オンラインにて8月24日~26日にわたって開催の「CEDEC2021」。ここでは、8月25日に行われたセッション「PlayStation5 Overview」の内容をお届けする。
目次
登壇者はソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)より秋山賢成氏。このセッションは、PS5の最も特徴的な機能の紹介と共に、PS5向けタイトルの体験を向上させるために、開発で注力してほしいポイントなどを紹介。また、リモートワーク化が進む中、PlayStationのゲーム制作環境向上への取り組みについても紹介する。
開発者はもちろんのこと、既にPS5を所持しているユーザーも「そんな機能があったことを知らなかった」という内容が色々紹介されているので、ぜひ目を通してほしい。
PS5の大きな特徴は?
2021年7月18日時点で、PS5の世界実売台数は1,000万台を達成。PS5は、SIE史上最速で普及している。だが、まだPS5を手にしていない開発者も多くいるだろう。
PS5は超高速SSD搭載により読み込み速度が飛躍的に向上、統合されたカスタムI/Oにて核心的なゲームデザインを実現、ハプティックフィードバックやアダプティブトリガーを搭載したDualSense、3Dオーディオ、レイトレーシング、最大120FPSでの滑らかなゲームプレイ、4K HDRに対応、4000本以上のPS4タイトルをPS5で遊べる後方互換性、PS4タイトルをより高速でスムーズなフレームレートでプレイ可能、PSVRなど、実に様々な特徴がある。
その中でも更に開発に活かしてほしい特徴を4点、本セッションにて紹介するが、秋山氏は「これらを全てゲームに搭載しなければならないわけではなく、ゲームによってこれらの特徴を活かすような情報として聞いてほしい」と語った。
Speed & Immediacy
これまでPS4のゲームを開発してきた人ほど体感しやすいポイントで、超高速SSDなどの搭載によってPS4のゲームでは実現できなかったゲームが開発できるようになるという。
だが、「PS5が生み出す圧巻のスピードは高速SSDだけで実現しているわけではない」と秋山氏。SSDはPS5独自のカスタマイズがされており、理論上5.5GB/sの読み込み速度を誇る。
例えば「デモンズソウル」では圧倒的な速度でデータを読み込み、死亡しても即座にマップの読み込みが行われストレスのないプレイを可能にし、「スパイダーマン マイルズ・モラレス」では、活気に満ちたニューヨークを縦横無尽に駆け巡る様を再現している。
PS5にインストールされたゲームは短い起動時間でプレイできるようになっており、ゲームデザインに大きな影響を与える。高速なロードは、より一層ゲームに没頭することが可能で、ユーザーエンゲージメントを高めることにも直結する。
更に開発視点からでは、ロードの待ち時間を回避するために仕方なく容量を少なくしていたようなケースでも、その必要がなくなるのだ。一方で、ゲーム本体の容量が大きくなってしまうという懸念は、大容量のBlu-rayにて100GBまで対応可能だという。
だが、ゲームの容量が大きくなればユーザーのPS5のSSD容量を圧迫してしまうという問題が発生する。そこでPS5ではインストールしたい項目をユーザーが選べるシステムを採用しており、例えばゲームのシングルプレイの部分だけインストールすることが出来たり、マルチプレイの部分だけインストールしたり、と、ユーザーが自身でカスタマイズすることも可能だ。
また、ゲームのアップデートファイルなどはPS4よりも早く実行できるようになり、PS5のストレージをスマートフォン用アプリ「PS App」から遠隔で管理できるようにもなった。インストールしたいものを遠隔指示でダウンロードすることはもちろん、遠隔でストレージの操作も出来るため、外出先でもすぐにPS Appから空き容量の確認・確保など様々な操作が行える。
Deep Immersion & Control
ここからは、より没入感を高めるゲーム体験のために開発されたPS5用コントローラ「DualSense」をメインに紹介していこう。DualSenseは人間工学に基づいたデザインとなっており、ハプティックフィードバック、アダプティブトリガー、内臓マイク/スピーカーなど、様々な機能が搭載されている。
「コントローラを手に持っていると思ってもらいたくなかったので、良い意味でコントローラの存在感を消したかった」と、秋山氏。
「ASTRO's PLAYROOM」ではジャンプをする時に力を溜める感覚をアダプティブトリガーで感じられたり、アダプティブトリガーで縄を掴む感触や、ハプティックフィードバックで砂の粒子を感じたりも出来るようになっている。
3DオーディオもPS5の魅力のひとつで、あらゆる方向から音がきこえてくるような感覚を味わうことが出来る。秋山氏は「ホームシアターなどのオーディオ機器を持っているユーザーだけではなく、全てのユーザーに素晴らしいサウンド体験をしてもらいたかった」と語った。
3Dオーディオ用のカスタムエンジンを開発し、雨粒が当たる音や敵が潜んでいる方向まで感じられるようになり、サラウンドシステムなどを所持していなくとも、リッチなゲーム体験を可能にした。
また、レイトレーシングもPS5の目玉の新機能だ。レイトレーシングとは、光の屈折と反射をシミュレートしてより現実感のあるグラフィックを実現するレンダリング技術で、GPUの性能向上によって実現している。
これらのゲームへの没入感を高める要素については「ぜひPS5タイトルの開発初期から最適化してほしい」と秋山氏は述べていた。
Direct Access
