KRAFTONからリリース予定のライフシミュレーションゲーム「inZOI」の早期アクセス版をレビュー。筆者のプレイを通じてユニークな本作が持つ独特の魅力や、楽しみ方について紹介する。
「inZOI」は、プレイヤーが創造主として思い通りの世界を作り、そこで展開されるさまざまな物語を見届けるライフシミュレーションゲーム。タイトルにある「Zoi」というのが、本作に登場するキャラクター。プレイヤーは「Zoi」を自由に生み出すことができ、さらに「Zoi」たちが暮らす環境のカスタマイズも可能。「Zoi」は自分の意志で行動し、人生を積み重ねていく。
その一方、プレイヤーが操作して彼らの行動に介入することもできる。…と、ここまでの説明でお分かりいただけたと思うが、本作は、この上なく高い自由度を持っている。それだけに何が楽しいのか、どうプレイするのかイメージしづらいという人もいるハズ。そこでこのレビューでは、筆者のプレイを通して本作の楽しみ方のひとつを紹介したい。なお、今回筆者がプレイしたのは2025年3月28日にリリース予定早期アクセス版となっている。

自分の分身が仮想世界でどう暮らす?まさにライフシミュレーションゲーム
まず、本作には特に明確な目的が定められているわけではない。もちろん、「Zoi」をなるべく殺さないようにプレイするだとか、都市がスラム化しないよう「カルマ」をプラスの方向にもっていく…といった要素はある。ただこれらは、クリアのための絶対条件だとか、ゲームオーバー的なペナルティに繋がる要素といったわけではない。「そういう風にプレイした方が楽しめるよね」というゆる~い指針程度のものでしかないのだ。「どんな都市をつくるか?」や「どんなZoiを作り、どんな人生を歩ませるか?」といった楽しみ方を、プレイヤーが決めるタイプのゲームといえる。

とはいえ、一般的なゲームの多くは、目的が用意されていて楽しみ方も固定されている。なので、「楽しみ方をプレイヤーが決める」といっても、どうプレイすればいいのか即座に思い浮かばない人も多いだろう。そこでオススメしたいのが、自分や自分の家族、知人をモチーフとした「Zoi」を作ること。本作は自由度が高いだけでなく、3DCGで非常にリアルな世界が描かれる。このため、自分の周囲の人間を「Zoi」として登場させると、まるでパラレルワールドを見ているかのような楽しさが味わえるのだ。まさにライフシミュレーションゲーム!

一番最初に行うのは、「Zoi」のキャラクターメイキング。外見を選び、性格を選び、どのような人生を歩ませたいかという「希望する人生」を選ぶ。

今回の記事化にあたって、極力筆者に近い「Zoi」を生み出すことにした。RPGなどをプレイする際は、ちょっとイケメンに補正してキャラクターメイクしてしまうが、今回は年齢もワガママ体型もなるべくリアルに再現!性格についても、なるべく筆者に近づけるため「野心家」を選んだ。これまで自分でゲームを作ったり会社を作ったりしてきた事を考えると、「野心家」が最も近いに違いない…気がする。

さらに、筆者の奥さんも作成。「Zoi」は家族として設定することができる。ちなみに奥さんについては、特に現実に寄せたわけではない。プリセットキャラクターの中から適当に選んだだけ。…というのも、「Zoi」は死ぬことがある。筆者は、仮想世界の中であっても身内が死ぬという事態は避けたいと思うタイプの人間だ。現実世界と名前が同じというだけでもちょっと気分が落ち込むし、ましてや外見が似ていたら、間違いなく滅入る。筆者と同じように考える人は、「Zoi」を作る際、モデル本人に寄せ過ぎないように注意した方がいいだろう。

「Zoi」を作り出したら、次は「Zoi」が暮らす都市を選択する。用意されている都市は、アメリカや韓国など、実在の都市がモチーフ。しかし残念ながら日本がモチーフの都市はない。そこで、今回は同じアジア圏ということで韓国がモチーフの都市「ドウォン」を選んだ。

都市を選んだら、次は住環境を作り上げる。細かく家の外観や間取りをエディットすることも可能だが、今回は早くプレイ開始したくてウズウズしていたので、プリセットから選択。家具などを新たに購入し、家に追加することも可能。今回は2人暮らしなのに、プリセットにはベッドや椅子が1つしか設置されてなかったため、テーブル用の椅子とベッドを追加することにした。もちろん、家具の向きや配置は自由にカスタマイズできる。住環境を作ったら、いよいよプレイスタートだ!

プレイの際にひとつの指針となるのが、「Zoi」の欲求。「Zoi」たちは我々リアル世界の人間と同様、空腹、清潔、睡眠、トイレ…など、生きていく上での生理的な欲求を持っている。この欲求が果たされないと不機嫌になったり病気になったりし、さらに長い間欲求が果たされないと、場合によっては死んでしまう。なので、長時間、欲求が果たされていないようであれば、行動を指示しなければならない。といっても、基本的に「Zoi」は自律的に行動してくれる。お腹が減ったら食べ物を食べてくれるし、トイレに行きたくなったらトイレにいてくれる。このため、放置でもOK。

