スクウェア・エニックスが2021年9月24日に配信を開始したPS4/Nintendo Switch/PC(Steam)/iOS/Android用ゲーム「アクトレイザー・ルネサンス」。本作の序盤を先行プレイする機会をいただいたので、その魅力を紹介する。
本作は1990年に発売されたスーパーファミコン用ソフト「アクトレイザー」のリメイク作品。アクションパートとシミュレーションパートに分かれたゲームプレイや、アクション部分の骨太な難易度はそのままに、現代風の改良・アレンジを加え、多数の追加要素を盛り込んでいる。
「アクトレイザー」といえば、ゲーム音楽作曲家・古代祐三氏のキャリア初期の代表作のひとつであり、「ファイナルファンタジー」シリーズで数多くの楽曲を手掛ける植松伸夫氏が、その音作りに大きな衝撃を受けたタイトルとしても有名だ。
「アクトレイザー・ルネサンス」では原作全曲の古代氏自らによるアレンジバージョンと、15曲の新規BGMを収録。さらにすべてのBGMをスーパーファミコン音源版に切り替えることも可能となっている。なんと新規BGMにまでスーパーファミコン音源版も用意されているというから驚きだ。これらの楽曲はゲーム内の「ミュージックモード」でじっくりと堪能できる。
筆者はオリジナルとなるスーパーファミコン版をプレイしていないので、純粋に「2021年にプレイするゲームとしてどうなのか?」という視点から本作をプレイした。筆者と同様に「名前だけは知っているけど、どんなゲームなの?」と気になっている方の参考になれば嬉しい。
豊富な追加要素で手強くもストレスフリーなアクションパート
主人公は神。荒廃した地上を魔物たちから取り戻し、人間を住まわせてその生活を発展させ、最終的には魔王サタンの打倒を目指すというのがゲームの目的だ。こういったストーリーは、主人公の従者である“天使”を通して語られる。
ゲームをはじめると、難易度を“イージー”、“ノーマル”、“ハード”から選択できた。この難易度選択はオリジナル版にはない機能とのこと。イージーモードではライフ数が無制限になり、ゲームオーバーにならないということで、アクションが苦手な人でも楽しめることと思う。
導入部の物語が終わると、すぐに魔物を討伐するための横スクロールアクションパートが始まった。これが冒頭からなかなか難しい! 道中の敵は挙動が独特なものが多く、そのパターンを把握するまでは何度もダメージを受けてしまった。しかしこうした敵はこちらの攻撃を1~2発加えれば倒せるものがほとんど。テンポが良く、操作性も良好なので、敵を斬り伏せながらステージを進めていく感覚は実に痛快だ。
操作する神のアクションもオリジナル版より豊富になっているとのことで、連続攻撃や斬り上げ、空中からの振り下ろし(叩き斬り)といった多彩な攻撃を敵との位置関係に合わせて使い分けていくことになる。また、バックステップを使用すれば移動中は無敵時間が発生するので、使いどころを見極めれば非常に便利。
ステージにはいくつかのギミックも用意されていた。大木のような魔物の上に乗って棘のついた床をやり過ごしたり、紐にぶら下げられた丸太に乗って移動したり。ジャンプを駆使しなければたどり着けない足場の上にHP・MPの最大値を上昇させるアイテムがあったりと、ただ向かってくる敵を倒すだけではないステージ構成で、飽きさせない。
ステージの最後にはボスが待ち構えている。初見での撃破できなかったが、何度か挑戦して行動パターンを把握し、バックステップなどを駆使して立ち回れば気持ちよく倒すことができた。当初は苦戦した相手に対して積極的に攻めまくれるという、アクションゲームのトライアンドエラーが生み出すカタルシスがしっかり感じられる設計になっており、満足感は大きかった。
HPが0になるとライフがひとつ減ってしまうが、回復とオートセーブを兼ねたチェックポイントの石像が適度な間隔で設置されており、ここから再スタートできるので、徒労感は感じにくい。また、ノーマルモードでプレイしていたのでライフ数も0になるとゲームオーバーになってしまうのだが、そうなる前にはステージクリアまでたどり着ける絶妙なバランスになっている印象だ。
総じて「難易度は高めだが、気持ちよく上達の喜びを感じられるアクションゲーム」として、しっかりと2021年の水準を満たしていたように思う。
