スクウェア・エニックスのiOS/Android向け新作タイトル「OCTOPATH TRAVELER 大陸の覇者」をレビュー。シリーズ最新作は、スマホ化にあたって何が変わったのか?その内容を紹介する。

目次
  1. 懐かしく新しい!ゲーム的世界観とリアリティを併せ持ったビジュアル
  2. 健在な「フィールドコマンド」と快適な移動システム
  3. 最大8人構成!ブースト&ブレイクの爽快感が楽しいバトル
  4. 自己主張の少ない主人公とキャラクター性が深く描かれる三人の覇者
  5. 紛れもない「OCTOPATH TRAVELER」続編!RPGファンはプレイすべし

「OCTOPATH TRAVELER 大陸の覇者」は、Nintendo Switch向けにリリースされているRPG「OCTOPATH TRAVELER(オクトパストラベラー)」のシリーズ最新作。移植ではなく、スマートフォン向けに新たに作られており、基本利用料無料のゲームとしてリリースされている。本作のように、家庭用ゲームの最新作がスマートフォン向けにリリースされる場合、それまでとシステムが大きく変化してしまうことが少なくない。しかし、本作は「OCTOPATH TRAVELER」の持っていた魅力がスマートフォンでもそのまま楽しめるよう作られている。

懐かしく新しい!ゲーム的世界観とリアリティを併せ持ったビジュアル

Switch版「OCTOPATH TRAVELER」の特徴のひとつが、「HD-2D」と銘打たれたビジュアルだ。スーパーファミコン時代のRPGを思わせるドット絵をベースとしつつ、3DCG技術を取り入れることで、独特なテイストを実現。ドット絵からはいかにもゲーム的な懐かしさを感じる反面、3D的に表現された光と影、そしてパースなどが、リアリティを生み出している。

本作、「OCTOPATH TRAVELER 大陸の覇者」においてもこの「HD-2D」は健在。ゲーム的でありながらリアルという本作ならではの世界観を体験させてくれる。もちろん、会話シーンやイベントシーンでのみ味わえるという形ではなく、プレイヤー自らキャラクターを動かし、「HD-2D」で描かれた世界を探索することが可能だ。

健在な「フィールドコマンド」と快適な移動システム

マップを自由に探索する要素が登場する以上、「OCTOPATH TRAVELER」の特徴のひとつ「フィールドコマンド」も引き続き登場する。街の人々に話しかけることでアイテムをねだったり、バトル時の支援を依頼したりといったことが可能。テーブルトークRPGを楽しんでいるかのうような感覚を味わえる。

なお、マップの移動操作はバーチャルパッド形式ではない。本作の移動は、スワイプによる通常移動とフリックによるダッシュ、イベントポイントのタップを使った自動移動を組み合わせたもの。スワイプ操作をすると歩いて自由に移動ができ、フリックするとその方向へダッシュ移動。また、会話可能な登場人物や宝箱、移動ポイントなどをタップすれば、そのポイントまで自動的に移動してくれる。

本作はこの操作システムに合わせた独特なマップ構造になっている。方向転換が必要となる十字路や丁字路、イベントポイントを通路でつないだような作りだ。縦にも横にも自由に動ける広場的な空間が排除されている。

本作のダッシュ移動はこのマップ構造を最大限活かし、一度ダッシュするとタップするまで止まらないという仕様。このため、行きたい方向へ大まかにダッシュしておき、気になるポイントが見つかったらその場所をタップして自動移動で近づく…という形で移動できる。障害物に引っかかったり、延々画面をタッチし続けたり…ということがなく、それでいて自分で操作しているという感覚も得られる、実に理に適った操作システムだと感じた。

最大8人構成!ブースト&ブレイクの爽快感が楽しいバトル

探索からバトルへの移行は、ランダムエンカウントとシンボルエンカウントの両方が取り入れられている。基本はランダムエンカウント。マップ移動中、ザコ敵と遭遇するとバトルへ移行する。一方、マップ上にシンボルとして表示されている敵もおり、こちらは通常のザコ敵をはるかに凌ぐ実力を持っている。

バトルにおいても、「OCTOPATH TRAVELER」の特徴だった「コマンドブースト」と「ブレイク」を引継いでいる。「コマンドブースト」は、BPを使用することで攻撃を強化できるというシステム。BPはターン経過とともに蓄積していく。「ブレイク」は、敵を1ターン行動不能に追い込めるというシステム。敵の苦手な攻撃属性で攻撃すると、敵のシールドポイントが減少。シールドポイントが0になると「ブレイク」し、1ターン行動不能となる。

「コマンドブースト」を使えば、通常攻撃は連続攻撃へと強化される。シールドポイントも攻撃回数分減らせるため、敵が苦手とする属性を持つキャラクターに上手く「コマンドブースト」を使わせれば、効率的な「ブレイク」が可能だ。もしくは、敵がブレイクした際に「コマンドブースト」を使用し、一気に畳み掛けてもいい。さらには、敵が強力な攻撃を仕掛けてくる直前に「ブレイク」させる…という攻防一体の使い方も考えられる。

敵の行動を読み、「ブレイク」でダメージを抑えながら「コマンドブースト」で大ダメージを与えるという展開が上手く行くとめちゃくちゃ気持ちがイイ!アクションゲームのような爽快感が味わえる。そのために攻撃をどう組み立てるかという頭脳プレイが楽しめるのもイイ。非常に秀逸なバトルシステムだと思う。

