コーエーテクモゲームスより発売中のPS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/PC(Steam・Windows)用ソフト「Wo Long: Fallen Dynasty」。発売から1周年を迎えることを記念し、開発陣へのインタビューを実施した。

目次
  1. ユーザーと共に歩んできた一年間
  2. ガードから「化勁」が出せない時代もあった
  3. コーエーテクモの呂布は史実とは別の存在として愛されている
  4. 張梁が大きな壁になったのは想定外だった

「仁王」シリーズや「NINJA GAIDEN」シリーズを手掛けるTeam NINJAが開発した三国志を題材とした高難易度アクションゲーム「Wo Long: Fallen Dynasty(以下、「ウォーロン」)。2024年2月7日には、3つのDLCや「仁王2」「NARAKA: BLADEPOINT」、「Lies of P」など他作品とのコラボDLCをすべて収録した「Wo Long: Fallen Dynasty Complete Edition」が発売されている。

さらに2024年3月3日には発売1周年も迎えた本作について、プロデューサーの山際眞晃氏とプロデューサー兼ディレクターの平山正和氏に、さまざまなお話を伺うことができた。

平山正和氏(左)、山際眞晃氏(右)
平山正和氏(左)、山際眞晃氏(右)

ユーザーと共に歩んできた一年間

――3月3日に1周年を迎える「Wo Long: Fallen Dynasty」ですが、コンプリート版も発売され、開発としては一段落ついたタイミングだと思います。現在の心境をお聞かせください。

平山:そうですね。この1年間は毎月数週間に1回は何かしらのアップデートを重ねてきたのもあって、あっという間の1年だったなというのが正直な心境です。なので、まだ1周年という実感がない感じがちょっとありますね。

――マスターアップはかなり前ですけど、まだ終わった感じが全くなかったような?

平山:そうですね。特に「ウォーロン」については、3つのDLCや無償のアップデート、コラボレーションも実施させていただいたりしていたので、開発としては日々ずっと何か対応していたような感覚です。

――今はさすがにちょっと一区切りつけられたという感じはありますか?

平山:開発としての区切りという意味ではそうですね。ただ一周年にあわせた施策も予定していますので、またプロモーションやキャンペーンには引き続き取り組んでいきたいと思っています。

「Wo Long: Fallen Dynasty」山際眞晃氏&平山正和氏インタビュー:1周年を迎えた「ウォーロン」を振り返る。難易度の反響やプレイヤーに人気のボスとはの画像

――確かに、近年のゲームはロングスパンで売るものだと思いますし、継続的なプロモーション施策を考えていくのもプロデューサーの大事な仕事ですよね。

山際:そうですね。ただプロデューサーより現場の方が大変だったと思います(笑)。そこからこれをやろう、みたいな話になっていくので。

平山:ワールドワイドでのユーザーの皆さんの反応を確認して、そこから分析してゲームに反映するみたいなこともやっていたので、忙しい時は毎週締め切りがあるような感じでした。

本編の開発期間と違い、リリース後はアップデートの瞬間に皆さんの反応が見られるので、リリースの日などは開発メンバーの皆でSNSを見たり動画の配信を見たりとかしながら、リアルタイムでどういう反応だったかを共有したり、これから何をするかっていう話をしていましたね。振り返ってみると、そういう意味でもユーザーの皆さんと一緒にいた1年間だったなという感覚があります。

――12月にはDLCの第3弾が出ましたが、こちらの反響はいかがですか。

平山:「次は何のアップデートがあるんだろう」というのを楽しみにいただいていたユーザーの皆さんも多かったので、寂しがってくれる方が結構いらっしゃったのは個人的にすごく嬉しかったです。

――コンプリート版にはコラボレーションDLCも同梱されていますが、コラボレーションの経緯ついてもお話いただけるでしょうか。

山際:「Xbox Game Pass」にも初めて対応させていただいたのもその一環なのですが、 今回は完全新規IPというところで、「仁王」シリーズや「Team NINJA」ファン以外の方にも間口を広げたいという想いがありました。そこで、いろんなチャンネルや、きっかけから興味を持っていただければというところから、コラボさせていただきました。

