カプコンが2025年2月28日に発売を予定しているPS5/Xbox Series X|S/Steam向けタイトル「モンスターハンターワイルズ」。その発売に先駆けて、カプコン本社にてメディア向けに行われたプレビューツアーの模様をお届けする。

目次
  1. モンスターだけではなく、土地に住む人々の暮らしも描かれる
  2. 「ワイルズ」のモーションやサウンドが制作された、カプコン社内のスタジオを見学
  3. 辻本良三氏&藤岡要氏&徳田優也氏インタビュー。ランス・スラッシュアックスなど一の武器はOBTからの修正も

人気ハンティングアクション「モンスターハンター」シリーズ最新作となる「モンスターハンターワイルズ(以下、ワイルズ)」。

2024年10月~11月にかけて行われたオープンβテストでは、物語の最初の導入からいくつかのクエストをプレイすることができたが、今回のプレビューツアーでは、メインミッションのチャプター1にあたる範囲を通しプレイすることができた。

「モンスターハンターワイルズ」プレビューツアーレポート&開発陣インタビュー:OBTからの変更点や驚きの制作秘話も明らかにの画像

モンスターだけではなく、土地に住む人々の暮らしも描かれる

禁足地調査隊に任命され、最初のエリアである「隔ての砂原」に赴くまでの冒頭の導入の流れはOBTと同様。その先の展開で新鮮だったのが、砂原に住む住人たちとの交流シーンがしっかり描かれていたことだ。「モンスターハンター:ワールド(以下、ワールド)」では、モンスターについての生態が深く掘り下げされていたが、「ワイルズ」のストーリーでは、これまでのシリーズであまり描かれていなかったモンスターと人間の関係性のような描写も盛り込まれており、「モンスターハンター」シリーズの世界観に対する踏み込みがさらに一歩進んだという印象を受けた。

「モンスターハンターワイルズ」プレビューツアーレポート&開発陣インタビュー:OBTからの変更点や驚きの制作秘話も明らかにの画像

また、メインクエストでは過去の「モンスターハンター」シリーズではあまり見られなかった、シングルプレイのアクションアドベンチャーのような特殊な演出や操作が入り、没入感が増した。ただモンスターを狩るだけではなく、村を襲うモンスターを撃退したり、さまざまなシチュエーションが用意されているのも新鮮で、狩りの合間のメリハリとして機能している。

「モンスターハンターワイルズ」プレビューツアーレポート&開発陣インタビュー:OBTからの変更点や驚きの制作秘話も明らかにの画像

従来のシリーズでは、メインクエストでもフリークエストでも、受付でクエストを受注すると進行する形式が基本だった。対して「ワイルズ」ではモンスターを討伐すると自動で次のメインクエストが始まるようになっていて、ゲームプレイが途切れることなくクエストが進行していく。

メインクエストの対象を討伐した後、拠点に戻らずそのまま周囲を探索して別の対象を討伐するようなこともでき、拠点に戻る→クエスト受注の流れがなくなった分、よりテンポよくゲームが進行するようになった。クエストカウンターで受注する従来のフリークエストもあるが、それもベースキャンプの外でアルマに話しかければ受注できるので、素材集めのための周回などのサイクルも過去のシリーズとは変わってきそうで、マルチプレイを本格的にプレイする時が待ち遠しい。

「モンスターハンターワイルズ」プレビューツアーレポート&開発陣インタビュー:OBTからの変更点や驚きの制作秘話も明らかにの画像
「モンスターハンターワイルズ」プレビューツアーレポート&開発陣インタビュー:OBTからの変更点や驚きの制作秘話も明らかにの画像

OBTにはなかった要素として、ベースキャンプでは従来のシリーズでもお馴染みのトレーニング施設の利用も可能に。今まで通りの武器のコマンドやダメージの確認ができるのに加えて、本作ではトレーニング用のターゲットが自動攻撃機能も有するようになっており、ガードや回避、カウンターのタイミングの練習もできるようになった。とくに本作ではカウンターや相殺系のアクションが結構増えているので、その練習がいつでもできるようになったのは純粋にありがたいところだ。

「モンスターハンターワイルズ」プレビューツアーレポート&開発陣インタビュー:OBTからの変更点や驚きの制作秘話も明らかにの画像
「モンスターハンターワイルズ」プレビューツアーレポート&開発陣インタビュー:OBTからの変更点や驚きの制作秘話も明らかにの画像

OBTには登場していなかった新モンスターとしては「炎尾竜 ケマトリス」と「刺花蜘蛛 ラバラ・バリナ」が登場。ケマトリスは火属性やられ攻撃を多用してくる、ニワトリのような見た目をした獣竜種で、ラバラ・バリナは花のような形状の綿毛を放出し、麻痺を付与してくるモンスターだ。

