楽しさを逃すのはもったいないぞ!

Sky 星を紡ぐ子どもたち

thatgamecompany

iOSアプリiOS

  • 配信日:2019年7月18日
  • 価格:基本無料

    Sky 星を紡ぐ子どもたち

    thatgamecompany

    AndroidアプリAndroid

    • 配信日:2019年12月13日
    • 価格:基本無料

      ※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

      コメントを投稿する

      この記事に関する意見や疑問などコメントを投稿してください。コメントポリシー

      関連ワード
    • アプリレビュー