2021年2月13日に行われた、「FINAL FANTASY VII REMAKE Orchestra World Tour」東京公演オンライン配信の模様をレポートする。

2021年2月12~13日に開催が予定された「ファイナルファンタジーVII リメイク」(以下、「FFVIIリメイク」)シリーズのオーケストラコンサート「FINAL FANTASY VII REMAKE Orchestra World Tour」の東京公演は、新型コロナウイルス感染症の影響で、無観客配信となった。

唐突であるが、実は筆者はこのコンサートの直前に、身体にメスを入れなければならない事態になってしまった。それでもこのコンサートには絶対に行くのだ、とチケットも確保していたのだが、残念ながら筆者の体力は現状まだ会場に訪れて数時間のコンサートを見て帰宅できる、という状態にはない。

「オーケストラは、生で聴いてこそ」――だが、配信となったことで、少なからず救われたファンがここにいる。もしかしたら、この記事を読んでいる読者の中にも、筆者と似たような境遇の方がいるかもしれない。

「FFVIIリメイク」というゲームと「無観客配信」に救われた一人のファン及び書き手として、今回のコンサートの魅力を少しでもお伝えできればと思う。

なお本稿では、記事に「FFVIIリメイク」のネタバレを含むので、注意してほしい。また、この放送は3月14日23:59まで視聴可能のため(購入期限は3月7日まで)、興味を持った人はぜひ配信を見てほしい。

ニコニコ生放送配信ページ(有料:4,500ニコニコポイント、プレミアム会員は4,000ポイント)
https://live2.nicovideo.jp/watch/lv330137656
※販売期間:2021年3月7日(日)23時59分まで

小ネタを紹介するコーナーも。「FFVIIリメイク」で、オリジナル版から最もメロディが多く引用されている曲は……?

開演の前には、「FFVII」の小ネタを紹介するVTRが先駆けて放送。蜜蜂の館で受付の男役だった声優のランズベリー・アーサーさんが、司会を務めた。

VTRには、本作でミュージックスーパーバイザーを務めた河盛慶次氏、サウンドディレクターを務めた伊勢誠氏、プロデューサーの北瀬佳範氏、Co,ディレクターの鳥山求氏、サウンドを担当した浜渦正志氏や鈴木光人氏らが登場し、本作の楽曲にまつわる様々な秘話を語ったので、その一部を紹介しよう。

「FFVIIリメイク」で最初に作られた楽曲は、四番街プレート内部などの戦闘曲だった「タイトロープ」だったという。トレーラーに合わせての新曲で作成したが、この曲によって本作の楽曲の方向性が見えてきて、あえて楽曲を前面に押し出していくことも決まったそうだ。だが、オリジナルの楽曲と新曲との変更点では、悩むことも多かったとか。

また、オリジナル版の楽曲を担当した植松伸夫氏は、本作のテーマソングとなる「Hollow」を手掛けているが、実はオープニングの楽曲制作にも関わっており、オープニング楽曲の一部に「片翼の天使」のコーラスが入っているのは、植松氏のアイディアだったそう。なお、このオープニング楽曲は、もちろん今回のコンサートでも演奏されている。

他にも、浜渦氏はオリジナル版作成当時、まだスクウェアに入社したばかりで、「片翼の天使」のコーラス隊のひとりとして参加した秘話を明かしたり、鈴木氏は「STAND UP」の海外レコーディング秘話を語った。

そして、本作の楽曲の中で一番メロディが引用されている曲は、「神羅のテーマ」だという。神羅の出てくるシーンが多かったことから、自然と引用されることが多くなったそうだが、その数はなんと15曲以上。ぜひ改めてオリジナル・サウンドトラックや、サウンドトラックプラスをチェックしてみてほしい。

コンサートに先駆けて、2020年10月に「FFVIIリメイク」のオーケストラアレンジアルバムが発売されていたため、こちらを購入していたファンならば、今回のコンサートはこのアルバムを中心に演奏されるという予想がついていたことだろう。世界に冠たるオーケストラ指揮者、アーニー・ロス氏の指揮によって、「FFVIIリメイク」の世界が更に壮大なスケールでのアレンジとなっているアルバムだが、今回のコンサートではアルバムに収録されていない楽曲が多数演奏されている点に、注目したい。

FINAL FANTASY VII REMAKE Orchestral Arrangement Album
https://www.jp.square-enix.com/music/sem/page/FF7R/orchestracd/

