パナソニックが本日9月10日に発表したゲーミングスピーカー「SC-GN01」。進化したゲームサウンドの体感とヘッドセットの抱える課題解消に向け、スクウェア・エニックスがサービス中の「ファイナルファンタジーXIV」サウンドチームと協業で開発したという。発売は10月22日、価格はオープンで市場想定価格は税込み2万2000円前後を見込んでいる。
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両者は2019年1月に、FFXIV推奨サウンドバー「SC-HTB01」も発売している。こちらもゲームに特化したモードや、コンパクトな設計で多くのゲームプレイヤーから好評を得たモデルだ。そんな経緯もありつつ今回発売となる「SC-GN01」はどのような性能を備えているのか……。発表に先駆けて行われたセミナーの模様をお届けしよう。
7.1chのゲームサウンドをコンパクトに楽しめるネックスピーカー
現在、多くのゲームタイトルは5.1chや7.1chに対応しているが、ヘッドセットはバーチャルサラウンドが主流だ。また、ヘッドセットは長時間の使用に伴う疲労や不快感が避けられず、周囲の音が聞こえないジレンマも。これらの課題に対し、パナソニック コンシューマーマーケティングジャパン本部 商品センターの岩本篤氏は、4つのスピーカー搭載とネックスピーカー形状により解決を図ったという。
「SC-GN01」のポイントは、大きく3つ。1つ目は、4つのスピーカーがもたらす没入感だ。「TRUE MAGESS(True Majestic Augmented Gaming Environment Sound System)」が独自のデジタル処理と最適なチューニングでオブジェクトの位置や移動をクリアに再現し、スピーカーが首元を囲むようなレイアウトで自身を中心とした音場を実現。耳から直接音を聞くヘッドセットとは異なり、現実世界のように頭の外から聞こえる音の広がりを体感することができる。さらに2chのステレオサラウンド信号も4chへ自動でアップコンバートし、奥行きのあるサウンドを楽しめるそうだ。
一方、人間の耳は20Hz程度の低音まで聞けるが、コンパクトなスピーカーでは80Hz以下の低音を再生するのは困難となる。そこで本製品では欠落した信号の倍音を生成し、低音部分を疑似的に知覚させる「H.BASS」という技術で低音を再現している。
ポイントの2つ目はゲームのジャンルに合わせて選べる「サウンドモード」。臨場感と迫力に特化した「RPGモード」、正確な音の低位や足音などを確認できる「FPSモード」、キャラクターボイスが聞き取りやすくなる「ボイス強調」などのほか、映画や音楽向けのモードも用意した。
3つ目は、長時間プレイでも快適に利用できるデザインだ。ボディには人体データ分析結果に基づいた独自のフォルムを取り入れ、ボイスチャットに干渉しないエコーキャンセルマイクも搭載。シリコンゴム製のパッドを使用し、軽量かつ柔らかなつけ心地も提供している。
サウンドモードの切り替えやボリューム操作、マイク/サウンドのミュート機能もボタンを押すだけで変更可能。サウンドモードの切り替えは音声ガイド付きで、1度押すと利用中のモードを確認でき、素早く続けて押すと順次モードが切り替わっていく。ボリュームステップ数もスピーディーに行えるよう設定されている。
電源供給と音源は、PC/PS5/PS4/Nintendo SwitchのTVモードであればUSBケーブル1本(およそ3m)で可能。Xbox Series X|S/Xbox OneとNintendo Switchのテーブル/携帯モードは付属の音声接続コードとUSBケーブルを利用する。
「ファイナルファンタジーXIV」のサウンドチームがこだわりを語る
続いて「ファイナルファンタジーXIV」のサウンドディレクター・祖堅正慶氏と、同サウンドデザイナー・絹谷剛氏がリモートで登場。サウンドのプロフェッショナルというだけではなく、ヘビーゲーマーの視点でこだわった点を話してくれた。
