スクウェア・エニックスよりPS5/PS4/Nintendo Switch/Steam/iOS/Android向けに発売された「サガ フロンティア2 リマスター」をいち早くプレイする機会を得たので、そのレビューをお届けする。

今回プレイしたのはPS5版となる。なお、この記事ではゲーム内の一部シーンを紹介するため、ネタバレが気になる人は注意してほしい。

「サガ フロンティア2 リマスター」レビュー:奥深いシステムはそのままに快適さが大幅にアップして止め時が見つからない、当時の意欲作は現代の傑作への画像

「サガ フロンティア2」は1999年4月1日に発売された「サガ」シリーズの8作目だ。チャレンジブルな「サガ」は作品ごとに特徴が異なるが本作はそのなかでもとくに異質な作品。水彩で描かれた中世風の世界を“ヒストリーチョイス”という独自の形式で物語を進めていくことになる。

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前作「サガ フロンティア」はシップによるリージョン移動、モンスターを吸収しての形態変化、メカが主要キャラとして登場するなど、「Sa・Ga」シリーズを彷彿とさせる要素が見られたが、本作はファンタジー色が強い作風に。音楽も伊藤賢治氏から浜渦正志氏に交代しており、雰囲気がガラリと異なる。温かみのあるグラフィックと浜渦氏の手がける落ち着いた曲調のBGMが馴染んでおり、オンリーワンの魅力を作っている。

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ストーリーはアニマというエネルギーと、それを用いて発動する術の存在が当たり前の世界において、そのアニマを持たずに生まれてきたフィニー王家の王太子・ギュスターヴ13世と、その裏で活躍するウィリアム・ナイツの2人を中心に、プレイヤーは複数のシナリオによって構成された長きにわたる歴史を追体験していく。

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ギュスターヴ編は、術が使えないギュスターヴ13世を軸に、公的に記録されている史実、貴族や王族たちの政治的な駆け引き、大規模な戦争などが描かれる。シナリオは会話を中心に進むことが多く、冒険的な要素は少ない。

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ウィル・ナイツ編は、ウィリアム・ナイツから3世代にわたるナイツ一族の人生を軸に、歴史の裏で起こるエッグとの戦いを描く。ナイツ一族は遺跡の発掘を生業とするディガーであるため、宝探しやモンスターとの戦いなどの冒険が中心となる。

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「サガ フロンティア2」は長い歴史の1部分を切り取って読んでいく内容であるため、間で起きている出来事やキャラクターの最期など、プレイヤーがすべてを理解できるわけではない。この斬新なシステムに当時はユーザーの間に戸惑いもあったのだが、筆者は今だからこそ多くの人に楽しんでもらいたいと思っている。

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昨今は伏線を張り巡らせてその伏線を奇麗に回収するタイプの物語が多く、また評価されがちでもあるのだが、あえて余白を残したシナリオは、その描かれていない部分に想いを馳せたり、同じ作品を愛する同志とともに議論をしたりする楽しさがある。「サガ フロンティア2」はいまだにネット上で物語のある部分の真実について語られていることもあり、ファンの熱量は高いままだ。

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これがもしも質の低い作品であればほかの作品に移っていくだろうし、「サガ フロンティア2」が議論に値する価値のあるシナリオだと多くの人が認めている事実だろう。人を選ぶシステムではあるものの、一方で「サガ フロンティア2」こそシリーズ髄一のシナリオであると語る「サガ」ファンも多いのでぜひこの物語を体験してみて欲しい。

筆者はギュスターヴ13世がお気に入りのキャラクターだ。術を持たずに生まれてしまったがために国から追放され苦難の道を歩くことになったものの、さまざまな人に支えられていき自らの道を切り開いた彼の人生はとても魅力的であった。そして、そんな彼が歴史から退場したあともシナリオが展開してくのが「サガ フロンティア2」の良さだろう。

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基本的にはこれまでのフリーシナリオと異なり、物語のあらすじや結末、登場するキャラクターは固定で決まっているが、なかにはプレイヤーの選択で生死が分かれるキャラクターも。現在であればインターネットの攻略サイトも充実しているので自分の好きなものを選ぶのも容易いが、まずはなにも情報を見ずにプレイしてみてはいかがだろうか。