ここまでは「OCTOPATH TRAVELER」の時点でも楽しむことができたが、本作では8人パーティ制という要素が追加されている。バトルに挑むのは、前衛/後衛4人ずつの8人パーティ。後衛は攻撃ができない代わりに、毎ターン少しずつHPとSPの回復ができる。後衛でもBPが蓄積していくため、ただ回復に使うだけでなく、「コマンドブレイク」を使った畳み掛けに利用することも可能だ。

なお、本作はバトル終了時に、HPやSPが自動的に回復するわけではない。回復するためには、宿屋や回復ポイントを利用しなければならない。なので、探索中、HPとSPの残量管理が求められる。だからこそ、前衛/後衛を使ったHP・SP回復の重要度は高い。ただ一戦一戦を戦うだけでなく、先のバトルのことも考えながら戦う…。こうした要素は、短時間でプレイに区切りがつくことの多いスマートフォン向けRPGでは珍しい。家庭用RPGが持つプレイ感だ。

自己主張の少ない主人公とキャラクター性が深く描かれる三人の覇者

探索要素やバトル要素など、本作が持っている要素はどれも家庭用RPGのスタイルに則ったもの。「OCTOPATH TRAVELER」の持っていた魅力がまったく損なわれていないのはこのためだ。ただ、本作はスマートフォン向けにリリースされた、基本利用料無料のRPGであることに間違いはない。なので、パーティーキャラクターの入手はガチャとなっている。

ガチャでキャラクターをゲットすると場合、ストーリーを無視していきなりキャラクターが加入するという形になることが多い。なので、唐突感を覚えることも少なくないのだが、本作の場合、ガチャに用いられる召喚用の指輪がストーリー上で描写され、世界観にしっかり取り込まれているため、唐突感は少ない。

また、本作は自由度の高いシナリオシステムを採用している副作用として、主人公の自己主張が少ない。主人公ならびにパーティーメンバーは、背景設定こそあれど、ゲーム中は基本的にプレイヤーの分身として無口を貫く。なので、ガチャで新たなキャラクターが参加したとしても、違和感がないのだ。

「主人公が自己主張しないんじゃ、ストーリーが面白くならないのでは?」…そう思った人もいるかもしれないが、まったく問題ない。本作でストーリーを担っているのは、3人の覇者たち。タイトルにある「大陸の覇者」だ。

作劇上、ストーリーを描くとは「作品のテーマとなる葛藤を描くこと」。たとえば、テーマが「復讐」なら、その作品には復讐心に葛藤するキャラクターが登場する。たいていの場合、葛藤するキャラクターは主人公自身が担うのだが、ドラマやマンガのような連続モノでは、敵が葛藤を担うことが多い。葛藤する敵を、主人公の目を通して描くという形式。この場合、主人公は狂言回し的な役回りとなる。本作でもこの形が採られているわけだ。

3人の覇者…「英雄タイタス」「強欲の魔女ヘルミニア」「劇作家アーギュスト」は、それぞれ異なる都市で君臨している。彼らはぞれぞれが「富」「権力」「名誉」というテーマを象徴する存在として登場。夢や欲、執着や愛といった人間性をそれぞれのストーリーで深く味わわせてくれる。

プレイヤーは「富」「権力」「名声」というテーマの中から1つを選択。選んだテーマに応じた都市からゲームをスタートする。1つのテーマしかプレイできないというわけではなく、ゲームが進めば他のテーマのシナリオ可能だ。

筆者は「名声」を選択。舞台となるのはフラットランド地方。立ちふさがるのは「劇作家アーギュスト」だ。アーギュストは芸術の都シアトポリスで芸術家として最高の名声を得ているが、その裏ではとても大っぴらにはできない、非人道的な行為を行っている。

ただ、ストーリーを追ううちにアーギュストの持つ闇の部分は、彼だけの闇じゃないことも見えてくる。アーギュストの周りには彼の名声に引き寄せられる人間達がおり、その中にはおこぼれにあずかろうとアーギュストを積極的に支えようとする人間も存在。あるいは、アーギュストの行為に疑念を抱きながらも、生活のためにやむなく従う人間もいる。つまり、アーギュストだけが闇を作り出しているわけではないということだ。

探索型のRPGとして作られている本作は、こうした闇にプレイヤー自ら切り込んでいく感覚が強い。ストーリーに直接関係するセリフも、そうでないセリフも、様々な人々のセリフがプレイヤーの中で繋がって事件の全体像を作り上げていく。主人公が自己主張しないことも手伝って、プレイヤー=主人公という感覚は非常に強い。これは家庭用RPGの醍醐味といえるもの。本作はスマホRPGとして作られているが、その感覚がバッチリ味わえるのだ。

紛れもない「OCTOPATH TRAVELER」続編!RPGファンはプレイすべし

家庭用ゲームとしてリリースされていたシリーズの最新作がリリースされると聞いて喜び、続報でそれがスマホ版と分かってガッカリ…。SNSでこうした思いを漏らすファンは決して少なくない。しかし、本作においてはファンがプレイしたとしても、ガッカリすることはないだろう。スマホRPGということでガチャ要素こそあれど、基本的には家庭用RPGとしての文法に則って作られており、紛れもなく「OCTOPATH TRAVELER」の続編だと言える作品だ。シリーズのファンのみならず、RPGファンは是非プレイして欲しい。

OCTOPATH TRAVELER 大陸の覇者

スクウェア・エニックス

iOSアプリiOS

  • 配信日:2020年10月28日
  • 価格:基本無料

    OCTOPATH TRAVELER 大陸の覇者

    スクウェア・エニックス

    AndroidアプリAndroid

    • 配信日:2020年10月28日
    • 価格:基本無料

      ※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

      コメントを投稿する

      この記事に関する意見や疑問などコメントを投稿してください。コメントポリシー

      関連ワード
    • アプリレビュー