ブシロードの代表取締役社長・木谷高明氏へのインタビューをお届け。第2回はデジタルゲームの領域を中心にお話を伺っている。
1月12日に行われた「カードファイト!! ヴァンガード 15th Anniversary ブシロード新春大発表会2026」。その中で2026年のブシロードを占うさまざまな発表が行われた。
その発表を受けて実施した今回のインタビューでは、同社の代表取締役社長・木谷高明氏にトレーディングカードゲーム(TCG)、デジタルゲーム、エンタメ全般の3つのトピックスから話を伺ったので、全3回の連載形式でお届けする。
第2回は同社のデジタルゲームに関する話題が中心。実際に取り組む上で感じたデジタルゲーム市場の難しさや、「BanG Dream! Our Notes(アツドリ)」を企画した経緯などが語られている。

インタビュー・編集:TOKEN
文・構成・写真:胃の上心臓
事業の再編を行うことになったデジタルゲーム展開の難しさ
――ブシロードゲームズとしてのブランディングから、モバイルゲームに関してはブシモに回帰し、そのほかのデジタルゲームはブシロードとしてのリリースになるとのことですが、ブシロードのデジタルゲーム事業についての現状をお聞かせください。
木谷氏:元々デジタルゲームに関しては、自社IPが展開する上での出口のひとつとしてあるべきだと考えています。
ブシロードゲームズに関しては、以前に1本にかかる平均額が1億円ということを言った結果、変に伝わってしまったので反省しています。低価格で制作できるビジュアルノベルもたくさん作っていたので、それらも踏まえた平均値で開発費を出すとそのくらいの価格になりますが、「HUNTER×HUNTER NEN×IMPACT」や「HUNTER×HUNTER NEN×SURVIVOR」などのタイトルは、当然かなり開発費をかけています。
ブシロードゲームズでは、コンソールも含めてSteamなどの媒体でビジュアルノベルにもっと力を入れていこうと考えていました。方向性としてはふたつで、ひとつは有力な版権作品をゲームにすること。もうひとつは、これから展開する作品の原作を作るために利用することでした。
原作作りに関して当社は3つのパターンがあります。まずは新たに発表した「ZERO RISE(ゼロライズ)」のように、私がやっているアニメ化を前提としてコンテンツをドカンとブチ上げるようなもの。これは最初から数十億円をかけるつもりでやるプロジェクトです。
ふたつ目は、逆のパターンで出版部門のブシロードワークス。原作となるオリジナルIPを作って種を撒いていくものになっていて、こちらはかなり成長しています。
そのふたつの中間としてビジュアルノベルでコンテンツの原作を作っていくという、三本柱で行くつもりでしたが、結果的にほかのふたつはまあまあ上手くいっているのですが、ビジュアルノベルに関しては中途半端になってしまいました。それでは上手くいかない時代になってしまったんです。
マーケットでもビジュアルノベルは数が多い中、当初の目的はライセンスを取って有名タイトルを出すというところにあったのですが、やはり昨今では1億円かけようが2億円かけようがダメですし、ヒットさせられない。だから原作づくりも実現できず、目的の両方とも実現の目途が立ちませんでした。

なので一度出直して、原作を自社のIPから出していくアプリゲームをブシモに集約しています。ただ、「HUNTER×HUNTER」のゲーム化については「HUNTER×HUNTER NEN×IMPACT」の企画がまず決まって、それを進めるなかでアプリゲームの「HUNTER×HUNTER NEN×SURVIVOR」が生まれました。
ビジュアルノベルは方針を見直して、取り組む本数やテーマを絞っていくと思いますが 、今後も原作として残していくものもあります。実はブシロードゲームズでも成功したタイトルの一番が「カードファイト!! ヴァンガード ディアデイズ」で、「少女☆歌劇 レヴュースタァライト 舞台奏像劇 遙かなるエルドラド」も黒字でした。
「カードファイト!! ヴァンガード ディアデイズ」は、先日行われたセールでそろそろ販売本数が10万本に届きます。続編の「カードファイト!! ヴァンガード ディアデイズ2」も55,000本以上売れているので、次回作も視野に入れられるかなと考えています。


