スクウェア・エニックスからPS5/PS4版が2022年9月29日、Steam版が同年11月12日に発売される「ヴァルキリーエリュシオン」のレビューをお届けする。

目次
  1. 新たなヴァルキリーの物語
  2. アクションバトルは爽快だが、難易度は高め
  3. メインクエストとサブクエスト、様々な収集要素
  4. これは“ヴァルキリーの物語”である

北欧神話をモチーフに描かれる「ヴァルキリー」シリーズ。その最新作が、シリーズ初のアクションRPGとなって我々の前に帰ってきた。

なお、本稿ではストーリーの重要なネタバレには触れていないが、一部多少のネタバレに触れる可能性がある。できるだけ情報を入れずにプレイしたい人は、気を付けて読み進めてもらえれば幸いだ。

新たなヴァルキリーの物語

本作は、ラグナロクによって破滅しかかった世界が舞台で、主神オーディンも深手を負ってわずかな力しか残されていなかった。そこで救済の使徒“ヴァルキリー”を創造し、自身が再び力を取り戻すために、彼女に魂の救済を命じることとなる。

そこでヴァルキリーは、神の兵士となる特に優れた魂を持った人間――エインフェリアと共に、主神オーディンのために魂の救済を進めていく。

という、ストーリーは「ヴァルキリー」シリーズのファンであればお馴染みのものである。だが、本作はこれまでの「ヴァルキリー」シリーズとはまったく独立した物語であるため、新規層も全く問題なく遊べる内容となっている。

一方で、「ヴァルキリー」シリーズのファンにとってはお馴染みのシステムも数々取り入れられており、シリーズファンから新規プレイヤーまでどちらの層でも楽しめるのが特徴だ。

お馴染みのシステムといえば、まず真っ先に挙げたいのは、ヴァルキリーと共に戦うエインフェリア。本作に登場するエインフェリアは4人と数こそ少ないものの、その分各エインフェリアのストーリーなどは非常に濃密に描かれており、エインフェリアにまつわるドラマを深く知ることができる。

エインフェリアの生前の様子を知ることができるボイスドラマなどもあり、このボイスドラマの出来が特に素晴らしい。

ボイスドラマは各エインフェリアにまつわるサブクエストなどを進めていくことによって、どんどん続きが解放されていく。「このエインフェリアはこんな人物だったのか」というのをじっくり知れるという点においては実に優れている。アクションバトルの出来も良いのだが、筆者が本作で一番気に入った要素と聞かれれば、一連のボイスドラマを挙げたいほどだ。

あくまでサブ的な要素のためスルーもできるのだが、これを聞くのと聞かないのとではゲームへの思い入れがまったく変わるのではないかと感じる。基本的にエインフェリアを仲間にすると1~3まで解放されるので、まずは騙されたと思って1~3番目までを聞いてみてほしい。

ボイスドラマなので、画面は非常にシンプル。

エインフェリアは4体のみではあるが、だからこそ各エインフェリアとヴァルキリーを交えてのドラマもかなり濃いものとなっている。ひとつのセリフでプレイヤーの心を奪っていくような強烈な個性で勝負する、というよりも、じっくりと描くことによってヴァルキリーとの関係性なども含めて魅力を感じていくような物語運びとなっており、その丁寧さがじわりじわりと心に染み渡る。

また、エインフェリアと触れ合うことによって、最初は人形のようだったヴァルキリーに変化が訪れていく様も見どころだ。

ひとつの衝撃的な出会いがヴァルキリーを変えるのではない。ゆっくり時間を掛けて世界を知ることによって、彼女に変化が起こってゆく。時には彼女自身すら意識していないだろう変化に、プレイヤーのほうがハッとすることもあるだろう。

その驚きは決して意外性のあるものではないが、予想がつくからこそその変化が微笑ましくもあり、そしてヴァルキリーという存在に愛が湧く。ヴァルキリーと4人のエインフェリアたち、彼らが描く物語は最後まで目が離せない。

アクションバトルは爽快だが、難易度は高め

本作のバトルは、完全なアクションバトルとなっており、□ボタンと△ボタンのふたつで攻撃しつつ、×でジャンプ、〇で回避(全てPS5の場合)……となっており、□と△の組み合わせ次第でコンボが変わっていく。

コンボそのものは誰でも簡単に出せるようになっており、訓練所などもあって練習もできるため特に困らないのだが、回避、ガードを駆使できないと大型のモンスターやボス相手には非常に苦戦を強いられることとなる(詳細は後述)。

全ての敵には弱点属性ゲージとHPゲージがあり、HPゲージは右側、中央に弱点属性表示、左側に属性ゲージがあり、属性ゲージが満タンになるとダウンするという特徴があるため、いかに属性ゲージを溜めていくかということを考えていかないと、勝利することはなかなかに厳しい。

回復アイテムを多用してゴリ押すこともできなくもないのだが……。

特に、敵の属性ゲージが貯まってダウンした後に弱点属性のディバインアーツ(魔法)を当てると敵が大ダウン状態になり、長時間のダウンが狙える。

ただしディバインアーツを使用するためのアーツゲージはより多くのコンボを継続することで回復していくため、どうしてもコンボを続けて出せないとアーツゲージの回復が出来ず、アーツゲージの回復ができないと属性ゲージが貯められない……という負のループになってしまう。

