2021年7月29日に発売された「ツーポイントホスピタル:ジャンボエディション」を直感赴くままに10時間プレイしてみましたので、その状況をゆるく正直に正確に、そして、なんとなくモヤっと伝えていきます。
目次
経営シミュレーションゲームというと、小難しく感じてしまうことがあるのですが、テーマや表現によってかなり印象が変わります。ゲーム黎明期までさかのぼってしまうと、経営シミュレーションゲームは数値とグラフだらけの本当に頭ばかり使うゲームに辿り着くのですが、家庭用ゲーム機のビジュアルをふんだんに使ったゲームに限れば、スーパーファミコンの「シムシティ」やファミコンの「A列車で行こう」あたりが原点になることでしょう。
90年代には、エレベーターの挙動を起点に高層ビルを経営する「ザ・タワー」、遊園地を経営する「テーマパーク」、コンビニを経営する「ザ・コンビニ」など、日常生活で目にしているはずなのに、特に気にしたことがなかった経営をゲームの中で実現することができました。更にゲームの中で経営できる範囲は広がり、ファミレス、ホテル、ゲームセンター、ドラッグストア、水族館など……そういえば、病院の経営もできたような……。
経営シミュレーションゲームのテーマは、時代や現象のキリトリが大事で、過去や現在の社会システムを模倣することはできても、技術の進歩や未来の出来事を現実の様に入れ込むことは困難です。だからこそ、「シムシティ」では大災害の象徴として怪獣が現れるのです。
事実は小説より奇なり、という言葉があります。どんなにリアリティのある小説であっても、ぶっ飛び過ぎたアイディアが盛り込まれた時点で、たとえ現実の出来事を参考に書かれていても、非現実的な出来事に感じてしまいます。小説で怪獣が出てきたら、もはやノンフィクションとしては通じないことでしょう。しかし、ゲームの中で怪獣が現れるようなことがあっても、事態を解決するために対処するプレイに実感があれば、リアルとして受け入れることができてしまうのです。
事実は小説より奇なり、しかし、ゲームは事実よりリアル。それでは、この1年以上、世界中を苦しめているウイルスで疲弊している病院を、医療とは全く関係ない我々がリアリティのある状況として体験できるとしたら……きっとその答えは怪獣、ではなく、ヘンテコなのでしょう。
ということで、今月も人流を抑えるために不要不急の外出を控えて、「ヘンテコ病院経営シミュレーション」という奇妙なジャンルのゲームに挑戦していきましょう。
1.病院経営のキソを学んで30分経過
2.キテレツな病気を垣間見て1時間経過
3.1病院をトコトン経営して5時間経過
4.イロイロな体験をして10時間経過
5.そして、まとまらないまとめ
病院経営のキソを学んで30分経過
ゲームを起動すると、各種ロゴが表示された後で、オートセーブの案内。若干ながら90年代に戻された感があります。
タイトル画面になると、大きな島が登場。この島がゲームの舞台なのでしょうか?くれぐれも怪獣が上陸しないことを祈ります。
メニューを開くと、「サンドボックス」があるのですが、今は選べないようですね。タイトルに「ジャンボエディション」とあるのですが、これは海外で発売された際のDLC要素が追加されているからであって、そのDLC部分がメニューの下の6つのアイコンのようです。
「設定」で操作方法を把握したら、「ニューゲーム」を選んでゲームを始めましょう。
オープニングでは、これから行うヘンテコ病院が垣間見られるのですが……かなり物騒な未来が見えるのは気のせいでしょうか?
あれっ? タイトル画面にこんな島ありましたっけ?
