2021年7月29日に発売となった、サイバーコネクトツー初パブリッシングタイトルにして「復讐三部作」の第1弾タイトルである「戦場のフーガ」。本作の開発スタッフへ、ゲームの発売に併せてロングインタビューを行った。

目次
  1. 「ソウルキャノンは撃たないでね!」
  2. 「インターミッション」のAPが足りないのは意図的、「絆イベント」は66通り×3段階
  3. 作り直しの回数は6回!それでも受け継がれたテーマ
  4. 声優陣の起用に関する、意外な条件
  5. 「テイルコンチェルト」や「Solatorobo」の移植・リマスターの可能性は?
  6. 1周目でトゥルーエンドにたどり着けるのは20人~30人にひとり
  7. プレイした人同士で、語り合ってほしいゲーム

インタビューに答えてくれたのは、サイバーコネクトツーの代表取締役社長、本作では総監督を務めた松山洋氏と、本作のプロジェクトリーダー/ディレクター・新里裕人氏。

「ソウルキャノン」にまつわる考えや、ゲームシステムへのこだわり、紆余曲折あった開発のこと、声優陣の起用に関する意外な条件など、非常に興味深い話が盛りだくさんの内容となっているので、本作をプレイしている方や、購入を迷っている方に読んでいただけたら幸いだ。

総監督・松山洋氏(右)と、プロジェクトリーダー/ディレクター・新里裕人氏(左)。

「ソウルキャノンは撃たないでね!」

――発売に先駆けて「戦場のフーガ」を遊ばせていただいています。現在第8章までプレイしているんですけど、まずお伝えしたいのは、このゲームすごくおもしろいです!

松山洋氏(以下、松山):でしょう!? 我々も作りながら「これは……めっちゃオモロいゲームができたんじゃないか?」って(笑)。はやくお客さまに届けたいと思っているんですけど、ユーザーさんの楽しみや驚きを奪うようなプロモーションはしないと決めているので、遊んでもらってゼロから判断してほしいなと思っています。

「戦場のフーガ」に興味を持ってくださっているお客さまには、ある種の趣向性がありますよね。ケモノ、戦車、戦争、ソウルキャノン――ユーザーさんを選ぶ分、刺さる人には深く刺さるゲームだと自信を持っています。だから広くアピールしようとはあまり考えていなくて、CEROの年齢区分がD(17歳以上対象)だろうとZ(18歳以上のみ対象)だろうと目指した表現のまま発売しようと。結果的に年齢区分はB(12歳以上対象)だったから、アレ? って。ちょっと拍子抜けしましたけど(笑)。

新里裕人氏(以下、新里):今回、初めての自社パブリッシングということもあって、CEROの審査のために必要な書類を揃えたり、動画を揃えたりするのも初めてで、何かとバタバタしていたんですけど。ソウルキャノンで子どもの命を犠牲にするっていう特殊な要素があるので、そこには特に厳しく突っ込みが入りまして。「その部分は細かいデータをください」、「すべての子どものパターンをチェックさせてください」みたいに言われて、準備段階ではなかなか骨が折れたんですよね。

CEROとは別に、海外では子どもに関する描写の扱いが、日本より遥かに繊細なので、一部のプラットフォーム側から厳しいご指摘もありまして。我々も気を使った部分は多いです。それがCEROの審査にも大きく影響したのかなと。

――ソウルキャノンの子どもをひとり犠牲にすることで発射できるようになるという設定は、SNSなどでもかなり話題になったように思います。

松山:そもそもそういうフックのあるゲームを作ろうと決めた上で、開発をスタートしているので。けどプラットフォーム側から結構心配されたのは意外でしたけどね。あるメーカーさんなんかは「この仕様、要るんですか? 犠牲なしで撃てても良くないですか?」って最後まで言っていて。ゲームの根本を否定!?みたいな(笑)。ご心配をおかけしたんですけど、我々もそこは絶対に変える気はなかったです。そのジレンマがあるからこそプレイヤーの感情移入が生まれるっていうのがコンセプトでしたから。

ただ、勘違いされると良くないので言っておきますと、「ソウルキャノンを撃たなきゃいけない」と思い込んでいる方が多いんですけど、ソウルキャノンは撃たないでね!