「FFVII」の原点から、リメイクに至るまでを網羅したコンサート

カメラに映し出されたのは、無人の東京国際フォーラム。5000人を収容するホールが、シンとした静寂に包まれていた。

静謐を破るように、奏者らと指揮者がステージの上を歩く音が、コツコツと響く。普段ならば多くの観客に吸い込まれて消える音が、全て聞こえてくる。チューニングの音に、きゅっと心が引き締まり、姿勢が自然と正される感じがした。

コンサートのオープニングを飾るのは、「プレリュード ―再会―」。ハープの旋律から美しく始まるのは、24年前当時のオリジナル版を彷彿させる。ステージ中央に配置されたスクリーンには、1997年発売当時の映像が流れている。これは1997年から2021年へ、その橋渡しとなる曲なのだ。

続いては、「オープニングメドレー」。不穏な唸りのようなコーラスは、徐々に形を為して「片翼の天使」のフレーズを刻む。エアリスを思わせる神秘的な女性のコーラスを、セフィロスのようなどこか不気味とも取れる男性のコーラスが追い――そしてその先はエアリスがクローズアップされた、オリジナル版のプレイヤーにも「FFVIIリメイク」のプレイヤーにも馴染み深い映像へと繋がってゆく。魔晄炉が映し出され神羅ビルへと流れていくシーンは、背筋がぞわりとする。

そして、そこからタイトルロゴが入るまでの、一連の流れ。筆者は24年経った今でも、「FFVII」のオープニングに勝る衝撃を受けたゲームのオープニングは、他にない。そしてそれを「FFVIIリメイク」にて新しい形で見せてくれたことには、心からの感謝を覚える。

もちろんこの後に続くのは、「爆破ミッション」。ピアノとティンパニの圧を、画面越しですら感じる。言うなれば、これは“ミッション・インポッシブル”――緊迫感のある演奏。

――「行くぞ、新入り!」 バレットの声が聴こえた。

ここで北瀬氏のVTRが上映された。今回は直接ファンに会えず残念だと語りつつも、ファンの熱いサポートのおかげで今回の配信公演が出来ることを嬉しく思うとコメント。また、「FFVIIリメイク」はシーンに合わせて音楽がインタラクティブに変わっていくことが特徴であるため、それを今回のコンサートでどのように再現できるかに注目してほしいことや、オーケストラの生演奏によって更に新しくなった本作の音楽を楽しんでほしい、と語った。

3曲目はゲームの時系列通り、「壱番魔晄炉」。オーケストラアレンジアルバムにはない楽曲のため、早速とてもお得感を感じられたのが、嬉しい。魔晄炉の動力のようなうねりを感じさせるのは、チェロなどの低音楽器。オーケストラの重厚感と、非常にマッチしている楽曲のひとつだ。

そして曲は、壱番魔晄炉で発生するバトル曲「壱番魔晄炉 Battle Edit」へと派生してゆく。この曲はバレットが正式にパーティに加入し、展開的にも盛り上がるシーンでのBGMにもなっているため、印象深い。

「星の悲鳴が聞こえねえか、クラウドさんよ!」
「あんたには聞こえるのか」
「おうよ!」
「医者に行け」

初めてこのシーンを見たのは、メディア向け体験会でのことだった。同行していた担当編集とふたりで、声を出して笑ったのを覚えている。

そして、続くは「教会に咲く花」。エアリスとの出会いを彩るこの曲では、ハープの音色が優しく視聴者を包み込んだ。そこにピアノの静かな調べが入り、「エアリスのテーマ」のフレーズが重なる。徐々に「エアリスのテーマ」のフレーズが強くなり、弦楽器らも加わって、重くも美しい「エアリスのテーマ」のフレーズを響かせた。

スクリーンに映し出されるシーンとも相まって、エアリスと2人で伍番街スラムまでを進む道程の風景が、脳裏を過ぎる。オリジナル版の思い出が強い曲で、この24年間、オリジナル版を30回以上プレイした筆者でも、既に自分の脳内の映像が「FFVIIリメイク」に大分書き換えられていることに、自分のことながら驚いた。これが「FFVIIリメイク」という作品が持つ、力なのだろう。