PS5では、いちいちゲームのタイトル画面に戻らなくても、ゲームベースという機能を使用してユーザーが遊びたいコンテンツに簡単にアクセスできるようになっている。
コントロールセンターでは、プレイヤーが現在利用できるアクティビティを見ることが出来る。プレイの達成率や、プレイにかかるクリア想定時間も表示されるため、ユーザーがアクティビティを見て、遊びたいコンテンツを選ぶことも可能になっている。
秋山氏によれば、「アクティビティはとても重要で、プレイヤーの有限な時間をどう使ってもらうかを決めてもらうことができる」という。もちろんこのアクティビティは開発側がユーザーのために用意するものなので必須の項目ではないが、「ゲームをプレイするモチベーションを保たせるようなアクティビティを作ってほしい」とのことだ。
アクティビティにはそのコンテンツを遊ぶことで得られるトロフィーや、クリア時の報酬などを表示することも可能で、ゲームのタイトルメニューを起動することなくこれらの情報をユーザーに見てもらうことが出来る。
また、PS5では100人までのプレイヤーとパーティを組んで、チャットやコンテンツの共有が可能だ。PS Appからもパーティに参加することが出来、フレンドがシェアスクリーンをしていればチャットを楽しみながら観戦したりと、PS5を起動していない時でも、様々な繋がりを楽しめる。
ボイスチャットは最大16人まで参加可能で、オンラインマルチプレイに招待して遊ぶことも出来る。もしもフレンドがPS5を起動していなくともPS Appに通知が届くので、積極的に誘っていってほしい。
ゲームを起動したままフレンドのオンライン状況やアクティビティが見れるので、一緒に遊べそうなフレンドをみつけたら招待したり、ボイスチャットをすることも可能。PS5上のパーティでボイスチャットをすることはもちろんのこと、ゲーム上のパーティでのボイスチャットと切り替えられるので、状況に応じて使い分けられる。ボイスチャットにはミュート機能も搭載しているので、プレイに専念したい時は便利だ。
また、アクティビティではユーザーがプレイに行き詰ってしまった時などのために、ゲームを止めずにすぐにガイドやヒントを入手できる機能を搭載。PS Plus加入者ならば、ヘルプアイコンが表示されているアクティビティにて、短いヒント動画や攻略に役立つ情報を見ることができる。ヒント動画をサイドに流したまま、動画をお手本にユーザーがチャレンジすることも可能だ。
ゲームヘルプをユーザーに見せるためには、開発側にアクティビティ用にゲームのキャプチャ動画やテキストを用意してもらう必要があるものの、攻略が解らないユーザーがスマホで攻略サイトを検索したりする必要がないため、ユーザーのゲーム体験を止めることなくプレイしてもらえるという利点がある。
文字でのヒントがあるだけで攻略に役立つ場面も多い上に、その都度ゲーム体験を止める必要がないというのはユーザーにとっても非常に魅力的なので、積極的に活用してほしい。
Communications
各ゲームには、そのゲームの情報をまとめたハブという場所が用意され、ハブにはお知らせなどが表示される。ハブにはそのタイトルの最新情報やカスタマイズされた情報が提供されていくため、ユーザーが能動的に最新の情報を探しにいかずとも、DLCなどの最新情報を多くのユーザーに届けることが出来る。その最新情報は、PS Appからも閲覧が可能だ。
また、非同期プレイでも、スコアなどのチャレンジアクティビティでフレンドとスコアを競い合うことも出来る。
チャットルームはパーティ用のシステムチャットの他、待機用、ゲームプレイ専用、タイトル独自チャットなど、それぞれをシステムUIで切り替えられるので、様々な用途にあわせてユーザーがコミュニケーションの場所を使い分けられるのも特徴だ。
オンラインマルチプレイで活躍した他のプレイヤーに、匿名で拍手を送る機能も搭載。もらった拍手はそのユーザーのプロフィールに表示されるので、プレイのモチベーションに繋がる。
VR on PS5
新たなVR体験として、新しいVRコントローラを紹介しよう。
新しいコントローラはより深い没入感を提供するべく、タッチ感覚を活用するという新しい手法を導入。デザインは自由度の高く、遊びながらコントローラを持ちやすい球体になった。
こちらも人間工学に基づいたデザインで、様々な手のサイズのユーザーテストを行っており、小さい手の人から大きい手の人まで自然と持つことが出来る。左右のVRコントローラにアダプティックトリガーボタンを搭載し、ハプティックフィードバックも搭載しているので、岩だらけの場所を歩いたりするとその感触が手に伝わるようになっており、これまでよりも更に一段階上のVR体験が表現できるようになる。
PS5ゲーム開発のリモートワークをサポート
PS5ではリモートワークに対応するべく、開発機から映像を飛ばしてシェアプレイのような感覚で開発を行えるようにしているという。更に、オンライン上の開発で最も課題となる遅延対策なども行っており、リモートワーク用のツール支援もある。
「リモートワークの環境例は一例であり、他にも色々な方法があるため、ぜひ相談をしてほしい」と秋山氏。今後もリモートワークへのサポートは、様々な形で行っていくそうだ。
最後に秋山氏は、「PS5の特徴を活かして、更に新しいゲームを作っていってほしい。開発初期はもちろん、リリース後まで、色々ご要望がありましたら御寄せください」とセッションを締めくくった。
PS5を所持している筆者も、まだPS5の機能のうちの半分も使いこなせていないのでは、と感じるセッションで、もっと色々なことを試してみたくなった。また、所持しているゲームの中には本セッション内で紹介された機能に対応していないタイトルもあるため、ひとりのユーザーとしてますます快適なゲーム体験ができるようになることを期待したい。