コラボレーション先については、同じ中国の世界観を題材にしている「NARAKA: BLADEPOINT」さんや、ゲームジャンルが近い「Lies of P」さんといった、ファンの方に受け入れてもらえるようなシナジーを意識した上で実施させていただきました。

「Wo Long: Fallen Dynasty」山際眞晃氏&平山正和氏インタビュー:1周年を迎えた「ウォーロン」を振り返る。難易度の反響やプレイヤーに人気のボスとはの画像

ガードから「化勁」が出せない時代もあった

――そもそもの話になりますが、「Wo Long: Fallen Dynasty」というタイトルはどのように決まったのでしょうか。ちょっと日本人には馴染みがない単語ではありますが。

山際:まず、今回は世界中のプレイヤー同士がコミュニケーションしやすいようにワールドワイドでタイトルを統一したいと思っていました。

その上で、中国らしいニュアンスを入れられないかと考えた時に見つけたのが、日本語で「臥龍」を意味する「ウォーロン」という単語で、これが本作で我々が目指している「名も無き者が目覚めていく物語」というのにピッタリでした。

「Wo Long: Fallen Dynasty」山際眞晃氏&平山正和氏インタビュー:1周年を迎えた「ウォーロン」を振り返る。難易度の反響やプレイヤーに人気のボスとはの画像

――あえて、「臥龍」というタイトルにはしなかったんですね。

山際:そうですね。仮にワールドワイドで統一する場合、結局英語で「GARYU」と書くと日本人にもピンとこなくなってしまうでしょうから。多少なじみのない部分もあったと思いますが、だからこそ浸透してくれればいいなと。

平山:実際、先に候補として上がっていたのは「臥龍」の方で、それをワールドワイドで伝えていくと考えた時に、今の山際の話のような流れで「ウォーロン」に落ち着いた感じでした。副題についてはゲームのイメージと一番合うような、ストーリーに沿ったものを採用しています。

――単語が一般的ではない分、あまり検索時に邪魔をしないメリットもありそうですね。

山際:そういう狙いもありましたね。実際、現状検索をかけると類似はあまりないので良かった部分だと思います。

――Team NINJAとしては、これまでもさまざまな高難易度アクションゲームを作られてきていますが、直近でもっとも影響が大きいのは「仁王」シリーズかと思います。本作と「仁王」とのコンセプトの違いは、どのように決定していったのでしょうか。

平山:Team NINJAとしては、これまで日本を舞台にしたタイトルを多く作ってきました。「仁王」もその一つですが、「仁王」はどちらかというと、侍らしい静と動のメリハリのある戦いが軸になっていたのですが、映画とかで見る中国のアクションって、激しく攻防が入れ替わる剣戟みたいなイメージが強いと思っていて。そういった違いを新しいアクションへのチャレンジの軸にしていきたいというのは当初から考えていましたね。

――いわゆるスタミナがないのが大きいですよね。

平山:そこも攻防が激しく入れ変わる、いわゆる中国的なアクションを表現する上で、そうするのが一番ベターだったというのが大きいですね。

山際:「仁王」から変えようという発想から始まったわけではなくて、タイトルごとの特性や狙いがあって、今回は中国武術らしい激しいアクションを目指した結果そうなったという形ですね。スタミナをなくしたのも、バトルの流れのなかで攻防が入れ替わるスタイルを実現するためには適していたという判断になります。

「Wo Long: Fallen Dynasty」山際眞晃氏&平山正和氏インタビュー:1周年を迎えた「ウォーロン」を振り返る。難易度の反響やプレイヤーに人気のボスとはの画像

――スタミナがあると、少し殴ってまた離れてスタミナの回復するのを待って……みたいなヒット&アウェイが基本になりますが、「ウォーロン」でそれをやると気勢ゲージが下がっていってしまうのが面白いなと。

平山:まさにそこは気勢ゲージで表現したかったことでした。三国志の戦って、何らかの出来事をきっかけに大きく戦況が変わるみたいなイメージが自分の中にありまして。

最初はすごく劣勢だったけど、敵の大将を討ち取ることによって一気に味方の士気が上がる……みたいな流れをゲーム体験の中に落とし込みたかったといいますか。少し感覚的なのですが、勢いに乗っている時はガンガン攻められるけど、そのテンションもずっと持続されているわけではなく、時間が経つと落ち着いてきますよね。そういうイメージを一瞬の攻防の中に盛り込めないかと考えたのが、「気勢ゲージ」が生まれるきっかけになりました。

