コーエーテクモゲームスの人気歴史シミュレーション「信長の野望」。そのシリーズ最新作となる「信長の野望・新生」のプレイレビューをお届けしよう。

歴史シミュレーションゲームの草分け的存在として名高い「信長の野望」シリーズだが、なまじ歴史があるためか、ゲームファンの中には「興味はあるけど敷居が高い」と感じている人もいるのではないだろうか。しかし、本作「信長の野望・新生」は非常にとっつきやすくなっている。チュートリアルも充実していて、ゲームのシステムを理解しながら序盤のプレイを進めていくことが可能になっているので、初めて戦略シミュレーションをプレイする人でも気軽に楽しめるだろう。

用意されているシナリオは「1546年1月 信長元服」、「1553年4月 尾張統一」、「1560年4月 桶狭間の戦い」、「1570年4月 信長包囲網」、「1582年5月 夢幻の如く」の5つ。シナリオごとに大名たちの勢力図が異なっており、たとえば織田信長が元服した年からスタートとなる「信長元服」では、阿波の三好長慶、近江の六角定頼、周防の大内義隆などが大勢力を誇っており、プレイしやすい大名となっている。

一方、信長が躍進することになる「桶狭間の戦い」では、尾張の信長とともに甲斐の武田信玄、薩摩の島津貴久などがオススメの大名となっている。シリーズのファンにはおなじみだが、こうしたさまざまな年代・状況下でプレイできるのも本作の醍醐味のひとつで、織田、武田、上杉、毛利といったおなじみの戦国大名から知る人ぞ知る勢力まで、個性も能力も異なるいろいろな戦国大名で天下統一を目指すことができる。

こちらが「桶狭間の戦い」を選択した際の初期勢力状況。
信長が支配しているのは尾張のみだが、木下秀吉や柴田勝家など家臣団が非常に充実している。
「設定」で難易度を変えたり、チュートリアル表示をなしにしたりすることも可能。
シリーズのファンはあえて難易度を上げてみては?

ちなみに、初心者にはシナリオ「桶狭間の戦い」の「織田信長」が比較的オススメ。駿河の今川義元を破り、京へ向かって勢力を伸ばしていくことになるなど、「信長の野望」らしさをもっとも体感できるシナリオと言えるのではないか。人材がそろっていて、ゲームのコツもつかみやすいのもうれしい。過去のシリーズ作をプレイしたことがない人は、このシナリオから始めてみるといいだろう。

筆者は2020年の大河ドラマ「麒麟がくる」にハマっていたこともあって、シナリオは「信長元服」、大名は美濃の斎藤利政(のちの斎藤道三)を最初のプレイで選択。「麒麟がくる」は若き日の明智光秀が斎藤家に仕えていた時代から物語が始まるが、このシナリオもちょうどそのあたりからプレイ開始となるので、信長が台頭する以前の群雄割拠の時代を堪能することができるのだ。

こちらが1546年1月 信長元服」の勢力図。
斎藤利政が事実上の美濃の国主となったところからゲームスタートとなる。

それではゲームの内容を見ていこう。「信長の野望・新生」では家臣を城主や領主に任命して内政で収入や兵力を増やし、合戦で領土を拡大。勲功を挙げた家臣を登用して、さらに領土を発展させていくというのが基本的な流れとなっていて、その核となるのが「知行システム」だ。本作では各地に点在する「城」が、それぞれいくつかの「郡」を支配下に置いている。プレイヤーは「知行」コマンドで、これらの「郡」を領地として家臣たちに与えて国力を強化していくのだ。

面白いのは大名であるプレイヤーが直接関与できるのは、本拠地の「郡」のみというところ。たとえば筆者がプレイした斎藤氏の場合、本拠地となっている美濃の稲葉山城の支配下にある郡では、「郡開発」コマンドで農村や市を掌握することで石高や商業収入を上げたり、さまざまな施設を建設して領土を増強したりすることが可能になっている。このあたりは従来の「信長の野望」と基本的に同じと言えるだろう。

一方、大垣城、金山城、岩村城といった本拠地の以外の城に属している郡は、基本的に配置した家臣に内政を任せることになる。「領内諸策」というコマンドで「石高増強」、「商業発展」といった策を実行するなど、間接的な形での関与は可能だが、個々の郡に直接指令を出すことはできない。家臣たちに任せられる領分が非常に多くなっているので、シミュレーションにあまり慣れていない人でも、かなりプレイしやすいではないか。同時に、家臣たちに領地経営を任せて、自身は領土全体や周囲の状況などを見て行動指針を決定するなど、より戦国大名らしいマクロな視点が求められるのだ。

