2022年3月3日に発売されたスクウェア・エニックスがプロデュース、プラチナゲームズが開発するPS5/PS4/PC(Steam)向けアクションRPG「BABYLON’S FALL(バビロンズフォール)」。本作で現在展開されているシーズン2のレビューをお届けする。
目次
筆者は本作の発売直後、当時の時点でのゲーム内容についてレビューを行った(これを便宜上「シーズン1レビュー」と呼ぶ)。運営型のオンラインゲームである本作は、アップデートによってゲームのあらゆる部分に要素の追加や各種調整が加えられている。
そこで今回のレビューはシーズン2での追加要素にとどまらず、現在の「BABYLON'S FALL」は発売当時と比べ、どのような点が変化しているか? “とくに印象が変わった点”全般に焦点を当てたレビューにしようと思う。
これから「BABYLON'S FALL」をプレイしようと思っている方には、シーズン1レビューを合わせて読んでいただくと、このゲームへの理解が深まるはずだ。一方、本作を発売直後は遊んでいたものの、現在はプレイしていない……という人ならば、今回のシーズン2レビューだけ読んでもらえれば、これから“センチネル”に復帰するかどうかの指標になるのではないかと思う。
いずれの立場の読者にも、参考にしていただければ幸いだ。
新たな物語、これに呼応した新武器種の追加でキャラクタービルドはより楽しいものに
発売当初の時点で、壮大な物語の“ひと区切り”と言える結末までが描かれた「BABYLON'S FALL」。しかし舞台となる“ネオバビロン”、そしてこの街のために戦う運命を課せられた“センチネル(=プレイヤーキャラクター)”の物語は続くこととなる。
シーズン1の「月影の幽輪」、シーズン2の「日輪の楽園」、それぞれで追加されたストーリーで描かれるのは、ネオバビロンとその周辺に生きる種族の間での交流、そして軋轢だった。あわせて、かつては同じセンチネルだったが一時的に正気を失ってしまい、そうした出来事を経て対立関係となったギャラハーもたびたび登場。センチネルを取り巻く状況は、混沌を極めている。メインストーリーで主要キャラクターたちに愛着を持ったプレイヤーならば、先が気になる展開が目白押しだ。
新エピソードで登場した新キャラクターの設定にあわせて、“モルザム人”、“クフタール人”といった新種族、そして彼らと縁のある“グレートアクス”、“ピストル”といった新武器種がキャラクタービルドにおける選択肢として追加されていった。
種族の違いによる初期ステータスの違いはあれど、そこまで大きな差異として現れる訳ではなく、あくまでロールプレイの一環としてのものという印象を受ける。一方で追加された新武器種はゲームプレイの幅を広げ、ビルドの試行錯誤をより楽しいものにしてくれた。
グレートアクスは一撃が重くてタメ攻撃が強力。使用感はハンマーに近いものがあるのだが、周囲の敵をまとめて薙ぎ払える点では乱戦時により大きな効果を発揮する。
ピストルは弓と同様に遠距離からの攻撃に適した武器だが、敵に照準があわさった瞬間にトリガーを離すことで最大の威力を発揮するという、タイミングが重要な武器。チャージすればするほど高威力になる弓よりも扱い方にコツが必要で、ほかの武器との併用ではタイミングをあわせるのがいっそう難しくなるが、使いこなせば非常に強力だ。
4つの武器を自在に操る“ギデオンアームズ”というシステムにより、複数の武器を併用する戦い方を構築するのは実に楽しい。この楽しさが、グレートアクスとピストルの登場でより多様なものになったのは、素直に喜ばしいことだろう。
ゲームモードとしては「デュエル」と「ガントレット」が追加された……のだが、残念ながらこのふたつのモードを筆者はプレイできていない。本作は現状「かなりやり込まないと享受できない要素」がそれなりにあり、これが「深くやり込んでいるプレイヤーの体験」と「カジュアル勢・新規プレイヤーの体験」に大きな差異をもたらしている印象を受ける(そして筆者もカジュアル勢に属する遊び方をしている)。このあたりは後ほど改めて詳しく記していくつもりだ。
ギミック廃止やカメラの設定項目追加など、快適性の向上を優先した各種調整は良好