一同:(笑)

松山:人の心を持っていれば、子どもをソウルキャノンにぶち込んで弾にして撃つなんてできないはずだからね!? システム上、できるだけ! しかも「全キャラぶち込んだらどうなるんだろう?」って言ってる人までいて。……残念ながらできるんですけどね、それ。その状態でクリアすることも可能になっています。

――へぇ~! どういう展開になるのか気になってしまいますね。

松山:ほらー! すぐそういうことを言う! 別にいいけどすごくツラいよ!? 心情としてもそうだけど、6人以下になったら戦闘で生き残ること自体がツラいから。けど可能なことは、開発チームでのテストプレイで確認済みです。

――それだとストーリーの差分とかを作るのも大変じゃなかったですか?

新里:大変でした。ストーリー上、子どもたちが発言するタイミングがいくつも用意されているんですけど。何箇所か、複数の子どもに台詞が用意されている場面があるんです。プレイヤーの選択次第で、すでにそのイベントのときにはもういない子がいるかもしれないので。そういった場合でもイベントが成り立つように「この子がいないときは、この子が喋る」っていうパターンがいくつも用意されていて、整合性が取れるように喋る子が切り替わるプログラムになっています。

ということは、パターンの分だけのシナリオが用意されているんですよね。シナリオの量も増えたしプログラム的にも複雑なので、デバッグのコストも結構増えたんですけど、やった甲斐はあったんじゃないかなと。

「インターミッション」のAPが足りないのは意図的、「絆イベント」は66通り×3段階

――プレイしてみて感じたのは、このゲームはPVなどで大々的にプロモーションすることで売れるというよりも、くちコミで徐々におもしろさが広まっていくポテンシャルがあるタイトルなんじゃないかなということでした。

松山:我々もそう思ってます。

――(笑)。子どもたちがマシンガン、グレネード、キャノンの3つの属性に分かれていて、相手の弱点を突くと行動を遅らせることができるというシステムが特徴ですけど、装甲ランクや状態異常の概念など、複合的に考える必要がある奥深い戦闘システムがとても面白いです。

松山:最初はわりとテキトーでも行けるんだよね。けどだんだん苦戦するようになるから、「あれ? これ何かもっと有効な戦い方があるんじゃない?」って。段階的に気づけるように難易度設定は考えているんですよ。

――チュートリアルでひとつひとつ丁寧にルールを覚えていってから、自分でルートを選択することによって難易度を調整できたりとか。調子に乗って「危険な道」を選ぶと……。

松山:死にかけるでしょ?

――そうなんですよ(笑)。とくに紫色のアイコンでエンカウントする敵がだいぶ強くて。

松山:紫のアイコンでの戦闘は開発チームでは“エリートバトル”と呼んでいます。我々が遊んでいても、普通のバトルを楽勝に感じてくると「そろそろ行けるかな?」って。それでエリートバトルに挑むと、だいたい後悔するよね(笑)。気がついたらアイテムを全部使い切ってたりして! もう二度と「危険な道」は行くもんかって思ったりね。

――でも次の章に進んだ頃にはまた挑戦したくなったり(笑)。

松山:そうそう! しかも「危険な道」にしか遺跡がなかったりして、「ここを探索してみたいから、行かなアカンやん……」って。で、やっぱりバトルでボロボロになるまで追い詰められるみたいな。

――そのバランスが挑戦しがいもあるし、敵以外のアイコンもチェックして、「今回は回復することを重視して、こっちの道に行くべきか」とか。毎回ジレンマの連続っていうのが本当に、すごく“ゲームらしい”楽しさを味わえているなぁと思います。

