KEMCOが2021年10月21日に発売予定のPS4/Nintendo Switch用ソフト「アーキタイプ・アーカディア」のプレイレポートをお届けする。
本作は2018年に発売された「最悪なる災厄人間に捧ぐ」と同じくWater PhoenixのR氏がシナリオとイラストを担当するノベルゲーム。なお、「最悪なる災厄人間に捧ぐ」では監修だったamphibian氏は本作では企画協力というクレジットになっている。
システム周りはケムコADVのエンジンが使われており、洗練されたインターフェイスと過不足ない機能でストレス無くプレイすることが可能だ。
「最悪なる災厄人間に捧ぐ」は100万文字のボリュームだったが、本作も120万文字を超える大長編に。今回のレビューでは序盤である2章までのネタバレを含んでいるので注意してもらいたい。なお、本作は実況配信が可能な範囲も2章までとなっている。
さて、本作は自傷・他傷をおこなってしまう謎の病“原罪病”によって崩壊した世界が題材のアドベンチャーゲーム。主人公のルストが病を発症してしまった妹の命を救うために、症状を抑えられる唯一の手段であるフルダイブ型のオンラインゲーム“アーキタイプ・アーカディア”にログインして冒険を繰り広げる……という内容だ。
120万文字のボリュームと聞くと尻込みしてしまう人もいるかもしれないが、そこはさすが「最悪なる災厄人間に捧ぐ」をキレイにまとめた実績のあるR氏。
序盤からしっかり“アーキタイプ・アーカディア”のルールを説明しながらも、あとにつながる伏線をしっかり挟みつつ、さらにプレイヤーが説明や伏線だけで飽きないようにバトルをはじめとした緊迫感のあるシーンでプレイヤーを引き込んでいく。
伏線に関しても、“気になり続けてストーリーに集中できない”というものではなく、“少し引っかかる”というものがほとんどで、回収されるタイミングで「あぁ、ここの意味はそういうことだったのか!」とスッキリするものになっている。
本作の独自設定のなかでもおもしろいと思えたのが“アーキタイプ・アーカディア”の設定。この世界ではプレイヤーの記憶がカード化した“記憶カード”があり、このカードから記憶に基づいたアバターを顕現させてプレイヤー同士で戦うという設定になっている。
そのため、登場人物が現実世界でどのような記憶を持っていたのかが物語のなかで描かれていくことになる。憎むべき敵として登場する人物も、蹂躙する理由やトラウマがあったことがわかったりして、ドラマに深みを与える。
オンラインゲームが題材ということで、キャラクターは“フレンド登録”や“ギルドチャット”などを活用するシーンも。これらのシーンは普段オンラインゲームをプレイしている人ならば「あるある」と楽しめるはずだ。
また、オンラインゲームが舞台だと緊迫感がないのではないか? と思われるかもしれないが、もちろんペナルティは存在する。
プレイヤーは記憶カードを破壊されると、実際の記憶を失ってしまう。さらに、記憶に固執したプレイヤーは記憶カードと一体化して“モンスター化”。ほかのプレイヤーを襲い続ける存在になったりと、自我を失ってしまう。
このモンスター化は本作に登場する重要キャラクターにも等しく起こりうること。物語を通じて好きになったキャラクターがモンスターになってしまったときは、とてもショックだ。モンスターは「あ……ア、ァ。アアアァァア!」など醜い声を発するが、もともとの声優が迫真の芝居で声を出しているので胸が痛む。
なお、記憶カードをすべて失ったり、モンスター化して倒されたプレイヤーはゲームオーバーに。現実で“原罪病”を発病してしまうことになる。キャラクターの生死は“アーキタイプ・アーカディア”での活動とほぼ直結しており、緊迫感がある。
なお、ここまで読むとシリアスでダークなイメージの作品に思われるかもしれないが、ほのぼのとした日常シーンやキャラクター同士のコミカルなやり取りもあり、暗いだけにならないようにメリハリが存在している。
とくに記憶カードのアバターはかわいらしい外見をしているものが多く、立ち絵のパターンも多いので、プレイヤーを和ませてくれる。読んでいて胸を締め付けられるようなツラいシーンも多々あるが、暗いだけではなく多彩な魅力を内包している作品であることは確かだ、
本作はコンシューマーゲームならではの膨大なストーリーで、スマートフォン向けの短く区切られたストーリーに慣れている人にとっては長く感じるかもしれない。しかし、人物の関係が目まぐるしく変わるストーリーや膨大に用意された1枚絵CGなど、プレイヤーを飽きさせない工夫が随所に用意されている。ストーリー系のゲームが好きな人ならばぜひ手にとってみていただきたい。
描き下ろしイラストをお届け!
R氏による描き下ろしイラストが到着。主要キャラクターが勢揃いしたイラストで、クリア後に見ると、また印象が変わるかも? ぜひ、隅々までチェックしてみてもらいたい。