次に、「BABYLON'S FALL」発売当初から加えられたいくつもの変更点についてだ。これらによって、本作のゲーム体験はあの頃とかなり異なるものとなった。
マッチングの仕様にもいくつもの変更が加えられ、とくにまったく敵にダメージが通らないような高パワー帯のクエストに動員されることがなくなった点は喜ばしい。
快適さという意味では、プレイヤーの意見を反映し、ステージ中のギミックの多くが取り除かれたのも大きい。ランタンを所持することで、ギデオンアームズが使えない代わりに暗闇を灯りで照らして進むといった仕組みはなくなり、あわせてこうした遊びを想定していたステージの視認性は向上。凍っていて滑る床が滑らなくなる、水中で地上と同様に動けるなど、ストレスフリーな進行を優先した改善が数多く成されている。
こうした変更がクエストやロケーションの違いによる体験のバリエーションを減らすことになっているという指摘もあるものの、個人的にはプレイヤーに不自由を課すギミックは面白さに繋がっているとは言い難かったので、こうした変更は全面的に支持したい。不自由を課すのではない、利用することが戦闘時のメリットや、アクションとしての気持ちよさに繋がる新たなギミックの導入が今後のアップデートでは望ましいと感じるし、実際「月影の幽輪」以降に登場したクエストにおけるギミックは、ある程度これを意識したものだろう。
アクションの快適さを重要視する筆者としては、カメラの設定をプレイヤー自らが調整できるようになったのも重要な変更点だ。ターゲットのオン・オフの切り替えや、優先するターゲットの選定基準ほか、いくつかの項目を選べることで、自分のアクションの運用に適したカメラを見つけられる。当初は「特定のエネミーを優先して倒すべき」といったシチュエーションが少なくないのに、倒すべきエネミーとは別のエネミーがターゲットに指定されがちという大きな欠点があったのだが、筆者の場合はカメラの設定変更が可能になってから、こうしたストレスをあまり感じなくなった。
ほかにはアイテムドロップ関連の改善も、特筆すべき点だろう。レアリティの高いアイテムがドロップしたときのエフェクトと効果音が変更されたため、高レアアイテムを手に入れたことに気付きやすくなり、クエストクリア後に入手アイテムを鑑定するときのワクワク感が増している。
クエストごとにドロップする装備のパワー上限が撤廃されたことで、低パワー帯に挑戦するメリットが増え、メインストーリーを進行中の初心者とマッチングした場合に、より気持ちよく協力できるようになったのも嬉しい。結果としてパワーが上がりやすくなったため、出遅れたプレイヤーが高パワー帯のプレイヤーに追いつきやすくなったという点でも、良い結果をもたらしていると言えるだろう。
それ以外にも、あまり使われていない武器種に対するアッパー調整など、さまざまな趣向のプレイヤーが自分に合った戦闘スタイルを模索する上で、不公平を感じづらくなるような調整は枚挙にいとまがない。まだ一部の武器種に人気が集中している印象はあるものの、今後さらに自由なビルドが可能になるという期待はできそうだ。
初心者~エンジョイ勢のモチベーション維持が課題という印象も
すでに数多くの要素に対して改善が行われている「BABYLON'S FALL」。しかし、それでもまだ気になる部分は残っているのが現状だ。個人的にとくに気になっている点をいくつか挙げてみよう。
まずは、ゲーム内でプレイヤーの試行錯誤を促す設計が足りていないような印象を受ける。プレイヤーの自主性に委ねるようなゲームデザイン自体は理解できるのだが、追加効果や属性相性による影響が一見分かりづらいことも、要因となっているように感じる。
とくにいわゆる野良プレイをメインに遊んでいる場合、ゲームの構造上ほかのプレイヤーに迷惑を掛けるのははばかられることもあり、自分の中で“定石”と言えるビルドが決まってしまうと、それ以外を試してみようとなかなか思えないのも、ゲームプレイが硬直化する理由のひとつとして挙げられるだろう。共に高いモチベーションで楽しんでくれる仲間がいなければ、漫然とクエストをこなして高パワーの装備に付け替えていくような遊びになってしまいがちだ。
