2023年7月14日配信の「Episode III -楽園の眠り-」をもって完結を迎えたVRアドベンチャー「DYSCHRONIA: Chronos Alternate」(以下、「ディスクロニア:CA」)。本作のシナリオとディレクターを務めた末岡青氏にインタビューを実施した。

目次
  1. 膨らみ続けていったストーリー
  2. キャラクターそのものに謎を仕込んだ理由
  3. 内面が反映されたキャラクターデザイン
  4. 実は条件つきエンディングも……!?

2022年9月23日の「Episode I -偽りの目覚め-(以下、EP1)」から約10ヵ月、2022年12月9日「Episode II -終局の銃弾-(以下、EP2)」を経て、ついに「ディスクロニア:CA」の完結編がリリースされた。

VRユーザーを中心に人気を博した本作の中でも、練り込まれたストーリーや個性豊かなキャラクターたちは大きな魅力のひとつ。今回は、本作の生みの親とも言えるディレクター・末岡青氏に、ストーリーとキャラクターたちが形作られてきた過程やその裏側を聞いた。

膨らみ続けていったストーリー

――「Episode III -楽園の眠り-(以下、EP3)」の配信を目前に控えたタイミングでのインタビューですが(※2023年6月末に実施)、今のご心境はいかがですか?

末岡氏:最後のエピソードなので、今までで一番緊張しています(笑)。でも、EP1、EP2と続けての完結なので、開発メンバーもやりきった感があるんじゃないかと思います。

――今回はストーリーやキャラクターにフォーカスしてお話を伺いたいと思います。当初立てられたストーリーのコンセプトはどのようなものでしたか?

末岡氏:当初は都市で起きた事件を追う、今よりもコンパクトなストーリーでした。都市のシステムが7日後の都市崩壊を予見し、それを捜査官であるプレイヤーが能力を駆使して止めるというもので。そこは初期からあまり変わってはいないのですが、都市の外がどうなっているかとか、どのように都市や世界が崩壊するのかは後から固めていきました。

――ご自身でシナリオを書いた中で、大変なことはありましたか?

末岡氏:エピソード配信という形式で、山場を3回作らなくてはいけないことが大変でしたね。毎回、最後に「引き」となるどんでん返しを用意していったのですが、難易度の高いものに手を出してしまいました(笑)。

――すんなり書けたエピソード、そうでないエピソードはありましたか?

末岡氏:EP1はサッと書けましたが、EP2は初稿段階では中だるみ感があったので、どんどん事件を起こす方向に調整していきました。最終的にはは最初に書いたものからは結構と変わっていますね。EP2が固まったらEP3はすんなりできました。

――EP3は最初から頭の中にあったのでしょうか?

末岡氏:実は、当初はEP2のラストで事件を解決して終わるような構成だったんですよ。EP2の終盤の展開を広げたのが今のストーリーで、広げた段階で結末は決めていました。

――末岡さんの世界観が非常に反映されている作品ですね。

末岡氏:いろんな人が世界観を支えてくれたと思っています。7日間でどんどん崩壊していく都市が舞台なので、例えばある場所は1日目と7日目ではまったく別の様子になっているとか、そういうことも表現をしたいと思っていました。ただ、そうすると、時間軸の整理が大変なんですよね。

特に大変だったのが時計塔広場で、通常使っているものでも8パターンくらいの背景が用意されています。都市が崩壊し始めたあとだけでも、崩壊レベル1、レベル2、レベル3と分けていて、それをすべて時間軸ごとに設定していただきました。

――紆余曲折を経てできたストーリーですが、プレイヤーさんからのフィードバックはどのようなものがありましたか?

末岡氏:特にEP1は「そこで終わるの!?」という感じの終わり方なので、「続きが気になる」という感想は、国内外問わずたくさんいただきました。

――「ディスクロニア:CA」でVRだからこそ表現できたことはありましたか?

末岡氏:VRって基本的には誰か/何かの視点にそのまま入る媒体じゃないですか。そんなふうに、主観視点だからこそ表現できることがあると思っているんです。

例えば「ディスクロニア:CA」では変異体という存在が登場します。実は、変異体とそうでない人では世界の見え方が違うという設定があります。

メモリーダイブで変異体の視点に入った時、夜の時計塔広場ではオーロラが見えますが、変異体でない場合はオーロラは見えません。そういう表現はVRだからこそできたことかなと思っています。視点が違えば世界の見え方も違うと思うので、そういう点をゲームに取り込めるのはVRの面白いところですね。

キャラクターそのものに謎を仕込んだ理由

――「ディスクロニア:CA」のキャラクターたちはどのように生み出されていったのでしょうか?