コンボ数は画面中間右側に出ているHit数。

つまり、いかにコンボ数を維持してアーツゲージを回復させながらディバインアーツを当てて敵のダウンを狙い、ダウンした敵のHPを削り、削り切れなかった場合はさらにディバインアーツを当てて、――という繰り返しを維持できるかが本作の肝となるのだが、大ダウンからの復帰後はしばらく属性ゲージが貯められなくなるため、単純に属性ゲージを貯めてダウンさせる→ダウン時にHPを削りまくる→また属性ゲージを貯める、というような繰り返しを行えば良いわけではない。

もちろんディバインアーツや通常コンボでも敵のHPは削れるため、雑魚バトルであれば属性ゲージは貯められずとも敵の弱点属性で攻撃していけば削り切れることも多いのだが、大型モンスターやボスバトルではそうは問屋が卸さない、といったところだ。

なお、ヴァルキリーの通常コンボの攻撃属性は、”基本的にその時召喚しているエインフェリアの属性と同じ”になるという特徴がある。

エインフェリアは雷属性のイーゴン、氷属性のサイファ、光属性のクリストフェル、火属性のタイカだが、エインフェリアを複数出している場合は、ヴァルキリーの攻撃属性も随時切り替えが可能になっている。

エインフェリアを召喚していない時は無属性となってしまうので、戦力以外の意味合いでも、どのエインフェリアを召喚するかは戦況を左右する重要な要素と言えるだろう。

エインフェリアは召喚した回数に応じて成長していく。
お気に入りのエインフェリアはどんどん召喚しよう。

ちなみに難易度はEASY、NORMAL、HARDから選べ、ゲーム開始後の変更はできない。筆者はとりあえず全部の難易度で序盤を回ってみたのだが、本作のバトルはEASYでも難易度が高めに感じた。

EASYの場合、雑魚バトルは大して問題はないのだが、特に厳しさを感じたのはボスバトルだ。前述の通り、回避、ガードを駆使できないとかなり厳しい。

“それなりに”回避、ガードを頑張っているつもりでも、ゴリゴリこちらのHPが削られていく。回復アイテムは所持数の上限があるうえに入手手段が限られているため、できるだけ温存したい(ちなみに本当に危ない時は回復アイテムを使用している)。

……となると、被ダメージを減らさなければならないので、どうしてもガードと回避をもっと上手く使いこなせなければならないのだが、ガードと回避を使いこなせている人ならば、「アクションが苦手」とは言わない。そのため、どうしても「EASYにしては難しい」という辛口な評価になってしまう。――のだが、これは適当なボタン連打プレイに頼った場合の話だ。敵の動きをきちんと見て適切な間合いさえ取れれば必ずしも勝てない、というわけではない。

あくまで筆者の場合ではあるが、攻撃を当てたあとに敵から距離を取るように回避して、敵の攻撃を回避やガードで避けてから、また攻撃を当てては離れる、という少々チキンな戦い方で、なんとかエンディングまでたどり着くことができた(もちろん数回ゲームオーバーになり、その都度チェックポイントからやり直したりはしている)。

そういう意味ではボスバトルは“死に覚えゲー”系高難易度アクションの感覚に近く、雑魚バトルはボタン連打アクションといった風に感じた。

ならば雑魚バトルは簡単なのかというと、NORMALでEASYよりもテクニカルな印象は強くなり、HARDに至っては筆者の腕前ではほぼ歯が立たず、敵よりも先に指が死んだ。

本作はトリガーボタンまで含め、ほぼ全てのボタンを駆使して戦うこととなる。一体しか出現しないボスのほうがむしろそこまであわただしくなく、次から次へと違う弱点属性が湧いてくる雑魚バトルのほうが、その都度合わせたエインフェリアを召喚したり、ディバインアーツを撃ったり、敵の弱点武器にあわせて武器も持ち替えたり……と非常に忙しく、ボタン操作に慣れるまでは少々時間がかかる上に、難易度が上がるほど指が攣りがちになった(ちなみに今更ではあるが、筆者はアクションゲームが大好きながら、アクションは下手な方の部類である)。

ヴァルキリー用の武器は直剣からレイピア、槍、双刃槍など何種類かあり、そのうちの2種類までを装備できる。
敵によって弱点武器も存在するので、都度切り替える必要もある。

EASYでも回避とガードをしっかり使いこなさないとならないバトルは少々敷居が高いものの、アクションバトルが好きな人にとってはやり応え抜群である。エインフェリア、属性、武器、ディバインアーツ、コンボ、スキル、チェインなど、様々な要素を組み合わせてのバトルはとても奥が深く、プレイをしていても毎回考えることが多く、アクションバトルとしての完成度は高い。

純粋にストーリーだけ見たい人にとっては厳しめなことを連ねてしまったが、“苦手な人でも戦い方を工夫すれば無理を強いられるほどではない”という点だけは重ねて告げておきたい。