「モンスターハンターワイルズ」プレビューツアーレポート&開発陣インタビュー:OBTからの変更点や驚きの制作秘話も明らかにの画像
「モンスターハンターワイルズ」プレビューツアーレポート&開発陣インタビュー:OBTからの変更点や驚きの制作秘話も明らかにの画像
「モンスターハンターワイルズ」プレビューツアーレポート&開発陣インタビュー:OBTからの変更点や驚きの制作秘話も明らかにの画像

最後のメインクエストでは、「波衣竜 ウズ・トゥナ」とも戦うことができ、ウズ・トゥナはそれまでに戦ってきたモンスターよりも明確に強さのレベルが違っていた。動きはそれほど早くはないものの、攻撃頻度・範囲ともに高く、水やられ状態を頻繁に付与してくる。津波のようなものを起こして広範囲にダメージを与えてくる攻撃などもあり、初見だと対処の難しい攻撃が多かった。

残念ながら、今回のプレイしたクエストではまだ決着がつかないようになっており、ある程度ダメージを与えると途中でイベントが発生し、プレイはそこまでとなった。

「モンスターハンターワイルズ」プレビューツアーレポート&開発陣インタビュー:OBTからの変更点や驚きの制作秘話も明らかにの画像
「モンスターハンターワイルズ」プレビューツアーレポート&開発陣インタビュー:OBTからの変更点や驚きの制作秘話も明らかにの画像

なお今回紹介した3体の新モンスターについては、実際にプレイした動画を以下にアップしているので、実際の動きなどの詳細はそちらを参照して欲しい。

「ワイルズ」のモーションやサウンドが制作された、カプコン社内のスタジオを見学

今回のプレスツアーでは、「ワイルズ」を始めとする様々なタイトルを開発で使われている、モーションキャプチャースタジオ、サウンドスタジオ、フォーリーステージというカプコン社内の3つのスタジオを見学することもできた。

モーションキャプチャースタジオは、ちょっとした体育館のくらいのスペースのある大きな部屋で、周囲には36台のカメラが設置されている。

「モンスターハンターワイルズ」プレビューツアーレポート&開発陣インタビュー:OBTからの変更点や驚きの制作秘話も明らかにの画像
「モンスターハンターワイルズ」プレビューツアーレポート&開発陣インタビュー:OBTからの変更点や驚きの制作秘話も明らかにの画像

モーションキャプチャーの利点は「よりリアルな動きの表現のデータを作ることができる」「早期でのゲームは実装が可能」の2点。「ワイルズ」にも使われているカプコンのゲームエンジン「REエンジン」では、モーションキャプチャーのデータをリアルタイムでゲーム画面上に反映して出力して確認することが可能で、「ワイルズ」では、モーションキャプチャーを含めたほぼすべてのアクションがカプコン社内で作られているという。

「モンスターハンターワイルズ」プレビューツアーレポート&開発陣インタビュー:OBTからの変更点や驚きの制作秘話も明らかにの画像

驚いたのは、「ワールド」以降はハンターだけではなく、モンスターも大半がモーションキャプチャーで作られていること。実際の収録を再現したデモンストレーションも見ることができたのだが、役に入りこむために実際のモンスターさながらの唸り声を上げながら激しいアクションを行っており、想像していた以上の迫力に圧倒された。

「モンスターハンターワイルズ」プレビューツアーレポート&開発陣インタビュー:OBTからの変更点や驚きの制作秘話も明らかにの画像

最終的にはキャプチャーしたモーションをベースに、アニメーターによる修正が加えられたものがゲーム内に実装される。ただし多足など人型から離れたモンスターについては、「ワールド」より前のシリーズのモンスターと同様に、1からアニメーターが手付けでモーションを作成しているそうだ。

「モンスターハンターワイルズ」プレビューツアーレポート&開発陣インタビュー:OBTからの変更点や驚きの制作秘話も明らかにの画像

ゲーム内に収録する楽曲の最終調整が行われるサウンドスタジオでは、「ワイルズ」の楽曲制作のエピソードが語られた。

「ワイルズ」のBGMの多くには、オーケストラや民族楽器の音色に加えて、シンセサイザーが使われているが、これは「ワイルズ」のフィールドの特徴にもなっている「荒廃期」~「豊穣期」の季節の移り変わりを、シンセサイザーの音色を変調させて音楽面でも表現したため。さらにシンセサイザーには「ワイルズ」専用に制作されたオリジナルパッチも使われているという。

