KEMCOからリリースされたスマートフォン向けRPG「刃神のアマテラス」をレビュー。KEMCO作品ならではの安定したおもしろさと、日本神話をベースにした本作ならではの魅力を紹介する。

目次
  1. 軍師として陣形を操れ!戦闘のスリルとテンポを両立した2DRPG
  2. アマテラス衆をめぐるストーリー!居場所を作っていくミカヅチの物語
  3. ストーリーと戦略的なバトルをテンポ良く楽しめる良作RPG

「刃神のアマテラス」は、日本神話をベースにした和風テイストのRPG。舞台となるのは地上世界「アスカ」。この世界は国祖神ダイコクが「国造りの槍」によって生み出し、さらにその妹神スセリの「魂生の剣」により人間が創りだされる。そして「国造りの槍」がタカマ山に突き立てられると、槍は「つくも神」へと生まれ変わったという。日本神話に詳しい人なら、本作のこのエピソードから「古事記」のエピソードをイメージするだろう。伊邪那岐(イザナギ)と伊邪那美(イザナミ)が天沼矛(アメノヌボコ)によって淤能碁呂島(オノゴロジマ)を産み出したという「国産み」のエピソードだ。この日本テイスト、神話テイストこそが本作の特徴となっている。

軍師として陣形を操れ!戦闘のスリルとテンポを両立した2DRPG

本作の基本的なゲームシステムは、これまでにKEMCOからリリースされている他のスマートフォン向けRPGを踏襲している。2D見下ろし型で描かれたマップを探索し、敵と遭遇するとサイドビューの戦闘シーンへ。戦闘を行いながらクエスト達成を目指し、達成するとストーリーが進行していくというもの。

基本的には街での情報収集によってクエストを受注、フィールドマップを経てダンジョンへ。ダンジョンではザコ敵との戦闘でレベルアップしつつボスを目指し、ボスを倒せばクエスト達成という流れ。16Bitゲーム機時代のJRPGを、現代の技術でスマートフォン向けに再現した作品といえるだろう。

システム的なメインとなっているのは、戦闘。オーソドックスなターン制・コマンド選択式バトルだが、KEMCO作品ならではの特徴が、攻撃の範囲指定だろう。敵は3×3のマス上に配置され、主人公側の攻撃にも攻撃範囲が指定されている。たとえば、たて2マス分の攻撃範囲を持つ攻撃であれば、たてに並ぶように配置されている2体の敵を同時に攻撃可能。

このため常に複数の敵が攻撃範囲に入るよう、コマンドを上手に選んでいくと短いターンで効率的に倒すことができる。とはいえ、攻撃力が高い敵や状態変化系のスキルを持つ敵など厄介な敵は、離れた場所に単体でいるとしても早めに倒してしまった方がいい。どの敵をいつのタイミングでどんな攻撃で倒すか?こうした駆け引きがKEMCO作品の面白い点だ。

そして、本作独自のシステムとなっているのが「陣形」。本作の主人公・ミカヅチは軍師であり、戦闘中1ターン費やすことでパーティの「陣形」を変更できる。「陣形」を変えると、はパーティメンバーの配置が変わるとともにパーティー全体の攻撃力や防御力にかかる補正も変化。つまり、パーティーメンバー全体にかかるバフ/デバフの内容を瞬時に切り替えることができるのだ。

「陣形」によるバフ/デバフは、その効果が認識できる程度の影響力を持っている。なのでボス戦はもちろん、のみならずザコ戦においても有効だ。ただザコ戦ごとに「陣形」を切り替えなければならないのかというと、そんなことはない。多くのザコ戦は「陣形」を意識することなくこなせるし、レベル差の離れた格下の敵相手であればオート戦闘で十分だろう。

ところで、筆者はこれまでのKEMCOのRPGも数多くプレイしているが、その中でも本作は非常にテンポがいいと感じた。しかも、テンポがいいのは決してカンタンだからというわけではない。スリリングな戦闘バランスなのに、テンポがいい。本作はとても面白いゲームバランスを持っている。

