KEMCOからリリースされたiOS/Android向けアプリ「エルピシアの魔剣少女」をレビュー。活き活きと描かれたキャラクター達や感情を揺さぶるストーリーなど、本作の魅力を紹介する。
「エルピシアの魔剣少女」はKEMCOが得意とする、2Dマップ探索とターン制バトルシステムを備えたファンタジーRPG。16bit世代のRPGを連想させる古き良きJRPGスタイルを踏襲しながらも、現代的なシステムも数多く盛り込まれ、スマートフォンで快適にプレイできるような調整されている点が特徴だ。
弱点属性を突く戦略性と大ダメージのスリルが味わえる戦闘
ゲームは、2Dマップの探索とバトルを繰り返すことで進んでいく。概ね、村や街で情報を集め、フィールドを歩いてダンジョンへ向かい、ダンジョンでボスを倒す…という形だ。フィールドやダンジョンではランダムエンカウント形式でモンスターと遭遇。モンスターが出現するとバトルシーンへと切り替わる。
バトルは、味方のキャラクターのターンが回ってきたら行動コマンドを選ぶというターン制コマンド選択式。ターンの回ってくる順番は画面上部のアクティブバー上に表示されており、各キャラクターのスピードによって順番が変わる。たとえば、スキルを使ったり、スピードへのバフ/デバフを受けることで順番が早くなったり、遅くなったりするわけだ。
本作のバトルに戦略性を与えているのがスキルの存在だ。敵の属性に対して有利な属性のスキルで攻撃すると、ダメージがアップする上、追加攻撃が発生。この時、ターゲットとなる敵がスキル攻撃の時点で倒れた場合、自動的に別の敵を追加攻撃する。この仕様を上手く使うことで、少ない攻撃回数で効率よく敵を倒すことが可能だ。
ではガンガンスキルを使えばいいじゃないか…と思うかもしれないが、スキルの使用にはMPが必要だ。バトル終了時、HPは自動的に回復するものの、MPは回復しない。このため、スキルを使用すべきかどうか、MPの残量に応じて判断する必要がある。もっとも、レベルアップ時にMPが回復してくれるため、そこまでシビアな判断が求められるわけではない。筆者には、ほどよい制限だと感じられた。
ちなみに、バトル終了時にHPが自動回復するという仕様のためか、ザコモンスターであっても攻撃力がなかなか高い。レベルにもよるが、回復なしで攻撃を3回くらったら死ぬ…という印象だ。このため、ボス戦じゃなくとも、死ぬかもしれないというスリルを味わえる。スキルで弱点属性を突く戦略性と、大ダメージのスリルが、本作のバトルの魅力といえるだろう。
活き活きとした仲間たちと共に魔剣を巡る冒険の旅
続いては本作のストーリーに目を向けたい。タイトルにある通り、本作のキーとなる存在が「魔剣」。本作における「魔剣」とは、元々人間だったが、異形の存在によって剣へと変えられてしまった存在だ。
本作の主人公は、魔道具の修理で身を立てる青年・アルド。彼はギルドから依頼を受け、タラッサ村へと向かう。依頼内容は、魔道具修理2件という、簡単な仕事…のはずだった。しかし、仕事をこなす中で村が魔物が襲撃されてしまう。さらに、村長とその息子が魔剣に変えられてしまうという事件まで発生。
この事件に巻き込まれ、アルドによって家を破壊されてしまうことになるのが、もう一人の主人公・エリス。村はずれの家で天涯孤独の人生を送ってきた少女だ。エリスはアルドに対し、家を破壊した責任を取るよう要求。これがきっかけとなり、アルドとエリス、2人の旅が始まる。
最初は非常に穏やかな展開に見えて、トラブルがトラブルを呼び、事態はどんどん大きなものになっていく。この展開は見事なもので、ぐいぐい引き込まれてしまった。2人の旅が始まって以降も予想外の出来事が次々起こり、飽きさせない。
また、キャラクター同士の掛け合いも本作の魅力だろう。ビジネスライクで非常にドライな性格のアルドと、自分の感情をガンガンぶつけてくるエリスの関係は、典型的な凸凹コンビ。この噛み合わなさが、ユーモラスな会話に繋がっている。
さらに、3人目の仲間として登場する旅人・ネイトは、バリバリの人情派で、アルドとは180°正反対。もちろん、会話は噛み合わない。そして、4人目の仲間となるアリエルも、自分に自信がない性格ということで、よくこの4人が一緒に旅を続けられるなあといったパーティー構成だ。
しかし、ダンジョン突入時やボス戦の前など、「ここぞ!」という場面では不思議と4人の行動が噛み合う。これはアツい。さらに、本作のストーリーは、感情の刺激が上手い。とりわけベリンダの街で戦うことになるボスキャラクターのエピソードについては、絶妙に胸糞悪くさせてもらった。しかし、だからこそ、アルドたちの感情とシンクロし、絶妙にアツいボス戦を楽しむことができたのだ。ひとつひとつのイベントできちんとスカッとさせてくれるし、ムカッとさせてくれるし、しんみりさせてくれる。だから、感情的な満足感が高い。
テンポのよさと快適さを実現する様々な調整
これまでKEMCOのRPGをプレイしたことがないと、マップ探索のあるシステムにめんどくささを感じる人もいるかもしれない。スマートフォン向けのRPGでは、マップ探索をなくし、ストーリーとバトルだけで構成したものが少なくないからだ。しかし、本作のプレイにめんどくささを感じることはないだろう。本作はテンポよく、快適にプレイできるよう、実に細かく調整されている。
非常に細かい点だが、たとえば、バトル時のコマンドの表示位置。本作は通常攻撃を行う「攻撃」コマンドが一番下に表示されている。その上が「スキル」コマンドだ。先に触れた通り、本作のバトルにおいて「スキル」コマンドは要となるコマンドだが、やはり「攻撃」コマンドの方が使用頻度は高い。そんな「攻撃」コマンドが一番下に表示されているため、親指の移動が最小限に抑えられている。通常攻撃を繰り返すだけなら、まったく移動することなく、ただタップしているだけでOKだ。これはとても地味に思えるが、快適さという点では重要な部分。こうした部分まで丁寧に調整されているため、テンポよく、快適にプレイできるのだ。
最後にまとめると、これまでのKEMUCO製RPGの例にもれず、本作も丁寧に作られた良作RPGだ。バディものなど、凸凹コンビによる軽妙な会話劇が好きという人は、きっと満足できるだろう。もちろん、これまでのKEMUCO製RPGが好きという人も、安心してプレイできる。RPGファンであればプレイする価値のある一作だ。
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