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なお、リマスター版ではマリーとケルヴィンが結ばれる過程を描いた“ケルヴィンとマリーの婚礼”をはじめ、ベニー松山氏が執筆する追加シナリオも多数。

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「サガ フロンティア リマスター」のヒューズ編や「インペリアル サガ」「インペリアル サガ エクリプス」でいくつも「サガ」の物語を紡いできたベニー松山氏。これだけ安心できる書き手もいないだろう。もちろん、追加シナリオに関してはシリーズ総合ディレクターの河津秋敏氏が監修しているため、この点もファンには心強い。追加シナリオは全体に満遍なく存在するがとくに後半に多くなっていくので、オリジナル版をプレイしたユーザーはお楽しみに。

戦闘には4人で行うパーティバトルと、敵と1対1で戦うデュエルの2種類が存在。また、軍隊同士の戦いを描く“コンバット”もあり、それぞれ戦略性が異なる。

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年齢が若いキャラクターは体力的なものが高く、年を取ったキャラクターは肉体は衰えているものの精神は衰えない。ここは戦闘を通じて同じキャラクターの年の積み重ねを感じることもできてよい。ストーリーと戦闘システムがうまく組み合わさっている好例だと考えられる。

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パーティバトルは一般的なRPGの戦闘に近く、連携や閃きなど、前作「サガ フロンティア」とのバトルとも近い。デュエルは“斬る”や“払う”“叩く”などの動作を4つ選択し、特定の動作が繋がると技として発動する。覚えた技はパーティバトルでも使えるようになる。少々複雑なのでオリジナル版の発売当時は戸惑ったプレイヤーも多いかもしれない。しかし、このシステムを理解してくると戦略性が増していき、とてもおもしろくなってくる。パーティバトルで戦うか、デュエルで戦うか、もしくはLPを犠牲に戦闘から離脱するか。さまざまな立ち回りができるのが本作の魅力だ。リマスター版はヒント機能も充実しており、プレイの導線が親切になっているのでそこは安心してプレイして欲しい。

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今回のリマスターはグラフィックの高解像度化のほか、UIの再構築、成長能力継承機能の追加をはじめとするゲームシステムのブラッシュアップが施されている。ポケットステーションでプレイ可能だった“GO!GO!ディガー”もゲーム内に収録されており、痒いところまで手が届く作り。なお、リマスターでの追加要素に関してはユーザー自身で選ぶことが可能だ。

「サガ フロンティア2 リマスター」レビュー:奥深いシステムはそのままに快適さが大幅にアップして止め時が見つからない、当時の意欲作は現代の傑作への画像
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筆者がリマスター版をプレイして、まず感動したのがグラフィックだ。「サガ フロンティア2」は水彩のような美麗な背景が特徴の作品だが、リマスターでグラフィックが鮮明になったことで、その美しさはため息が出るほどだ。また、グラフィックが鮮明になったことで探索で歩ける場所がわかりやすくなったのもありがたいポイント。「サガ フロンティア リマスター」と同様に画面の切り替わる移動ポイントには矢印も表示されるようになり、ストレスフリーで冒険できるようになっている。

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また、戦闘についても入場や連携の演出を従来のものよりもテンポアップしたものに変更できるほか、戦闘中のスピードを2倍速、3倍速に設定することもできる。個人的に「サガ フロンティア2」はテンポの面で惜しいと感じる部分があったので、そのマイナス面が無くなったのはありがたい。さらに当時と違って読み込みも早いのでセーブなどで待たされることもない。テンポがいいのでいつまでも遊んでいたくなる魅力がある。

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“ヒストリーチョイス”などの本作独自の魅力はそのままにグラフィックの高解像度化やテンポのよくなったバトルで遊びやすくなっている「サガ フロンティア2 リマスター」。昔からのファンの人も最近シリーズを追っている人もぜひチェックしてみて欲しい。

1981年生まれ。東京都出身。2000年よりゲーム雑誌のアルバイトを経て、フリーライターとしての活動を開始する。アドベンチャーゲームやロールプレイングゲームなどのジャンルを好み、オールタイムベストは「東京魔人學園剣風帖」。ほかに思い入れのあるゲームは「かまいたちの夜」「月姫」「CROSS†CHANNEL」「ひぐらしのなく頃に」「ダンガンロンパ」「カオスチャイルド」「ライフ イズ ストレンジ」「レイジングループ」など。

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※画面は開発中のものです。

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