また、ヴァルキリーには攻撃や防御、補助など各スキルツリーもあり、スキルツリーで自身を強化することができたり、武器の強化などの要素もあるため、できる強化をしっかりと行っていくのも重要だ。

武器の強化では新たなコンボを覚えることも多く、ヴァルキリーの攻撃がより多彩になってゆく。スキルツリーでは最大HPを上昇させたり、被ダメージのカット率を上げたりと様々な要素があるので、どんどん活用していってほしい。

元々「ヴァルキリー」シリーズのバトルは、決して難易度が低いほうではない。その新作の名を背負うに値する歯応えのある、それでいてシリーズ初心者でも足を踏み入れやすい難易度になっている、と思ってもらえれば幸いだ。

メインクエストとサブクエスト、様々な収集要素

改めて少々ストーリーの話に戻ろう。

本作はメインクエストとサブクエストがあり、メインクエストでメインが進んでいくのだが、各章がこちらの想定よりも長く感じることが多かった。

セーブポイントでセーブするゲームのため、セーブ用のクリスタルはかなり多めに配置されているのだが、「物語がここまできたなら、この先も見てからひと息つきたい……!」となりがちなので、メインクエストは時間をある程度確保できるときに進めるのがオススメだ。

一方でサブクエストはバトルも含めてひとつが10~20分程度で終わる短めのクエストとなっているので、時間があまりない時はサブクエストを中心にプレイする、といった遊び方をするといいだろう。

しかしサブクエストはメインの最中に依頼を受ける、或いは各エインフェリアから依頼を受けるなど、何かしら依頼を受けなければ発生しない。

また、こういった探索要素は、大体見つけにくいところにあったりするので、進行方向のマーカーとは違った先に道を見つけた時は、必ずチェックするクセをつけておきたい。

進行方向は非常にわかりやすく、迷うことはほぼない。
だからこそ、マーカーばかり追っているとサブクエストなどの収集要素を逃してしまう。
収集要素のひとつ「欠魂花」。
かつてこの世界に生きていた人々の記憶を読み取るのだが、こちらも大抵わかりにくいところに咲いている。
ヴァルハラでエインフェリアに話しかけると、頼まれごとを引き受けることも。これもサブクエストのひとつ。
現在その地域で発生しているクエストの数などがわかる。

特にサブクエストの報酬に新たな武器やディバインアーツなどがあることも多く、サブ要素を回収していくことでヴァルキリーがより一層強化されていくことにもなる。新たな宝箱の回収もできる場合が多く、回復薬など消耗品の入手がほぼ宝箱に限られている本作では、サブ要素は大変重要な役割を持っている。

例えば、ヴァルキリーの必殺技であるニーベルン・ヴァレスティは本作にももちろん登場するのだが、サブクエストを進めなければ手に入らないニーベルン・ヴァレスティもある。

ニーベルン・ヴァレスティ(のいくつか)はサブクエストをやらなければ手に入らない時点で、本作に於いてどれだけサブクエストを疎かにしてはいけないかがわかるだろう。サブ要素といえど、メインと同じくらいの重要度を持っている。形こそサブクエストとなっているものの、実質メインに組み込まれていてもおかしくない要素が多いので、プレイするときは注意してほしい。

これは“ヴァルキリーの物語”である

本作は確かにエインフェリアと共に進んで行く物語で、エインフェリアは本作と切っても切り離せない。だが、このストーリーはあくまで”ヴァルキリーの物語”である。ストーリーの中心にいるのはヴァルキリーで、エインフェリアではない。

主神オーディンと、その忠実な僕たるヴァルキリーとの関係性。

ヴァルキリーの行く手に幾度となく立ちふさがる、謎の黒い鎧の女騎士ヒルド。

そしてヴァルキリーの前に度々現れる、崩壊した世界を旅する青年アルマン。

全ての存在がヴァルキリーを取り囲み、彼女の在り方を問うてくる物語は、プレイヤーの心を揺さぶるものとなるだろう。

そしてその一端を担うのが、桜庭統氏による楽曲だ。本作の楽曲は全てオーケストラとなっており、神界が主な舞台となる本作を盛り上げる気品漂う楽曲らがずらりと並ぶ。時には荘厳、時には静謐、時には闘志、時には悲哀、時には勇壮……本作を彩る楽曲はいずれも色彩豊かで、情景を盛り上げ、ヴァルキリーの心の揺らぎすら表現しており、自然と聞き入ってしまう。

これぞ“ヴァルキリーの物語”のために作られた音楽だな、と体の隅々まで染み入ってくるのだ。

ヴァルキリーが口にする、「死の先を往く者よ、まだ戦う意思はあるならばこの手を取るがいい」という言葉は「ヴァルキリー」シリーズファンには馴染みあるものだと思うが、本作で初めて聞く人にとっては深く心に刻まれるのではないだろうか。

そんな風に、“ヴァルキリーらしさ”を考えて練られたのであろうセリフは一語一句、全てが尊いものであるように感じられた。

この崩壊した世界の中に立つヴァルキリーが、様々な人物たちとどのような世界救済を遂げるのか、それはぜひプレイヤー自身の目でみてほしい。

※画面は開発中のものです。

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