東京ゲームショウ2021 オンラインにて発表された、スクウェア・エニックスのPS4/Nintendo Switch/PC(Steam)向けRPG「ダンジョンエンカウンターズ」。2021年10月14日(Steam版は10月15日)に配信される本作を先行体験する機会をいただいたので、ゲーム序盤をプレイして明らかになったその魅力をお伝えする。

「ダンジョンエンカウンターズ」のディレクターを務めるのは伊藤裕之氏。過去にディレクターを努めた作品としては「ファイナルファンタジーIX」などが挙げられるが、ゲームデザイン、バトルデザインを手掛けた作品はさらに多く、そのほとんどが独創的なシステムを導入している。

ゲーム史的な功績としては、「ファイナルファンタジーIV」のアクティブ・タイム・バトルの生みの親であることが大きいだろう。さらに「ファイナルファンタジータクティクス」、「ファイナルファンタジーVIII」、「ファイナルファンタジーXII」など、伊藤氏のデザインによって唯一無二のゲーム性を有することとなったタイトルは枚挙にいとまがない。

これらの中にはシステムを使いこなすまでのハードルが高い作品もいくつかあるため、「ダンジョンエンカウンターズ」もシステムが複雑なのではないかとイメージする人もいるかと思う。これに関しては、むしろ逆だ。本作はシンプルなゲームルールのもと、「RPGにおける“探索”のおもしろさの本質」を抉り出す設計が細部にわたって行き届いており、「新鮮ながら極めて純度の高い、誰もが楽しめるRPG体験」を実現しているのだ。

あまりに本質を突き詰めたゲームであるため、実際にプレイして感じられるおもしろさのうち、文章と画面写真で伝えられるのはほんの僅かな部分かもしれない。それでも現時点で把握できた特色や魅力を、可能な限り伝え切るべく本稿は書かれているので、本作が気になっている方にはぜひ最後まで読んでほしい。

すべてが“番号”で表現されたゲーム画面が意味するものは?

「ダンジョンエンカウンターズ」のゲーム画面を見て最初に印象に残るのは、床がマス目になっているフィールドと、その一部に表記された白い番号だろう。この番号は、そのマス目で起きる“イベント”を表しており、本作では、ゲーム内で活用できる施設、アイテムの入手、敵との戦闘など、ありとあらゆる事象が“イベント”としてひと括りにされている。

ゲーム開始時にプレイヤーキャラクターがいるフロアである“00階”は、拠点である町を表現している。スタート地点の“イベント00”にあるのは、最大4人のパーティメンバーを編成するための“アカデミー”。画面右上に見える“イベント14”~“イベント18”は、装備品やアイテムを販売するショップだ。ほかにも、ダンジョンから帰還したときに活用するための施設がここには揃っている。

“イベント01”の「階段下りる」のマスに着いたら、そこが地下に広がるダンジョンの入口。ここから先は、すべてのフロアで“イベント01”、つまり下へと降りる階段を探して、ダンジョンをひたすら深くへと潜っていくことになる。

各数字がどのイベントを表しているかは、メニューからいつでも確認できる。

ミュージックディレクターとして植松伸夫氏が参加しており、すべてのBGMがクラシックの名曲のアレンジとなっている。印象的なものでは、00階で流れるのはベートーヴェンのピアノソナタ第8番「悲愴」。筆者がクラシックに疎く、ほかの楽曲は曲名が分からなかったのだが、それでも耳馴染みのある旋律が大半だった。

戦闘曲は、大胆にハードロック調のアレンジとなっていたりと、聴き応えは抜群。加えてこの「誰もが知る名曲の、新鮮なアレンジ」というのは、「RPGの本質的な魅力を、新機軸のゲームデザインで体験する」という本作のコンセプトとシンクロするものでもあるのだろう。この一貫性が、作品世界への没入をどっしりと下支えしてくれているように感じた。

なお、今回のプレイでは、東京ゲームショウ2021前にスクウェア・エニックスで行われた試遊会と同じく、「地下10階まで45分間でたどり着けるか?」というタイムアタック形式でプレイすることとなった。製品版では時間を気にせず、各フロアを心置きなく探索することが可能だ。