ともかくアドバイザーがそれなりにいろいろなことを教えてくれることは把握できましたし、プレイヤーの病院経営のキャリアはこの「ホグスポート」から始まることもわかりました。
「ホグスポート」の病院は、とりあえずカラッポ。
最初に必要なのは、病室でも医者でもなく、患者を迎える受付でした。病院と言えば、真っ先に医者が必要に感じるのですが、このゲームの場合は、患者が来院した時の流れを重視しているので、受付がしっかりしていないと、医者のところまで患者が辿り着かない、というわけです。
受付を設置したら、今度は受付を担当する人員が必要になります。このゲームでは、「医師」、「看護師」、「事務員」、「管理員」の4つのタイプの人員を雇用することができるのですが、ここで必要になるのは「事務員」になります。「採用情報」はとりあえず参考程度にしておいて、丸型のアイコンの記載されているスキルを重視して採用を決めましょう。星の数や費用は今のところあまり気にしなくてもよさそうです。
採用したら、つまんで好きな場所に配置しましょう。もっとも、適当な場所に置けば、あとは自動で仕事を見つけて働いてくれるようですが。
受付が決まったら、今度は「総合診察室」を配置。受付という「アイテム」はサイズが決まっていたのですが、部屋は広さを決める所から始まります。
部屋のサイズを決めたら、「総合診察室」に必要な「アイテム」の配置になります。
「医者」を配置すると、「総合診察室」の業務が開始となり、患者がやってきます。
これで来院した患者が「受付」を済ませ、「総合診察室」に足を運ぶ、という流れができるのですが、診察を受けると今度は「薬局」が必要になりました。「薬局」には薬剤師ではなく、「看護師」を配置することになるのですが、そもそも「薬局」にそんな怪しい機械があるのは……。
ともかく「薬局」で薬を飲んだ患者は病気を完治させたようです。
これで患者が病院に来院した際の一連の流れが完成したのですが、怪しげな機械があるということは、その機械のメンテナンスが必要なわけで、「管理員」の採用が必要になります。いや、それ、メンテナンスというより、壊しているように見えるのですが……。
ともかく、たくさんの人員を揃えたことで病院としての業務は回るようになりました。スタッフが休憩する「スタッフルーム」や生理現象を解消してくれる「トイレ」、飲食や休憩にも対応していくと、ゲーム開始時には空っぽだった建物も、それなりに病院に見えるようになってきました。しかし、この病院には「病棟」がないようですね。しかし、「病棟」が必要な理由が、寝グセを解消するためだとは……。
ということで、「病棟」を作ってみたのですが、最小サイズで作ると学校の保健室みたいですね。部屋のサイズについては、設備や状況に合わせて調整した方がよさそうです。
設備を整え、病院のレベルを上げ、条件を満たして、ついに「デラックス治療室」が完成。
この「デラックス治療室」にどんな患者が訪れるかというと……頭が電球?
ともかく、病院が「1つ星病院」になったところで、30分が経過していました。
キテレツな病気を垣間見て1時間経過
電球頭の患者の存在が気になったのですが、「ロワー・ブロック」に新しい病院を開設できるようになったので、新たな挑戦に挑むことにします。
「ロワー・ブロック」では、住民が自分をロックスターだと思い込むという、キテレツな病気が流行っているようです。先ほどの電球頭の患者を診れば、次はどんな患者が現れるのか、そのビジュアルが気になってしまいます。
今回の病院は空っぽではなく、最初から「受付」と「総合診察室」が設置されていて、病院内を人がうろうろしています。
しかし、まだ誰も雇用していないのに、「精神科診療室」の設置を促されるので、促されるままに「精神科診療室」を設置してみると……。これはこれまでの部屋とはだいぶイメージが違いますね。
早速、ロックスターっぽい患者がやってきました。
受付周辺を見てみると、すでにロックスターがたくさんやってきているようです。
完治すると、すっかり元に戻るようです。元々、ロックスターっぽいビジュアルの人じゃなかったんですね。
電球頭の患者を治療する「デラックス治療室」も、ロックな患者のお相手をする「精神科診療室」も、部屋の名称としては特に違和感がなかったのですが、この「なべ加工室」は病院経営をするゲームとしてはかなりキテレツな部屋なのではないかと。
一般的には、見た目ではなかなか病気かどうかの判断はできないのですが、このゲームの中ではいろいろと目立ってきていて、電球頭、ロックな人、なべ頭が混在すると、自然と画面がにぎやかになります。