「でもね 好きにならないで」

5曲目は「タークスのテーマ」。こちらもオーケストラアレンジアルバムには収録されていない楽曲で、しかも原曲から大きくアレンジがされており、今回筆者が感動したうちの一曲だ。トロンボーンなどの金管楽器が、大活躍。短いアレンジながら、本作に登場した3名のタークスのイメージを更に膨らませてくれるような、強烈感のある演奏だった。

スクリーンに流れるレノやルードとの熾烈な戦いを思い出しながら、最後はツォンの登場のシーンと共に、余韻を断ち切るように演奏が締めくくられたのも素晴らしかった。

「どんな仕事でも楽しむのがプロフェッショナルだぞ、と」

次は、小ネタ紹介で思わぬ逸話も出てきた「タイトロープ」。オリジナル・サウンドトラックの「スラムの太陽」~「タイトロープ」を、一曲にまとめたようなアレンジとなっている。

本作の楽曲の方向性を決めたという楽曲だけあって、原曲のドラマチックな曲調を更に強調するかのような激しいオーケストラアレンジ。もちろん、オーケストラでもシームレスにバトルシーンへと切り替わる。「FFVIIリメイク」での完全新曲とあって、この曲では浮かぶ思い出も全て「FFVIIリメイク」のシーンばかり。四番街プレート下部にはかなり迷わされたのが印象深い。

「地道に探すしかないね」
「あのマテリアの入手経路もな」

この、見えているのに取れないマテリアに苦戦し、激がつくほど方向音痴の筆者は、1周目では諦めてスルーしてしまった……(2周目で回収したが、3周目以降は別のアイテムに切り替わってしまい、マテリアの簡単増殖は叶わないのだった)。

そして、ここで鈴木氏のVTRが上映。鈴木氏は本作では、「陥没道路」や「忠犬スタンプ」など、主に新曲の部分をメインに担当している。そんな鈴木氏の担当楽曲で今回演奏されるのは、蜜蜂の館でのアニヤンとのダンスシーンで使われる「STAND UP」だ。鈴木氏は「STAND UP」レコーディング当時の制作話などを明かし、オーケストラアレンジによって「STAND UP」がどのような変化を遂げたのかなどを楽しみにしてほしい、と語った。

VTRが終わった後に来るのは、当然「STAND UP」。この楽曲は、今回のオーケストラコンサートの中で、最もダークホースだった。あらかじめセットリストは公式HPで公開されていたため演奏されることは知っていたのだが、どのようなアレンジになるのか全く想像がつかなかったのだ。

演奏がいざ始まり――筆者はもちろんのこと、視聴者も全員のっけから度肝を抜かれたはずだ。演者の多くは、フィンガースナップ。ボーカルは、コーラス隊がソウルフルな歌声を響かせる。金管を中心とした、ダンサンブルなジャズアレンジに。……と、これだけで言えば、原曲とあまり変わりなく聞こえるかもしれない。だが、これはオーケストラならではのジャズであり、ゲーム音楽のオーケストラコンサートにおける革命とも言えるアレンジに、興奮が抑えられなかった。会場だったならば、間違いなく大きな手拍子が沸き起こっていただろう。

「いいね キュンとしたよ」

「FFVIIリメイク」をプレイした人ならば、この楽曲で泣く要素がないのは知っているはずだ。だが、あまりに熱い演奏に、感動で涙が出そうになった。このコンサートを、配信という形でも上演してもらえて、本当に良かった。心の中で、ひたすらスタンディングオベーションを送り続けることしか出来ないのが、もどかしい。

ファンの心を一気に湧き躍らせた後、続いたのは「消される言葉」。クラウドの記憶が混濁した時などに流れる曲だ。原曲の不穏な雰囲気をゆるゆると漂わせてくる演奏に、24年前のシーンと「FFVIIリメイク」でのシーンが、重なり合う。

「この星が死のうとしている」

クラウドの葛藤を描いたような曲の後に演奏されたのは、「ティファのテーマ ―セブンスヘブン―」。安らぎと共に、「ただいま」という気持ちになれる一曲だ。”癒し”と”尊い”は必ずしも重なるものではないが、「ティファのテーマ」はそのどちらも兼ね備えた曲だと、しみじみ感じる。

こんなことを書くと怒られるかもしれないが、実は筆者は「FFVIIリメイク」が発売されるまでの23年間、ティファというキャラクターにはあまり愛着を持てなかった。だが、「FFVIIリメイク」の製品版のプレイレビューを書くために編集部にひたすら篭り続けてプレイをしていた時、一番衝撃を受け、23年も経って筆者に大きな心の変化を与えたキャラクターが、ティファだった。「FFVIIリメイク」がなければ、筆者は今も「ティファのテーマ」に“癒し”と“尊さ”の二つを、同時に覚えることはなかったかもしれない。ありがとう、「FFVIIリメイク」。改めて、その言葉を口にしたくなった。