「モンスターハンターワイルズ」プレビューツアーレポート&開発陣インタビュー:OBTからの変更点や驚きの制作秘話も明らかにの画像

最後に見学させてもらったのが、ハンターの足音からモンスターの鳴き声など、ゲーム内のほとんどの効果音を作成しているスタジオでもあるフォーリーステージ。「ワールド」の時は、できるだけ自然な生き物として表現するため、生のライオンやシマウマといった実在の動物の鳴き声をベースに使っていたそうなのだが、「ワイルズ」では、それぞれのモンスターごとに作成したオリジナル楽器の音がベースになっているという。

「モンスターハンターワイルズ」プレビューツアーレポート&開発陣インタビュー:OBTからの変更点や驚きの制作秘話も明らかにの画像

これは、「ワイルズ」のモンスターボイスのコンセプトが、「オノマトペで表現できるくらいの個性を作ろう」となっていたためで、プレイヤーに強い印象を残すための方法として、自然の鳴き声とは違う違和感を抱かせたいという狙いがあったそうだ。

新モンスター「煌雷竜 レ・ダウ」の鳴き声がどのように作られたかの実演も行われ、最初は金属が軋む音にも近い、モンスターの鳴き声とは似ても似つかない状態から、複数のオリジナル楽器や生動物の鳴き声を重ねて加工していくことで、みるみる内にゲーム内のレ・ダウの鳴き声に近づいていく様子は、かなり興味深い行程だった。

「モンスターハンターワイルズ」プレビューツアーレポート&開発陣インタビュー:OBTからの変更点や驚きの制作秘話も明らかにの画像

効果音チームはモンスターの見た目などの固定概念にとらわれすぎないことを大切にしており、時折デザインチームと意見が食い違うこともあるなど、さながらの“戦い”のようだと表現していたほど。「ワイルズ」の開発にあたっては、デザインよりも先にモンスターの鳴き声の系統を振り分けた相関図を作成していたそうだ。

モンスターごとにオリジナルの楽器を作るというのはシリーズの中でも初の試みで、既存のモンスターについても「ワイルズ」の世界観にあわせたアレンジが加えられているものもあるという。鳴き声も意識しながらプレイすると、より「ワイルズ」の世界観を深く楽しめるようになるかもしれない。

「モンスターハンターワイルズ」プレビューツアーレポート&開発陣インタビュー:OBTからの変更点や驚きの制作秘話も明らかにの画像

辻本良三氏&藤岡要氏&徳田優也氏インタビュー。ランス・スラッシュアックスなど一の武器はOBTからの修正も

最後に、プロデューサーの辻本良三氏、アートディレクター兼エグゼクティブディレクターの藤岡要氏、ディレクターの徳田優也氏にお話を伺うことができたので、その模様をお届けする。

左から、藤岡要氏、辻本良三氏、徳田優也氏
左から、藤岡要氏、辻本良三氏、徳田優也氏

――先日行われたOBTの手応え、反響をお聞かせください。

辻本氏:ベータテストにはネットワーク周りの技術的な検証という意味合いもあったので、まず大きなトラブルがなく終えられたことと、この時期にやっておけて良かったという実感はありますね。

反響としては、グローバルも含めてかなり大きなものをいただいたという感触を得ています。その中でたくさんご意見も当然いただいていて、自分たちが思っていた通りだった部分、そうではない部分がそれぞれあったので、色々改善するべきところはしないといけないなと話をしているところです。

「モンスターハンターワイルズ」プレビューツアーレポート&開発陣インタビュー:OBTからの変更点や驚きの制作秘話も明らかにの画像

――今回の試遊にあたって、武器には後日改めて調整が入るというお話もありました。

徳田氏:そうですね。元々ベータテストの前から、「製品版ではこう調整する」と予め決めていたものも結構ありますし、その後のOBTの結果を反映するのも含め、あらかじめ予定していました。特に操虫棍、ランス、スラッシュアックス、片手剣についてはOBTからより使い勝手を向上させるような調整を入れる予定です。

「モンスターハンターワイルズ」プレビューツアーレポート&開発陣インタビュー:OBTからの変更点や驚きの制作秘話も明らかにの画像

藤岡氏:今回のOBTでは、今までの「モンスターハンター」シリーズの体験版やβテストと違い、自由に遊べるクエストと、序盤のストーリーを体験するクエストの2種類を用意させていただきました。

とくに序盤の物語の導入の仕方や、そこからシームレスに狩りが展開していく流れは、かなり注力して作っていた部分だったので、そこを皆さんに受け入れていただいたのは安心できましたね。製品版でも、ストーリーから一気に遊んでいただけるように考えて作っていますので、これをしっかりと調整して届けられたらなと。