――本作では、いわゆるパリィアクションに相当する「化勁」がゲームの軸になっているかと思います。パリィアクションって、苦手な人は本当に苦手だったりする人を選ぶアクションだと思うのですが、そこを軸に据えるのは結構勇気がいる決断だったのかなと。

平山:先ほどと重複する話になりますが、そこも瞬時に攻防が入れ替わる中国的なアクションを実現するための要素でした。攻めて攻めて守ったところでもう一度自分のターンにして攻める……みたいなアクションを実現するために、「化勁」というシステムが生まれたという流れです。

ただ、おっしゃる通りパリィアクションならではの敷居の高さみたいなところは、いろいろ試行錯誤も多かった部分でした。体験版の時とか、ちょっと難しくしすぎた時代もあったのですが、本質は中華アクションを気持ちよく遊んでいただきたいという所なので、「化勁」のやりやすさは緩和しつつ、気勢ゲージの影響は逆に抑えてといった形で、中華アクションを気持ちよく体験してもらうための調整を進めていました。

山際:やっぱり「化勁」っていうのは、我々としてもチャレンジして欲しい要素で、それがリスクになりすぎたり、及び腰になるようなバランスは本意ではなかったんです。元々、ある程度チャレンジしてもいいと思えるように、「ウォーロン」は他の同ジャンルのゲームに比べると被弾時のダメージを抑えめにしています。

「Wo Long: Fallen Dynasty」山際眞晃氏&平山正和氏インタビュー:1周年を迎えた「ウォーロン」を振り返る。難易度の反響やプレイヤーに人気のボスとはの画像

――確かに、1回チャンジしたはいいものの、それで失敗して即死したとかになったら、積極的に使いたいとはならないですよね。

山際:ええ。何回かは試せる、むしろ試したくなるような範囲で被ダメージを調整して、チャレンジ欲に持っていく方向へ調整を行いました。なんとか我々の狙っているコンセプトを、恐れずにチャレンジしてもらえるといいなと。

――そういう意味では、本作の「化勁」はギリギリまでガードして出せるのが、ユーザーフレンドリーなところもでもあるなと感じていました。

平山:実はそこも今山際が話した部分の一環でして、開発中にはそれができなかった時代もあったんです。そういうハードルの高さをどう調整するかは、悩んだ部分でしたね。

山際:あるあるですが、開発者は何度もプレイするので当然慣れてくるんです。だから「こんな簡単でいいわけがない」みたいな思考が働いてしまって(笑)。体験版やゲームショウでの試遊、ユーザーテストなどもやりつつ、ちょうどいい落とし所を探して調整していきました。

――リソースの管理が気勢ゲージ1本に統一されているのも印象的でした。

平山:そこについても、開発中には他にもリソース管理が必要だった時代もあって。例えば今は気勢ゲージを消費して使える仙術が、リキャスト方式だったりしていましたね。

「ウォーロン」は攻防の転換が早いゲームなので、敵をしっかりと見ていないといけないシチュエーションが多いんです。その時にいろんなゲージを見ないといけないとバトルに集中できないので、開発の過程で気勢ゲージ1本に集約させました。

ゲージを真ん中に置いたのもその一環で、端っこにある時代もあったんですけど、どうしても目に入りにくくて。技を使おうとしたらゲージがない、みたいなことがないよう、極力アクションだけに注視できるようにUIは配置しています。

「Wo Long: Fallen Dynasty」山際眞晃氏&平山正和氏インタビュー:1周年を迎えた「ウォーロン」を振り返る。難易度の反響やプレイヤーに人気のボスとはの画像

――「士気ランク」もかなり独特な仕組みだったと思うんですけど、 その辺りはどういったコンセプトだったのでしょうか。

平山:そこは三国志というテーマから出てきたアイディアでして、私の中では三国志って戦場の自軍エリアをどんどん拡大して、相手を押し込んでいくみたいなイメージがあり、それをアクションゲームの中に落とし込めないかと考えました。戦況を有利にすればするほど強くなり、アクションの選択肢も増えていくという。