そして、1年が経過して医療賞セレモニーでいろいろと評価を受けると、1時間が経過していました。
1病院をトコトン経営して5時間経過
医療賞セレモニーを終えると、いろいろなデータを確認することができます。「ランキング」を見ると、いくら順調にプレイできていたとしても、ゲーム内の評価はあまり高くないことが確認できます。
「財務」は、とりあえず経費が収益を上回っていないので、よしとしましょう。
「スタッフ」は、「部屋の名声」が低いのが気になるのですが、概ね問題はなさそうです。
「患者」は、完治率が下降気味なのが気になります。
「方針」は、まぁ、このままで様子を見ましょう。
「ログ」では細かい状況が確認できるようなので、プレイに余裕が出てきたら確認しましょうかね。
というわけで、2年目に突入。このタイミングでオートセーブが実行されるので、ついでに当面の目標についても確認しておきましょう。画面の右上には「1つ星病院」になるための条件が記載されていて、「病院レベル6」、「2棟の建物の所有」、「なべ加工室で3人の患者を完治」が条件になっていることがわかります。条件が達成に近づくたびにグラフが色塗られていくので、自然とテンションが高まります。
とはいえ、実行すればすぐに達成できる条件と、じわじわと条件が達成されるような条件があります。そこで、病気に関してはスタッフにお任せするとして、まずは行列解消のために各部屋の前にベンチを設置することにしました。
続いて、「トイレ」を増設してみました。元々のスペースが小さいので、かなりこじんまりした「トイレ」になってしまいましたけど。
そして、ちょっとお金がかかるけど、建物の増設も検討。
さらに、地味ながらも自販機とゴミ箱を増やしていきます。
ドクロマークがついている人物を発見したので、追跡してみると……。
死にかけているようで、何かできないかと思ったのですが……。
天に召されてしまいました。
ふと「トイレ」を確認してみると、管理員が機能していないような……。こういう場合はコマンドを選んで、直接指示を与える必要があるようです。
全体を見回っていると、不意にオバケを発見。
多くの人は恐れているようですが……。
やっつけてくれる人がいるようです。というか、この人こそが「管理員」でした。病院内で死んでしまった人の中にはオバケになってしまう人がいて、オバケを退治できるスキルを持っている「管理員」がいると、対応してもらえる、というわけです。病院って奥が深いなぁ。
一方、「病みなべ病」の治療に失敗した患者さんを発見したので、追ってみると……。
病院を出ていき……。
しつこく追跡した結果、家までカメラで追うことはできず……当たり前ですね。
ずいぶん前に、空いている区画に病院を建てていたのですが、そろそろこちらにも進出しなくては部屋が足りません。
スペースが広いので、早めに充実したトイレを作ってしまいましょう。
スペースが足りないため、3つ目の建物を建ててしまいました。何かを作れば何かが足りなくなり、どんどん肥大化せざるを得ないという……。
たまたま「医療安全監査官」が受付に来ていたので、追跡してみると……。
「トイレ」には何か文句があるようですが……。
この部屋はいい評価のようで……。
そのままお帰りになりました。
後日、残念な報告が届いたので、次の監査ではいい結果を出したいモノです。
そして、ひたすら病院の発展を試み続け、☆3つの評価になってもそのまま病院の経営を続け、9年目が終了して、評判だけはすこぶるいいことを確認したところで、5時間が経過していました。
イロイロな体験をして10時間経過
「ロワー・ブロック」の病院の評価が☆1つになった時点でアンロックされていた「フロトリング」に挑戦。
「ロワー・ブロック」で長い時間プレイをした実績から、部屋を作るとすぐに「ロビーチェア」を配置する習慣ができました。
「病室」は広めにして、ベッドを多めに置きましょう。
「トイレ」だって、個室を多めにして、洗面台やハンドドライヤーだってつけちゃいます。
この地域では、スタッフの研修がテーマとなっているため、「研修室」が作れるようになります。
患者の病気がわかっても、医者がその病気のことを知らなければ治療ができないため、「研修室」が重要になるのです。病院内部のスタッフを講師にすると、コストは抑えられても、業務をこなす人が2人減るため、外部スタッフを招聘した方がよさそうですね。
続いて、「ミットン大学」に挑戦。