序盤は領地を自由に変えられるのは「代官」だけで、本拠地以外の郡に配した家臣は領地替えができない。
城下に建設する施設も城主にある程度委任することが可能。
このように、さまざまなことを家臣たちに任せることができるのだ。

この「知行」システムをさらに面白くしているのが「身分」の存在だ。家臣たちには組頭、足軽大将、侍大将、部将、家老、宿老という6つの身分が設定されていて、領主は「足軽大将」、城主は「侍大将」以上でなければならない。つまり、どんな有能な人物でも身分が「組頭」であれば郡を任せられないし、「足軽大将」以下の者は城主に任命することもできないのだ。

とくに序盤は人材が非常に乏しい勢力が多い。「信長元服」での斎藤家も明智光秀、稲葉一鉄といった能力のある人材はいるものの数の面では十分ではなく、すべての郡に家臣を配置できない状況にあった。敵対勢力と隣接する領土には戦闘能力の長けた家臣を配置し、豊かな城の郡に内政能力に長けた家臣を置くなどの適材適所が理想だが、人がいなければそんなことは言っていられない。ひとまず手持ちの人材を各所に置いてしのぎ、同時に「領内政策」の「武将探索」で人材を探したり、後述する合戦で城を陥落させたら敵の武将をスカウトしたりして人を集める必要があるわけだ。

序盤は配下の人数が限られていることが多い。積極的に人材を集めて家臣団を充実させていこう。

さらに、家臣たちに活躍の機会を与えて、郡や城を任せられる身分に引き上げてやらなければならない。代官に任命する、外交交渉や調略活動を任せるなどの活動で勲功を貯めていくと、3カ月に一度行われる「論功行賞」で昇進するので、有能な家臣は積極的に活用したいところだ。

いろいろやりくりしながら人を集め、育てていくのはなかなか大変で時間もかかる。とはいえ、人材が充実すれば城主と郡の領主の組み合わせを工夫して軍事力や生産力を高めるなど、さまざまな方法で組織を強くできるようになる。これが非常に楽しく、こうした人事の妙も本作の魅力のひとつと言えるだろう。


家臣たちが施策を「具申」してくることも。
こうした家臣たちの提言を聞き入れるか、否認するかもポイントになる。
家臣たちの献言を聞くことも可能。次に何をすべきか迷ったら、画面右上の「献言」アイコンを選ぼう。

「信長の野望」の醍醐味といえば、やはり他勢力との戦いだが、こちらも家臣たちにかなりの部分を任せられるようになっている。「出陣」コマンドで攻める城を選ぶと、自動的に部隊が編制。「決定」を選ぶと各隊が動き出し、敵の郡を制圧して自領にしながら目標の城へと向かっていく。そして、城に到着したら攻城戦となり、目標の城を陥落させたら勝利だ。

もちろん、出陣する部隊を変更したり、攻めるルートを変えたりすることも可能だが、序盤はすべて任せてしまうのが無難だろう。そうして、ある程度コツがつかめたら、自分なりのアレンジを加えていけばいい。もちろん、領内で一揆を扇動するなどの調略を仕掛けて、敵の勢力を弱めておくなどの行動も可能。家臣がこうした策略を行うよう意見を具申してくることもあるので、資金に余裕があれば活用したいところだ。

「軍事」コマンドの「出陣」を選んで目標の城を設定。
出撃する部隊を決定すると敵の城に向かって進軍を開始する。

「攻略目標」コマンドの使用もオススメだ。目標に設定した城を攻めるための準備を行うコマンドで自動的に出陣する城が選出、その城の領内の郡は「軍備」を開始する。そして、一定の日数を経て準備が整うと「臨戦状態」となり、出陣する部隊の能力がアップするのだ。部隊の腰兵糧の量も増えるので、より確実に勝利できるだろう。

ただし、臨戦状態になるまで出陣する城は、軍備以外の領内活動を停止するため領地の発展は一時停滞してしまう。敵が強力な場合、勝利しても国力を回復するまで時間がかかり、その間に別勢力に攻められるなどのリスクがあることも踏まえておこう。