専用アビリティをセットすれば、敵とのエンカウントも目で見ることができる

ダンジョン探索をはじめてすぐ、「バトル番号表示」という“移動アビリティ”が手に入った。これはダンジョン内の魔獣との戦闘が生じるマスを視覚化するアビリティだ。既存のゲームの“アビリティ”とは大きく異なる効果説明に、少し困惑するかもしれない。「ダンジョンエンカウンターズ」におけるアビリティには、ゲームルールを拡張・刷新するような、ゲームプレイ全体に影響を及ぼすものが含まれるのだ。

プレイした範囲で入手できたアビリティを一部抜粋すると、“移動アビリティ”としては、上のフロアへのワープ”仮想階段上り”、戦闘中に使用できる“バトルアビリティ”では、“逃げる”コマンドや、“パーティが残りひとりになると攻撃力が倍になる”といったものがあった。

新たなアビリティを有効化するには、“アビリティ変更所”というイベントのマス(03番)にたどり着く必要がある。ここではプレイヤーが現時点で有している“アビリティポイント”の中で、各アビリティのコストを考えて、アビリティの付け替えを行うことになる。今回プレイした序盤では、アビリティポイントの上限に届くほど多くのアビリティは手に入らなかったが、これから先の探索で、どのアビリティを有効化すべきか、大いに悩む局面は何度もありそうだ。

使用回数が限られたアビリティもあるが、回数を回復するイベントも用意されていた。

アビリティポイントの上限はダンジョン探索が進むほど増えていく。本作では踏破したマスが自動的に白く塗りつぶされるのだが、「1フロア分の床をすべて踏破する」などの条件を満たすたび“踏破実績”が解除され、アビリティポイントが与えられるのだ。

几帳面なプレイヤーならば、これまでプレイしたゲームでも、ダンジョンは隅々まで探索しつくさなければ気が済まなかった人はいるだろう。しかし見返りの無い、単なる自己満足であることも少なくなかったと思う。本作では、根幹に据えられた「パーティの成長」という、大きなリターンが踏破のたびに得られる。「もうすぐフロアを踏破できるが、これを達成するまでにアクシデントがあるかもしれない。先に回復イベントのマスを見つけるべきか?」といった葛藤にも大きな意味が生じ、探索を緊張感のあるものにしてくれているのだ。

ATB+“物理”と“魔法”の概念が生み出す、シンプルながら奥深いバトル

「バトル番号表示」のアビリティを有効にすると、戦闘が発生する“バトル番号”のマスがダンジョン内で見えるようになるのは前述のとおり。“バトル番号”はほかのイベントマスと違い、黒い数字で表記される。マスの上に乗ったら戦闘開始だ。

戦闘のベースにあるのは、記事の序盤でも伊藤氏の発明として紹介したアクティブ・タイム・バトル(ATB)。“ATBゲージ”が満タンになったキャラクターから行動できるようになる。

ここからが少々特殊なところで、本作の戦闘では、敵・味方ともに“防(防御)”と“魔防(魔法防御)”の数値がそれぞれ設けられており、攻撃手段によって、どちらの数値を削れるかが変わってくるのだ。この戦闘時のルールを以下に記した。

・“物理攻撃”は“防”の数値を削る攻撃。“物理攻撃”で相手のHPを削れるのは、対象の“防”の数値が0になっているときのみ。
・“魔法攻撃”は“魔防”の数値を削る攻撃。“魔法攻撃”で相手のHPを削れるのは、対象の“魔防”の数値が0になっているときのみ。

ルール自体はいたってシンプルでありながら、これによって本作の戦闘は実に奥深いものになっている。

敵によっては防と魔防の数値が大きく異なっている場合があり、数値が低いほうが“弱点”といえるわけだが、パーティメンバーに強力な攻撃を使える者がいれば、あえて数値の高いほうを削る戦法を選んだほうが、効率よくダメージを与えられるかもしれない。ATBゲージによる攻撃順も考慮しつつ攻め方の最適解を導こうと思うと、なかなか悩まされる。