山際:本作は「逆境に立ち向かう」というコンセプトで作っていたタイトルで、強敵に挑むことに価値を見出してもらいたいという狙いがありました。士気ランクの高い相手を倒すほどいい報酬が獲得できるなど、いかにチャレンジすることを楽しんでもらえるかを考えて実装した要素です。

発売前は、士気ランクの遊びがどういう反応になるかなという不安もありましたが、ユニークなシステムとして評価していただけたという手応えは感じています。死にゲーというジャンルの中での本作独自のレベルデザインの遊びみたいなところは感じていただけたのかなと。

「Wo Long: Fallen Dynasty」山際眞晃氏&平山正和氏インタビュー:1周年を迎えた「ウォーロン」を振り返る。難易度の反響やプレイヤーに人気のボスとはの画像

――個人的に、ある程度敵の強さが予期できるので、一種の“死ぬ覚悟”ができるのが良いシステムだなとも思いました(笑)。あとは、なかなか勝てない場合の救済措置的な側面もありますよね。他の場所で士気ランクをあげてから挑み直せばいいっていう。

平山:そうですね。他にも旗を立てるごとに不屈ランクという最低ランクも上がったりもしますし、強敵を後回しにする手もあれば、最初に挑んで士気を一気に高め、その後のステージ攻略を楽にするみたいな遊び方もできます。

山際:我々としても、そこはプレイヤーの遊び方次第といいますか、プレイの自由度として表現したかった部分なので、そう言っていただけるのは嬉しいですね。

――今の話とも繋がるかもしれませんが、当初の狙い通りにうまくいった部分、逆にうまくいなかった部分があればそれぞれ教えてください。

平山:うまくいった点という意味でいうと、やっぱり中華アクションの部分でしょうか。そこの手触り感というのは一番こだわって作ってきたところでもありましたし、「化勁」を使って楽しんでいただく部分は実現できたのかなと。

あとはTeam NINJAの最近のタイトルとしては珍しい、ジャンプを入れた遊びを入れられたのも大きい点で、立体的になったマップの探索の濃度とか、立体アクションを使っての攻防というチャレンジはうまくいったのではないかと思っています。

山際:うまくいかなった部分はディレクターも兼任する平山からは言いにくいと思うので私から(笑)。もう少しうまくできたかもしれないという部分になりますが、日本語の技の名称が分かりにくかったという反省はあります。技に限った話ではないんですが、本作は時代考証や中国らしいフレーバーを大事にしたタイトルでもあるので、そういう名前をつけていたんですが……少し読み辛かったかなと。

プレイヤー同士でも、お互いに「あの技~」みたいなのが言いにくかったり、ぱっと出てこなかったりして交流しづらい面があったと思います。英語だとシンプルな名前だったりするんですが、日本語はなまじ漢字が使える分、フレーバーを凝りすぎてしまったかなと。名称については読みやすさや覚えやすさをもうちょっと重視しても良かったなと思っています。

「Wo Long: Fallen Dynasty」山際眞晃氏&平山正和氏インタビュー:1周年を迎えた「ウォーロン」を振り返る。難易度の反響やプレイヤーに人気のボスとはの画像

コーエーテクモの呂布は史実とは別の存在として愛されている

――本作は三国志が題材となっていますが、三国志と一言にいっても時代の幅が結構ある中、本作はどんな考えで取り上げる範囲を選ばれたのでしょうか。

平山:プロジェクトが立ち上がったタイミングで、三国志を頭の方から描くということは決めていました。

高難易度のアクションゲームが好きなユーザーさんが、必ずしも三国志が詳しいわけではないという点と、北米や欧州などの地域では三国志を深く知らない人も珍しくないので、そういう方にも広く楽しんでいただきたいという想いがありました。三国志の頭から描くことで、後の魏呉蜀であるとか、劉備や曹操といった武将がどういう風な成り上がりをしていったかを感じていただきたいなと。

「Wo Long: Fallen Dynasty」山際眞晃氏&平山正和氏インタビュー:1周年を迎えた「ウォーロン」を振り返る。難易度の反響やプレイヤーに人気のボスとはの画像

――三国志を題材にタイトルは本当に数多くあり、登場する武将たちもそれぞれ異なる描かれ方がされています。本作ならではの描き方ができたという武将はいますか?

