スクウェア・エニックスのiOS/Android向け三国志シミュレーション「RANBU 三国志乱舞」をレビュー。絢爛豪華な美将たちが集うビジュアルと本格的な戦略性という、本作の魅力について紹介する。
「RANBU 三国志乱舞」は、三国時代を舞台としたシミュレーションゲーム。三国志もののシミュレーションというと、これまでにも様々な作品がリリースされている。その中で本作は、武将の美しさが特徴。諸葛亮や劉備、董卓に呂布など、多くの武将が美少女化&イケメン化!バトル中のエフェクトなどのビジュアルもド派手で美しいが、それ以上にやはり武将のキャラクターデザインが見どころと言えるだろう。
ガチの「三国志」ファンの中には「これが三国志?」と思う人もいるかもしれない。そんな反応を予想してか本作、ゲーム開始直後に、美少女化された羅貫中が登場する。羅貫中とは、現代における「三国志」もののベースになることが多い「三国志演義」を記した人物だ。
ご存知の通り、「三国志」は実際の歴史がベース。たとえば、曹操が治めていた「魏」の国は、日本史で出てくる「魏志倭人伝」の「魏」だ。…というか、「魏志倭人伝」自体が、「三国志」という歴史書の一部。では「三国志演義」とは何かというと、歴史書である「三国志」をベースに、一般大衆に向けて語られた娯楽物語。そもそも「演義」とは一般大衆に向けて語られた物語のことで、他にもたとえば「封神演義」などが存在してる。このため、「三国志演義」は、基本的な流れこそ「三国志」をベースとしているが、物語を盛り上げるために様々な脚色が行っているわけだ。
こうした経緯を考えると、本作も「演義」ジャンルのひとつといえないだろうか?「三国志演義」をベースにした、現代版「演義」。だからこそ最初に美少女化した羅漢中が登場するのだろう…と、筆者は考えている。…いや、もしかすると考えすぎかもしれないが。
本作でのプレイヤーの立場は、一国を治める君主だ。プレイヤーの下に、本来の所属国家は関係なく、様々な「三国志」の武将が集うことになる。基本的に武将はガチャで獲得していくことになるが、最初の一体だけ、プレイヤーが選択可能。
美少女化した武将たちは皆魅力的で、誰を選ぶかめちゃくちゃ悩む!原点である「三国志」の思い入れもあるし、本作でのビジュアルにも惹かれる。ちなみに筆者は「諸葛亮」にするか「関羽」にするかで数分悩んだ挙句、「諸葛亮」をセレクト。ちなみに、美少女化されているのは「全員というわけではない」と書いたが、最初に選択できるキャラクターの中でいうと、曹操は美少女化されていない。ただビジュアル的にはカッコいいので、十分美将といえるだろう。
ここまで本作の設定とビジュアル面についてしか触れてこなかったので、人によっては「恋愛ゲーム」や「ノベルゲーム」と思ったかもしれない。だが本作はシミュレーションゲーム。しかもガチの戦略性を持っている。なので実は、ゲーム開始時のキャラ選択でも、ビジュアルのみならず、ちゃんと能力値を確認したイイ。
本作のゲームの流れは、内政と戦闘から成り立っている。内政では、本拠地の施設拡張を行っていく。施設の拡張を行うことで、武将の育成がより効率的に行えるようになり、戦闘が有利になっていくという仕組みだ。施設の拡張は、スマートフォン向けの一般的な戦略シミュレーションゲームのシステムを踏襲しており、拡張したい施設を選んでアップグレードしていく形。アップグレードには資源と、待ち時間が必要となる。
ゲーム開始時にアンロックされている戦闘は、「出陣」というソロ用のメニュー。マップ上でステージを選択し、ゲームを進めていく。ステージにはムービーによってストーリーを味わうステージと、バトルステージとが存在。ストーリーは、反董卓連合のくだりから、「三国志演義」のシナリオに基づいて進行していく。
ガチの戦略性を持っていると書いたバトルは、リアルタイムストラテジー(RTS)的なシステム。武将5人を編成してバトルに挑み、敵武将を全滅させれば勝利となる。武将たちは、基本的にオートで動いてくれるが、攻撃対象や移動先をプレイヤーが指定することも可能。また、スキルの発動に関してはプレイヤーが指示する形だ。
「味方がオートで動き、プレイヤーはスキルの指示だけする」というシステムは、最近のスマホRPGでよく見られるシステムでもある。そして、たいていのスマホRPGは、誰でも先に進めるよう、オートに任せっきりの放置プレイでも問題のない難易度に調整している。しかし本作は、そうではない。攻撃対象や移動先をキッチリ選び、適切なタイミングで的確なスキルを使わないと敗北するバランスだ。つまり、プレイヤーは頭脳プレイを求められる。
戦略の基本となるのは、兵種の相性だ。武将には歩兵、騎兵、弓兵、投石機という兵科が設定されており、それぞれに相性が設定されている。歩兵は騎兵に強く、弓兵は歩兵に強く、騎兵は弓兵に強い。投石機は、他の全兵種と互角という関係だ。
この相性を踏まえた上で攻撃対象を選ぶ必要がある…のだけど、それだけでは足りない。なぜなら、位置関係が関わってくるからだ。たとえば、弓兵を倒すため歩兵を移動させた場合、途中に騎兵がいたら、弓兵を倒す前に歩兵が倒されてしまう。また、スキルにも効果範囲が設定されているため、スキルを使用するために武将の位置を調整しなければならないことも多い。
たとえば、筆者の選んだ「諸葛亮」のスキル「明鏡止水」は、選択範囲内の敵を一定確率で気絶させた上で損害を与えるというもの。なので、範囲内になるべく多くの敵を入れた方がいい。そのためには、「諸葛亮」を敵の集う前線へ押し上げることが重要だ。
となると、戦闘開始時点で「諸葛亮」は後衛の敵をめがけて進軍。同時に他の武将には、敵中央に布陣する敵を攻撃するよう指示。こうすると、敵が団子状態になって効率よくスキルの餌食になってくれる!こんな風に、どの武将をどんなタイミングでどこへ移動させるか…という戦略が重要になるのだ。非常に歯ごたえがあっておもしろい。
とはいえ、ステージをクリアするだけなら、そこまで細かく指示せずとも問題ない。しかし、ステージ毎に設定されたミッションを達成しようとなると、途端に難易度がアップするという格好だ。この辺りのバランスも、個人的には好感触。正直、このゲームシステムで、ビジュアルがリアルテイストだったら相当硬派なゲームに仕上がっていただろう。
「出陣」以外には、ギルドVSギルド形式の「乱舞戦」、プレイヤーVSプレイヤー形式の「一騎討ち」といったモードが用意されている。いずれも、ゲーム進行に伴いアンロックされるため、最初から遊べるわけではない。注目したいのは、ソロとマルチプレイモードが完全に分けられているという点だろう。MMO戦略シミュレーションのようにマルチプレイが前提のつくりだと、ゲーム内のある段階からソロでは立ち行かなくなってしまう。しかし本作はソロモードが独立しているため、ソロプレイをじっくり楽しみたいというプレイヤーでも、自分のペースでプレイできる。
そのビジュアルから、スマホRPGやカードバトル系ゲームの延長線上にある作品のようにも見える本作。しかしプレイすると、本格的な戦略性によって、大いに唸らせてくれる。なので、硬派なテイストの三国志ものが好きという人や、RTSファンも是非一度プレイしてみてほしい。もちろん、本作のキャラクターに惹かれたという人も、十分楽しめるだろう。