「攻略目標」を設定すると内政がストップする代わりに軍備が増強。
腰兵糧の日数も増えるので戦いが長引いても安心だ。

大名の部隊が敵との戦闘に参戦していたり、戦闘発生場所の近くにいたりすると「合戦」を仕掛けられる。実行すると戦場マップに移動し、敵部隊との戦闘が開始。各部隊に指示を下して敵部隊の撃破を目指すのだ。最大で16部隊を参戦させられるが、戦場に出陣できるのは8部隊まで。それ以上の部隊がいる場合は、出陣中の部隊が壊滅・撤退した際に入れ替わりで出陣となる。

戦場には「要所」、「退き口」と呼ばれる地点が設定されていて、これらを制圧することで敵の士気が下がっていく。「敵の士気をゼロにする」、「敵の退き口をすべて破壊する」、「敵部隊をすべて壊滅させる」、「敵の大名を討ち取る」のいずれかを達成すれば勝利だ。とくに重要になるのが「退き口」で、勝敗の条件になっているのはもちろん、兵力が残り少なくなった部隊を撤退させられるなど戦略の要衝になっている。味方の部隊が壊滅すると、家臣が討死したり敵に捕えられたりする場合があるので、兵力が残り少なくなったら、すぐさま撤退できるよう、自軍の退き口もしっかり守りながら戦う必要があるわけだ。

合戦前に行われる「軍評定」で味方部隊の布陣位置や出撃する部隊を選択できる。
「要所」を制圧すると画面上の敵の士気のゲージが減少。より戦いを有利に進められるようになる。
自軍の部隊と敵軍の部隊がぶつかると戦闘開始。敵より兵数の多い部隊で相手をするのが基本だ。

「合戦」でも家臣たちは自律的に判断して行動するので、必要な時だけ自分で指示を与えればいい。ただ、すべて家臣任せにすると手間取る場合があるため、敵部隊の侵攻を食い止めつつ別の場所を攻めたり、敵部隊を前後左右から挟撃したりと、戦況を踏まえた的確な指示も必要だ。地形もポイントのひとつで、高所の要所を抑えると崖下の敵に弓や鉄砲で一方的に攻撃できたりする。過去のシリーズ作と同様、どこをどう攻めれば有利になるのか、開戦前にしっかり戦略を立てておくことが重要になるのだ。

家臣が持っている「戦法」も使用可能だ。敵の兵力を大幅に減らしたり、味方の能力を向上させたりと効果はさまざまで、使い方次第で戦況を一気に有利にできる。これも家臣が自発的に発動するが、プレイヤーが命令して発動することも可能。より確実に勝利したいなら自分で発動のタイミングを決めるべきだが、あえて家臣たちの判断に任せるのも面白いだろう。

合戦に勝利すると、その大名の「威風」が発生。倒した勢力の郡や城がこちらに寝返ったり、周辺の国衆が服従してきたり、外交が行いやすくなったりと、さまざまな効果が得られる。敵の部隊が多いほど「威風」の影響が強くなるので、大名を積極的に出陣させて合戦を狙っていくのが得策だ。もちろん、合戦で失敗して大きな被害を出したり、敗北して退却する羽目になったりするリスクもあるが、それでも挑む価値は十分にある。

複数の部隊で前後左右から挟み撃ちにすれば一気に敵部隊の兵数を減らすことができる。
合戦で勝利したら奪った城の城主を新たに任命。その城に属する郡を領地として家臣に与えていくのだ。
そのほか他国との同盟締結などの外交交渉、政策を発令しての勢力の強化なども実行可能だ。

ここまで主にシステム面を見てきたが、もちろん歴史イベントも充実。他の大名家で歴史的な出来事があると「風聞」として伝わってきて、これをチェックすることで同時期に起きた歴史的な事件を鑑賞できるのだ。確認せずにゲームを進めることも可能だが、歴史好きならぜひとも見ておきたいところだ。

おなじみの史実イベントも盛りだくさん。
歴史ファンならご存知だろうが、足利義藤は室町13代将軍・足利義輝の初名である。

プレイしたのはさわりの部分だけだが、内政・合戦ともに大名ができること、家臣に任せられることがほどよいバランスになっていて、かなり遊びやすくなっているという印象を受けた。人を使いながら天下統一を目指す、戦国大名らしいプレイが楽しめるようになったと言えるのではないか。

序盤は多少やることが少ないように感じるかもしれない。しかし、勢力が拡大して人員が充実してくると、いろいろやるべきことが増え、強力な軍団を作ったり、抜擢した武将たちをさまざまに組み合わせたりすることが可能になる。自律的に動く、個性豊かな武将たちを差配して天下統一を目指す――そこには新しい「信長の野望」の醍醐味がある。

信長の野望・新生

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  • 発売日:2022年7月21日
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※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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