7月22日~24日にかけて、パシフィコ横浜 ノースにて開催のゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC2025」。本稿では24日に行われた講演「ChatGPT×ゲームで生まれる新時代のインタラクション──『ドキドキAI尋問ゲーム』から学ぶ、生成AIを活用したビジネス&ゲームデザイン」のレポートをお届けする。
登壇者は、「ドキドキAI尋問ゲーム」、「ウーマンコミュニケーション」と話題作を立て続けに開発した、インディーゲームクリエイターの山田裕希氏。「ドキドキAI尋問ゲーム」では、自然な受け答えができるAIチャットボット“ChatGPT”を本格活用。「殺人容疑の掛けられたAIを尋問する」という設定を用いて、AIとコミュニケーションをする新鮮な体験と、“ひねり”の効いたストーリーの両立で、ユニークなゲームプレイを生み出した。


講演はテーマは、大きく分けてふたつ。「ドキドキAI尋問ゲーム」における「ビジネスデザイン上の工夫」と「ゲームデザイン上の工夫」だ。
本作は当初、無料ゲームとして公開した結果、ChatGPTのAPI使用料がすぐに10万円を超えてしまい、3日で公開停止となっている。Steamで販売中の「ドキドキAI尋問ゲーム 完全版」では、この反省を活かしてさまざまな工夫が取り入れられており、「ビジネスデザイン上の工夫」ではそれらについて語られた。
本稿では、もう一方のテーマである「ゲームデザイン上の工夫」に関する話題をピックアップする。
ChatGPTは「口が軽い」。開発当初はゲーム序盤からプレイヤーにネタバレしていた
「ドキドキAI尋問ゲーム」の開発において山田氏が直面した最大の課題、それは「ChatGPTをコントロールできない」ことだったという。問題点を3つに分けると、以下になる。
・展開にメリハリがつかない
・言ってほしいことを言ってくれない
・言ってほしくないことを言う

予想外の受け答えもChatGPTならではの味わいではあるが、狙った通りの体験をプレイヤーに提供するのがゲームデザインだ。これを実現するため、山田氏はゲームの各所にメスを入れていった。
まず、「ゲームの展開にメリハリがつかない」問題に関しては、尋問を受けるAI側に“恐怖値”を設定することで対応。プレイヤーの尋問に感じている恐怖の度合いで行動が変化する仕組みを取り入れることで、やりとりに動的な変化を生み出した。メインの尋問画面には、この“恐怖値”に連動する要素が散りばめられている。


“自白確率ゲージ”はAI側の恐怖と連動しており、「100%で自白する」というゲームプレイとして目指すべき目標にもなっている。また、ナビキャラクターが殊更にAIが恐怖するような言葉を使うように促すのも、ゲームを停滞させないための誘導の役割を果たしている。容疑者のモーションや、画面エフェクトおよびBGMも、“恐怖値”が高まるにつれて変化していく仕組みだ。
ゲームとして見せ場にしたい場面で「言ってほしいことを言ってくれない」問題には、これらの場面でのAI側の台詞はChatGPTに頼らず、山田氏自身が書いた台詞を表示することで、ストーリー展開をコントロール。

では、それとは逆の「言ってほしくないことを言う」問題とはなにを意味するのか? それは開発中、ストーリーの全容をChatGPTが把握しているため、「ゲーム序盤でストーリーの真相の一部を喋ってしまう」など、まだプレイヤーに伝えたくない情報を開示してしまう問題が生じていたというのだ。「ChatGPTは口が軽い」とは山田氏の談。
この問題には、事件の真相部分はChatGPTのプロンプトからあえて省き、空白地帯を作ることで、“プレイヤーとの対話の中で真相が作られていく”ような設計にして対応。容疑を掛けられたうえ、真相さえ教えて貰えないままプレイヤーにガン詰めされていたAIに、さすがに少し同情してしまった。


このような数々のコントロールによって「ドキドキAI尋問ゲーム」は、“AIとの対話”という多くの人類にとって極めて新鮮な体験を担保したまま、最後まで感情移入できる破綻のないストーリーゲームとしても成立していたのだ。
本講演は、8月4日10時までタイムシフト配信が行われている。全容が気になった人は、チェックしてほしい。
CEDEC2025公式サイト
https://cedec.cesa.or.jp/2025/
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