新里:今回のゲームのテーマはまさにユーザーさんに“選択”してもらうことなんですよね。ユーザーさんの選択によって、いろいろなものが大きく変わっていく。で、それを自分の選択の結果として受け止めてもらうっていう繰り返しを目指したゲームになっています。

――「あそこであの選択をしたおかげで助かった」ってことだったり、逆に「あそこはもっとちゃんと考えておけばこうはならなかったのに」って後悔したり。でもそういう積み重ねが自分で物語を紡いでいる感覚に繋がっています。それは「インターミッション」でも一貫している部分ですよね。

新里:「APが足りない」って絶対言われるんですけど、あれは意図的ですからね。

松山:だからプレイヤーが選ぶ意味が生まれるんだよね。

――全部戦闘パートに活きてくるから、ひとつひとつの選択に意義が感じられるのだと思います。ゲームとしての面白さが魅力というのと関連して、ストーリーを描くパートの語り方のテンポの良さも心地良いですよね。大事なことだけスパッと語って、すぐに次のパートを楽しませてくれると言いますか。

松山:ストーリーについては、ナレーションに要約されるようにしていますね。それによって子どもたちのドラマの部分で多くを語り過ぎずにテンポ良く話が進むようになっています。あと、プレイヤーが自分に合ったテンポ感で楽しめるように、子どもたちの会話はあえてフルボイスではなくリアクションボイスにしています。ナレーションや「ラジオの女」といった部分はフルボイスですけどね。

――やはりその辺りは意図的に計算してあの形式になったんですね。

新里:世界設定の面で言えば、いわゆる“裏設定”はたくさん作っているんですよ。2周、3周と周回プレイをすることで明らかになるものもありますが、それでもゲーム内のストーリーで全部を語り切れるものではありません。そういう意味では情報密度の濃い作品にはなっているんですが、やはり戦闘を楽しみたいユーザーさんもいるわけで。ナレーションだけ聴いておけば状況が把握できるようになっていますし、おはなしをスキップしてゲーム部分だけ楽しまれる方がいても全然問題ないと思っています。

――キャラクターたちの設定や、彼らの個性が垣間見える「インターミッション」について、もう少しお聞かせください。「絆イベント」では、絆が深まっているようには見えないような、お互いへの理解が深まらずに終わるイベントも多いように思います。その辺りにはどういった意図があるんでしょうか?

新里:絆イベントってどのキャラクター同士の組み合わせにも3段階のイベントが用意されているんですけど、やっぱり最初はお互いそこまで仲良しじゃないんですよ。そうすると、ネガティブな部分や問題点が最初に語られることが多いんですね。それがレベル2、レベル3とイベントのレベルが上がっていくにつれ、だんだんふたりの仲が良くなっていく、なんだかんだで認め合っていくというようなドラマになっています。なので気に入ったキャラクターの組み合わせは、ぜひ最後のレベル3まで見てほしいですね。そうすると、ネガティブなやり取りといった過程も必要だったことが分かると思うので。

松山:「絆イベント」はドラマだけじゃなくて、レベルが上った分だけ「協力必殺技」がパワーアップします。ゲームとしても大きな意味があるので、ぜひ積極的に親愛度を上げていってほしいですね。戦闘中に同じ砲座にずっと乗せることでも親愛度は上がっていきますから。

新里:ゲーム的にはなるべく多くの組み合わせでレベル1にはしておいたほうが、「協力必殺技」が使える組み合わせが増えるので良いんですけどね。ただ、関係性を掘り下げるならレベル3まで見る必要があるので、大いに悩んでいただきたいなと。

――1周ではすべての「絆イベント」を見ることは不可能ですが、にもかかわらず組み合わせのパターンを考えたらテキスト量はかなり膨大だと思います。

新里:そうですね(苦笑)。

松山:普通ならばひとりの主人公がいて、「主人公とほかの子どもたち」っていう組み合わせにするんですよ。けど本作って12人いる子どものうちの誰が主人公か? っていうのはプレイヤーが決めることなので。結果としてどんな組み合わせでもそれぞれの関係が楽しめるようにイベントを用意しているので、絆イベントだけでも66通りあり、それをひと組ごとに3段階用意しているんですよ。

――先に話題になったソウルキャノンに関する展開の差分も含めて、シナリオはおひとりのスタッフさんがすべて担当されているんでしょうか?