この地域は寒いため、「ラジエーター」が必須となります。「ラジエーター」は配置する際に、有効範囲が良くわかり、壁で仕切られると温度が広がらないのは現実と同じなので、部屋を作るたびに「ラジエーター」を配置する必要があります。
そして、ここは大学なので、「医師」と「看護師」は学生しか雇用することができません。そのため、せっかく「総合診察室」を作っても、診察結果に不安があり、「研修室」での研修が急務となります。
ここはバンバン雇って、バンバン研修をこなしてもらいましょう。
「研究」の研修を受けた「医師」がいれば、「研究室」で研究することができ、難しい病気に立ち向かえるようになります。
研究中の「研究室」はモニタが光っていて何となくカッコよかったり。
続いて、「タンブル」に挑戦。
山岳の観光地ということで、骨折患者のための「骨折病棟」が登場します。「固定用ベッド」を並べるためには、かなりのスペースが必要のようです。
また、地震活動が活発なため、地震による被害がそこそこ発生します。
続いて、「フレミントン」に挑戦。
しかし、あまり成果を出せないでいるうちに、10時間が経過してしまいました。
そして、まとまらないまとめ
経営シミュレーションゲームというと、ある程度、必要な設置物を設置して、人員を配置して、利益が出ることが確認できれば、それなりに放置ができるのですが、今作についても、お金を稼ぐことだけが目的であれば、放置していて問題なさそうでした。
しかし、病院なので、改善できるところをしっかりと改善していけば、治せる病気が増えていき、結果、多くの命が救われるため、適度にプレイヤーの倫理観や正義感が試されるゲームのようにも感じました。
また、経営シミュレーションゲームというと、難しそうな印象があるのですが、どの地域をプレイしていても、適度にアドバイスをもらうことができ、アドバイス通りにこなしていくと、それなりにうまくいくようになっています。
☆1つの評価が付くと、次の地域がアンロックされるようになっているのですが、どこかの地域で長くプレイして、ある程度の勘どころを理解してから先に進むと、基本的な知識が深まり、より効率よく経営できるようになります。
「キャリア目標」を達成すると報酬をもらうことができ、この報酬を使うと、アイテムをアンロックすることができるため、好きなアイテムをアンロックして配置すれば、よりこだわりのある病院をつくることができます。何でもかんでもアンロックできるわけではないので、この要素こそ、プレイヤーのこだわりが出る部分だと思います。
今回のプレイでは、先に進むための条件に拘り過ぎてしまったため、病院の価値を上げるような行為をあまりしなかったのですが、インテリアを充実させると全体的なパラメーターを上げることができ、より良い病院にすることができます。効力の範囲がわかるアイテムは常にその範囲を把握しておくべきでしょう。
各部屋とスタッフを紐づけなくても、勝手に各スタッフが仕事をこなしてくれるため、人員が足りないと思ったらどんどん雇用を増やしてしまった結果、雑なプレイになってしまったのですが、この辺りは、それぞれのスタッフの名前や性格を把握する余裕ができると、また違った楽しさが出てくるのかもしれません。もっとも、適当にスタッフを雇っているだけで、それなりに働いてくれている所こそ、小難しく感じる経営シミュレーションを易しくしてくれている、と言えなくもないわけですが……。
無難にプレイしている限りは、収益がマイナスになることはないようなので、時には仕事は全部スタッフに任せて、カメラをぐるぐる回して各所でどんな動きがあるか確認しながら、プレイを楽しみましょう。
どんな病気でもこんな風に治せたらなぁ。いや、これはこれでヤバイか。
プロフィール
酒缶(さけかん)/ゲームコレクター
15000種類以上のゲームソフトを所有するゲームコレクターをしつつ、フリーの立場でゲームの開発やライターなど、いろいろやりながらゲーム業界内にこっそり生息中。「東京エンカウント弐」にゲームアドバイザーとして協力。関わったゲームソフトは3DSダウンロードソフトウェア「ダンジョンRPG ピクダン2」「謎解きメイズからの脱出」など多数。価格コムでは、ゲームソフトのプロフェッショナルレビュアーを担当している。
■公式サイト「酒缶のゲーム通信」
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(C)Two Point Studios 2021/ (C)SEGA
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