「意外だな クラウド こんなことするんだ」

第一部の最後を飾ったのは、「闘う者達 ―バトルメドレー―」。これまでにもシームレスでバトル楽曲に切り替わるシーンでのバトル曲の演奏はあったものの、「FFVII」ファンにとって純粋なバトル曲といえば、やはり「闘う者達」であり、この曲をなしには語れない。

「FFVIIリメイク」には様々な形で「闘う者達」のアレンジが組み込まれた楽曲があるため、今回はまさに「闘う者達 ―バトルメドレー―」の名の通り、様々なシーンの「闘う者達」のアレンジが演奏された。木琴の音が小気味良く響き、コーラスも入り、非常に豪華で、聴いているファンの心を熱く滾らせる、そんな演奏だった。

「限界を超える!」

燃えるバトルの最後はもちろん、「勝利のファンファーレ」。画面の前で「ブラボー!」の拍手を鳴らし続けたところで、第一部は幕を下ろした。

新アレンジもまだまだ登場、ここからが運命の分岐点――

第二部は、「不安な心」からのスタート。この楽曲もオーケストラアレンジアルバムには収録されていない楽曲。オリジナル版のファンからは、ニブルヘイムでの印象が強いだろう。

「綺麗……」と思わず呟きたくなるような、静かで、けれど重厚な鉄琴やベル、ピアノの神秘的な音に包まれる。低音が効いたアレンジは、オーケストラならではだ。

12曲目は、これも今回初めて公開となる、「急げ!」。七番街を救うために、支柱を登る場面だ。「急がなければ」とこちらの気持ちを焦らせつつ、緊迫感の漂うメロディを、金管楽器とティンパニが、熱く表現。短いながら、迫力のある演奏だった。

そしてここでVTRにて、指揮者のアーニー・ロス氏が登場した。彼は「FFVIIリメイク」のオーケストラアレンジアルバムで指揮を執ったのはもちろんのこと、長い間「FF」シリーズのオーケストラコンサート「Distant Worlds: music from FINAL FANTASY」(以下、「Distant Worlds」)でも、100以上の公演で指揮を振り続けてきた人物だ。

アーニー・ロス氏は、コロナ禍で日本のファンに直接会えずにとても残念でありながらも、こうしてコンサートを披露することが出来て嬉しく思うこと、そして歴代の「Distant Worlds」でも「FFVII」の楽曲はいずれも人気が高いことなどを語った。

新アレンジのお披露目が続く中で、更に新アレンジとして登場したのは、「ジェシーのテーマ」。「FFVIIリメイク」で一気に人気を上昇させたジェシーの登場には、ワッと心が盛り上がる。

ヴァイオリンのソロが際立つ箇所があったかと思えば、ピアノでしっとりと聴かせる場面、フルートの優しい音色が響く場面もあり、日頃は男たちの中で勇ましく振るっていながらも、実は女性らしさを持ったジェシーというキャラクターが窺えるアレンジ。この旋律に乗せてしんみりとした顔をしながらも、その直後には「なんつって!」と笑顔を見せるジェシーの姿が、自然と浮かんできた。

「行くぜ 野郎ども!」

14曲目は、「神羅のテーマ」。先程の小ネタ招待のコーナーでも挙げられていたように、実は「FFVIIリメイク」の中でも最も原曲からのアレンジが多い曲だ。

この曲も、驚きの仕掛けがあった。なんと、鎖を楽器として鳴らしていたのだ。この曲でスネアドラムと共に鳴っている、独特の「しゃらん、しゃらん」という音が、まさにその鎖で鳴らしている部分で、どうやら鎖を金属の板のようなものの上に落とすことで、あの音を再現しているようだった。

配信という形であったからこそ、鎖を使って鳴らす音にすぐ気が付くことが出来た上に、本来ならなかなか見えない演者の手元をしっかりと観察することが出来たのは、感謝に堪えない。

これを会場で見ていたら、もしも中央のスクリーンにその画が映し出されても、すぐに気付けただろうか? 何かを鳴らしているところまではわかっても、鎖だったとは気付けなかったかもしれない。

