GSC Game Worldが手がける「S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl」のゲーム序盤部分のプレイインプレション、ならびに開発者へのインタビューをお届けする。
恐怖と好奇心が入り混じる、生きたゾーンでの冒険が味わえる
GSC Game Worldが開発中の「S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl」は、長らく待ち望まれていたシリーズ最新作だ。2009年に発売された「S.T.A.L.K.E.R.: Call of Prypiat」から約15年の時を経て、ついにその姿を現す。
舞台となるのは、チョルノービリ原子力発電所の事故により生み出された禁断の地“ゾーン”。2006年、原発で再び起きた謎の爆発により、この地には超常現象や突然変異生物が蔓延している。プレイヤーは“ストーカー”と呼ばれる冒険者となり、この危険な世界に足を踏み入れることになる。
開発の道のりは決して平坦ではなかった。2012年に一度キャンセルされ、2018年に再始動。そしてロシアのウクライナ侵攻による一時中断を乗り越え、現在も開発が続けられている。この困難な状況下で生み出される本作には、開発者たちの並々ならぬ情熱が感じられる。そして、実際にゲームをプレイした筆者の感想は、それだけの情熱が注ぎ込まれた、本当に唯一無二の作品をプレイヤーに提供する作品ということだ。
本作の特筆すべき点は、何と言ってもその圧倒的な没入感にある。この没入感の中核を担うのが、Unreal Engine 5.1を使った驚異的なグラフィックスだ。前作から飛躍的に向上した視覚表現は、実写に匹敵する精密さで、プレイヤーを魅了する。
水面の表現一つを取っても、その精緻な反射効果により、まるで本物の水を目の当たりにしているかのような錯覚すら覚える。さらに、空中を飛び交う虫の繊細な動きまで再現されており、生態系の細部にまで及ぶ開発者の徹底したこだわりが感じられた。
本作の象徴的存在である“アノマリー”、すなわち超常現象の視覚効果も圧巻だ。特に地面から噴き出す炎の表現は、実写さながらで目を見張るものがある。これらの現象が織りなす光景が、ゾーンという非日常的な世界のリアリティを増すのだ。
これらの視覚要素が見事に組み合わさることで、プレイヤーはまるで自分自身がゾーンに足を踏み入れたかのような錯覚を覚える。グラフィックスの美しさと精密さは、単に見た目が良いというだけではなく、このゾーンという世界で過ごす体験をプレイヤーに提供しているのだ。
本作の魅力は、その圧倒的なビジュアルだけにとどまらない。緊張感溢れるゲームプレイもポイントだ。
このゾーンというエリアに降り立った瞬間、プレイヤーはその強烈な存在感に圧倒される。鬱屈とした空気が漂う中、奥へと進むにつれて増していく不安感。そして、その不安を現実のものとする、アノマリーという超常現象の存在。現代の科学では説明のつかないこれらの現象が、このエリアでは日常茶飯事なのだ。
ゲームプレイは、一人称視点のシューティングを基本としつつ、没入型シミュレーションとサバイバルホラーの要素を巧みに融合させている。オープンワールドを探索しながら、プレイヤーは常に生存の危機に直面する。変化する天候、飢餓、睡眠、出血、放射線被曝といったサバイバル要素が、常にプレイヤーを脅かす。
特筆すべきは、アノマリーの存在感だ。筆者が体験したのは、自身を透明化できる謎の生物との遭遇だった。このタイミングではアサルトライフルを所持していたため、「まぁ、この程度の生物なら勝てるだろう」と楽観視していたのだが、この段階では全く太刀打ちできる強さではなかった。結果的に、ダッシュで駆け抜けることを余儀なくされた。この体験は、ゾーンの恐怖感を一層高める出来事だった。
さらに、本作の世界をより生き生きとさせているのが、新しいA-LIFE 2.0システムだ。このシステムにより、プレイヤーの視界外でもNPCが自律的に活動し、まるで本当に生きているかのような世界を作り出している。科学者や兵士たちの生き生きとした動きは、この世界が確かに"生きている"という実感を与えてくれる。
これらの要素が組み合わさることで、「S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl」は単なるゲームを超えた、ゾーンという生きた世界を体験させてくれる。それは、プレイヤーの好奇心を刺激し、この世界で暮らす恐怖と楽しさを同時に提供する。それが本作でしか体験できない唯一無二の体験となるだろう。
「自信が高ければ高いほど死ぬのが早い」ゾーンの魅力と危険を語る
ここからは、テクニカル・プロデューサーのEugene Kulik氏、マーケティング・プロデューサーのVlad Novikov氏へのインタビューをお届けする。
――かなり長い期間を経て開発された新作ですが、本作のプロジェクトを始めるきっかけは何だったのでしょうか?