松山:そうですね、基本はひとりです。そのスタッフから上がってきたものを、私や新里も加わってやり取りしながら推敲していきました。

新里:「戦場のフーガ」を含む“C5”というプロジェクトは、なるべく小人数、短期間での開発というのが最初のコンセプトだったので、企画段階だとテキストの物量はいままでのタイトルよりも抑えていこうという想定でした。ただ、「絆イベント」だけは工数が掛かっても頑張ろうと。一方で、艦内での通常会話には台詞がなかったんです。「何らかの会話をしたことで絆が深まりました」のような、シミュレーションゲーム的な表現で処理しようとしていたんですね。

――会話の内容はプレイヤーの想像にお任せする、のような形ですね。

新里:そうです。でもそれで遊んでみたら全然物足りなくて(苦笑)。

松山:結局あとから「ちゃんとしよう」ということになり。そういうことがどんどん積み重なって、そりゃ短期間じゃ終わらんよねと。なんだかんだで3年掛かってしまいました。

新里:そういう意味では、妥協をせずに開発できたということは断言できるかなと。

――キャラクターやその関係性に関する部分を作り込んでくださったおかげで、これらの要素が作業的じゃない、血が通ったものになっていると思います。

作り直しの回数は6回!それでも受け継がれたテーマ

――「3年掛かった」ということが話題に上ったので、これに関連した部分もいくつかお聞きしたいんですけど……。最初はローグライクのようなゲーム性を想定していたということですが。

松山:それは早い段階でスッパリとやめましたね。

新里:いちばん最初は確かにローグライク要素もあったんですけど、あとはもっとシミュレーションゲーム寄りだったんですよね。ストーリーを詳細に語るというよりも、パラメーターを管理して脳内補完してもらう前提のゲームになっていました。戦闘も現在はターン制かつコマンド式ですけど、そこもリアルタイムシミュレーションっぽかったんです。そういったゲームの根幹の部分の大きな作り直しと、あと先ほど申し上げたテキストをはじめ、様々な物量の追加ですよね。節目節目で何段階かの決断があって、いまの仕様にまとまったという形です。

――なるほど。あと、最初の頃はヨアン・ゲリト氏という方がディレクターを務めていたかと思いますが。

松山:現在も本作ではクリエイティブ・ディレクターとして名を連ねていますし、弊社で元気にやっていますよ。最初は彼がディレクションする体制で開発をスタートしたんですけど、上手く行かないことも多くて「これは作り直そう」と。そうした作り直しが3年間の開発で6回あったんですね。

――それはサイバーコネクトツーさんとしては多いほうなんでしょうか?

松山:アカンのですけど……いつもこんな感じです(苦笑)。

一同:(笑)

松山:少しずつ減らしていこうとか、ちゃんとやっていかなきゃいけないんですけど……。特に今回は初めての自社パブリッシングタイトルで、しかもサイバーコネクトツー25周年記念タイトルとなる、弊社にとって大切な作品です。そうしたことを改めて考えるタイミングで、途中からディレクターは経験の多い新里に交代してもらって、ヨアンにはもう少し現場に近い立場でシステムの提案とか、そういう部分で中心に立ってもらっています。

新里:開発の序盤って、「あれもやりたい、これもやりたい」っていろいろなアイデアが広がっていくんですよね。そこはヨアンが若い感性でいろいろ考えてくれていたんですけど、最終的には無数のアイデアの中から使えるものを選び取って、畳んでいかなきゃいけないと。「何を切って、何を残すのか?」っていう“大鉈を振るう”判断が必要になってきますよね。そこで「私がやったほうが良いだろう」という判断になり、ディレクターを引き継いだという形です。

――いろいろな変更があったとのことですが、逆に最初期から現在の仕様まで、ずっと大切にしてきた部分があれば教えていただけますか?