放置的にプレイする場合、注意すべきなのが倍速設定。本作の世界ではリアルタイムに時間が流れている。時間の流れは一時停止することができるが、スキップは不可能。このため筆者のように、1体の「Zoi」に注目してプレイしている場合、その「Zoi」が夜寝ている時は、倍速を最大に設定することになる。ただ、放置状態で倍速設定を使用すると、ちょっとよそ見している間に様々なイベントが発生し、ゲーム内で何が起きたのかわからなくなってしまう。放置的にプレイするのであれば、倍速から通常速度に設定を切り替えた方がいいだろう。

また、家具の配置と職業にも注意が必要。家具の配置によっては、「Zoi」たちが欲求を果たせなくなってしまう。たとえば冷蔵庫の前に別の家具があると、冷蔵庫を開くことができなくなってしまう。すると当然食べ物を取り出せず、空腹に対処することもできない。また、ベッドの側面に別の家具があると、ベッドが利用できなくなる。こうした家具の機能が発揮されなくなる状況について、家具の配置時に警告が出るわけではないので注意が必要だ。この点は、できれば今後アップデートで、家具の効果が発動できない状況の警告を表示するよう対応してほしい…。

職業については、ゲーム開始時に職業についているわけではない。このため、プレイヤーが手動で就職させてあげる必要がある。この世界にも金があり、金がないと家具を買い足したり、食べ物を食べたりできないのだ。ちなみに就職は、スマートフォンの求人情報からクリックすれば、それで即採用となる。とっても楽。現実世界もこれくらい楽に就職できるといいのになあ。

今回は実際の筆者の人物像になるべく近づけるため、ソフトウェアデベロッパーに開発者として勤務する道を選んだ。しかし、筆者はしばらく就職について知らず、無職状態でプレイをしていた。無職状態の筆者Zoiは、午前中PCで何か開発し、夕方になると公園に行って釣りをする…という悠々自適っぷり。ただ、職業についていようがいまいが、PCで何か作る…という点は現実の筆者っぽくて、思わず「オレか!」と口走ってしまった。

「Zoi」たちの欲求の中には他者との交流も含まれており、他の「Zoi」との会話も自律的に行う。なので筆者Zoiも奥さんZoiと会話したり、公園で会った初対面「Zoi」と会話したりするのだが、どうにも愛想が悪いらしく、かなりの頻度でケンカになっていた。「野心家」という性格設定のためか、はたまたコミュニケーションが苦手な筆者の性格が反映されてしまったのか…。ここでも「オレか!」と口走ってしまった。

自分や自分の周囲の人をモチーフにすると、こんな風に現実とゲーム内を比較して一致や不一致を楽しむことができる。「いかにも自分っぽい!」とか、「あいつはこういう行動しそう」という点でまず面白い。ただ本作の場合、一歩進んで、自分の行動を正そう…と思うこともあった。先に書いた通り筆者はコミュニケーションが苦手という自覚があるが、仮想世界の筆者Zoiを見ていると、筆者以上にコミュニケーションが苦手。「まずは挨拶しろよ!」などと思わず突っ込み、その後で「でも自分も日常のなにげないコミュニケーションが苦手だったっけ…」と反省することが多々あった。仮想世界で再現された自分の行動を通じて、現実の自分の行動を見直すことができる。…これはまるで、仮想世界もうひとつの人生を体験しているかのようだ。

ちなみに会話については、プレイヤーが割り込んで「Zoi」に指示を出すことが可能。なので途中から筆者は、筆者Zoiが会話をするたびに介入することにした。すると、友好的な関係の人が増加。やはり人間関係には円滑なコミュニケーションが必要なのだ。現実世界の筆者も行動に移さねば…。

他の「Zoi」とのコミュニケーションという点では、「パーティー」を開催することも可能。関係のできた「Zoi」たちを自宅に呼び集め、コミュニケーションして関係を深めることが可能。それぞれの「Zoi」が他の「Zoi」をどう思っているかによって、会った時の結果も変わり、様々なイベントが発生するようになっていく。結果として、仮想世界に無数の物語が生まれるわけだ。

変化を発生させて波乱を楽しむもよし! 好きなキャラクターを作って見守るもよし
筆者は今回のプレイで、仮想世界に作った自分のシミュレーションを楽しむ…という方向でプレイした。しかし本作は、そうではない楽しみ方もできる。

そもそもプレイヤーは創造主なので、他のZoiの行動にも干渉可能。また、途中で「Zoi」を追加することもできる。筆者は今回、途中で自分のおばあちゃんを家族に追加することにした。現実の通りだと変化に乏しくておもしろくない…というのであれば、他の「Zoi」を操作してみたり、新たな「Zoi」を追加してみて、変化がどのように世界へ影響を与えるのか見守る…という楽しみ方も本作にはある。

もちろん、まったくのオリジナルキャラクターを作ってその人生を見守るという楽しみ方もある。リアルの人間関係より、自分で創造したオリジナルキャラクターの方に愛着があるという人も少なくないだろう。そんな人はオリジナルキャラクターを「Zoi」化、カスタマイズした都市で、オリジナルキャラクターの人間関係を楽しむというのがオススメだ。

もちろん、本作の楽しみ方は筆者がこの記事に書いたものに留まるわけではない。本作の自由度はそれほど圧倒的だし、その上アップデートまで予定されている。今後ますます面白くなっていくのは間違いない。新しい楽しさを求める人は、是非本作に触れて、仮想世界の楽しさを体験してみてほしい。

※画面は開発中のものです。
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