ベセスダ・ソフトワークスより発売されているPS5版「Ghostwire: Tokyo」のレビューをお届けする。

目次
  1. 親しみを与えつつ、恐怖と高揚を引き立てる“実体感”
  2. 百花繚乱の魅力を支えるシステム

三上真司氏率いるTango Gameworksの最新作「Ghostwire: Tokyo」。ホラーや超常アクション、妖怪、都市伝説など、多くの要素を備えた本作の魅力を一言で表現するのは非常に難しい。しかしながら、メインミッション・サイドミッションを全てクリアした今、一つだけ言えることがある。それは、本作が一本のゲームとして恐ろしいほどに“まとまっている”ということだ。

本稿では、そんな本作の不思議な“まとまり”が、一体何によってもたらされているかを紐解いていく。なお、ストーリーのネタバレは極力抑えるが、クリア後レビューであるため、まだプレイしたことのない人は注意して欲しい。

親しみを与えつつ、恐怖と高揚を引き立てる“実体感”

本作の舞台は、謎に包まれた般若面の人物が引き起こした消失現象により、人のみが消えた東京。プレイヤーは生存者・暁人となり、KKと名乗る刑事の霊と二心同体で、現象の謎へと迫っていく。

渋谷のスクランブル交差点をはじめとする近代的な街並みや寺社仏閣、コンビニや路地裏に至るまで驚異的なディティールで描写されており、プレイを始めた瞬間、その再現度に驚くはずだ。

また、小物類のグラフィックも抜かりない。個人的には古いエレベーターの剥がれかけの張り紙や、コンビニのプリペイドカード売場の位置に激しく共感を覚えたが、プレイヤーごとに注目するポイントが全く異なりそうなのが面白い。

撮影モードでは自撮りも可能

次世代技術によって生み出された東京は、実際にそこに存在しているかのように感じられ、親しみすら覚えるほど。それは同時に、見慣れた景色が不気味に変容するという現象を作り出し、恐怖をより身近に感じさせるのだ。

暁人とKKが相対することになるマレビトたちも、どこか本当にいそうな雰囲気がある。例えばサラリーマンのような風貌の「影法師(かげぼうし)」は、なにかに追い立てられるような早歩きでこちらに近づき攻撃を仕掛けてくる恐ろしいマレビトだが、遠くから観察してみると、喫茶店の戸をしきりにたたいていたり、車の中を覗き込んでいたりする。

そのほかにも、女子学生風の「喜奇童子(ききどうじ)」が地下街のゲームセンターにたむろしていたりと、超常の存在でありながら、人間味や生活感が随所に感じられるのだ。

これらのデザインに共通するのは、圧倒的な“実体感”だ。霧に包まれた不気味なスクランブル交差点も、突然動き出し芸術的に道を塞ぐパイプ椅子も、どこか愛嬌のあるマレビトたちも、それぞれ別種の恐怖ではあるのだが、“身近なものを基にした”という土台の上に成り立っているため、ちぐはぐさを感じない。

アートとしての一面も、ほとんどが身近なものが題材となっている。

また、実体感はアクションにおいても説得力をもたせている。本作のアクションで主体となるのは、邪を祓う剣でもアサルトライフルでもなく、“手”そのもの。手だけでここまで多彩な表情が見えるのは、実際にさまざまなアクションを見せてくれるからという理由だけでなく、手というものが極めて身近であるからだ。

一人称視点やDualSenceのハプティックフィードバックとの相性も抜群で、暁人(KK)の顔が見えずとも、しっかりと感情移入できるつくりになっている。

力の込め方も状況によってさまざま。
キレキレのハンドアクションは、思わず真似したくなる。

超常現象を題材としながらも、常に身近なものが目に入る……全体を包む“実体感”こそが、本作をまとめあげている一面と言っていいだろう。

百花繚乱の魅力を支えるシステム

コンセプトだけを見ると間違いなく“尖ったゲーム”に分類される本作だが、意外なほど手軽に遊べる作品であることも強調しておきたい。

本作のマップは箱庭形式になっているのだが、広すぎず狭すぎない絶妙な大きさとなっている。また、物語を進めると登場するサイドミッションも、一度に5、6個出現するのではなく、多くとも3つといったところ。それでいて、ひとつひとつのミッションはそれほど長くなく、同じ場所を何度も行ったり来たりするようなシチュエーションは可能な限り抑えられている。メインミッションの進行を邪魔せず、かつ短くもまとまりのあるストーリーで完結するため、思わず全てこなしたくなってしまった。

妖怪たちの物語も見どころの一つ。

スキルを取得すると、天狗を使ったフックショット的な移動も可能となり、探索は快適になっていく。また、メインミッションとサイドミッションだけでは物足りないという人のために、各地に漂う24万3百人分の幽霊を回収・転送するといったやりこみ要素もあるため、幅広いユーザーに受け入れられやすいシステムと言えるだろう。

多くの要素が詰め込まれた作品は、幅広い層のユーザーを引き付けるフックが多いとも言えるが、まとまりに欠けてしまいがちだ。しかしながら「Ghostwire: Tokyo」は、その題材と次世代技術によって生み出された実体感をベースに全体のムードを統一しつつ、それぞれの要素に惹きつけられた人々を、手軽に遊べるシステムによってドロップアウトさせることなく最後まで導く、パワフルな作品となっている。

一つでも惹かれるポイントがあれば、筆者のように一人称視点やホラーが苦手であっても、ぜひプレイして欲しい一本だ。

Ghostwire: Tokyo

ベセスダ・ソフトワークス

PS5ダウンロード

  • 発売日:2022年3月25日
  • 15歳以上対象

Ghostwire: Tokyo Deluxe Edition

ベセスダ・ソフトワークス

PS5ダウンロード

  • 発売日:2022年3月25日
  • 15歳以上対象

Ghostwire: Tokyo

ベセスダ・ソフトワークス

PCダウンロード

  • 発売日:2022年3月25日
  • Steam/Epic Games Store

Ghostwire: Tokyo Deluxe Edition

ベセスダ・ソフトワークス

PCダウンロード

  • 発売日:2022年3月25日
  • Steam/Epic Games Store

※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

コメントを投稿する

この記事に関する意見や疑問などコメントを投稿してください。コメントポリシー

関連ワード
  • プレイレポート