ネクソンが発売する「アラド戦記」の世界観を舞台にした新作アクションRPG「The First Berserker: Khazan」のレビューをお届けする。

目次
  1. アラド大陸の歴史を紐解くストーリーテリング
  2. 徐々にプレイヤーを成長させる絶妙な難易度設計
  3. 「The First Berserker: Khazan」が提供する新たなソウルライク体験
「The First Berserker: Khazan」レビュー:硬派なソウルライク体験と、成長の喜びを両立させた意欲作の画像

ネクソンのオンラインゲーム「アラド戦記」の世界観を舞台にした新作アクションRPG「The First Berserker: Khazan」が3月28日に発売される(Deluxe Editionは3月25日)。本作は、いわゆるソウルライクと呼ばれる高難度アクションゲームの系譜に連なりながらも、独自の戦闘システムと世界観で新たな体験をプレイヤーに提供する。

本稿では、高難度でありながらも初心者に優しい設計、気力管理を軸とした戦闘システム、そして豊かな世界観と物語が織りなす新たなソウルライク体験の全貌に迫りたい。

アラド大陸の歴史を紐解くストーリーテリング

「The First Berserker: Khazan」は、ネクソンのオンラインゲーム「アラド戦記」の世界観を深く掘り下げた作品だ。アラド大陸の歴史を800年遡り、初代バーサーカーの物語を描くスピンオフ作品である。単なるIPの拡張にとどまらず、独自のビジュアルスタイルとストーリーテリングで、既存ファンにも新規プレイヤーにも新鮮な体験を提供している。

物語は、ペル・ロス帝国歴89年、大将軍カザンが反逆者の濡れ衣を着せられ、過酷な拷問を受けるところから始まる。死の淵から辛うじて生還した彼は、自身に取り憑いた鬼神ブレードファントムと協力関係を結び、共に冥界の力を手に入れることになる。

「The First Berserker: Khazan」レビュー:硬派なソウルライク体験と、成長の喜びを両立させた意欲作の画像
過酷な拷問を受けたカザンは冥界の力を手に入れ旅に出る
過酷な拷問を受けたカザンは冥界の力を手に入れ旅に出る

Unreal Engineを駆使したセルルックの3Dアニメーションによる独特のビジュアルスタイルは、アラド世界の魅力を新たな角度から引き出している。キャラクターはアニメ調のタッチで描かれ、一方で背景や環境はより写実的な表現が用いられている。

この対比がアラド世界の幻想性と物語の残酷さを同時に表現し、独自の美学を生み出している。特に戦闘シーンでのエフェクトや武器の輝きは目を見張るものがあり、カザンの力強い攻撃が画面上で躍動する様子はプレイヤーに強い没入感を与える。

また、道中で見つかる文書や遺物からは、ストーリー進行では語られない世界の歴史や登場人物の背景が読み取れる。これらの収集要素は単なるコレクション以上の役割を果たし、歴史や文化に関する理解を深める手がかりとなるのだ。

マップデザインは比較的シンプルでありながらも、寄り道や探索の余地が確保されている。主要ルートから少し外れた場所にはアイテムや収集要素が配置されており、探索のモチベーションを高める工夫がなされている。

マップを隅々まで探索すると、直接ストーリーでは語られない要素も見られる
マップを隅々まで探索すると、直接ストーリーでは語られない要素も見られる

リスポーン地点の配置も絶妙だ。リトライのストレスを軽減しつつ、かといって近すぎて緊張感を損なうこともない。敵の配置は学習曲線に沿って設計されているため、少しずつスキルを身につけながら進めるようになっている。

また、本作における経験値にあたる「ラクリマ」は死ぬと回収しなければロストしてしまう。だが、ボス戦で負けても必ずラクリマは回収でき、その上ボスに与えたダメージ量に応じて少量入手できるため、何度も挑戦するうちに少しずつレベルが上がっていく。このシステムにより、負けてもボスに繰り返し挑むモチベーションになる。

さらに、ボス戦は単なる高難度の敵という以上の存在感を放つ。各ボスはストーリー上で重要な位置を占めるキャラクターであり、バトル前後の演出やカットシーンも丁寧に作り込まれている。戦闘中の台詞やモーションからも、カザンとボスの関係性や背景が読み取れるように工夫されており、単なる「倒すべき強敵」という以上の存在だ。

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ボス前後のカットシーンや台詞からも、ストーリーの重厚さを感じられる
ボス前後のカットシーンや台詞からも、ストーリーの重厚さを感じられる

徐々にプレイヤーを成長させる絶妙な難易度設計

いわゆる「死にゲー」と呼ばれるジャンルは、その高い難易度ゆえに敬遠するプレイヤーも少なくない。しかし「The First Berserker: Khazan」は、そんな初心者の壁を取り払う絶妙な難易度設計と成長システムを備えている。

