探索型ストラテジーRPG「ドールズフロントライン:ニューラルクラウド」をレビュー。シリーズ最新作となる本作では、ストラテジー(戦略)という言葉通りの深い戦略性が楽しめる。その魅力を紹介したい。
サンボーンジャパンからリリースされた「ドールズフロントライン:ニューラルクラウド」は、「ドールズフロントライン」シリーズ最新作となる探索型ストラテジーRPGだ。「ドールズフロントライン」は武器を美少女化した「人形」たちが活躍する終末的世界観の戦略シミュレーションゲームだったが、本作は「人形」こそ登場するものの仮想世界を舞台にしたSF的世界観。また、ゲームシステムもローグライトRPG寄りなものになるなど、シリーズとはいっても前作とは方向性の異なる作品に仕上がっている。
どう采配しどう育成するか?戦術と戦略がモノをいうバトルシステム
美少女が活躍するゲームというと、ゲーム性よりキャラクターやビジュアル、ストーリーの比重が高いのではないかと考える人もいるかもしれない。しかし本作は、ゲーム性が重視されている。もちろん、キャラクターも魅力的だ。しかしそれ以上にバトルシステムがよくできていると感じた。銘打たれた「探索型ストラテジーRPG」という言葉に偽りなしの深い戦略性(ストラテジー)を体験させてくれる。
本作の大きな構成は、一般的なスマートフォン向けRPGを踏襲している。ホーム画面からクエストに当たる「探索」を選んで、バトルパートやストーリーパートを進めていくという流れだ。
ただ、バトルパートの仕組みは一般的なスマートフォン向けRPGとは大きく異なっている。マップ上に複数のイベントが配置されたダンジョンのような構造で1ステージとなっており、マップのゴール地点のイベントをクリアすることでステージクリアという扱い。バトルもマップ上のイベントとして発生するため、1ステージで複数回のバトルが発生する。
イベントで発生する個々のバトルは、六角形のマス=ヘックスで区切られた見た目からターン制ストラテジーのように見えるが、実際にはリアルタイムストラテジー的。編成したユニットはそれぞれ移動や攻撃などの行動を自動的に行う。プレイヤーが行うことはバトル開始時点でのユニット配置と各ユニットごとの「必殺技」の使用、そして「戦術スキル」の使用だ。
「必殺技」はその名の通り、各ユニットごとに設定された強力なスキル攻撃のこと。各ユニットごとのゲージが満タンになった状態でユニットのアイコンをタップすると発動する。プレイヤーの手動発動とはいえ通常攻撃の延長のようなものなので、使い方にそれほど悩むことはないだろう。
一方で、「戦術スキル」は一味違う。時間経過に伴いリソースが貯まり、リソースを消費することで使用できる…という点では必殺技と大きな差はない。しかしその内容は、ユニットを特定のヘックスまでワープさせたり、ユニットを上昇気流で巻き上げ一定時間戦場から切り離したり…など、クセのあるものになっている。
上昇気流なんてどう使うのかというと、敵に使うことで一定時間攻撃不能にすることができるし、味方に使えば一定時間行動不能になるものの無敵状態にすることができる。なので、敵に攻撃力の高い敵がいるならその敵に上昇気流を使って無力化するということが考えられるし、敵の進撃を防ぎたいなら進行ルート上に味方を配置した上で上昇気流で飛ばしルートを封鎖してしまう…などといったことが可能だ。
この「戦術スキル」の使い方によって、楽に勝てるか苦戦するのかがダイレクトに変わってくる。使ってもいいが使わなくてもいいという位置づけではなく、使うことが大前提のバランス。なので一見、オート進行のカジュアルなバトルシステムに思えるがまったくそうではない。頭脳プレイが求められる深いバトルなのだ。これが、まずおもしろい。だがこの「戦術スキル」はまだ序の口。「関数」と呼ばれる要素が、本作の戦略性をさらに奥深いものにしている。
「関数」とは、各ユニットに対してバフ効果をもたらす要素。たとえば「火事場泥棒」なら、ファイターの攻撃対象のHPが一定%未満の場合に攻撃力上昇という効果を持っている。この「関数」は、バトルに勝利した際やイベントの際に獲得可能。ただし、有効なのはそのステージの間となっている。
本作を奥深くしているのが、この「関数」獲得パート。ランダムに選ばれた複数の「関数」の中から1つを選択するというローグライト的なシステムが採用されており、自分の戦い方に合わせてチョイスする。回復を重視するのか? 攻撃を重視するのか? 現在のユニット編成や残りHPの状況、残りのステージ数などを秤にかけて選ぶわけだ。
でもそれだけではない。「関数連鎖」というものが存在しており、同系統の「関数」を集めると連鎖効果が発動する。基本的には、同系統の関数を集めれば集めるほど効果が強くなると考えればOKだ。ただ、状況によっては同系統の「関数」ではなく、別の効果を持った「関数」が欲しいことだってある。そんな中、どの「関数」を選べば正解なのか? …これを考えるのがとても悩ましい。そして、悩ましいからこそ奥深く、おもしろいのだ…!
ここまでに紹介した内容を踏まえて本作のバトルパートをまとめるなら、「RTS的なバトルシステムを持ったローグライトRPG」になる。1ステージがローグライトRPGの1ダンジョンに該当するかたちだ。それだけに一般的なスマートフォンRPGよりも1ステージの攻略には若干時間がかかるように感じた。しかしバトルテンポが早いため、ストレスに感じるほどではないだろう。
刺さる人には刺さる?コンピューターに関する概念を擬人化したキャラクター
ここまでバトルパートについて紹介してきたが、キャラクター面でも筆者には刺さるものがあった。それは、コンピューターに関する概念を擬人化している点。
序盤からストーリーに登場するキャラクターでは、光の屈折や反射を表すフレネル式をモチーフにしたであろう「フレネル」やデジタル回路のクロックをモチーフにしただろう「クロック」など。仮想世界が舞台になっているだけあって、コンピューター系の用語をモチーフにしたキャラクター、設定がそこここに見られる。コンピューター好きな人なら、思わずニヤリとするハズ。
もちろんキャラクターたちはいずれもビジュアル、性格とも魅力的にいきいきと描かれているので、コンピューター好きでなくとも楽しめるだろう。ローグライトRPGが好きな人や、戦略性を楽しみたい人は是非一度試してみてほしい。よくできた作品だと思う。