非対称対戦型ゲーム「脱獄ごっこ」シリーズの最新作となる「脱獄ごっこPRO」をレビュー。駆け引きや心理戦といった要素をあくまでポップかつカジュアルにまとめているのが特徴。その魅力を紹介する。
「脱獄ごっこPRO」は、LiTMUSがAimingと共同開発した非対称対戦型ゲーム。「脱獄ごっこ」シリーズの最新作で、これまで同様、人狼チームと市民チームに分かれて戦うオンラインマルチプレイゲームだ。「人狼」や「脱獄」という言葉からはどことなくダークでホラーテイストな印象を受けるが、本作の雰囲気はむしろ真逆。「ごっこ」という言葉が示す通り、ポップでにぎやかな世界観が特徴。この世界観は前作から引き継いでいるものだが、今作はビジュアル面のクオリティがアップ。よりポップな世界観が強調された。この原稿では、そんな本作の魅力を紹介したい。
人狼チームと市民チームに分かれて対戦!脱獄を競う
本作には人狼チーム1VS市民チーム3で競う「脱獄ごっこ」、人狼チーム2VS市民チーム6で競う「ケイドロ」など複数のモードが存在している。いずれも基本的には、市民チーム側が脱獄=出口からの脱出を目指し、人狼チーム側は脱獄の阻止を目指す。
タイトルと同名でメイン的な立ち位置の「脱獄ごっこ」では、市民チーム側が6個のスイッチを押すことで出口が解放。見事出口へ入ることができれば勝利となる。スイッチはマップ内に仕掛けられた宝箱の中に存在するが、どの宝箱の中にあるかは毎回変わる。なので、かたっぱしから宝箱を開けていくというのが序盤の基本的な立ち回りだ。
一方、人狼チーム側は市民チームに物理的な攻撃を仕掛け、倒すことで脱出の阻止を目指す。人狼側チームは本作におけるすべての武器を所有した状態になっており、これを使って攻撃するわけだ。ただ、注意する点が2つある。
1つめの注意点は、「人狼」という名称が示す通り、誰が人狼チームなのか市民チーム側からわからないようになっているという点。アナログゲーム「汝は人狼なりや」…いわゆる「人狼ゲーム」と同様、正体が秘匿されているのだ。このため、不用意に攻撃をしかけると襲っている相手以外の市民にも正体がバレてしまう。そうなると警戒されてしまい攻撃しにくくなってしまうので、攻撃をしかける際は他の市民側プレイヤーから見えないような場所で行わなければならない。
2つめの注意点は、市民チーム側にも攻撃手段があるということ。人狼チーム側はすべての武器を持っていて非常に有利な状況にあるが、市民チーム側も武器を保有していて反撃することができる。しかも、近距離攻撃だけでなく遠距離攻撃も可能になっているので、場合によっては人狼チーム側が攻撃によって倒されてしまう可能性もゼロじゃない。ちなみに人狼チーム側が倒された場合、その場で市民チーム側の勝利が確定してしまうので、返り討ちにあうのは絶対に避けたい。
こうした仕様を見ると、人数が少ないにも関わらず人狼チーム側がやや不利な状況に置かれているように見える。ここでポイントになるのが「疑う」という機能だろう。これは「こいつが人狼チームに違いない!」という疑いをかけるための機能で、画面上の他プレイヤーの顔をタップするだけで使うことができる。この機能があることで、誰が人狼チームなのかという情報は一気に市民チーム全体へ伝わってしまう。「じゃあやっぱり人狼チーム側が不利なんじゃないか!」という話になるが、実はこの機能、人狼チーム側も使うことができる。人狼チーム側が市民チーム側のプレイヤーを攻撃して倒しそびれたら確実に「疑う」を使われてしまうが、この時先に「こいつこそ人狼チームだ!」と言い出すことで市民チーム側をかく乱できるわけだ。
また市民チーム側をかく乱することで、市民チーム側の同士討ちを狙うこともできる。この時、市民チーム側が持っている攻撃能力が人狼チーム側へ有利にはたらくのがおもしろい。人狼チーム側は、任意の市民チームプレイヤーへ変装するアイテムも保有しているので、この能力を駆使して市民チームプレイヤーを襲えば、ますます同士討ちを誘発できるだろう。
宝箱を効率的に開けることや人狼からの狙われにくさを考えた場合、市民チームとしては、分散してとにかくスイッチを目指して宝箱を開けまくるという立ち回りが強力だ。ただこの場合、他の市民チームのプレイヤーが狙われていることを確認しにくく、偽の情報を見抜きにくいというデメリットがある。スイッチと人狼チームへの対処を秤にかけてどう立ち回るかを考えるのがおもしろい。
ポップ&お手軽なスリルが魅力!カジュアルに楽しむべき一作
自チームの中にいる裏切り者に注意しつつ脱出を目指すという駆け引きや、自分の正体がバレないように1人ずつ敵を倒していくという戦略性など、本作のゲーム性は奥深い。しかし本作は奥深さよりも、気軽さの方を目指して作られているようだ。それがよくわかるのが「脱獄ごっこ」モードの勝利条件。
「脱獄ごっこ」モードの厳密な勝利条件は、「市民チーム側がチームメンバーが生き残ること」。そして、人狼チーム側は「市民チームのプレイヤーを1人でも倒すこと」になっている。市民チーム側は自分が倒されても勝つことができるし、人狼チーム側はバレる前提でプレイしてもとにかく1人倒せればOK。何より、この勝利条件は同時に成立しうる。つまり、市民チーム側と人狼チームのどちらか一方だけが勝てるわけではなく、どちらのチームも勝利という状況があり得るのだ。目的達成のハードルが低い。だからこそ、気軽にプレイすることができる。
また、チュートリアルも基本的な操作方法を紹介するにとどまっていて、厳密な勝利条件などは説明してくれない。これは、見方によっては不親切というかたちになるのかもしれないが、筆者は意図的なものだと感じた。駆け引きや攻略を意識してプレイするのではなく、カジュアルにプレイしてほしいから、あえてザックリ説明しているのだろう。
実際本作は、人狼側なら自分が市民プレイヤーに疑いをかけ混乱を誘いつつマップを移動し、市民プレイヤーを見つけ次第攻撃を仕掛ける…というやや強引なプレイがおもしろい。市民側も人狼プレイヤーの脅威を意識しつつも、宝箱をガンガン開けていくプレイが魅力的だ。駆け引きや心理戦の要素については、あくまでテイストと割り切った方が楽しめると思う。
逆にギリギリの駆け引きを楽しもうとすると、物足りなさを覚えるだろう。先に触れたとおり本作にはチュートリアルで説明されない部分も多い上、マップの作りにもやや大味な部分がある。なので、パーティーゲーム的にプレイするのがオススメだ。ポップで賑やかな世界観的にも、カジュアルに楽しむべき作品だろう。