のちほどプレイさせてもらったふたつ目のアクションステージでは、「魔法」と「魔力結晶」というふたつの新たな要素が解禁された。
魔法はMPを消費して放つ特殊な攻撃のことで、今回は前方に火球を放つ“炎の魔法”が使用できた。魔法は6種類あり、ステージ中に切り替えられるとのこと(ステージ内での切り替えは、リメイク版で新たに導入された機能)。今回のプレイ範囲では炎の魔法しか使えなかったが、戦い方のバリエーションはこれから先、さらに増えていくようだ。
「魔力結晶」は敵を倒すたびに落とす結晶を拾うことでゲージが貯まり、攻撃力と魔法攻撃力が段階的に上昇するという要素。最高の5段階目までゲージを貯めるとHPがゼロになったときに1度だけ復活できる。敵は避けて進むこともできるが、しっかり倒しながら進んでパワーアップすれば、強敵にも対処しやすくなるというわけだ。
天使の「導き」や「奇跡」で人間たちを繁栄させていくシミュレーション&ストラテジーパート
アクションパートをクリアすると、天使からチュートリアルを受けながら、シミュレーションパートをプレイすることになった。
ここではまず天使の「導き」によって人間たちが生活できる土地を増やしていく。導きに沿って地上の人間たちが建物をつくり、畑を耕して徐々に生活圏を広げていく様子は眺めているだけでも楽しい。「奇跡」コマンドを使えばMPを消費して、雷を放って土地を広げるのに邪魔な木々を壊したり、雨を振らせて火事を消したりといった行動も取れる。
また、天使は人間たちを導きつつ、“魔物の巣”から現れ、人間の生活を脅かす魔物たちを、矢を放って倒さなければならない。魔物を倒すとMPが回復するので、これを挟むことで「奇跡」がまた利用できるようになり、ゲームプレイにひとつのサイクルが生まれるのだ。
「導き」で人間を“魔物の巣”まで導けば、神自らが巣穴に突入。短めのアクションパートが始まり、ここで“発現器”を倒せば魔物出現の根本を断つことができる。こうして人間たちの繁栄の障害を、ひとつひとつ取り除いていこう。
加えて、本作のシミュレーションパートにはオリジナル版にはなかった“魔群侵攻”と呼ばれるリアルタイムストラテジー要素が存在する。ここでは人間たちの土地に迫りくる魔物の群れを、砦をつくってせき止めたり、「奇跡」で一掃したりして倒すことになる。マップの中心にある神殿が破壊されたらプレイヤーの敗北だ。
ここでは特殊なユニットに行き先を指揮して、魔物の討伐に強力してもらうこともできた。このユニットは人間の悩みを解決するクエストをクリアしたときに入手できる報酬“経験の書”でレベルアップすることもできる。プレイした範囲ではフィロトスという屈強な男が戦いに参加してくれたが、今後のプレイではより多くのキャラクターを指揮することもありそうだ。
これらシミュレーションパートは最初こそ覚えることが多いが、丁寧なチュートリアルによって流れはすぐ把握することができる。また、そこまで計画的に進めていく必要はなく、それでいてプレイした分だけ人間の生活が発展していく確かな達成感が得られる絶妙なバランスだ。
アクションゲーム部分を期待している人の中にはシミュレーション部分の存在を不安視する人も多いかもしれないが、適度なユルさで気分転換になる、良い感じのバランスなので、あまり構えずに楽しんでほしい。
いまプレイしても新鮮かつ快適な、良作リメイク
「アクトレイザー・ルネサンス」はアクションパート、シミュレーションパート共にいまプレイしても新鮮かつ快適に楽しめるゲームになっていた。いずれのパートにも新マップも追加されているとのことなので、オリジナル版のプレイヤーはこれを目当てにプレイするのも良いかもしれない。
アクションパートは画面に占める主人公のグラフィックのサイズ感など、昨今の流行とはひと味違うバランスが独特の迫力や手応えに繋がっている印象もある。シミュレーションパートは人間たちの生活を徐々に発展させていく達成感が魅力となっていた。そしてこのふたつのパートが絶妙に絡み合う独特のプレイフィールは、ほかのゲームではなかなか得られない味わいで、実に楽しかった。
アレンジされた古代祐三氏のBGMもさすがのひとこと。ときに格調高く、ときに血湧き肉躍る雰囲気を、独特のファンタジー世界に加えてくれている。ここまでに紹介してきた要素にグッと来た人には、ぜひプレイしてみてほしい。