新里:最初の企画書を書いたのは2017年だったんですけど、そこに書かれていた多くの大項目は、現在までそのまま受け継がれています。それが何なのかというと、先ほども話題になった「選択」をさせるゲームであること。それから「希望と絶望」のゲームであること。ユーザーさんには「希望と絶望」を与える、その中からユーザーさんなりの正解を選んでもらう。これらが最大の目標であり、ここはブレずに達成できたんじゃないかなと思っています。

松山:当たり前ですけど、ゲームを構成するすべての要素を一気に作ることってできないんですよね。「戦場のフーガ」の場合だと、最初にバトルがあって、インターミッションっていう交流パートがあって、物語の進行があって、ルート選択があって、遺跡探索っていうアクションパズルのようなミニゲーム要素があって、みたいな。順番に作っていったんですけど、やっぱり作ってる最中って要素が揃ってないから、噛み合ってないんですよね。その間はずっと面白くないんですよ。

途中で作り直しが何度かあったって言いましたけど、そういったタイミングで導入したのが「連絡ノート」や「ヒーローモード」といった要素です。それはゲームの各種要素を噛み合わせる歯車のひとつとして、「こことここの要素をちゃんとくっつけないと駄目だよね」という必要に応じて取り入れたということで。戦って敵に勝たなきゃいけないんだから、インターミッションで子どもたちが過ごした時間とプレイヤーの選択っていうのは、きちんと“強さ”に直結しなきゃ駄目だよねって。そういう要素は当初、影も形もなかったです。

――完成版の出来を考えたら、歯車はすごく上手く噛み合ったということですよね。

新里:必死で繋ぎ合わせました(笑)。

松山:面白くなるまでやり続けたっていうだけの話ですけどね(笑)。

――なるほど(笑)。「連絡ノート」についてお聞きしたかったのが、あれは子どもたちの“やりたいこと”にはある程度の法則性があるんでしょうか?

新里:基本的にはランダムですね。できることの条件に限定した中でのランダムという感じです。セーブされる前の時点で何が選ばれるかは決定されているので、同じインターミッションをやり直しても選ばれるものが変わらない、というふうにはなっていますが。

松山:プレイヤー的に「これはやるよね?」っていうことが優先されるようにはなっているんですよ。工房で武器のパワーアップが可能になったときは、誰かが連絡ノートに「マシンガンを強化したい」とかだいたい書くようになっていていたり。武器を強化しつつ、連絡ノートも達成できたらプレイヤー的には嬉しいはずなので、そこのバランスには気を使っています。

声優陣の起用に関する、意外な条件

――キャラクターたちを演じている声優さんのこともお聞きしたいのですが、今回はどういった基準でキャスティングされたんでしょう?

松山:うちでメジャーなタイトルを手掛けるときっていうのは、まず“キャラ表”っていうのがあって。そこに設定年齢なんかも書いてあるんですけど。キャラごとに有名無名関係なく声優さんの候補を何人か挙げまして、「この声優さんの、この作品の、このキャラのイメージです」っていうふうに伝えて、あとはいろいろな条件が重なって決まっていくという感じですね。

……実は今回、この条件の中に、表向きには言っていないものがありまして。「戦場のフーガ」では、声優さんの収録の時間が倍かかっているんですよ。

――倍かかっている、といいますと?

松山:皆さん日本の声優さんなんですけど、日本語ボイスの収録だけでなく、フランス語のボイスも同じ役者さんたちにお願いするというのが条件だったんです。実は2010年にバンダイナムコゲームス(現・バンダイナムコエンターテインメント)さんに発売いただいた「Solatorobo それからCODAへ(以下、Solatorobo)」のキャスティングでも近いことをやっていまして。「Solatorobo」には日本語は入っていないんですけど、日本の声優さんがフランス語を耳コピして、それを声に出してもらって収録しているんです。

