オインクゲームズは、11月16日・17日に千葉・幕張メッセで行われるゲームマーケット2024秋で先行販売を予定している新作ボードゲーム「海底探険 深版」について、ゲームデザインとアートワークを担当した佐々木隼氏へのインタビューを公開した。
以下、発表情報をもとに掲載しています
佐々木 隼 / JUN SASAKI
2010年にオインクゲームズを設立。同社が開発する多くのゲームのディレクション、ゲームデザイン、アートワークを手がける。「海底探険」ではゲームデザインとアートワークを担当。文中では(佐)と記載。
小学2年生のアイデアがきっかけ!「海底探険」誕生経緯
――「海底探険」は佐々木さんの息子の吾朗さんからヒントを得たテーマから作られたとのことですが、吾朗さんのヒントはどのようなものだったのでしょうか?
(佐)「海底探険」ができた2014年頃は、オインクゲームズが独立して受託中心から内制中心へ移っていくようになった時期で、ボードゲームの制作もチームでするようになった時期でもありました。同時に社内でスマホゲームの開発も始まり、その開発に専念しなければならないこともあって忙しくなったんです。あいかわらずボードゲームのネタにはすごく困っていました。
同年春に「マスクメン」が出て、秋の新作をどうしようかと考えて困っている時に、小学2年生の息子にお風呂で「なんかいいアイデアない?」となんとなく話していたのが事の発端でした。その時に出してもらったヒントは「海底に潜って行って宝をとって帰ってくるが、酸素が減ったり足が遅くなったりするから帰ってくることが困難になる」という内容でした。
そのヒントのネタになったのはおそらく当時3DSにあった潜水艦のゲームやWii Partyにあった潜水服を着て海底に潜っていくゲームだったように思います。
初期アイデアからシンプルさを追求したゲームデザイン
――最初のアイデアはどんな形で、それをどのように「海底探険」のルールにブラッシュアップしていったのでしょう?
(佐)吾朗の言っていたアイデアは「海底に潜って、財宝を拾って帰ってくる。帰り道は、財宝が重かったりして帰ってこれるかわからない」というもので、そのジレンマがよさそうだと思いました。帰りに帰りづらくなるというストーリーはダイス目と結びつけやすくすごろくタイプのゲームにするアイデアが出てきました。
ストーリーから発想がふくらんで、すんなりそういうアイデアが出てきた気がしますね。財宝そのものが盤面になっているのは、うまくハマったいいアイデアだったと思います。
最初の段階では「財宝を持つと酸素が減る」という形ではなかったと思いますね。当初は毎ターン酸素が減るというルールでした。ルールのシンプルさは彼が出したアイデアから膨らませたものだったから、というのはあると思います。
――佐々木さんはシンプルさというものにどれほど重きを置いているのでしょうか?
(佐)それはすごく重きを置いていますね。なんでもシンプルにしようと思っています。でもゲームにおいては、ゲームプレイや展開は複雑になってほしいと思っています。シンプルな構造なのに複雑な展開が生まれるというデザインがすごく難しいんです。
シンプルながら広がる想像力。「海底探険」タイトルの意味
――「海底探険」というタイトルはどのように生まれたのですか?
(佐)「海底探険」っていいタイトルですよね(笑)。物語に、昔の冒険小説っぽいイメージを感じたんです。図書館などに置いてある、古めかしいハードカバーの本のような。「海底二万マイル」とか江戸川乱歩の「透明怪人」「怪人二十面相」みたいな、シンプルにそのことしか言っていないのに想像がふくらむような児童文学のタイトルのようにしたいなと思ったんです。それでそのまま「海底探険」というタイトルにしました。他に候補などもなく、すんなり決まったタイトルでした。
フォントも児童文学の表紙のようなイメージを意識しました。ゲームを考える時、普通なら先にルールなどを思いついて、その後テーマやストーリーに悩むのですが、「海底探険」はその部分が最初からあったのでタイトルを決めるのは楽でしたね。
――海底探「険」なんですよね。
(佐)「険」に関してはよく聞かれます。「タンケン」という言葉に抱くイメージと「探検」という字面があまり合っていないと感じていて、「険しい」という漢字のほうがイメージ通りだったのでそっちにしたんです。「冒険」の「険」ですね。名前をつけた時はこんなに間違われるとは思っていなかったです(笑)。
チップのデザインに込めた工夫。「空気が減る」イメージを形に
――アートワークはどのように制作していったのですか?