あとキャラメイクをしっかり楽しんでいただけたのは、デザイナー陣含め、みんなすごく頑張ってくれたので、良かったところでしたね。

「モンスターハンターワイルズ」プレビューツアーレポート&開発陣インタビュー:OBTからの変更点や驚きの制作秘話も明らかにの画像

――キャラメイクについては、Xを中心にめちゃくちゃ盛り上がっていましたね。

藤岡氏:皆さん本当にいろんな表現をされていて、我々も面白いなと思いつつ見させていただいていました(笑)。キャラメイクについては、「ワールド」の時にいろいろご意見をいただいたこともありまして、こだわりをもってキャラを作られた方が、実際にゲームを遊んだ時にも満足していただけるよう、「ワールド」よりもう一歩踏み込んだ形で、しっかり取り組ませていただきました。

それがプレイした時の没入感にも繋がっていくと念頭に置いておりましたので、そこをしっかりと遊び込んでいただけていたのは、手応えをすごく感じられたテストだったなと。

「モンスターハンターワイルズ」プレビューツアーレポート&開発陣インタビュー:OBTからの変更点や驚きの制作秘話も明らかにの画像

――Xで話題になっていた部分で、せっかく可愛く作ったキャラのガードした時に表情が崩れてしまう、というものもありましたが……。

藤岡氏:あれについては、想定外の仕込みになってしまっていた部分ではあります。やっぱりいろんな方に触っていただいて初めて見えてくる部分というのはあるので、そこも含めて一歩進んだ形で調整しきろうと、今取り組んでいる最中です。

徳田氏:盾を構えた時にカメラをキャラ側に向けるって、なかなか普通のプレイではない状況だったのもありまして。

藤岡氏:我々としても「こんな顔してたんや」と……(笑)。今、それは調整しようという話になっています。

製品版では、コンソール向けのパフォーマンスモードも改善

――先ほど少し話があった「直すべきところ」という部分や、現在の開発の状況について、可能な範囲で教えていただけないでしょうか。

―辻本氏:開発の状況で言うと、2月発売ですので、当然もうかなり終盤に差し掛かっているところです。

ただ、やっぱりベータテストを受けての部分で、 改めて修正した方がいいと思えた部分とか、自分の意図通りの遊び方が難しそうな部分は、大きく変えてしまった方がいいよねというところもありますので、そのあたりの調整を行っている段階です。

とくに皆さん、武器周りのところは結構気にされている部分だと思いますけど、そのあたりも手を入れていく予定です。ただ、詳しいことについてはどこかでまとめてお伝えできるタイミングを作りたいと考えています。

「モンスターハンターワイルズ」プレビューツアーレポート&開発陣インタビュー:OBTからの変更点や驚きの制作秘話も明らかにの画像

――調整はやはり武器周りが中心に?

徳田氏:そうですね。我々の意図通りにならなかった武器の個性をしっかり伸ばしていく調整を入れていきますし、武器間の格差についても、エンドコンテンツを見据えたバランス調整はしっかり入れる予定です。あとは調整以外にも、OBTでは不具合もいろいろ見つかっていたので、そういったところの修正対応も行います。予め製品版に入るものもありますし、DAY1パッチでのアップデートも活用させていただきつつ、我々が目指すゲームバランスに近づけていければなと。

――OBTでは、TGS2024での試遊バージョンから、コンソール機向けのパフォーマンスモードの設定も追加されていましたが、以前から予定にあったものなのでしょうか?

徳田氏:そうなります。基準となる状態が定まっていかないと、どのくらいパフォーマンスを優先するかというのも設定できないので、まずはいわゆる解像度・グラフィックを重視したモードを作って、後からフレームレート重視のパフォーマンスモードを搭載する流れは、当初から予定していました。

ただ、OBTの時はまだ不具合が残っていた状態でして、本来想定している画質ではない品質になってしまっていました。今回メディアの皆さんに試遊いただけるバージョンでは、既にその修正は適応されていて、さらにリリースの状態では、フレームレートの数値も含めて、さらに改善すると思いますので、ご期待いただければと。

「モンスターハンターワイルズ」プレビューツアーレポート&開発陣インタビュー:OBTからの変更点や驚きの制作秘話も明らかにの画像

――OBTを遊んで、モンスターの死体が腐敗するとか、さらに放置しておくと骨塚になるとかの仕組みにかなり驚きました。そういう世界観をリッチに描いた描写が他にもありますか? また、そういった要素がゲームプレイに影響することはあるんでしょうか。