――そんなことが……。

松山:「戦場のフーガ」では改めて、ボイスに関してどういった方向性が求められているのか、2017年頃にフェイスブックのファンコミュニティで、海外のユーザーさん向けにアンケートを取ったんですね。選択肢のうちのひとつは「日本語のボイスは日本の声優さんが担当して、フランス語のボイスはフランスの声優さんが担当する」というパターン。もうひとつは「日本の声優さんが日本語ボイスだけじゃなく、フランス語のボイスも耳コピで喋る」というパターン。どちらが良いと思いますか? と。結果として、80%以上の人が後者、つまり「Solatorobo」方式で日本の声優さんに耳コピでフランス語版も演じてほしいという意見だったんです。

「戦場のフーガ」って「ケモノ、戦争、RPG」ってどう考えても日本産のゲームじゃないですか。「ザ・JRPG」なんだから、それは日本の声優さんにやってほしいということらしくて。こちらとしては、日本の声優さんが耳コピのフランス語で演じるって、本場の人からしたら違和感があるんじゃないかっていう疑問はあったんですけどね、逆の立場で考えたら。

――日本語が分からない外国の方が耳コピで日本語を喋っても、どうしても違和感はありそうですもんね。

松山:そういう懸念も伝えたんですけど、「余計なことはせずに日本の声優さんで収録してくれ」という意見が圧倒的に多くて。明らかな結果が出たので、今回はそれが出来るというか、「やってもいい」という人にお願いしたいということになりまして。現在のキャスティングに固まりました。

そのあとどうしたかというと、先ほども名前が挙がったヨアン、彼はフランス人なんですけど、我々と一緒に録音スタジオに入って、彼が一回全部の台詞をフランス語で喋って。それを声優さんたちが耳で聴いて、実際に演技をすると。その演技をヨアンが聴いて、フランス語として違和感があったときは「違います。ここはこんな感じです」みたいな。フランス語の収録はフランス人が直接指導しながら行いました。

――へぇ~! 意外なところにヨアン氏の功績が……! それは面白いですね(笑)。

新里:言わせてもらいたいんですが、面白くないです!

一同:(笑)

松山:我々には良し悪しの判断がつかないんですよ(笑)。めっちゃダメ出ししてテイクを重ねてるけど、どれが正解か分からないです! ヨアン本人だけが「いや、いまのはちょっとおかしいです。すみませんがもう一回いいですか?」みたいなことを言っていて。終わらないなぁ~って。

新里:今回の声優さんは皆さんキャリアと実力のある方々で、日本語の収録であれば1~2テイクでOKが出る人ばっかりだったんですけど……。フランス語の収録は皆さん10テイクくらい掛かっていて(笑)。

松山:ただ、それくらいこだわっただけあって、弊社にはフランス人のスタッフが結構多いんですけど、彼らにフランス語版を聴いてもらったら、「完璧。パーフェクト!」だって。理解できていない言語をコピーできるって、やっぱり日本の声優さん凄いなぁ! って、改めて思いましたね。

――(笑)

新里:皆さん、キョトンとされながらも最終的には完璧にコピーされましたからね。

「テイルコンチェルト」や「Solatorobo」の移植・リマスターの可能性は?

先ほど「Solatorobo」のことも話題に上ったので、いわゆる「リトルテイルブロンクス」構想における本作っていう部分もお聞きしたいのですが、恥ずかしながら私は「テイルコンチェルト」や「Solatorobo」といった過去作をプレイできていなくて……。

松山:まあ、それは仕方のないことだと思います。「テイルコンチェルト」も「Solatorobo」も、いわゆるデジタルアーカイブみたいな形での配信ができていないんですね。当時発売されたものを手に入れていただくしか遊んでいただく方法がないと。そうした事情もあって、「戦場のフーガ」は過去作を遊んでいないから楽しめない、といった作品には一切なっていない、完全新作として遊べるゲームなのはお伝えしておきたいです。

――基本的なことかもしれないのですが確認しておきたいのが、設定上はそうした過去作と「戦場のフーガ」で地続きの同じ世界が舞台になっているんですよね?