山際:武将ではやっぱり呂布じゃないでしょうか。コーエーテクモらしい軍勢カラーや格好良さみたいな部分は活かしつつ、必死さや泥臭さみたいなものを表現したかったので、そこはTeam NINJAらしくアレンジできたのではないかなと。

ストーリーでもダークヒーローというか、これまでの呂布像とは違った描き方をしたいという想いもあって、それがマスクのビジュアルにも反映されているのですが、ボスとしての遊びも含めてプレイヤーの評判もすごく良かったです。難しくて印象に残っているというのもありますが、本作の象徴的なキャラクターになったと思います。

「Wo Long: Fallen Dynasty」山際眞晃氏&平山正和氏インタビュー:1周年を迎えた「ウォーロン」を振り返る。難易度の反響やプレイヤーに人気のボスとはの画像

――これはコーエーテクモさんの影響が大きい部分ですが、呂布って日本ではすごく人気がある武将ですが、中国とかだとまた違うイメージがあります。

山際:以前は私もそう思っていたんです。ただTeam NINJAには中国人のスタッフもいて、彼らから反応とか評判を聞いてみたことがあったんですけど、確かに史実の呂布に関しては、裏切り者であったり悪いことをたくさんしてきた人物という印象がある一方で、決してまったく人気がないわけではないみたいで。劉備や曹操みたいなストレートな人気があるタイプとは違うみたいなんですけど。

一方でコーエーテクモの呂布に関しては、どのゲームでもめちゃくちゃ強いじゃないですか(笑)。だからコーエーテクモの看板キャラクターみたいに認識されているみたいで、史実の呂布とはまた別の、あくまでも一人のキャラクターとして人気や知名度が結構高いみたいなんです。

――ああ、なるほど。もう史実とは別の存在として愛されていると。

山際:ええ。他のアニメとかゲームのキャラクターが歴史上の人物をモデルにしていたとしても、我々もそこまで深く結びつけては見ないですよね。それと同じような形だと思っていて、本作でもコーエーテクモの呂布として出すのであれば面白がってもらえるかなと、ストーリーでも重要なポジションで採用したという面はあります。

――難易度についての調整というのはすごく大事な部分かと思いますが、難易度についての反響はいかがでしたか?

平山:そうですね。序盤は二極化したかなという印象があって、「化勁」にすぐ慣れたユーザーとそうでないユーザーで、「簡単すぎる」と「難しい」という意見で結構割れていましたね。

そういう意見も踏まえて、アップデートでは敵の攻撃パターンを見直したり、「化勁」だけではなくて、武器や仙術といった択でも乗り越えられるようにする調整は、意識して取り組んでいた部分でした。

山際:最初のボスである張梁を遊んでいただいた時、発売当初はまだ皆さん慣れていなかったのもあって「強すぎる」という意見が多かったんですけど、現状8割以上の方がクリアされています。

死にゲーにおいては、最初「難しい」と感じることはいいことだと思っているんです。話題にもしやすいですし。ただ、その「難しい」が理不尽だと乗り越えたいという気持ちにならないので、バトルがフェアかどうかはとても意識しています。

張梁や呂布に関しては、確かにわーっとなる難しさはあるんですか、面白さとかもセットであったので、結果的に乗り越えたいと思っていただけたのかなと思いますね。

――士気ランクなどの存在もあって、他の死にゲーはダメだったけど、本作だけはクリアできた、みたいな意見も結構見かけました。

山際:そうですね。実はあまり意図したわけではなかったんですけど、結構いろんな方が 「死にゲーの入門としていいタイトル」と言ってくださっているみたいで。士気であったりオンラインであったり、アクションの上達以外でも、工夫次第で乗り越えられる要素を結構用意はしていたので、そこのバランスは悪くなかったのかなという感覚はあります。

ただ、発売当初は特に呂布以降のボスがもう少し歯ごたえがあってもよかったかなと思ったので、アップデートで調整しています。今回のコンプリート版から遊ばれる方には、より歯応えのある体験を楽しんでいただけるのではないかなと思います。