オーケストラアレンジアルバムでも、やはり鎖が使われているのだろうか……。アルバムを聴き直しても筆者の耳ではよくわからなかったが、持っている人は改めて聴き直してほしい。もちろん鎖の驚愕だけではなく、オーケストラならではのアレンジメロディも必聴。

「大事な古代種だ。壊さないように 最大限の注意は払う」
「拷問なら私にまかせて」
「戦場仕込みでよければ 俺も手伝おう」
「肉体よりも 精神的に痛めつけるやり方が 私は好きでね」

神羅という場所で繰り広げられるドラマや陰謀に、思いを馳せる。

15曲目は「ハンドレットガンナー」だが、「更に闘う者達」のアレンジと言ったほうが解りやすいだろう。「ハンドレットガンナー」は「FFVIIリメイク」の各所で使用されている「更に闘う者達」のアレンジのなかでも、最もオーケストラアレンジに近いものとなっている。「闘う者達」と並んで、「FFVII」といえばやはりこの曲、というファンも多いはずだ。

歴代の「FF」シリーズの中でも屈指の人気を誇るボス曲のひとつとあって、アレンジも気合いの入り方が違う。パワー溢れるティンパニに、金管楽器たち。そうだ、これぞバトル曲だ、と存分に感じさせてくれる。途中からBPMが上がり、更に格好良さを増して、聴いている我々の気持ちをぐんぐんと持ち上げていく。……と共に、HARDの途中であまりの難しさに挫折していたことも思い出した。改めて、「頑張ろう」と自分に気合いをいれることができた、そんな一曲だった。

続いては、セフィロスの登場時に流れる「星に選ばれし者 ―運命の叫び―」。こちらも今回のコンサートが、初お披露目となる。そうか、いよいよセフィロスの曲がかかるところまで来たのか……、と寂しい気持ちが覗いた。

オリジナル・サウンドトラックの収録バージョンと大きく異なるのは、重く響くコーラスが入っていること。また、途中で「片翼の天使」や「オープニング」のフレーズが挟まれたのには、筆者はもちろんのこと、驚いたファンも多いはずだ。そしてラストの方には「FFVIIメインテーマ」のフレーズまで盛り込まれた、豪華でありながらも絶望の塊のような音には、震えが走った。

「そこから先は、まだ存在していない」

ここでVTRにて、浜渦氏が登場。先程演奏された「ジェシーのテーマ」については最も気軽に作った小さな編成の曲だったため、オーケストラでのアレンジとして生まれ変わったことへの喜びや、次に演奏される「運命の番人 ―特異―」について、とても超越した敵と戦うということで、明るい要素をいれたりテンポを段々速くしたりと音楽的にも超越した内容にしたので、オーケストラでの演奏にマッチした曲になっているのでは、と語った。

浜渦氏の紹介通り、次に演奏されたのはフィーラー戦の曲となる「運命の番人 ―特異―」。スタッカート風のピアノの音使いが特徴的な曲で、いわゆる”浜渦節”を感じられる一曲だ。

大長編なバトル曲とあって、低音をじわじわと響かせながら始まった演奏は、流れるようなピアノの音や、耳触りの良い和音と相まって、聴いているファンたちを新しい世界へと導いてくれる。リズムが徐々に速くなり、全ての楽器の音が高まっていくと、これぞまさに運命の分岐点に相応しい楽曲なのだという、きりりとした緊張感を覚えた。

果たして、運命は変わるのだろうか。フィーラーとの戦いという、オリジナルにはない展開を見せた「FFVIIリメイク」は、どのような道を辿るのだろうか。この曲を聴きながら、誰しもが続編に思いを馳せたはずだ。

「終末の7秒前」

この先に、光はあるのだろうか。

そして、最後にVTRで登場したのは、「FFVII」楽曲生みの親である、植松伸夫氏。植松氏は、今回担当したテーマ曲の「Hollow」について、これまで作ってきた「FF」系のメロディアスなバラードとは違ってシャウト系の曲となっているので、そこをぜひ改めて聴いてほしいと語った。

植松氏の紹介通り、次は「Hollow」。ボーカルを担当したYoshさんも、ステージに登壇した。オリジナルの楽曲はアコースティックギターを中心にした曲となっているが、今回はもちろんオーケストラバージョンでの「Hollow」。クラウドの揺らぐ心を映し出すようなこのテーマ曲は、オーケストラというある意味“完成”された編成によって、アコースティックバージョンとは一味も二味も違う味わいの楽曲となった。