松山:はい、「リトルテイルブロンクス」っていう共通の世界ではあります。

――過去作は「戦場のフーガ」ほど厳しい状況にある世界では無さそうですけど、年代としては大きな開きがあったりするんでしょうか?

松山:遊んでいただいたら分かります!

――分かりました(笑)。引き続きプレイして、真相にたどり着こうと思います。

新里:「戦場のフーガ」に「アーカイブ」という機能があって、ゲームをプレイしていくと、閲覧できる機密情報が増えていくんですね。その中には過去作を遊ばれた方がニヤリとできる情報も入っていて、未プレイの方でも「あぁ、こういうことがあったのね」というように分かるようになっています。

松山:この世界の裏に隠された真実というものに気づいていただくのも「戦場のフーガ」で楽しんでほしいポイントのひとつなんですけど、それは本作だけプレイすれば分かる部分ですね。

――ちなみに過去作の移植やリマスターの構想とかは……?

松山:ぜひバンダイナムコエンターテインメントさんに要望を出していただければと! 「テイルコンチェルト」と「Solatorobo」ではいろいろと事情が異なるんですけど……(以下、世知辛い話題が続く)。そうなるとやっぱり、パブリッシャーさんの裁量次第ということになりますよね。

――なるほど……。状況が変わるのを期待しながら、まずは「戦場のフーガ」をプレイしつつ、今後発売されるタイトルも楽しみにしていきたいと思います。

1周目でトゥルーエンドにたどり着けるのは20人~30人にひとり

――これも今回聞いておきたかったんですけど。メインキャラクターのひとりであるマルトが、「ボクは長男だから」という台詞をよく発しますけど、これはサイバーコネクトツーさんでゲーム版を開発されている、某人気アニメの主人公からの影響は……?

松山:なんにも関係ありません! な~んにも関係ありません! こんな偶然あるんですねぇ! って感じです。驚きましたー。

――(笑)。前後関係とかは聞かないほうが良いでしょうか?

松山:たまたまですからね! 「逆にそういう見方もあるんだ~!」って思いました。

一同:(笑)

松山:ぶっちゃけた話をすると、もう少し突っ込まれるかもと思ったんですけどね。「特定のキャラクターを連想させるキャラクター性」に対してね。いまのところそんなことないですね。

――分かりました(笑)。「戦場のフーガ」は周回前提のゲームにもなっていると思うんですが、2周目以降に注目してほしい要素はありますか?

新里:確実に1周目ではコンプリートできないのは「絆イベント」なので、周回でいろいろな組み合わせを試していただければと思います。本作って結果的に、弊社のゲームの中でもいちばん自由度の高いゲームになっていて。まず特定のひとりを主人公にしていないんですよね。12人いる子どもの誰を主人公と考えてプレイするかっていうのはユーザーさんに託されているゲームなんですけど、だからこそ1周目のプレイで「この子どもたちをメインで使う」っていうのがあったなら、周回プレイではほかの子をメインで使ってみたりしてほしいですね。戦術も全然変わってくると思うので。

松山:必ず新しい発見もあると思いますよ。

新里:戦闘ではアタッカーとして前で戦う子どもと、後ろにサポーターとして配置する子どもがいますけど、後ろの子の能力で「サポート効果」っていうのが付きますよね。例えばハンナをサポーターにすると攻撃するたびに少しHPが回復したりするんですけど。これって地味だけど結構有効なので、サポーターを代えるだけでもかなり戦術的に影響が大きいんですね。ぜひそういう遊びを2周目で試してほしいなと思います。

松山:モニターの結果なんですけど、このゲームで1回目のプレイでトゥルーエンドにたどり着けるのってだいたい20人~30人にひとりなんですよ。ほとんどの人は一度ノーマルエンドを見ることになると思います。ただ、一度ノーマルエンドを迎えたら、次にどうすればより良いエンディングにたどり着けるかは察することができるようになっているんですよ。