「Wo Long: Fallen Dynasty」山際眞晃氏&平山正和氏インタビュー:1周年を迎えた「ウォーロン」を振り返る。難易度の反響やプレイヤーに人気のボスとはの画像

――やっぱり最近は、死にゲーがブームになっているのもあって、ユーザー側も慣れている人が多いのが調整の難しそうなところですよね。

山際:慣れも含めて、皆さんのプレイが上手というのも当然あるんですが、RPG部分で「これとこれを組み合わせれば強い」という最適解を見つけるのが、こちらの想定以上にうまかったのもあるかもしれないですね。

もちろん、それも楽しみの一つですし、いろんな試行錯誤をしてもらえているのは嬉しいです。

張梁が大きな壁になったのは想定外だった

――発売当初からアップデートで一番変わったのは、どういう部分になるでしょうか。

平山:色々とありますが、アクション部分になるのかなと思っています。アップデートを通じて武器種も全て調整入れていますし、士気ランクの影響で、より仙術の回転率が上がって使いやすくなるなど、プレイヤーのアクションの幅や択を広げる調整はこの1年間ずっとやり続けてきたつもりです。そういったアクション面はこの1年間で大きく変わった部分だと思いますね。

――いろんな武器種がある中で、プレイヤー特に人気高かった武器はどれだったのでしょうか。

平山:本編クリアまでなら双刀が人気で、DLCやアップデート期間まで含めると長剣が人気だったという印象はありますね。

――それはどういった部分がポイントに?

平山:最終的には好みではあると思いますが、双刀のほうは隙が少なく手軽に振れて「化勁」も取りやすかったり、使い勝手の良さといった部分で楽しんでいただけたのかなとは思っています。

長剣はリーチが長くて、溜めも含めた攻撃の択が広いというテクニカルな武器種でして、使いこなすのはやや難しくはあるのですが、使いこなせばいろいろな使い方ができるのが人気になった要因なのかなと。

山際:長剣は見た目のかっこよさもあるかもしれません。やっぱり皆長物が好きですからね(笑)。

双刀については、手数の多さや、 中国武術の速さみたいなところを体験できるという意味でも人気があったのかなと思っています。

――特にプレイヤーの印象に強く残ったボスは誰になるのでしょうか。

平山:やっぱり呂布と張梁の二人になるのかなと。発売当初は張梁の話題が一番多く、そこを越えた方は呂布を話題にしていただいていたというのが総合的な印象でした。

「Wo Long: Fallen Dynasty」山際眞晃氏&平山正和氏インタビュー:1周年を迎えた「ウォーロン」を振り返る。難易度の反響やプレイヤーに人気のボスとはの画像

――その二人は、元々想定されている壁のような感じもします。

平山:正直、張梁についてはそこまで壁になる想定ではなくて、どちらかというとチュートリアル的な基礎を教えてくれるボスという位置で設計はしていました。呂布に関しては、本作でも最強の武人として位置づけているので、そこは想定通りでしたが。

――呂布で苦戦するのは、プレイヤーとしても納得感がありますよね。

山際:そうですね、呂布をサクッと倒せるのも嫌だと思いますから(笑)。とはいえ、理不尽だと楽しくないですよね。そこはいくら最強でも納得いかないと思うので、フェアであるという点は心がけた上で、ちょうどいいバランスに落とし込めたのではないかなと思います。

――最初のお話でもありましたが、今回ゲーム本編は発売日からGame Passで提供されていました。当時は、Day1で出す日本のタイトルはまだ多くないという印象でした。その中で踏み切った決断理由や反響はいかがだったのでしょうか?