そしてオーケストラに負けない魂の叫び――ソウルフルな歌声を聴かせてくれたYoshさんのシャウトは、心に深く突き刺さった。これは、クラウドの心の叫びであり、そしてクラウド以外の――ザックスやエアリスの、本作の登場人物全ての叫びなのかもしれない。そう感じさせるシャウトは、涙なしには聴けない。

「夢を抱きしめろ。そしてどんな時でも、ソルジャーの誇りは手放すな」

心の中で割れんばかりの拍手を送り、残す曲は最後の一曲――。第二部の最後を飾ったのは、「FFVII メインテーマ」だった。

フルートが綺麗に響き、それを支えるのはハープや弦楽器たち。「FFVII メインテーマ」は派手なアレンジよりも、オリジナル版での楽曲に近いものとなっており、この演奏をバックにスクリーンにはスタッフロールが流れてゆく。

24年前に初めてミッドガルの外に出てこの曲を聴いた時、不安感を覚えるような旋律からの、雄大な朝焼けの景色を目の前に広げられたような流れに、感動の涙が止まらなかった。

押し寄せるオーケストラの音の群れたちは、私たちを次の物語に誘おうとしているかのようだ。この曲は今でもやはり、フィールドBGMのままなのだから。

アンコールの拍手を直接送ることは残念ながら叶わなかったが、それでも視聴者の終わらない拍手とアンコールのコメントに、一度ステージを降りた指揮者が再び指揮台へと戻る。

ここまで来て――アンコールはもちろん“あの曲”だろう、と誰もが確信を持っていた中、演奏されたのは「エアリスのテーマ」。スクリーンの画像で感情を溢れさせる演出は、もうない。そこには教会の中の花の絵だけがずっと表示され、その絵をバックに静かに、静かに、「エアリスのテーマ」の旋律が流れてゆく。

「FF」シリーズのコンサートでほぼ必ずと言っていいほど演奏される曲だけに、普段ならば「たまには他の曲も聴きたい」と思わせられるところもあるのだが、今回はあくまで「FFVIIリメイク」のコンサートであり、それならばやはり「エアリスのテーマ」を抜くわけにはいかない。

こちらもメインテーマ同様ほぼオリジナルの楽曲の通りで、だからこそ改めて「いい曲だな」と感じられる。そして少しだけ、「エアリスはやはり卑怯だ」と思ってしまった。この「エアリスのテーマ」で思い出すシーンが、あまりに多すぎる。それは24年間積み上げられたオリジナル版のシーンでもあり、「FFVIIリメイク」でのシーンもある。

「今は迷子みたい 動くほど道がわからなくなる」
「フィーラーが触れるたび わたしのカケラが落ちていく」
「わたしたちの敵は 神羅カンパニーじゃない」
「わたし どうにかして助けたい」

そしてアンコールの二曲目、本当に最後のトリとなったのは、待ち望んだ「片翼の天使 ―再生―」。どうして「FFVII」には“この曲を抜きにしては語れない”曲が、こんなにもたくさんあるのだろう。

奏者たちは、圧倒的なまでのラスボス感をぶつけてくる。コーラス隊の歌声にも、より一層力がこもる。チャイムの音が響く。怒涛のような音、音、音。どんどん上がっていくテンポに押し上げられるように、こちらの心拍数まで上がっていく。

そして最後には、「ここに”セフィロス!”コールが入るはずでは!?」というこちらの期待を焦らすかのように、あえて”セフィロス!”が入らないアレンジにもだもだしつつ、「運命の番人 ―特異―」のフレーズが入るところでは背筋が粟立ち――最後の最後、ついに「セフィロス!」のコーラスでバシっと演奏が〆られると同時、号泣した。

「だが まだ間に合う。未来はお前次第だ クラウド」

この日演奏された曲の多くが、24年前に作られた。だがそんなことを微塵にも感じさせない、恐ろしいまでに色褪せない楽曲たち。オリジナル版の楽曲に全く劣らないどころか、新たな「FFVII」の世界を開いてくれた、「FFVIIリメイク」の新曲たち。どれもが粒ぞろいだった。