攻撃の属性は、使用する武器によって変わる。ほとんどのキャラクターは武器をふたつ装備できるので、多くの敵へと汎用的に対応したければ、全員に物理武器と魔法武器をひとつずつ装備させるのがセオリーだが、ゲームを進めていると、補助的な効果を持つ特殊な武器が手に入ることもある。こうなってくるとどのように取捨選択すべきか、実に悩ましい。

加えて、武器には“固定ダメージ”のものと“ランダムダメージ”のものがある。ランダムダメージの武器の多くは、攻撃力が、同時期に手に入る固定ダメージのものより高く設定されているが、表示されている値を大きく下回るダメージが出る可能性もあり、戦局のコントロールが難しくなる。堅実に戦うか、ギャンブル性が高い戦い方を選ぶか、プレイヤーによって方針が大きく変わってきそうな部分だ。

新たな武器や防具を手に入れるにはダンジョン内で拾うほか、“00階”をはじめ一部の階層に配置されたショップで購入することもできる。強力な武器を揃えて攻撃力を高めるのも大事だが、こちらにも防・魔防の数値が設けられている以上、これらの数値を上げる防具も大切だ。防・魔防の数値はいくら削られても戦闘終了時に全回復するが、HPは回復しないため、防・魔防までで食い止める必要性がある、と言えば、その重要さが分かるだろう。

ただし、武器や防具にはひとつひとつに“装備コスト”が設けられており、仲間たちの“装備ポイント”の上限を超える装備は身に付けられない。レベルアップで装備ポイントの数値は増えていくが、すべてのパーティメンバーにベストな武器・装備を揃えることは、コスト的に(あと敵を倒すことで入手できる金銭的にも)、今回の先行プレイでは不可能だった。必然的に、戦闘ではメンバーごとに得意・不得意が生じることになる。

このように、完全無欠のパーティにするのは困難な中で、どのような戦い方をすべきか、敵の戦力と状況に合わせて都度、試行錯誤していくのが非常に楽しいゲームだ。

隠し通路や、特定の座標を見つける謎解きイベントも!

ここまで探索と戦闘について別々に書いてきたが、本作はこれらが有機的に絡み合うことで、よりいっそう緊張感に満ちたゲームプレイを実現している。

“バトル番号”のマスは、数字が大きいほど強敵が出現するため、「あの道の向こうに行きたいが、危険そうなマスが道を塞いでいる」といったシチュエーションが多々ある。また、フロアを移動すると“バトル番号”マスは復活するので、「一度回復マスがあるフロアまで引き返そうか」と考えても、幾度かの戦闘は避けられない場合が多い。まだ見ぬ回復マスにたどり着くために、あえて突き進む勇気が功を奏すこともあるだろう。探索中も継続ダメージを受ける毒などの状態異常を受けていると、回復イベントを心から渇望することになる。

“バトル番号”を含め、イベントの通し番号には16進法が使われている。
油断していると歯が立たない魔物が出現することも。

そうした緊張感の中、必死の思いで安らげる場所にたどり着けたときの喜びは大きい。回復イベントのマスのほか、ショップのマスもあった場合は、新たな武器や防具を購入し、これまで苦戦してきた敵を楽に倒せるようになったりと、その後の探索が一段と楽になる。この緊張と解放の緩急が生み出すカタルシスは、感動的だ。

ちなみに回復系のマスは何度でも利用できるので、1箇所見つけたらそこに戻って何度も回復しつつ、慎重に探索を進めることもできる。意外と救済策が多く用意されているのもこの「ダンジョンエンカウンターズ」の特徴だ。

回復イベントには“HP回復”、“戦闘不能回復”、“毒回復”などがある。

ダンジョンにはほかにも、いくつもの仕掛けが用意されていた。一見繋がっていないように見えるマスへとたどり着くための“隠し通路”があったり、ある特定の座標を示した謎解きのようなイベントもあり、こうした座標にたどり着くとレアな武器が入手できた。時間制限があったためスルーした謎解きもいくつかあったので、こちらでは何が手に入ったのか、気になったところだ。

