8月21日~23日にわたって開催の「CEDEC2024」。ここでは、8月22日に行われたセッション「ミッドガルを飛び出せ! 『FINAL FANTASY VII REBIRTH』における泥沼サウンド制作秘話」の内容をお届けする。

「FFVII リバース」のサウンド制作を支えたのは「気合い」。ワールドマップの実装でより深みにハマったサウンド制作【CEDEC2024】の画像

登壇者はスクウェア・エニックスより、谷山輝氏、岡田滉太朗氏、河盛慶次氏、伊勢誠氏。本セッションでは、2024年2月に発売した「ファイナルファンタジーVII リバース」(以下、「FFVII リバース」)のインタラクティブサウンド(曲、SE)制作を例に、あらかじめ備えておくポイントやノウハウを紹介。

「FFVII リバース」から登場する広大なワールドマップを舞台に、「ファイナルファンタジーVII リメイク」(以下、「FFVII リメイク」)から引き続くクオリティーライン、密度を維持すべくどのようにサウンドを作りこんでいったのか。「FFVII リバース」のサウンドデザインのテーマ、そのコアとなる技術紹介とともに、「FFVII リメイク」からの拡張項目を中心に、制作運営面での反省と工夫、後の展望について語られた。

岡田滉太朗氏、伊勢誠氏、河盛慶次氏、谷山輝氏
岡田滉太朗氏、伊勢誠氏、河盛慶次氏、谷山輝氏

BGM817曲、SE約3万、ボイス約20万言語のサウンド術を支えたのは?

「FFVII リバース」の全体的なサウンドデザインは、オリジナルをリスペクトしつつ、プレイしたことがない人でも楽しめる、懐かしさと新しさを融合させた表現の追求だ。特に、全てのサウンドのインタラクティブ性にこだわっている。

「FFVII リメイク」からの追加変更部分は、主に「ワールドマップの追加」、「乗り物の追加」、「連携技の追加」、「膨大なカットシーン」などが挙げられる。

「FFVII リバース」のサウンド制作を支えたのは「気合い」。ワールドマップの実装でより深みにハマったサウンド制作【CEDEC2024】の画像

制作において意識した部分は、BGMやSEでの特徴的なロケーション作りや、動的かつシステマチックなBGM制御、インタラクティブ性を維持しつつ大仏量への対応、前作で培った部分をより効率的に機能させるという点。特に「FFVII リバース」では、ワールドマップの存在が大きく、サウンド制作では苦労したという。

「FFVII リバース」のサウンド制作を支えたのは「気合い」。ワールドマップの実装でより深みにハマったサウンド制作【CEDEC2024】の画像
「FFVII リバース」のサウンド制作を支えたのは「気合い」。ワールドマップの実装でより深みにハマったサウンド制作【CEDEC2024】の画像

ワールドマップが実装された「FFVII リバース」では、全てがシームレスで移動でき、ファストトラベルもあり、従来のような切替では対応は難しく、今までとは異なる新たなBGM手法が必要だった。ワールドマップには空間を区切る箱があり、ロケーションを規定。ストーリーフラグがあり、時間が経過しても途中から再開できるようになっており、その時に応じて適切な曲へと切り替わる。

「FFVII リバース」のサウンド制作を支えたのは「気合い」。ワールドマップの実装でより深みにハマったサウンド制作【CEDEC2024】の画像
「FFVII リバース」のサウンド制作を支えたのは「気合い」。ワールドマップの実装でより深みにハマったサウンド制作【CEDEC2024】の画像

また、優先度が最も高いBGMを自動で再生するようになっている。例えば、無音もBGMのひとつとすることで、統一的に管理しているそうだ。

「FFVII リバース」のサウンド制作を支えたのは「気合い」。ワールドマップの実装でより深みにハマったサウンド制作【CEDEC2024】の画像
「FFVII リバース」のサウンド制作を支えたのは「気合い」。ワールドマップの実装でより深みにハマったサウンド制作【CEDEC2024】の画像

BGMは上にあるレイヤーほど優先度が高いのだが、試行錯誤しながらこの形に落ち着いたという。

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「FFVII リバース」のサウンド制作を支えたのは「気合い」。ワールドマップの実装でより深みにハマったサウンド制作【CEDEC2024】の画像
「FFVII リバース」のサウンド制作を支えたのは「気合い」。ワールドマップの実装でより深みにハマったサウンド制作【CEDEC2024】の画像
「FFVII リバース」のサウンド制作を支えたのは「気合い」。ワールドマップの実装でより深みにハマったサウンド制作【CEDEC2024】の画像