Eugene Kulik氏:当初は、2012年に始めようとしていましたが、当時のテクノロジーが我々のニーズに合うものではありませんでした。その後、Unreal Engine5、具体的には5.1が利用可能になりました。これにより、詳細で幅広いストーリーを作ることができるようになったのです。
――今回、メディア向けにプレイアブルな状態で発表した感想はいかがですか?
Vlad Novikov氏:まず、未完成な部分があるので延期を決定しました。それは、愛情を持って、ウクライナのことを思いながら、高品質な作品に仕上げたいと考えたからです。そして、そんな作品をファンの皆様に見ていただけるのは、とてもエキサイティングです。
――発売が延期になった大きな理由は何でしょうか?
Vlad Novikov氏:我々のビジョンを完全な形で実現させたいのです。できるだけ早く実現できるように努力してきましたが、これほどの規模のゲームには開発に時間がかかります。パーツごとに作るか、エピソードでまとめるかという選択もありました。
リリースが近づくにつれて、もう少し時間があればポテンシャルが実現できるということが見えてきたので、ファンの期待に応えられるように延期を決めました。時間がかかっていますが、待っていただく価値はあるものだと自信を持っています。
――今回は久しぶりの新作ですが、シリーズの伝統を守る部分と改善する部分をどのように選択されましたか?
Eugene Kulik氏:3部作にはFPS・サバイバルホラー・没入型という明確な特徴がありました。そこに、最新のテクノロジーやトレンドを取り入れるのはチャレンジでしたが、方向性やゴールは明確でした。
Vlad Novikov氏:テクノロジーの発展のおかげで、構想していたゾーンを開発することができ、我々としては上手くできたと思います。ただ、最終的にはプレイヤーの皆さんに判断していただくものだと考えています。
――日本のゲーマーに特に見て欲しいところや進化した部分について教えてください。
Eugene Kulik氏:個人的な視点では、ゲームの雰囲気です。環境全体、ストーリーライン、歩き回る中で出会う――あるいは出会い損ねるキャラクター、動植物など、全てが雰囲気を作り出しています。そして、かっこいい武器がたくさんあります。
Vlad Novikov氏:私は銃が大好きで、射撃場に行って録音してきました。私自身は積極的に戦闘をするタイプではありませんが、3部作でもそうだったように、この世界に没入できました。動き回って会話をしたりと、この世界は誰にでも入り込める世界だと思っています。
さらに、サバイバルホラーの要素もあります。実際にニーズを把握して計画を立て、リスクをしっかり考える必要があります。探索前に計画を立て、どのくらいのリソースや武器が必要なのかを考え、そして何より自信を持って行動することが大切です。ゾーンには「自信が高ければ高いほど死ぬのが早い」ということわざがありますからね(笑)。
――今回の作品の名前をサブタイトルではなく「2」というナンバリングにした理由を教えてください。
Eugene Kulik氏:非常にシンプルな理由なんですけども、最初の3部作は1つの作品の一部という形でしたが、今回は全く新しいストーリーなので、2というナンバリングにしました。
そして前の3部作に出てきた多くのオリジナルキャラクターが今回も登場していて、皆さんもたくさん出会ったのではないかと思います。そして、多くの新しいメカニクスも取り入れられています。
――本シリーズの特徴としてシビアなゲームプレイが挙げられますが、今作で初めて触れる人への配慮はありますか?
Vlad Novikov氏:我々は、できる限りプレイヤー層を広げたいと考えています。ただ、万人向けではありませんし、リラックスできるゲームでもありません。しかし、初めてこのゲームをプレイしようとする人のために難易度調整を用意しています。最初の3部作にはなかったチュートリアルも追加しました。
ベーシックなサバイバル要素も提供しますが、プレイヤーが探索し、自分のプレイスタイルを発見していくことを目指しています。
――ゲームの想定ボリュームは何時間くらいでしょうか。
Eugene Kulik氏:メインストーリーには多くの枝分かれがあります。1回目のプレイでは20時間~40時間はかかると思います。ゲームの全てをカバーしたい場合は、100時間、もしくはそれ以上はかかるでしょう。
――先ほど見せていただいた映像ではフィールド上でこちらに話しかけてくる様子が見れましたが、ゴーストのような存在は出てきますか?