本作の難易度は「ノーマル」と「イージー」の2種類が用意されており、ノーマルからイージーへの変更がいつでも可能だ。一度イージーを選択するとノーマルに戻すにはニューゲームからやり直す必要がある。ただし、イージーモードではダメージ量減少、攻撃力増加、気力回復速度増加、重量上限増加の恩恵が受けられ、より快適にプレイできる。

しかし、イージーだからといって本作の本質的なゲームプレイが失われるわけではない。筆者も途中からイージーでプレイしたが、シビアな操作の要求度とゲーム難度のベースの高さは変わらず、敵の猛攻も続く。イージーモードは単なる「簡単モード」ではなく、プレイヤーの成長を緩やかにサポートする「学習モード」と捉えることもできる。

ゲーム中ならいつでもイージーモードに変更できる。イージーからノーマルへは変更できない
ゲーム中ならいつでもイージーモードに変更できる。イージーからノーマルへは変更できない

戦闘システムの核となるのは、カザンの「体力」「気力」「闘志」という3つのリソース管理だ。体力が尽きると死亡するが、攻略の上で本当に重要なのが「気力」のコントロールである。

攻撃や敵の攻撃をガードすると気力は減少し、なくなると「無気力状態」に陥ってしまう。この状態では一定時間、攻撃やガードなどのアクションが取れなくなり、非常に危険だ。単純に攻撃を続けるだけでは気力が尽き、ガードに徹しすぎても同様の結果を招く。このバランス感覚こそが本作の醍醐味であり、プレイヤーの成長を実感できるポイントでもある。

気力管理の要となるのが「ジャストガード」と「ジャスト回避」だ。敵の攻撃タイミング直前にガードを押す「ジャストガード」は、通常のガードより気力消費が少なく、硬直も減少する。さらに気力がなくなったときもジャストガードに成功すれば無気力状態を回避できるという大きなメリットがある。一方、ガード不能な攻撃に対しては「ジャスト回避」が有効で、成功すれば無敵時間が延長され、回避攻撃の威力も上昇する。

興味深いのは、敵も同じく気力システムに縛られている点だ。敵が無気力状態に陥ったとき、カザンは「ブルータルアタック」という大技で大ダメージを与えられる。特にボス戦では、自らのガードや回避で相手の気力を削り、無気力状態に追い込むことが勝利の鍵となる。これは単純な「避けて殴る」だけの戦闘ではない、戦略的な深みをゲームに与えている。

敵の気力を削りきることで「ブルータルアタック」という大技をたたき込める
敵の気力を削りきることで「ブルータルアタック」という大技をたたき込める

成長システムの自由度も本作の魅力だ。武器は最初は刀斧のみだが、ゲームの進行とともに大剣や槍などが解放される。各武器はプレイスタイルに大きく影響し、刀斧は攻撃スピードが速く手数が多い一方、大剣は一撃が重く広範囲をなぎ払える。また、防具にはセット効果があり、単純なステータス比較だけでなく、効果の組み合わせを考える面白さもある。

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大剣や槍といった武器を使うこともできる
大剣や槍といった武器を使うこともできる

さらに注目すべきは、柔軟なスキルツリーとスキルポイントシステムだ。スキルポイントはガードや攻撃に成功するなどの熟練度で入手でき、レベルアップに使う「ラクリマ」とは別の概念で比較的潤沢に手に入る。

スキルポイントはいつでもリセット可能で、能力のリセットアイテムも入手できるため、気軽に試行錯誤できる。筆者の経験では刀斧の「竜巻斬り:迅速」というスキルの取得で難易度感が大きく変化し、プレイの快適さが向上した。このような発見がプレイヤーが成長を実感する瞬間だ。

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スキル振りによりプレイの難易度は大きく変化する
スキル振りによりプレイの難易度は大きく変化する

「The First Berserker: Khazan」が提供する新たなソウルライク体験

「The First Berserker: Khazan」は、アラド戦記という既存IPの世界観を深く掘り下げつつ、独自のビジュアルスタイルと物語で新たな魅力を作り出している。ソウルライクゲームとしての挑戦的なゲームプレイと、緻密に描かれた復讐劇が見事に調和し、プレイヤーに忘れがたい体験を提供する作品だ。

本作は、高難度アクションゲームでありながら、初心者への敷居を低くしつつも、本作が持つ本質的な魅力である「克服する喜び」と「成長する快感」を損なうことなくプレイヤーに提供している。初心者にとっては適切な導入となり、熟練者にとっては新たな戦闘システムをマスターする挑戦にもなるだろう。

アクションRPGファンはもちろん、自分の成長を実感できる魅力的なゲーム体験を求めるすべてのプレイヤーにおすすめしたい一作である。

「The First Berserker: Khazan」レビュー:硬派なソウルライク体験と、成長の喜びを両立させた意欲作の画像
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得意分野はビデオゲーム全般だが、メタバースやAI関連の記事も積極的に執筆中。ライター業以外にもVTuberとしての活動や、メタバース内ではラジオパーソナリティや、DJとしての顔もあり、肩書きが混雑してきたのが最近の悩み。

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※画面は開発中のものです。

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