共同開発したサウンドバー「SC-HTB01」が好評だったこともあり、パナソニックから「ゲーマー向け製品を作りたい」という話があったと語る祖堅氏。前回のアライアンスを組んだ際かなり細かく注文をつけたため、自分たちに聞けばゲーマー好みの製品を作れると思われたのではと笑いながら振り返る。
プロトタイプはUSBケーブル1本という仕様ではなく電源が必要など、接続が煩雑だったため「これではゲーマーは買わない」とストレートな意見をぶつけたこともあったそう。音質などのやりとりは当然のこと、USBケーブルの長さに至るまで「ゲーマーはこういう商品を求めている」と正直に話し合ったそうだ。
ゲームが内包するコンテンツも多種多様となり、サウンドモードも1つのプリセットで解決できるほど単純ではない。そのため、世界に没頭するための「RPGモード」、勝つための「FPSモード」といったように異なる目的のために複数のモードを用意している。例えば「RPGモード」であれば色々なシチュエーションやドラマチックなカットシーン、シーンを盛り上げるBGM、広大なフィールドなどを、どれだけ臨場感をもってプレイヤーに届けられるかディスカッションしたと話す絹谷氏。「FPSモード」では音質や広がりは調整せず、敵の位置を早く正確に把握できるような定位についてこだわり、マルチプレイの対戦で勝つことや、ランクを上げるためといった目線で調整をしたと語る。
サウンドデザイナーとしてだけでなく、1人のゲーマーとしての知見を製品に注ぎ込んだと話す絹谷氏。デバイスは1つだが各モードに個性があり、それぞれの違いが楽しめるという。実際に製品を利用しながらチャットで連日会議を行いながら決めたそうで、ボイスチャットのマイクについても仕上がりに自信を見せる。ゲームのシチュエーションと重なって足音が背後から聞こえた感覚には非常に驚き、プレイする上で大きなアドバンテージなるのではと提案。FPSだけでなく、ホラーゲームとも相性がいいのではと熱心なプレイヤー目線で語ってくれた。
そして「ファイナルファンタジーXIV」専用デザインを施した本体やパッケージのコラボレーションモデルも発売予定とのこと。祖堅氏は「SC-GN01」の起動音も作ったので、コラボレーションモデルでも何かできないかと構想しているそうだ。詳細は後日発表されるので、楽しみに待とう。
ゲーマーの「こんなネックスピーカーが欲しかった!」に応えたモデル
わずかな時間ながら実際に試すことができたので、使用感について紹介しよう。まず持った際は思った以上に柔らかな手応えで、かつ軽量さに驚いた。とくに長時間利用で気になるのは重量だが、ずっしりとした感覚はなく、そこまで気にせずに済みそうだ。
ワイヤレスネックスピーカーは自由に動けるというメリットはあるものの、送信機の設定や電源の確保が必要で、本体の充電も欠かせない。ズボラな筆者は使おうと思ったのに充電を忘れてしまっていた、しっかり充電はしたものの長時間プレイでバッテリーが切れてしまった……という経験もあるので、電源や配線を気にせずUSBケーブル1本で利用できるのは非常に嬉しいポイントだ。なお筆者自身はワイヤレスネックスピーカーの利用で音のズレや遅延を感じたことはないが、この「SC-GN01」は有線なのでそうした遅延を極力抑えて利用したいプレイヤーにもうってつけだ。
ボタン操作には多少慣れが必要そうだが、音声や音で教えてくれるので場所さえ覚えれば切り替えは簡単にできそうだ。「RPGモード」や「ボイス強調」などの明確な違いを感じられるほど試す時間はなかったが、4つのスピーカーを2つにする「ステレオモード」にしたところ音場が急速に狭まったような感覚になった。切り替えてみると「頭の後ろからも音が聞こえる」というより「現実と同じように360度から音がする」のと変わらないなと改めて感じられた。
もちろん周囲への音漏れを配慮するのでれあればイヤフォンやヘッドフォンの方が向いているが、着信を把握したい、家族からの声掛けに気付きたいなど周囲の音も合わせて聞きたい場合はネックスピーカーの方がオススメだ。
「暁月のフィナーレ」の発売を前に、プレイ環境を見直している人も多いことだろう。とくにヘッドセットやイヤフォンの長時間利用で頭や耳が痛くなったことのあるプレイヤーは、このお手頃価格のネックスピーカーをぜひ選択肢の1つに入れてほしい。