藤岡氏:プレイに直結するものもあれば、純粋に表現の一部として取り組んでるものも、それぞれあります。

徳田氏:今までの「モンスターハンター」シリーズってクエストごとにゲームデータが1回リセットされる形だったんですが、今回はそれをシームレスにして、プレイ内容に応じて環境がずっと遷移していく、インプレイが途切れない形に挑戦したかったんです。

そう考えた時、死体の処理も単純に消えていくのではなく、一部がそういう骨塚になって、そこから素材を入手できたりする方が自然なんじゃないかなと。実はずっと昔から思っていた部分ではあったんですが、本作で目指したいところと、技術的な進歩のタイミングがうまく重なってくれたことで実現できた形です。

その骨塚の例はゲームプレイに影響を与える部分で、大型モンスターが大暴れした場所にしばらく経ってから行くと、たくさん骨を入手できたりします。場合によっては、プレイヤーが関与していない場所でそういうことが起きていることもあって、それこそがナラティブな世界を感じていただける要素になっているのかなと。「前にあそこでモンスターが暴れてたから、骨がいっぱい落ちてるかも」とか予想していただくみたいなのも、楽しみの一つになるかもしれません。

「モンスターハンターワイルズ」プレビューツアーレポート&開発陣インタビュー:OBTからの変更点や驚きの制作秘話も明らかにの画像

辻本氏:ただ、それを利用しないとゲームが進まないということはなくて、基本は表現の一貫と思っていただければ。

徳田氏:そうですね。さっきの骨塚の例にしても、従来通り特定のポイントに発生する骨塚もあった上での、+α的な要素になりますので。

OBTでの使用率1位は、やはりあの人気武器だった

――「モンスターハンター」シリーズの武器は「どれが初心者向けか」みたいなところも定期的に話題になっているかと思います。「ワイルズ」では最初に手にする武器が大剣になっていましたが、今回は大剣を初心者向けに想定したような意図はあったりするのでしょうか?

藤岡氏:あれについては、大剣はシリーズの象徴的な武器なので、あくまでもイベントの中でそういう描き方をしているというだけですね。

これは徳田とも結構話すんですけど、「モンスターハンター」における“初心者向け”って、すごく難しい表現だと思っていて。一般的にそう言われているようなものでも、「本当に初心者向けといえるのだろうか」と感じることが結構あるんですよね。

軽快に動ける武器もその分攻撃力が低く設定されていて、うまい立ち回りを要求されたり、どの武器にも強み弱みが必ずあるので、どれを初心者向けっていうかって、結局は人それぞれになるだろうなと。

なので「ワイルズ」では、最初にアルマに質問をさせて、プレイヤーが自分の好みにあった武器を見つけられるよう誘導するようにして、武器ごとのジャンルわけをさせてもらったイメージです。

「モンスターハンターワイルズ」プレビューツアーレポート&開発陣インタビュー:OBTからの変更点や驚きの制作秘話も明らかにの画像

その上で大剣に関していうなら、長く使えばどんな場面でも使える汎用性があり、実は大剣って、「モンスターハンター」シリーズを開発する上で最初に調整を始める武器でして、長く調整されている分、ゲームデザイン的にもマッチしやすい傾向があります。

ただ、やっぱり操作が重いというところがどうしても合わない方もおられると思うので、そういう場合に武器選びの参考にしていただければなと。

――OBTでは、人気の高い武器はどれだったのでしょうか?

徳田氏:人気度でいうと、やっぱり太刀になりますね。今回ちょっと面白かったのが、それまでどんなゲームを遊んできたかで扱いやすい武器って変わってくると思うんですけど、設問形式を導入してみた結果、アメリカとヨーロッパでは操虫棍を選ばれる方が結構多かったんです。日本やアジアではまったく違う傾向が出ていて、何か操虫棍にそういった地域の方々を惹きつけるものが何かあったのかなと(笑)。

「モンスターハンターワイルズ」プレビューツアーレポート&開発陣インタビュー:OBTからの変更点や驚きの制作秘話も明らかにの画像

――操虫棍は確かにかなり意外なところですね。海外でいうと、やっぱりボウガンは人気が高いんでしょうか?

徳田氏:そうですね。 やはりシューター系を遊んでいる方も多いので、海外ではボウガンを最初に選ばれる方が多い傾向は「ワールド」の頃からあります。

――開発の方々としては、今回の試遊で注目して欲しいポイントはどこになるのでしょうか?