山際:冒頭の繰り返しになってしまいますが、今回は新規IPというところでいろんな方に触っていただく機会を作りたいなと思っていたことや、今まで我々もGame Passでの提供をやったことがなかったので、そういった新しいビジネスにも挑戦してみたかったこともあり、 今回はDay1からの提供を選択しました。

具体的な内訳は明かせませんが、発売後に総プレイヤー数が380万人を突破したのをアナウンスさせていただいた通り、Game Passからも多くの方にプレイしていただいています。これまでTeam NINJAのタイトルを知らなかったり、あるいは死にゲーを触ってなかったりした方たちにも触れていただく機会があったと思うので、そういった意味ではチャレンジとしては良かったのかなと思います。

――「Rise of the Ronin」の発売も間近に迫っており、最近のTeam NINJAさんはクオリティに対する開発ペースが非常に早いですよね。開発が長期化しがちなこの時代に、これだけのペースでタイトルをリリースできている要因は何なのでしょうか。

平山:Team NINJAとして今まで培ってきたタイトルのノウハウとか技術を活かしつつも、新しい進化やチャレンジをするっていうことは、常に心がけて開発をしてきました。

そういった意味では「NINJA GAIDEN」があり、「仁王」があり、「STRANGER OF PARADISE FINAL FANTASY ORIGIN」があったからこそ、「ウォーロン」が生まれたと言いますか。それぞれのタイトルで学んだことやノウハウを活かせているというのが一番大きいところなのかなと思いますし、今後もTeam NINJAが進化し続ける上では、この考えを守っていくことが大事なのではないかと思っています。

山際:あとはチームの規模がどんどん大きくなっているのもありますね。今はTeam NINJAも、このビル(市ヶ谷事業所)が手狭になるくらい人が増えていまして、複数のラインを走らせられる体力や余地が出てきたというところも大きいのではないかなと思います。

――最近はゲームを遊ぶ層が結構二極化しているというか、昔はコアなゲーマー向けだった高難易度アクションというジャンルが、かなりメジャーなジャンルになりつつあるのかなと。それに伴ってTeam NINJAさんのブランド力も高まっている印象も受けるのですが、そうしたユーザー層の変化のようなものは感じられていますか?

山際:どうなんでしょうね。Team NINJAとしては「NINJA GAIDEN」を始め、ハードなゲームをずっと作ってきた伝統というのは変わっていないと思うんです。確かにハードなゲームへの垣根みたいなのがなくなってきた印象はあるんですけど、それ以上にゲームがワールドワイド化したことが大きいのかなと。

今は和ゲーとか洋ゲーとかの垣根そのものがなくなってきていますよね。二極化というよりは、しっかりとしたアクションを遊びたいと思う人が増えたのに加えて、ワールドワイド化したことでその規模が大きくなって、世界中の方に反応をもらえるようになったのが現状なんじゃないかと思っています。

「Wo Long: Fallen Dynasty」山際眞晃氏&平山正和氏インタビュー:1周年を迎えた「ウォーロン」を振り返る。難易度の反響やプレイヤーに人気のボスとはの画像

――最後に、コンプリート版の発売をきっかけに本作をプレイされる方に向けて、楽しんで欲しいポイントをお願いします。

平山:コンプリート版は、ゲーム本編に加えて、この1年間でやってきたコラボレーションも含めた多くのアップデート、DLCを一通り含んだ、ボリュームのあるバージョンとなっています。発売当初以上に遊びやすくなっていますので、ぜひ今まで触ってこなかったユーザーの皆様にも楽しんでいただきたいです。

また、ストーリーとしても三国志の冒頭から描いており、知らない方も楽しめるようになっていますので、気兼ねなくお手にとっていただければと思います。

山際:今回コンプリート版を発売させていただきましたが、以前から本編をずっと遊んでくださっていた方々がいたからこそ、発売が実現できたと思っております。コンプリート版から遊ばれる新規のプレイヤーもいらっしゃると思いますので、以前から遊ばれている方も一緒にプレイしたり、オンラインで交流して、ぜひ一緒に盛り上がっていただけると嬉しいです。

あとはPC版に限ってにはなるのですが、体験版も用意しております。ちょっと気になったという方がいれば、試しに体験版だけでも遊んでみていただければと思います。

――ありがとうございました。

ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。WEBのアニメ・ゲーム系媒体を中心に、様々なゲームの攻略本にもライターとして関わらせていただいています。ガンプラと美少女フィギュアに部屋のスペースを専有され、自分の生活空間がどんどん狭くなっているのが最近の悩みのタネに。ここ数年は「原神」を毎日プレイするのがすっかりに生き甲斐になりつつあります。

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