末岡氏:企画を立てた当初から、ストーリーの軸に関わっているハル、マイア、システリアは存在していました。他のキャラクターは、ストーリーの詳細を練る段階で生まれていきました。

3部構成で、各エピソードで徐々に謎が明らかになっていく作りなので、登場人物が少なすぎるとゲームが成立しません。ハルとマイアを中心として、そこを補完する存在としてノエルとリリィがいます。ノエルは眠り続けているマイアの代わりに「機能不全の家族」を象徴する存在としても必要なキャラクターでした。

リリィについても同じですが、ただ、彼女は機能面でも大切な役割を担っています。というのも、VRではプレイヤーの視点をコントロールするのが難しいんです。何かを見てほしい時にハルが勝手に何かに気づいて話し始めると、プレイヤーは強い違和感を覚えてしまいます。なので、代わりにリリィが飛びまわって、色々なものに、プレイヤーの意識を向けてくれています。

あとは、過去とひも付くキャラクターとしてラムファード博士やケイスが徐々に形作られていきました。最後に詳細が決まったのはアイリだったと思います。

――システリアの役割やマイアとの関係は当初からあのような形だったのでしょうか?

末岡氏:最初からですね。マイア、システリアに関しては以前から頭の中で考えていたストーリーの登場人物のままなんです。「ディスクロニア:CA」と同じ話ではないんですが、こういう展開は面白そうだなと考えていたものから生まれています。

――10人以上いるキャラクターたちを一人ひとり作り込む中で、大切にしたポイントはどんなところですか?

末岡氏:「ディスクロニア:CA」は作中の7日間で、徐々にキャラクターの謎が紐解けていくようにしたかったんです。個人的には探索しながら「世界」の謎を紐解くゲームは好きなのですが、日本のプレイヤーはおそらく「謎めいた世界」を探るよりも、「謎めいたキャラクター」を追うほうが好きだと思うんですね。なので本作ではキャラクター自体に謎を仕込みました。それぞれのキャラクターが秘密を抱えていて、7日後に起こる事態に対してもそれぞれもっている情報や危機感が異なる。各キャラクターが過去にどういう秘密を抱えているかをまず設定し、それをどんどん深掘りしていく形でつくっていきました。

――だからこそ一人ひとり動機も行動も違うんですね。

末岡氏:そうなんですよね、だからパーティーを組むような感じではなく、みんな本当に好き勝手に行動してるんです(笑)。

――伏線を張っていたキャラクターもいたんでしょうか?

末岡氏:伏線は全員に張っているのですが、わかりやすいキャラクターとそうでないキャラクターはいると思います。自由に行動できるタイミングで、都市内を探索をしたかによっても変わると思います。わかりづらいですが、全員が平等に気づくことができる伏線だと、例えば誰かの記憶に入った時に、時計塔前広場に行くことがあったら、空を見上げてみてください。かなりはやい段階で、意外な人物の秘密に気づけたりもするんですよ。

――それがさっきお話していた……。

末岡氏:そうです。実は遊んだ方のなかには、EP2のリリース前に気づいている方もいて、鋭い方がいるんだなとひやひやしていました(笑)。

内面が反映されたキャラクターデザイン

――キャラクターを創っていく上で、末岡さんがディレクションしたポイントはどんなところですか?

末岡氏:「アルトデウス」「東京クロノス」のストーリーはおそらく10代~20代の方が共感しやすいものだったと思うのですが、「ディスクロニア:CA」はもう少し上の年齢層の人も楽しめるようにしたいと考えていました。なので、キャラクターも比較的年齢層が高めで、出自も幅広くなっています。それぞれの設定に合うように、デザインも調整していただきました。

――こだわったキャラクターはいますか?