「ありがとう」を100万回叫びたい

24年前、初めて「FFVII」を遊んだ時に、あまりの凄さにひたすら夢中になった。発売から2ヶ月ほどの間に、10周くらい遊んだ。筆者が「FFVII」をプレイした30周以上のうちの10周は、発売からたった2ヶ月ほどの間に稼いでいたのだ。ちなみにその後、発売から1年で15周程度にまでなった。

筆者が受けた衝撃と同じものは、世界中のゲームファンももちろん受けていた。オープニングのエアリスのアップから、神羅ビル全体を映す、ワンカットでのカメラワーク。それまで静かだった音楽が、「FINAL FANTASY VII」のロゴと共に、最高に盛り上がる瞬間。流れるように爆破ミッションへと移り、クラウドを自分で操作できるようになった時は、胸が高鳴った。あの当時、まだブラウン管だったテレビの前でコントローラを握っていたプレイヤーは、その多くが同じわくわく感を抱いていたのではないだろうか。

今では想像もつかないかもしれないが、24年前、あの四角いポリゴンのクラウドたちは“美しかった”。音楽は、一曲一曲が鮮烈な印象だった。何故か、“あのシーン”以外でも、よく解らないところで何回も泣いた。それほどに、様々なところで感情が揺さぶられる作品だった。シナリオはもちろんのこと、音楽から心臓をぎゅっと掴まれるような気持ちになることも多かった。

このゲーム史に残る名作は、今でもその魅力を一切失っていない。だからこそ筆者は、24年間、ひたすらに「FFVII」をプレイしてきた。そこまでプレイを重ねた作品が、より素晴らしい輝きでもって、「FFVIIリメイク」となって帰ってきてくれた。しかも、我々が想定していた作品とは全く違う方向に、舵を切ってきたのだ。

最近のゲームは、ボイスがなかった時代と比べて音楽の果たす役割が変わってきたと筆者は感じている。だが「FFVIIリメイク」は、あくまで24年前の作品のリメイクであることを尊重してくれた。素晴らしい音楽たちを消すことなく、活かす方向で、やれる限りのことを尽くしてくれたのではないだろうか。

そしてオリジナル版と「FFVIIリメイク」の世界を繋ぐための新曲の数々はどれも、植松氏が築いたオリジナルの世界を崩すことなく、橋を渡すという役目を果たしてくれた。

実を言うと、「FF」シリーズのオーケストラコンサートに足しげく通っている身としては、「エアリスのテーマ」などは単体だと若干食傷気味であることは否めない。だが、「FFVIIリメイク」のコンサートとして一本の物語を見るためには、「エアリスのテーマ」はやはり不可欠だった。そして新曲が上手く嵌まってくれなければ、「FFVIIリメイク」としての「エアリスのテーマ」は活きなかっただろう。

ありきたりな言葉で申し訳ないが、素晴らしいコンサートだった。2時間半ほどの時間は、あまりに一瞬で過ぎてしまったものの、今回のコンサートを配信という形でも見ることが出来て、心から感謝をした。

筆者は、このゲームに「生きたい」という気持ちを繋げられたひとりのファンだ。「FFVIIリメイク」がなければ、生きることを諦めたかもしれない。そんな素晴らしい作品と、そしてその思いを新たに感じさせてくれたこのコンサートへ、最後に100万回の「ありがとう」を残したい。

セットリスト

<第一部>
・プレリュード ―再会―
・オープニングメドレー
・壱番魔晄炉
・教会に咲く花
・タークスのテーマ
・タイトロープ
・STAND UP
・消される言葉
・ティファのテーマ ―セブンスヘブン―
・闘う者達 ―バトルメドレー―

<休憩> グッズ紹介(「異世界ニュース」コラボ)
出演:平岩康佑

<第二部>
・不安な心
・急げ!
・ジェシーのテーマ
・神羅のテーマ
・ハンドレッドガンナー
・星に選ばれし者 ―運命の叫び―
・運命の番人 ―特異―
・Hollow
・FFVII メインテーマ

<アンコール>
・エアリスのテーマ
・片翼の天使 ―再生―

公演概要
公演名

FINAL FANTASY VII REMAKE Orchestra World Tour

日時

2021.2.13 開場 16:00/開演 17:00

出演

歌手:Yosh(Survive Said The Prophet)
指揮:佐々木 新平
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団

ビデオコメント出演

ファイナルファンタジーVII リメイク プロデューサー:北瀬佳範
コンポーザー:浜渦正志 / 鈴木光人 (サプライズ:植松伸夫)

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