藤岡氏:自分としては、さっきも言わせてもらったんですけど、いろいろな要素がどんどんシームレスに展開していくところと、自分自身も本作のキャラクターの1人となって、ストーリーを楽しんでいただきたいという部分です。

もちろん何を主眼に遊ぶかはプレイヤーの方々の自由なんですけど、物語はそれを誘導する一つの要素でもあると思っていて。物語を中心に世界観に没入し、いろんなことを覚えながらゲームを進めていくサイクルは、「ワイルズ」の大きな柱になると思っているので、そこをどう感じていただけるかはすごく気になっていますね。

徳田氏:僕としては、「ワイルズ」独自の生態系の中にハンターが入っていって、その世界の謎やモンスターと関係性を築いていくみたいなところをしっかりと描きたいという想いがありました。「モンスターハンター」のとしての遊びの部分はしっかり保ちながら、新たに進化した部分が新しい満足感や楽しさみたいなところを提供できているかは、気にしている部分です。

辻本氏:まだ調整は入るものの、今回は本当に製品版に近いバージョンで遊んでいただいている中で、まずはシームレスなゲーム体験と、没入感っていうところは一番感じていただきたいなと思っています。とくに今回、シームレスには結構こだわってるので、没入感が途切れずにプレイし続けられるような作りを体験いただけるかなと。

逆にちょっと止め時がわからないっていうところもあるんですけど、そこは目指してるところでもあるので、そこも含めて感じ取っていただけると嬉しいなと。今回遊んでいただける中だと、緋の森にはモリバーがたくさんいたり、結構特徴的なエリアにもなっていますので、そのあたりにも注目いただければと思っています。

「モンスターハンターワイルズ」プレビューツアーレポート&開発陣インタビュー:OBTからの変更点や驚きの制作秘話も明らかにの画像

――「シームレスで繋がっている」というお話がありましたが、とくにマルチプレイが絡む場合、その2つの要素は相容れない側面もあるのではないかも思っているのですが、どのように解消されたのでしょうか。

徳田氏:おっしゃる通りで、ストーリーが進行している時は1人で演出を見ていかただかないといけない時間が発生します。ただ、進行段階さえ揃えていただければ、2人でストーリーの演出も含めてそれぞれの端末で見られるようになっています。OBTでも入れていたリンクパーティを使うと、クエストを受けられるようになった段階で通知が行くので、そこで一緒にクリアすれば同時にクリアフラグを満たしたりもできるので、複数人で一緒にストーリーを進めることもできます。

またOBTもそうでしたが、ストーリー的な演出が入るタイミングとは別に、自由に狩りができるターンもしっかり設けています。序盤はストーリーが中心になっていますが、ゲームが進むと、それぞれのターンの遊びの違いみたいなところも感じていただけるかなと思います。

――プレイしていて、従来のシリーズと比べてカットシーンが増えたように感じたのですが、実際のところボリュームは増えているのでしょうか?

藤岡氏:管理している物量自体は、「ワールド」の時からそんなに変えているつもりはないんですが、「ワールド」の時はカットシーンの尺については、結構気にしながらやっていたんです。今回はいろんなキャラクターが出てきて、ハンター自身も参加する会話シーンや説明があるので、どうしても従来より会話劇が増えたところはあります。

ただ、いらない部分は極力切ってコンパクトにしていますし、手を変え品を変え、できるだけ退屈に感じさせないようにする、というところは気を使っています。最終的な総量がどのくらいかはお答えできないのですが、しっかりとしたボリュームは感じてもらえるんじゃないかなと思います。

「モンスターハンターワイルズ」プレビューツアーレポート&開発陣インタビュー:OBTからの変更点や驚きの制作秘話も明らかにの画像

――OBTでは、ベースキャンプがそのままロビーとなっていましたが、これは製品版でも同じなのでしょうか? 

徳田氏:製品版ではいろいろ追加される機能もあり、より使い勝手が良くはなりますが、大枠の形としては同じ、最大100人が集まれるロビーに16人が表示されるような形になります。

――従来の集会所とはまたちょっと勝手が違うなとも感じました。

徳田氏:集会所とまったく同じではないですが、製品版ではプライベートロビーという、IDを知っている人だけが入れるロビー機能も実装するので、ロビーのIDを共有すれば、知り合いのプレイヤー100人が入っているロビーみたいなのを作ることも可能です。従来通りのサークル機能もありますので、サークルメンバー限定のチャットでやり取りとかもできます。

プライベートロビーを使っていただければ、ほぼ従来の集会所と同じような遊び方もできるようになりますし、入れる最大人数が増えた分「ワールド」の時より純粋にパワーアップしている部分もあります。また、ロビーについてはさらなる機能拡張も検討している最中です。

――救援で出てくるサポートハンターについてはどのくらいの強さで調整されているのでしょうか。

徳田氏:サポートハンターについては、一般的な強さのハンターさんが4人集まった時よりも時間効率が少し落ちるくらいのバランスを目指しています。時間効率とは別に、自発的に罠を置いたり閃光弾を投げてくれる、サポート力が高めのハンターをイメージして調整しているので、プレイヤーの方に気持ちよく狩りをしてもらえるような形にできればと。

また、サポートハンターの立ち回りはオプションで弄れるようになっていて、「傷の破壊を行わない」とかも事前に設定できるようになっています。

「モンスターハンターワイルズ」プレビューツアーレポート&開発陣インタビュー:OBTからの変更点や驚きの制作秘話も明らかにの画像

――サポートハンターが倒されることもあるのでしょうか?