末岡氏:リリィでしょうか。一番プレイヤーの目に触れるキャラクターですし。とにかく可愛く、プレイヤーの気持ちを盛り立ててくれるキャラクターにしたいと思っていました。あとは血縁関係にあるキャラクターについては、それをどの程度デザインに盛り込むかは慎重に検討しました。

面白かったのは、アイリをつくっていた時ですね。彼女はミリタリーと研究者、両方の要素が入っているといいねという話をしていたのですが、(キャラクターデザインの)LAMさんとの打ち合わせ中に「未来の眼鏡ってどんな感じだろう」という話になって。モードが切り替わるバイザーのような眼鏡を考案してくださいました。

――LAMさんから逆提案されて採用されたことは他にありましたか?

末岡氏:エレインですね。監察官たちの制服はハルのものをベースに崩したりしてキャラクターごとに特徴を出していったのですが、エレインは管理局のなかで一番上の階級なのでどういうふうに特徴を出そうと。管理局という組織の特性上、豪奢な方向にするのはおかしいですし。シンプルだけど「ハイブランド」ぽく見えるデザインはどうかとアイディアを頂いて、今の形になっています。

――もともと末岡さんの中にあったキャラクターのイメージをLAMさんに伝えてデザインしていただいていたのでしょうか?

末岡氏:イメージやプロフィールを最初にお渡しして、後追いでEP1、EP2のシナリオをお渡しました。シナリオをお渡しする前と後でデザインが変わったキャラもいます。例えばリリィですね。はやめにデザインを開始したキャラクターの一人で、シナリオをお渡しする前に一度描いていただいていたのですが、LAMさんのほうでシナリオを読んだ後にとても重要なキャラクターであることがわかったから調整したいとおっしゃって、スケジュールの後半に時間を取って調整いただきました。シナリオを踏まえて描いてくださったのはすごく嬉しかったですね。

――しっかり物語にフィットするように描き直されたんですね。ちなみに、末岡さんの中お気に入りのキャラクターデザインは誰ですか?

末岡氏:ノエルかな。キャラクターがよく出ていると思っていて。口元を隠して表情は見えないようにしているけど、抑え込んでいる感情があるというのがわかりますよね。

――「ディスクロニア:CA」のキャラクターはそんなふうに内面を反映したデザインになっているのでしょうか?

末岡氏:大体は内面を反映してる感じですね。ただアッシュだけはもしかしたら違うかもしれません。遊んでいただいた方はわかると思うのですが、少し軽く見える部分はすべてブラフで、本当は一途なところがあるキャラクターです。なので、アッシュは外見と内面が少し違いますね。

実は条件つきエンディングも……!?

――EP3のストーリー面で注目してほしいところはどこですか?

末岡氏:やっぱりエンディングですね。最初からそこを目指して作ってきたこともありますし。実は条件を満たさないと見られないエンディングがあるんですが、それを見ると皆さん驚くと思いますし、エンディングに到達するとオープニングの印象も変わるかなと思っています。

――「ディスクロニア:CA」のヒットや開発で積み重ねられた知見を、今後このように活かしていきたい、というイメージはありますか?

末岡氏:小さいどんでん返しを繰り返しながら盛り上げていく作り方は勉強になりましたね。分割されていない物語でも作り方は同じかもしれませんが、今回はエピソードが分かれていたこともあり、明確に意識しないといけなかったので、その点で得られる知見は多かったです。

また、スタジオとしてはちょうどEP1を作っていた時に新しいメンバーが増えました。「東京クロノス」から「ディスクロニア:CA」まではアドベンチャーゲームを作り続けてきたのですが、現在はさまざまなメンバーがいるので、他のジャンルのゲームにもどんどん挑戦していけるように感じています。

――末岡さん個人としては、新しい物語の構想などがあったりしますか?

末岡氏:私、実はノンバーバルな物語の構想が好きだったりするんですよ。あまり言葉を使わずに環境が語ってくれる作品が好きで、そういう面でもVRの方が合ってるんじゃないかなと思っています。言葉を使わない、もしくは異国の言葉などを話すような、もう少しアートに振ったような作品に挑戦したいですね。

――楽しみにしています。最後に、最終章まで追い続けてきたファンの皆さんにメッセージをお願いします。

末岡氏:改めてメッセージとなると緊張しますね……(笑)。EP1から謎を引っ張り続けてきたので、本当にお待たせしてしまったのですが、EP3ではついに全ての謎が明らかになります。エンディングでは最後の最後までサプライズを準備しているので、ぜひ楽しんでいただけると嬉しいです。

※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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