2022年2月4日にPS5/PS4版がスパイク・チュンソフトから、Xbox Series X|S/Xbox One/PC版がTechlandから発売された「ダイイングライト2 ステイ ヒューマン」のプレイレビューをお届けする。
タイトル発表から大きな話題となり、発売後も好調な滑り出しを見せるオープンワールドアクションRPG「ダイイングライト2 ステイ ヒューマン」。
2015年に発売された「ダイイングライト」の20年後の世界を舞台に、プレイヤーは生き別れになった妹を探す流浪人・エイデンとなって、感染者であふれた終末世界をパルクールアクションを活かしながら駆け抜けていく。
オープンワールドゲームとしても、ゾンビゲームとしても高いクオリティを持つ本作。ここでは幾つかのポイントから、本作の魅力に迫っていこう。
辞め時の見つからないトレハンが世界の没入感を深める
「ダイイングライト2 ステイ ヒューマン」をプレイして、筆者の心に最も刺さったのはトレジャーハント要素だった。荒廃した街を探索しながら旧時代のお宝を探し求めて方々を探索するゲームプレイは、ついメインストリームから外れて辞め時を見失ってしまうほどだった。
その最たる例が、「ダークゾーン」と呼ばれる感染者たちの“巣”だ。本シリーズにはゲーム内で昼夜のサイクルが存在しており、昼間は感染者たちも緩慢な動きで比較的安全なのだが、夜になると非常に凶暴になるというシステムがある。
前作「ダイイングライト」では、プレイヤーにとってメリットが薄かった夜間の活動だが、本作では新たに感染者は昼間は屋内に潜み、夜間になると外に溢れ出すという特性が与えられた。これによって、夜間は貴重な資源が残されている「ダークゾーン」を探索することができるようになり、ゲームプレイに緩急が生まれた。
もちろんこれ以外にも、アクティビティや終末世界に住む人々からの依頼など、様々なイベントが発生する。回復アイテムをクラフトするのに必要なハチミツが採れるポイントなどはマップのあちこちに点在しているのだが、これを求めて少し寄り道をするつもりが、道中で盗賊に襲われ、戦っているうちについ本来の目的を忘れてしまっているというのは、誰もが通る道なのではないだろうか。
それ故に、ストーリークエストを遊ぶ手を止めて、「さて何をしようかな」と街を散策している時こそ、本作は面白い。一つの寄り道が新しい遊びに繋がっていくので、まるで本当にこの世界で冒険をしているような没入感が味わえる。イベントに対するアプローチも豊富で、昼に行くのか、それとも夜に行くのか、強行突破をするのか、隠密行動をするのか、全てはプレイヤーの自由。オープンワールドの醍醐味を体験することができる。
今やメジャーなゲームジャンルとなったオープンワールドでは、広大な世界で何ができるのか? どのような体験が味わえるのか? という部分が重要視される。本作では、広大な世界に広大なアクティビティを用意するという、ある意味で力技とも言える回答が用意されていた。
移動が一つの“遊び”へと昇華されたパルクールアクション
自由度の高いトレジャーハント要素が本作の魅力であるなら、それを支えるのが手触りの良いパルクールアクションだ。市中には感染者が溢れており、地上で活動しようとすると戦闘は避けて通ることができない。そこで効率よく移動をしようとすると、建物の屋根から屋根へと移動することになり、必然的にパルクールを使用することになる。世界観にしっかりと根付いたゲームシステムというのがまず面白い。
このパルクールだが、本作が一人称視点ということもあって、自在に動き回れるようになるまでは少々の慣れが必要だ。ただし慣れていくほどに自身の操作の上達が感じられ、また、経験と発想次第では街中にある様々なオブジェクトの全てが新たな移動経路として見えるようになっていく。
さらにパルクールアクションを駆使して移動をしていると自動で経験値が溜まっていき、新たなスキルを覚えることが可能だ。2段ジャンプや壁走りなどアクションの幅も増えていく。
このように、世界の広がりを感じられる作りが、本作のパルクールアクションのキモだ。今までの自分では出来なかった跳躍、夜、群れで襲ってくるゾンビをクールに躱し遂せたときの達成感。これらがダイレクトにプレイヤーへフィードバックする瞬間、「ダイイングライト2 ステイ ヒューマン」の移動はただの移動ではなくなり、それ自体が一つの遊びへと昇華する。