徳田氏:あります。ただその場合は、クエスト失敗のカウントには加算されないようになっているのでご安心いただければと。

辻本氏:OBTなどを遊んでいただいた方にはご存知かと思うのですが、サポートハンターはかなり序盤から使えるようになっています。初めて「モンスターハンター」をプレイされる方とか、なかなかマルチに行きにくい方もおられると思うので、そういう方々に早めにマルチの楽しさみたいなのを体験いただきたいという意味合いもあります。

生物らしさを出すため、セクレトはあえて癖のある挙動に

――「ワイルズ」は「モンスターハンターライズ」と同じREエンジンで作られているかと思うのですが、一見同じシリーズとは思えないくらい、ビジュアルの方向性の違いを感じます。過去のシリーズとの差別化として、本作ならではのビジュアルを構築していく上での具体的なコンセプトのようなものはあったのでしょうか。

藤岡氏:今回は、豊かで美しい部分と、人間にとって脅威となる部分、自然の2面性みたいなところを、しっかりコントラスを持って表現しようというコンセプトは最初から決めていました。加えて、そこに人間や自分自身という存在がどう絡んでいくかを表現することで、今まで以上に「モンハン」の世界として大事にしている部分をしっかり伝えられるんじゃないかなと。とくに色味や表情、自然の変化といった部分はかなり気を使って表現しています。今まで以上に鬱蒼としている部分はより鬱蒼と、豊かなところはよりカラフルになる色味に調整しています。

「モンスターハンターワイルズ」プレビューツアーレポート&開発陣インタビュー:OBTからの変更点や驚きの制作秘話も明らかにの画像

――シーンごとのギャップが大きくなったというか。

藤岡氏:そうですね。しかも今回は異常気象、豊穣期といった気候のサイクルもあって、自然の表情みたいなのも変化しますので、コントラストの差みたいなところを、従来以上に感じていただけるのではないと思います。

――本作は本当に作り込みがすごくて、ピッケルで鉱石を掘った時にパラパラと破片が落ちるアニメーションが入ったりと、「こんなとこまで作り込んでるのか」という感動がありました。他にも、なかなか気づきにくいけどこだわっているアニメーションなどがあれば教えていただけないでしょうか。

藤岡氏:今回は本当にデザイナーが凝った作りにしてくれていて、ありすぎて挙げるのが難しいですね。

採取一つとってもかなり種類があって、その都度細かい表情の違いがあったり、環境生物も変なとこに擬態していたり、食虫植物みたいなのも存在していたり、細かい表現をたくさんしているので「この世界の環境ってこんなにダイナミックなんだ」みたいなスケール感を感じてもらえたりもするかなと。いざ見つけようとすると難しいかもしれませんが、たまたま見つけられるとちょっと嬉しくなるような要素をかなり仕込んでいるので、遊べば遊ぶほどいろんな気づきや発見ができるゲームになっているんじゃないかと思います。

――過去の「モンスターハンター」シリーズでも、そういった生態系の描写が意識されてきましたが、「ワイルズ」ではとくにその表現が実現できたという手応えはありますか?

藤岡氏:そうですね。「ワールド」でいろんなアニメーションの表現の仕方に取り組んだので、その延長線上にしっかり技術が乗ってきている良い実感はあります。「ワールド」の存在があったからこそ、デザイナーが積極的にいろいろなことに取り組める環境にはなっているのは間違いないかなと。

気づいている方もおられるかもしれませんが、テントの中でオトモとのじゃれあいとか、プレイヤーが構うと、どんどんいろんなリアクションが展開していくようになっているんです。そういうテントの中まで遊びがあるみたいなところも含めて、「こんなことまで作ってるんだ」みたいな発見をしていただけると嬉しいですね。

徳田氏:モーションで言うと、セクレトに乗りながらでも採取ができるんですが、他にもエモードとか、今まで止まった状態でしかできなかったことを歩いたりセクレトに乗りながらできるようにしています。とくにセクレトに乗りながら遊ぶことがすごく多くなりますので、「乗った状態でもやりたいよね」みたいなところは、結構頑張って実現した部分です。