Vlad Novikov氏:「S.T.A.L.K.E.R.」はファンタジーではなく、サイエンスフィクションなので、科学的に説明できます。錯覚を引き起こす現象のようなものです。
Eugene Kulik氏:不可解な現象はすべてアノマリーで、一部のアノマリーにはそういった要素があります。ポピーフィールドなどのアノマリーには、パズルをどう解決するかのヒントがあります。アーティファクト、アーク、アノマリーなどが会話の中に出てきます。
――時系列の位置づけについて教えてください。
Vlad Novikov氏:トリロジーから何年後かというと、実世界で経過した時間と同じで、約10年が経過しています。廃墟となった場所と新しいテクノロジーのコントラストを見せることができます。ストーカーたちはより現代的なデバイスを使い、ラジオから流れる音楽を聴いたりします。これは、かなり昔でも遠い未来でもなく、ちょうど良い時間の経過だと思いますね。
――日本語サポートがスムーズにできた理由は何でしょうか?
Vlad Novikov氏:今回は世界で人気のある言語をターゲットにしました。吹き替えはウクライナの声優にお願いしています。それは体験がより本物になるからです。最初の3部作のオーディエンスも確認して、人気になりうる地域は対象に含めました。
日本では「S.T.A.L.K.E.R.」は新しいフランチャイズですが、熱心なファンがいるということで、期待に応えたいと思いました。今回はよりストーリーテリングを重視しました。ストーリーテリングを楽しんでもらいたいです。
Eugene Kulik氏:今回はナラティブを多く盛り込んでいるので、多くの人に届けたいと考えています。
――なぜ、ゾーンやストーカーの世界を作り続けるのでしょうか?
Eugene Kulik氏:我々がこの場所のファンになっているんです。チョルノービリの立ち入り禁止区域に何度も行きました。ゲームで使われているものはほぼ全て、写真を撮ってスキャンして使っています。リリース時には、建物やプロップ、動植物など、あらゆるコンテンツが実際に撮影した写真のスキャンデータになります。
Vlad Novikov氏:将来的にはフランチャイズを拡大したいという野心があり、新しいメディアやジャンルに拡張したいと思っています。しかし、オリジナルの3部作を出してからある程度の時間が経っているので、最先端の技術を活用してしっかりとした基盤を作ることに注力しています。壊れていないものは直そうとしないという発想です。
――はしごなどを登るときの場所をわかりやすくする機能がありましたが、嫌う人も多いと聞きます。なぜ導入したのでしょうか? オン・オフの切り替えはありますか?
Eugene Kulik氏:プレイテストを行って、プレイヤーがどうプレイするのかをモニタリングしていて、アクセシビリティの観点から困らないようにしています。
Vlad Novikov氏:チャレンジはゲームのルールから来るべきだと考えています。
――最後に、日本のファンにメッセージをお願いします。
Vlad Novikov氏:伝えたいメッセージとしては、非常に大変な開発環境の中で情熱と魂を注ぎ込んで開発しているので、本作を気に入ってほしいですし、このユニバースに来てほしいと思います。
Eugene Kulik氏:彼の言ったことに同意見です。付け加えるとすれば、高い誇りを持って、このドリームプロダクトという作品に注力してきました。達成できたことに非常に喜びを感じていますし、この作品のプレイや、ストーリー、シネマティクス、複雑で巨大な世界を楽しんでほしいです。
Vlad Novikov氏:大変な中で開発を続けてきましたが、日本のファンを含めたファンの皆さんからサポートを受けていて、ありがたく思っています。そのサポートに感謝したいです。
S.T.A.L.K.E.R. 2 is a registered trademark of GSC Game World Global Ltd. (C) 2024 GSC Game World Global Ltd. GSC Game World and its logos are Trademarks or Registered Trademarks Of GSC Game World Global Ltd. (C) S.T.A.L.K.E.R. 2 HEART OF CHORNOBYL a game developed GSC Game World.
※画面は開発中のものです。
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