パワーの上限が150から200へ、さらに現在は300まで引き上げられており、それに応じてシージ、デュエル、ガントレットのクエストが解禁となるパワーが引き上げられているのも気がかりだ。
デュエルとガントレットは上級者向けクエストなのでそれでもまだ良いとして、シージは3回クリアすることがウィークリーミッションの達成条件のひとつにもなっている。以前よりもパワーを上げるのが容易になっているとはいえ、これからプレイする初心者がウィークリーミッションの達成すらできないまましばらくやり込まなければならないのは、少々酷という気がする。
こうした状況のまま、マッチングについてもゴールデンタイムや休日以外は困難になりつつあるため、本作を人に勧める場合、まずはこれらの時間帯に遊べるかどうかというのが重要なポイントになってしまっているのは、問題だと言わざるを得ないだろう。
“不器用ながら変化を続ける姿勢”と“ゆるいアットホームさ”が魅力
ここからは、「BABYLON'S FALL」を楽しもうと思うならば知っておいてほしい「ゲームの外側」の部分について少し書いていこうと思う。ゲームレビューで書くべきことではないかもしれない。それでも書くのは、本作への“愛着”の度合いを変えるかもしれない部分であり、それは結果的にゲーム体験そのものをも変えかねないからだ。
まず、本作をプレイするのであれば、YouTubeで定期的に配信されている公式生放送はぜひともチェックしてみてほしい。
開発に携わった出演者たちがプレイヤーから届いた意見へと真摯に耳を傾け、改善点を洗い出し、アップデートによって実際に対応していくまでの意思決定を事細かに知ることができるのは刺激的で、本作のプレイを継続するモチベーションに繋がるだろう。より深くゲーム内容にコミットするならば、ゲーム公式のDiscordサーバーに参加してみるのも良いと思う。
また、先ほど「ゲーム内でプレイヤーの試行錯誤を促す設計が足りていない」と書いたが、それは開発側でも認識しているということなのか、最近ではプラチナゲームズの公式アカウント及び公式サイトの“MAGAZINE”のページにて、特定の武器種に特化したビルドの解説を投稿している。武器種や補助効果が実際にはどんな影響をもたらすかを考える上で参考になるし、ゲーム内で調整するのはさまざまなハードルがある分、やれるところからプレイヤーに働きかけていこうという試みであることが伺え、好感が持てるところだ。
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— プラチナゲームズ公式アカウント (@platinumgames_j) June 24, 2022
開発ブログ更新のお知らせ
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特定の武器種に特化したビルドを徹底解説
第二弾【ピストル編】を公開ッ
シーズン2で新たに解禁された武器種「ピストル」の性能を引き出して使いこなせ!https://t.co/GPFGgmHXz6
こうした公式側の活動も追いかけながらプレイしていると、問題点はありつつも、それらをなんとか変えていこうと不器用ながら変化を続けている「BABYLON'S FALL」に、より深い愛着が持てることと思う。筆者も、こうした部分が興味深くて本作のプレイを続けているところが決して少なくない。
シーズン1レビューにも書いたが、共にクエストをクリアしたプレイヤーはその多くが最後に挨拶をしてくれるし、「いいね」も付けてくれる。この点は現在でも変わっておらず、こうした“ゆるいアットホームさ”が心地いいのは本作の大きな魅力だ。「ゲームの外側」における動きも、これに通じるものを感じる。この心地よさにはまだまだ浸っていたいのだ。
6回目の公式生放送で「開発規模を縮小する予定はなく、シーズン3以降も開発をスタートしている」と明言されている本作だが、それでも少々心配になってしまうので、もっと活気が増してくれれば安心できるところ。そんなわけで、本作が少しでも気になっている方は、ぜひ体験版から気軽に触ってみてほしい。
そして7月に予定されている新要素の追加や期間限定イベント“太陽祭”で、一緒に盛り上がってくれたら嬉しい。