本作を普通にプレイしていると、想定レベルより低いレベルでダンジョンに挑むことになる。想定レベルより低い場合、戦闘で範囲攻撃は必須だ。ただ、範囲攻撃はMPを消化するため、ガンガン使えば枯渇してしまう。本作は一戦ごとにHPやMPが回復するというシステムではないので、MPの枯渇は避けたい。しかし想定レベルより低いレベルで挑むと、一戦か二戦程度ですぐレベルアップが発生する。レベルアップ時にHP・MPは全壊するため、結果的にガンガン範囲攻撃を使用してもMPが枯渇することはない。ガンガン範囲攻撃を使って、どんどんレベルアップ。このリズムがテンポのよさの正体だ。

一方、想定レベルでダンジョンに挑んだ場合レベルアップのテンポは遅くなる。その代わり、範囲攻撃を控え通常攻撃だけで戦っても戦闘をこなすことが可能だ。ただ、レベルアップのテンポが遅いということはHP・MPもなかなか回復できなくなるということなので、残りHP・MPを管理するという別のスリルを味わうことになる。想定レベルより低いかどうかで大きく変わるプレイ感が面白い。

アマテラス衆をめぐるストーリー!居場所を作っていくミカヅチの物語

ファンタジーが多いKEMCOのRPGの中で、本作の世界観は和風。しかも、ただ登場する設定が和風という話ではなく、ストーリーの見せ方も和の世界観に応じたものになっている。

本作の主人公・ミカヅチはつくも神であるゴトクに育てられた青年。ある日ミカヅチは、鬼神イチガンの襲撃を受け、ゴトクを連れ去られてしまう。イチガンを倒しゴトクを取り戻すため、ミカヅチは傭兵集団アマテラス衆へ参加することになる。

序盤の基本的なストーリーの流れは、アマテラス衆へもたらされる依頼に対応するという形で進んでいく。街から街へと渡っていくロードムービー的なファンタジー系RPGに対し、本作はアマテラス衆の拠点である「タタラ里」中心に物語が展開していくのが特徴的。ただ、実際のゲーム内の動きとしては、依頼を受けた集落を訪れそこからダンジョンへと向かう形になるので、他のRPGと同じように「旅」も行っている。

「タタラ里」中心というのは、「拠点で依頼を受け、現場へ向かう」という物語上の出来事に限った話じゃない。人間関係においても「タタラ里」が中心となっている。ゴトクという古参のつくも神に育てられたミカヅチは、高い戦闘力と豊富な知識を持っているので、アマテラス衆へ参加した当初から重い役割を担う。いわば新入りが重用されるわけで、アマテラス衆の幹部は当然おもしろくない。

こうした中で、ミカヅチがいかにして自分の場所を確保していくか?が本作の見どころとなっている。ミカヅチの軍師としての才覚を発揮し、アマテラス衆の面々との関係を作っていく過程が非常におもしろい。

これまでのKEMCOのRPG同様、本作もキャラクターの描き分けが上手く、イキイキとした会話で楽しませてくれる。だからこそ、ミカヅチをめぐる人間関係の物語も魅力的に感じるのだ。

ストーリーと戦略的なバトルをテンポ良く楽しめる良作RPG

KEMCOのRPGは毎作安定した面白さを持っており、そのため固定ファンがつくほど。本作もまたストーリーや戦略的なバトルなどRPGファンがJRPGに求めるツボをしっかり押さえており、根強い人気を持つ理由が分かる良作に仕上がっている。その上でテンポのよさや和風テイストなどといった新たな要素を加えているため、これまでのKEMCO作品のファンもそうでない人も確実に楽しめるだろう一作だ。

刃神のアマテラス

KEMCO

iOSアプリiOS

  • 配信日:2022年6月9日
  • 価格:860円(税込)

    刃神のアマテラス

    KEMCO

    AndroidアプリAndroid

    • 配信日:2022年6月9日
    • 価格:860円(税込)

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