(佐)正直あまり覚えていないです。わかりやすくしたいという気持ちはありました。あと、あまり絵で表現しないようにはしていました。僕が絵が得意ではないというのと、宝物などを絵で描いてしまうと、イメージを固定してしまう気がしたんです。
チップの裏が金色で数字が書いてあれば宝物っぽい感じがするかなと思って、なるべく絵を描かずにフォントなどで世界観を描けるように作りました。今見ると洗練されてない印象を受ける部分もありますが…。潜水艦だけは絵を描かないといけなかったので、頑張って描きました。
――潜水艦はいつ誕生したのでしょうか?
(佐)「空気が減る」というアイデアからです。地表にある船だと無限に空気が供給できてしまいますからね…。なので、本当は「潜っていく」というイメージではなくて、「すでに潜っている潜水艦から海底を歩いていく」というイメージなんです。
変わらない魅力と進化するプレイ感。リメイクされた「海底探険 深版」
――10周年を迎えて「海底探険 深版」へと進化しましたが、それについて教えてください。
(佐)まず、10周年でリメイクしたいという気持ちがありました。どのくらい変えるかというのは難しかったです。元の「海底探険」は波乱が少なく、選択の頻度や密度が比較的薄いと思っていて、改良の余地があるとは思っていました。いざリメイクするにあたって、どの程度新しくするかのさじ加減が難しかったです。立ち位置としては「海底探険」の上位互換です。今後はこれが流通していくと思っています。
そのために、今までと同じルールでも遊べるように元のダイスも入れました。新しくするにあたって、役職を加えて月面探険のようにするかやミッションを作るかなど悩みましたが、大幅に変えたくなかったのでダイスを3つにして選ぶことにしました。いいバリエーションができたと思っています。その後にできたダッシュのルールもよいなと思っています。チップの構成を変える案もありましたが、ダイスとダッシュだけにしました。それだけでもだいぶプレイ感が違うんですよね。
今までの「海底探険」を少し退屈に感じていた人にも楽しんでもらえると思います。もともとの完成度が高いゲームなので、手を加えるのは難しかったです。
――遊んでくれる人へのメッセージをお願いします。
(佐)ボードゲームの中では伝統的なすごろくタイプのゲームで古い香りもありつつ、その後のドイツゲームの流れも組んだ、いろんな文脈を引いたゲームだと思うので楽しんでほしいです。ゲームデザインの奥深さ、ゲームデザインそのものを考えられるようなきっかけになったら嬉しいです。いろんなものが綺麗にまとまっているので、教科書のようなゲームだと思っています。
(インタビュー:2024年6月14日)
商品概要
◆商品名:海底探険 深版
◆価格:2,700円(税別) ※ゲームマーケット会場では特別価格2,500円で販売
◆対象年齢:8歳以上
◆プレイ時間:約30分
◆プレイ人数:2~6人
◆内容物:特殊ダイス3個/探険家コマ6個/遺跡チップ48枚/バッグコマ6個/潜水艦ボード1枚/空気マーカー1個/オリジナルダイス2個/遊び方説明書(JA/EN)
◆ゲームデザイン:佐々木隼&佐々木吾朗
◆アートワーク:佐々木隼
◆紹介ページ:https://oinkgames.com/ja/games/analog/deep-sea-adventure-boost/
ゲームマーケット2024秋概要
名称:ゲームマーケット2024秋
開催日時:
2024年11月16日(土) 11:00~18:00
2024年11月17日(日) 10:00~17:00
会場:幕張メッセ展示ホール 4・5・6・7
会場所在地:〒261-8550 千葉県千葉市美浜区中瀬2丁目1
アクセス:http://gamemarket.jp/access/
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