このように様々な取り組みを行ってきたが、BGM遷移についても力を入れてきた。フィールド~バトルへのシームレスな遷移や、状況にあわせたフィールド曲の遷移、ボス戦での遷移と撃破シーンにあわせた遷移、ミニゲームでの遷移などが挙げられる。例えば、「FFVII リバース」では通信塔を解放すると、解放した数によってワールドマップのアレンジが変化する。

「FFVII リバース」のサウンド制作を支えたのは「気合い」。ワールドマップの実装でより深みにハマったサウンド制作【CEDEC2024】の画像
「FFVII リバース」のサウンド制作を支えたのは「気合い」。ワールドマップの実装でより深みにハマったサウンド制作【CEDEC2024】の画像

さらにフィールドではエンドセクションがあり、フェードアウトではなく曲がしっかり終わるようになっている。これはゲームの没入感を高めるには良かったが、実装が膨大になってしまい、しかも使いこなせたかというとまだまだだという。

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「FFVII リバース」のサウンド制作を支えたのは「気合い」。ワールドマップの実装でより深みにハマったサウンド制作【CEDEC2024】の画像

曲のどこからエンディングに遷移しても大丈夫なように力技でやっており、「Finish」というのがエンディングで、グラスランドエリアだけで18個のエンディングがある。労力を考えると、もっと楽にやりたいというのが本音のよう。クエストによるBGM遷移の実例も紹介された。

「FFVII リバース」のサウンド制作を支えたのは「気合い」。ワールドマップの実装でより深みにハマったサウンド制作【CEDEC2024】の画像
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「FFVII リバース」のサウンド制作を支えたのは「気合い」。ワールドマップの実装でより深みにハマったサウンド制作【CEDEC2024】の画像

他にも、バトルからフィールドに戻る際にGlue(接着剤)というトラックを経由しており、淀みない遷移が可能に。しかし、こういった細かな遷移を実装していた結果、BGMが前作「FFVII リメイク」の約2倍のリソース量になってしまったという。その2倍のリソース量をチェックしたのは、最終的には人の耳だった。BGMチェックリストを作るのは難しく、様々な面から結局は気合いで解決したそうだ。

「FFVII リバース」のサウンド制作を支えたのは「気合い」。ワールドマップの実装でより深みにハマったサウンド制作【CEDEC2024】の画像

続いて、効果音についても語られた。「FFVII リバース」ではPS5に本格対応。3Dオーディオ、ハプティクスフィードバックこれらを大いに活用し、更なる没入感を感じられるように取り組んだそう。

「FFVII リバース」のサウンド制作を支えたのは「気合い」。ワールドマップの実装でより深みにハマったサウンド制作【CEDEC2024】の画像
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「FFVII リバース」のサウンド制作を支えたのは「気合い」。ワールドマップの実装でより深みにハマったサウンド制作【CEDEC2024】の画像

実例紹介では、実際にカームの脱出シーンで上空から鳴り響くヘリコプターの効果音などを感じることができた。

「FFVII リバース」のサウンド制作を支えたのは「気合い」。ワールドマップの実装でより深みにハマったサウンド制作【CEDEC2024】の画像
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「FFVII リバース」のサウンド制作を支えたのは「気合い」。ワールドマップの実装でより深みにハマったサウンド制作【CEDEC2024】の画像

「FFVII リバース」では時には700以上もの設置数になっていたという、膨大な物量への対応が求められた。前作での経験から余裕をもって取り組めるものと思っていたが、全くそんなはずはなく、未曾有の物量をいかに脱出したかというと、結局は気合いだったそうだ。

「FFVII リバース」のサウンド制作を支えたのは「気合い」。ワールドマップの実装でより深みにハマったサウンド制作【CEDEC2024】の画像

BGMは、感情やシチュエーションの部分をシステムに落としこむことは難しく、泥臭い結果になってしまったという。SEについては3Dオーディオを基軸に立体的なサウンド設計ができ、次回につなげれるものとなった。振動においても制作手法や実装面を確立できてきたので、引き続き次回作でもブラッシュアップしていきたい、と伊勢氏は語り、本セッションは終了となった。

最後に余談として、「FFVII リバース」のアセット総数はBGM817曲、SEが約3万、ボイスが1言語約5万の4言語で約20万言語になったことが明かされていた。

CEDEC2024公式サイト
https://cedec.cesa.or.jp/2024/

人生のうちの40年以上をゲームと共に生きる、人生の大半をゲームに捧げた、北の大地に住むライター。JRPGが主食。スクウェア・エニックス、トライエース、フロム・ソフトウェア、カプコン、アトラス、任天堂、ファルコム、タイプムーンあたりに目がない、ソシャゲも山のように嗜む雑食ゲーマー。ゲーム音楽やコラボカフェ、2.5次元なども大好物。北の大地に移り住む前は数多くのイベントに通い詰めた、イベント大好き人間です。

note:https://note.com/rinaasami/n/nb31a2e54c31f

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