この画像の隠し通路はまだ分かりやすいが、中にはほかのフロアを経由したりと、
たどり着くのにひと工夫が必要な場所も。
謎解きのお題も、思考が求められるもの、注意力が求められるものなど、多種多様。

ちなみにパーティが全滅したときは、00階にあるアカデミーに控えているメンバーで新たなパーティを組み、全滅地点まで救出に向かうことになるという。キリのいい階層まで進めば“双方向式転送装置”なるマスが用意されているので、救出の際にショートカットとして使えそうだが、控えメンバーが育っていなければ、念のため戦闘をくり返してレベルを上げておくべきかもしれない。この辺りもプレイヤーの性格によって方針は変わってきそうだ。

魔獣の特徴が分かるイベントも。階層が深くなると癖のあるスキルを持つ敵が増えてきたので、
この先さらに重要になりそうだ。
ゲームから提示された「枠組み」が壊れていく、新鮮な驚き

そうこうしながら、無事に地下10階まで到着。なんとかチャレンジ目標を達成することができた。引き続きもうしばらくプレイさせてもらえたのだが、ここで得た驚きが、先行プレイした中で最も心を動かされた瞬間だったかもしれない。

地下10階以降は、ダンジョンの雰囲気が変化。戦闘BGMも変わった。

地下12階のアビリティ変更所までたどり着き、入手した“マップ表示範囲拡張”のアビリティをセットすると、ゲーム画面の“視点”が遠ざかり、フィールドをこれまでよりも遠くまで見渡せるようになったのだ。本作でより遠くまで見渡せるというのは、先に待っているイベントやフィールドの構造をより広範囲まで把握できることに繋がるため、探索方針も立てやすくなるなど、快適さが大きく変わってくる。

ここまで、ゲームから提示されてきた「枠組み」に納得してプレイを続けてきたからこそ、この枠組みそのものを壊す術をゲームの側から与えられたことに、大きな驚きがあった。そして序盤にこうした驚きが用意されているということは、これから手に入るアビリティにも、さらにいくつもの枠組みを壊してくれるものが用意されているに違いない。

プレイできた範囲でも実に刺激的なゲームだった。しかし、この先に待っているものによっては、今回の序盤のプレイは、これから味わう唯一無二の体験の、ほんの一端でしかないのかもしれない。そう考えると、はやく製品版で、さらにダンジョンの奥深くへと足を踏み入れたい欲望がふつふつと湧き上がってきた。

昨今でも、想像の余地を残したアートスタイルを売りにしたゲームタイトルはインディーゲームを中心に数多く見られるが、「ダンジョンエンカウンターズ」ほど抽象度が高いものは珍しい。それでも本作があらゆる局面で没頭できるゲームになっているのは、すべての要素にゲームデザイン上の確固たる信念が窺えるからであろう。

本作をプレイしていると、ゲームで味わえる驚きや感動の本質は、グラフィックやストーリーではなく、ゲームデザインにこそ宿るのだという作り手の想いを感じずにはいられない。こういった想いに共鳴できるゲーマーならば、「ダンジョンエンカウンターズ」で味わう体験は、忘れられないものになる可能性が高い。筆者も製品版がプレイできる日を、楽しみに待ちたい。

商品情報

タイトル:DUNGEON ENCOUNTERS/ダンジョンエンカウンターズ
プラットフォーム:PlayStation 4/Nintendo Switch/Steam
※いずれもダウンロード販売のみ
ジャンル:ダンジョン探索RPG
発売日:2021年10月14日(木)
※Steam版は2021年10月15日(金)配信
希望小売価格:3,520円(税込)
プレイ人数:1人
CERO:A(全年齢対象)
開発会社:株式会社キャトルコール
公式サイト:http://www.jp.square-enix.com/de/
公式ツイッター:https://twitter.com/DE_PR_JPN

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(C) 2021 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
CHARACTER DESIGN: Ryoma Ito

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