8月21日~23日にかけて、パシフィコ横浜 ノースにて開催のゲーム開発者向けカンファレンス「コンピュータエンターテインメントデベロッパーズカンファレンス2024(以下、CEDEC2024)」。8月21日に行われた「『学園アイドルマスター』における適応的ゲームAIとグレーボックス最適化を用いたバランス調整支援システムの実現」の内容を紹介する。

バンダイナムコエンターテインメントが提供、サイバーエージェントグループのQualiArts(クオリアーツ)が開発を手掛け、2024年5月16日にリリースされた「学園アイドルマスター」。プロデュースを繰り返すことで歌とダンスが変化する育成シミュレーションゲームとなっている。

「学園アイドルマスター」のカードゲーム、デッキ構築のバランス調整に活用される支援システムを解説【CEDEC2024】の画像

本作の育成サイクルは、基本的にレッスン/試験など1人プレイのカードゲームを中心に目標の達成を目指すものなっている。リリース開始時から膨大な組み合わせのバリエーションがセンス/ロジックのプラン単位で存在し、なおかつ短期スパンで新カードが実装される運営サイクルであることから、いわゆる“バランスブレイカー”になるデッキの組み合わせを見つけること、マスターデータの更新時、カード追加から結果確認までの期間を短くすることが課題になってくる。

「学園アイドルマスター」のカードゲーム、デッキ構築のバランス調整に活用される支援システムを解説【CEDEC2024】の画像
「学園アイドルマスター」のカードゲーム、デッキ構築のバランス調整に活用される支援システムを解説【CEDEC2024】の画像
「学園アイドルマスター」のカードゲーム、デッキ構築のバランス調整に活用される支援システムを解説【CEDEC2024】の画像

プランナー側がそうした問題を把握しやすくする仕組みとして、今回登壇した伊原滉也氏(サイバーエージェント ゲーム・エンターテイメント事業部 AI戦略本部 リサーチエンジニア)、那須勇弥氏(QualiArts サーバーサイドエンジニア)らが取り組んだのが、プランナー完結でシミュレート可能なバランス調整支援システムだった。システムにおけるフローについては以下を参照してほしい。

(左から)伊原滉也氏、那須勇弥氏
(左から)伊原滉也氏、那須勇弥氏
「学園アイドルマスター」のカードゲーム、デッキ構築のバランス調整に活用される支援システムを解説【CEDEC2024】の画像
「学園アイドルマスター」のカードゲーム、デッキ構築のバランス調整に活用される支援システムを解説【CEDEC2024】の画像
「学園アイドルマスター」のカードゲーム、デッキ構築のバランス調整に活用される支援システムを解説【CEDEC2024】の画像

このシステムを実現させる上で用意されたのが、今回紹介されたレッスンAIおよびデッキ探索AIとなる。

前者においては深層強化学習により、多様な問題設定を経験させることで短い実行時間で優れたプレイ性能を実現させ、一方で転移学習によるマスター追従の仕組みを用意するなどして学習時間の問題を解消させたという。

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後者に関してはバランスブレイカーとなりうる最大スコアのデッキを発見することが目的のため、“グレーボックス最適化”という問題の中身に関する(一部の)情報を活用する方法を採用。実際には、大規模言語モデル(LLM)で効果テキストの文章埋め込みを用いたという。ちなみに、こちらは転移学習においても活用されているとのこと。

「学園アイドルマスター」のカードゲーム、デッキ構築のバランス調整に活用される支援システムを解説【CEDEC2024】の画像
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セッションではもう少し踏み込んだ解説が行われたのだがここでは割愛し、結果的にそれぞれの問題点が大きく改善するとともに、人力では気付けなかったデッキ/プレイパターンの検出による効果調整への貢献、コアロジックのバグ検出といった、副次的な作用も果たしたという。カードゲームならではの調整の難しさと具体的な取り組みが垣間見えるセッションとなっていた。気になる人はタイムシフトにて視聴してみてはいかがだろうか。

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CEDEC2024公式サイト
https://cedec.cesa.or.jp/2024/

2011年イクセル入社後、Gamerをはじめとした媒体の運営に携わる。好きなジャンルはRPG、パズル、リズム、アドベンチャー(ほぼギャルゲー)。実はゲームよりもアニメが大好きです。

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