「モンスターハンターワイルズ」プレビューツアーレポート&開発陣インタビュー:OBTからの変更点や驚きの制作秘話も明らかにの画像

――少し過去作とのつながりを匂わせるような描写もあったり、アルマが考古学を研究している設定なのもあって、シリーズ全体の大きな枠組みでの設定の掘り下げをしようという意図のようなものも感じました。

藤岡氏:実際、徳田とも「僕らが関われている間に、いろんなものを整理しておいた方がいいよね」という話を結構しています(笑)。できるタイミングでやっておかないといけないなと。

自分たちがディティールをしっかりと作りたいと思っている部分とか、昔の設定とかも掘り起こしたりして、できる限りの範囲でもしっかり設定を固めていこうという取り組みは、少しずつではあるんですけど進めています。

「モンスターハンターワイルズ」プレビューツアーレポート&開発陣インタビュー:OBTからの変更点や驚きの制作秘話も明らかにの画像

――今回は、いわゆる“モンハン語”はないんでしょうか。

藤岡氏:従来のように選択できる言語としては用意していません。ただ、この世界に存在していないかというとそういうわけではなくて、何気ないNPCとの会話とかの中に“モンハン語”の音が入っていたり、あくまでも自分たちが見聞きしているのは、ローカライズされた言葉というニュアンスで作っています。なので“モンハン語”が世界からなくなっているわけではないんですが、今回は言語の選択肢の中には入れていないと形です。

――セクレトもそうですが、「モンスターハンター」はシリーズを通してどんどん利便性が上がっていて、昔から遊んでいるプレイヤーからすると「ここまでやって本当にいいの?」と驚くことが結構あります。作品ごとにどこまで便利にするのを許容するのか決める難しさはあるんでしょうか?

藤岡氏:やっぱりどんなに便利になっても肉を食べたり食べ物を焼いたり、武器を使ったら砥石を使ったり、自分がその世界で生きていると実感できるような要素は残し続けたいなと。何気ないことではあるんですけど、まだまだゲームデザインとしても表現としても残したいと思っています。

セクレトも便利ですが、僕たちが拘っているのは、あくまでも「生き物と触れ合っている」という部分なんです。やりすぎるとまどろっこしくなるので難しいところでしたが、利便性を追求するあまり機械のようなものと関わっているような見え方をするのは嫌だったので「生き物を作るつもりでやろう」というのは共有していました。

徳田氏:そのセクレトの話だと、他のゲームのマウントにはあまりない操作の癖みたいなのを意図的に入れているんです。

例えば、目的があればセクレトが臭いを嗅いでそこに連れていってくれたり、放置しているとなんとなくハンターが望みそうなものある場所の方向にうろうろし始めたりとか、セクレト自身が考えて動いていると感じられるような要素を入れています。

一応、他のゲームのマウントに操作を近くするオプションも用意しているんですけど、デフォルトがそっちになっているのは、セクレトも生き物であるということを感じてもらいたいという意図があるからです。

――最期に、発売を楽しみにされているファンの皆様へのメッセージをお願いします。

徳田氏:「モンスターハンターワイルズ」では、今まで以上によりパワーアップした生態系など、「モンスターハンター」の世界をより深く描くことに挑戦しています。アクションも含めて、あらゆる面でパワーアップした「モンスターハンター」になっている自信がありますので、ぜひ遊んでいただきたいです。

藤岡氏:今回僕はアートディレクターという形で参加させていただいきましたが、本当にデザイナーの1人1人が本当に細かい表現にまでこだわって突き詰めてくれました。今回の舞台は、何気ない表現が本当に事細かに表現されていて、それが下地のようにいろんなストーリーを生んでくれる作りになっています。表現の中に、本当にいろいろな発見があるゲームになっていると思うので、細かいところにも注目しながらゆっくり遊んでもらえたら嬉しいなと思います。

辻本氏:発売を楽しみにお待ちいただきたいというところもあるんですけど、まだ発売まで数ヶ月ありますので、その間にお伝えしないといけないこと、まだ明かしていない発表などもありまして、そのあたりの情報も随時出していければと思っています。

またOBTから製品版で変わる部分もありますので、それについても改めてお伝えする場を作りたいと思っていますので、そちらの情報もチェックしていただければと。開発陣も、本当に今頑張って開発の最終段階を進めているところで、なんとかいい形で発売を迎えられるよう頑張りますので、発売までもう少しお待ちいただけばと思います。

――ありがとうございました。

コメントを投稿する

この記事に関する意見や疑問などコメントを投稿してください。コメントポリシー