しかも2周目は「ニューゲーム+」を選べば1周目のパラメーターは全部引き継げます。「オレツエー!」が楽しめるんですけど、実は2周目用のパラメータが設定されているので、中盤以降はだんだん手応えが出てきて、最後のほうは1周目同様の緊張感が味わえると思います。その中で、1周目で得たヒントを頼りに、皆さんトゥルーエンドに行ってもらえるんじゃないかなと。

新里:1周目でトゥルーエンドに到達できた方は、2周目は逆にめちゃくちゃなことをやってみてもいいと思います。ソウルキャノンを使いまくるとか(笑)。変わったことをやることで見えてくるものもあるはずなので。

松山:ノーマルエンド、トゥルーエンドとも違う、第3の結末も用意されていますので、そこに関しての遊び方はお客さまの自由です、はい。

新里:本作はYouTubeなどでの実況配信も全編OKになっています。配信者の数だけ、ゲームとしての戦略はもちろん、ストーリーやイベントも微妙に変わったりっていう部分も楽しめるんじゃないかなと。ぜひいろいろな楽しみ方をしてみてください。

プレイした人同士で、語り合ってほしいゲーム

――では最後になりますが、このインタビューが公開される頃には「戦場のフーガ」をすでに楽しまれている人も多いと思います。もうプレイされている方や、これからプレイしようと思っている方に、メッセージをお願いします。

新里:やっぱりこのゲームって様々な遊び方ができるんですけれど、私自身は不正解っていうのは無いと思っているんですね。その人が「これが良い」と思った選択肢やキャラクターの選び方、全部がその人にとっては正解だと思っているし、1周目で苦しい展開や満足できない結末を迎えたとしても、次でより良いものを目指せるシステムになっています。何も後悔せずに、ひとつひとつの選択を楽しんでほしいと思っています。

松山:すでに遊んでいただいている方もいらっしゃると思いますけども。どうですか、面白いでしょう?(笑)

私自身が遊び倒して、一喜一憂しながら完成まで導けたという意味では、本作はいままでの中でいちばんなんじゃないかと思います。なので、間違いなくサイバーコネクトツーがこれからリリースしていく自社タイトルの、第1弾に相応しい作品になったと思います。恐らくプレイしたら、人と話したくなるゲームだと思うんですよ。で、話してみたら、人によって言っていることが違ってくるゲームでもあると思うんです。

「最初のソウルキャノン、誰を選んだ?」っていうのもプレイヤーによってバラバラなんですよ。なので遊んだあとは、遊んだ人同士で語り合ってほしいなと。それが本当に面白いゲームなので。社内モニターをやったときも「あそこってどうした?」みたいなことを新人に聞いたりして、その新人もすごく楽しそうに語ってくれたので。元々ゲームってそういったコミュニケーションも含めて楽しいものじゃないですか。そういう感覚を思い出していただけるようなゲームになったと思っています。

これから遊ばれる方には、もう実況動画とかもいろいろ上がっていると思うので、そういったものを観て「面白そうだな」と思ったら、変にネタバレを食らうまえに、買っちゃってほしいなと。そして遊んだら、このゲームの話をしてほしいですね。

――通常版なら4,180円(税込)と、結構お求めやすい価格ですしね。

松山:そうですね。通常版、限定版とありますけど、お持ちのゲーム機どれでも、もしくはPCでも遊べるようになっていますので。

新里:SNSとか動画とか、「戦場のフーガ」のことを何でもいいので発信していただけると嬉しいですね。口コミっていうだけじゃなくて、純粋に我々も、皆さんがどんなプレイをしたか知りたいんです。

松山:あとは、ゲーム内に仕込んでいることがいくつかあって。タイトル画面とかがヒントになっているんですけど、ゲームをやり込めばやり込んだ分だけ何かが起きるので。それが明らかになったとき、皆さんは「復讐三部作」の本当の意味を知ることになると思います。どれくらいでバレるかな~?

――これからのユーザーさんの反応が楽しみですね。本日はありがとうございました。

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※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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