スマートフォン向けアプリ「ピクミンブルーム」をレビュー。任天堂の「ピクミン」がARゲーム化。毎日の生活とともにピクミンの育成や収集を楽しむことができる。その魅力を紹介したい。
「ピクミンブルーム(Pikmin Bloom)」は、Nianticと任天堂からリリースされた、スマートフォン向けARゲーム。位置情報を使って任天堂の人気タイトルである「ピクミン」の世界を楽しむことができる。
歩いて成長!引っこ抜いてピクミンを収集
本作で中心となる要素は「歩数」。「ピクミンの苗」を植えたら、とにかく歩く。歩くことで「歩数」が歩数以上に達すると、苗が成長してピクミンとなる。「歩数」が増えればいいので、どこか特定の場所を目指す必要はない。家の周囲をグルっと回るだけでもプレイ可能だ。
成長したピクミンは、引っこ抜くことでプレイヤーと一緒に歩いてくれるようになる。この辺りは原作である「ピクミン」と同様だ。歩いている最中、ピクミンは様々なものを拾ってくる。これらはタップで取得でき、「エキス」としてピクミンに与えることが可能。与えた「エキス」の種類によって、ピクミンたちは様々な花を咲かせる。まさしく、ブルーム(=咲く)。
花を咲かせたピクミンからは、花びらを手に入れることができる。獲得した花びらを使うことで、自分が歩いた場所に花を咲かせることが可能。植えた花は他のプレイヤーにも共有されるため、プレイヤーの多い場所では、色とりどりの花が咲いているのを確認できる。これが非常に美しい!花があまり咲いていない場所から、満開の場所に移動した際にはちょっと気持ちがウキウキしてくる。
ちなみに、特定の場所を目指す必要はないが、まったく意味がないかというと、そういうわけではない。新しい場所を訪れることでアイテムを発見、ピクミンをお使いに出して取ってきてもらうことができるからだ。また、お店や名所といったランドマークには大きな芽やつぼみが配置されている。これらの周辺に花を咲かせることで、ランドマークに巨大な花を咲かせることが可能。こうした要素があるため、ゆるくではあるが、「次はこの場所を目指してみようかな」という気持ちになれる。
育成と収集が中心!カジュアルに楽しむことができる
原作である「ピクミン」は、壊れた宇宙船を直すため、ピクミンとともに惑星を冒険するというアクションゲームで、引っこ抜いた「ピクミン」を誘導し、マップや敵を攻略するという要素を持っている。しかし、本作にそうした攻略的要素はない。歩いてピクミンを育てて花を咲かせるという内容がメインであり、歩数計ゲームに近いといえるだろう。
ただ、個人的にはこのカジュアルさが魅力的に感じた。ミッション達成やバトルでの勝利などを目指してあくせく競争するのではなく、ゆったりと歩く。すると、いつの間にかピクミンたちが成長していて、周りには花が咲いている。このスローライフ的な空気が、気持ちをほっこりさせてくれるのだ。
また、アプリを閉じていてOKというゆるさもいい。そもそも目的地を目指してプレイする必要がないので、常時アプリを見る必要がない。なので散歩中、周りの現実の景色を楽しむことができる。
ここ数年は外出がめっきり減っていたこともあって、周りの景色を楽しむ機会がなかった。久しぶりに見る周囲の風景は、知っていたお店がなくなるなど寂しさを感じさせるものもあったが、新しいお店ができていたり、よく知るお店が新メニューを始めていたり…と、嬉しさを感じるものも多かった。もちろん、これは現実世界の話なので、本作の内容に直接関わることではない。けど、歩くことを通じてこうした周りの風景の変化に気づかせてくれることも、本作の魅力ではないかと思う。外に出るきっかけを与えてくれる作品なのだ。
外に出るきっかけという意味では、運動再開のきっかけにもなると感じた。筆者のように運動を趣味としていない人間の場合、一度運動の習慣が切れてしまうと、パッタリやらなくなってしまうことは多いのではないだろうか。…いやもちろん、程度があるので、そこまで怠けてしまうのは筆者だけかもしれない。でも、一度やらなくなってしまうと、再開するのはなかなか骨が折れるのは事実なハズ。ただ逆に、一度運動を再開すると、「せっかくだから継続するか」と興が乗ってくる。現金かもしれないが、これは嬉しい副産物だった。
毎日をちょっと華やかにしてくれる!そこにあることが嬉しい作品
本作は内容がカジュアルなこともあり、強烈なおもしろさで思わずハマってしまう…という作品ではない。けど、ちょっとした合間に起動すると、苗から成長したピクミンたちや、周囲を彩る花の美しさによって、嬉しい気持ちにしてくれる。そういう意味では、リアルの「花」に近い存在といえるのかもしれない。
筆者は、ちょっとした記念日などには花を買うようにしている。筆者の趣味的には花より団子、美味しい食べ物や飲み物の方が好きというタイプなのだが、でも、同じメニューであっても、花があると少し気持ちがウキウキして、普段より美味しく感じられる…ような気がするからだ。本作もそんな風に、何気ない毎日を、ちょっとだけ華やかにしてくれる作品だと感じている。ガッツリプレイする娯楽作品というより、ちょっとした日常の癒しとして、側においておきたい作品だ。