「ダイイングライト」は、移動という要素に対して愚直にアプローチしたシリーズだ。前作「ダイイングライト」では一部を除いてファストトラベル要素は存在せず、マップサイズが前作の4倍まで拡張された本作においても地下鉄を使用した限定的なものとなっている。これは場合によってはゲームのテンポを損なう要因にもなりかねないが、本作はパルクールアクションがしっかりと面白いものに仕上がっているので、そもそもファストトラベルを必要としていないのだ。
オープンワールドゲームとは切っても切れない関係にある、“移動”という要素。爽快感のあるウェブスイングでプレイヤーのストレスを極限まで減らした「Marvel's Spider-Man」、歩くこと自体を一つの遊びに作り替えた「DEATH STRANDING」などと同じく、本作も移動自体が一つの遊びとして、それ自体に価値を見出すことができる。そしてその遊びが楽しいからこそ、前述した世界の探索が永久に遊べると感じてしまうほど魅力的に映るのだ。
ポストアポカリプスの世界を描く「ダイイングライト2 ステイ ヒューマン」の手法とは
「ダイイングライト2 ステイ ヒューマン」の世界は生きている。そう感じるのは、丁寧に描かれた世界観が下地としてあるからだろう。
筆者が本作をプレイして驚いたのは、休憩所にあるベッドだ。UVライトでビカビカに照らされた寝床は熟睡という2文字からは到底かけ離れたもので、果たしてどのような意味があるのかと訝しく思ったものだ。
もちろんこれには意味があり、本作で生きながらえている人口の多くはウイルスに感染しており、紫外線を浴び続けていないと感染が進行し、やがて完全な感染者へと成り果ててしまう。そんな世界観を表現するためのアイテムなのだ。
このように終末を描く作品だからこその舞台装置が、ゲームシステムに深く関わるものから、そうでないものまで数多く配置されている。「これはどのような意図で作られたものなのだろうか」と考えながら街を歩き回っているだけで、この世界の魅力は何倍にも膨れ上がるだろう。
世界を語る上で外すことができないのが、この世界で暮らす人々について。ストーリーの中でプレイヤーは様々な人物と出会い、協力し、裏切られ、また出会う。登場するキャラクターたちはそれぞれに主張があり、その正義に挟まれながら己が目的を達成するために時に彼らに手を貸し、時に彼らを利用する。
ゲームの大まかなストーリーに大きな分岐があるわけではないが、プレイヤーは状況に応じて、この複雑な人間模様にケリをつけなければならない。
筆者は当初、サバイバーという勢力に肩入れをしてゲームを進めていったのだが(ゲームシステム的にサバイバーを優遇するとパルクールの幅が増えるというメタ的な理由もあった)、次第に彼らの直情的な行動に嫌気がさし、サバイバーのキャラクターの多くをその手にかけた。
ゲームを1周しか遊んでいないので、異なる選択肢を選べば彼らが生き残る未来があったのかどうかは不明だが、筆者は自分の感情に従って彼らをゲーム内で殺めた。プレイヤーにとってナラティブな体験をもたらす終末世界の人間関係は本作の大きな魅力だ。世界を救うなどの大仰な目的などは無いが、それ故に地に足のついたストーリーテリングで、じっくりと世界を味わい尽くすことができる。
前作「ダイイングライト」が、パンデミック直後の混乱を描くパニック物という性質を持つ作品だったことに対して、本作はパンデミックから20年後、死にゆく世界でそれでも人として生きる者たちを描く。自らが生きるためには殺人すら正当化される世界では何をもって人間たらしめるのか。“ステイ ヒューマン”の物語は、ゾンビものの皮をかぶった人間ドラマでもあった。
前作から大幅な進化を遂げたゾンビオープンワールドの傑作
「ダイイングライト2 ステイ ヒューマン」は、前作から大幅な進化を遂げたポストアポカリプスの傑作である。システム、世界観ともにそつがなく、ゾンビもののオープンワールドゲームとして高いクオリティを誇る作品だ。細かなバグなどは幾つかあったもののクリティカルな現象には遭遇せず、ローカライズに関しても流石の出来となっていた。
また、本作では最低でも5年間はアップデートが行われることがアナウンスされており、DLCやストーリー、イベントなどが提供されるという。今後も長く遊び続けていくことができそうだ。
本稿を読んで本作が気になったという人は、ぜひ一度手にとってみてほしい。緩やかに死に向かう世界で、人はそれでも生き続ける。
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