――「少女☆歌劇 レヴュースタァライト 舞台奏像劇 遙かなるエルドラド」の場合はビジュアルノベルという形式がハマっていたものの、結果としてビジュアルノベルそのもので企画を組んでいくのが難しかったということですね。
木谷氏:ファンのみなさんが劇場版や-The LIVE-#4 Climaxと地続きになっている「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」に関する何か新しい物語を見たかったから上手くハマったのだと思っています。
「カードファイト!! ヴァンガード」なら、作品として好きな方に買っていただけています。もちろんしっかり遊べるものであることは大前提ですが、やっぱりうちの会社は“これが好きだという方に、欲しいと思ってもらえるものを提供していく”必要があるんだろうなと思いました。
――全員が同じビジョンを共有して新しいプロジェクトを進めるのは難しいですよね。
木谷氏:そうですね。ただ、全員が良いと思うものは失敗します。なぜなら、既に世の中に出ているはずだからです。なのでみんながあっと驚くものや、まだ気づいていないものの方が成功する確率が高いです。もちろん、それだけで成功する訳ではないところがまた難しいのですが。
立ち上げたばかりの「ZERO RISE(ゼロライズ)」にしても、さらにたくさんの皆様へ魅力を届けていきたいと考えています。需要自体はあると考えていますし、 私はこのタイトルを「BanG Dream!(バンドリ!)」のような柱にしたいと思っています。 潜在的にはそれほど大きくなる素養はあると思っています。

スマートフォン向けゲームの市場が変化する中での「アツドリ」への期待
――「ZERO RISE」は既にさまざまな場所で施策を打っていますよね。
木谷氏:そうなんです。ですが、回収率を聞かれてしまうので、こういうお金の使い方はみんな絶対にできません。オリジナルコンテンツの立ち上げから最初の1、2年なんて赤字になるに決まっています。とはいえ、スマートフォン向けゲームに何十億も突っ込んでリリースしたのに、即サービス終了をお知らせすることになるよりはまだマシじゃないですか。
――運営タイトルはヒットすれば回収できる時は一瞬ですが、できるかどうかの確率が低いですし、コンソールも出すまでに裏でかかった期間が乗るので難しいですよね。一度リリースしたものをひたすらセールで回す……というのも体力がないと厳しいと思います。
木谷氏:Steamはずっと売れているのですが、歴史がないとなので新規参入は中々難しいですね。
――新作の「HUNTER×HUNTER NEN×SURVIVOR」はいかがでしょうか? 現在の市場を見ていると上手くいくのかな、と心配だった部分もあったのですが。
木谷氏:そう思いますよね。(開発会社の)ワンダープラネットの社長と話をしていたので、僕は他の人よりは成功するのかなと思っていました。
ただ、宣伝費をこれだけ使いたいという相談が事前にあってそれを許可するときに、これでからっきしだったらどうなってしまうのかと思ってしまうところはあります。最初の開発費と宣伝費を足しただけでもかなりですが、そこにプラスして上手くいかなかった場合でも何年かは運営する……その赤字まで考えると凄いことになってしまいますので。
――サービス開始から2、3ヶ月で継続するか終了するかのジャッジをせざるを得ないですよね。
木谷氏:開発費をかけたものほど運営費がかかってしまうので、大型タイトルほどすぐにサービス終了になる点も含めて、中々難しい話です。

――先日発表された「バンドリ!」の新作ゲームアプリ「アツドリ」についてもお聞きします。こちらはどういった経緯で企画されたのでしょうか?
木谷氏:昨今はスマートフォン向けゲームのリリースが減少していて、「HUNTER×HUNTER NEN×SURVIVOR」をリリースした今年2月頃も他タイトルがほとんどなかったのですが、この時に初動を迎えられたのは大きかったと考えています。
「アツドリ」は、「バンドリ!」を今後さらに大きく育てていくうえで、既存タイトルの延長線上だけでなく、新しい体験の場をどう設計するかという発想からスタートしました。プロジェクトの成長に伴ってバンド数も増え、表現の幅も広がる中で、それぞれの魅力を最適な形で届けるには別軸のアプリ展開も必要だと考えたためです。構想から約3年を経て、MyGO!!!!!やAve Mujicaをはじめプロジェクト全体の広がりも追い風となり、今この挑戦を形にする意味はより大きくなっていると感じています。
「バンドリ!」全体としても、新作映画「BanG Dream! Ave Mujica prima aurora」の公開、「BanG Dream! It's MyGO!!!!! / Ave Mujica」TVアニメ新シリーズの放送など、今後さまざまな展開を予定しています。加えて、TVアニメ「バンドリ! ゆめ∞みた」も7月から放送が始まります。どの作品もとても良いものに仕上がっているので、これからの「バンドリ!」にぜひ注目していただきたいです。



――ユーザーとして気になるところだと思いますが、「ガルパ」のサービスもそのまま継続されるという認識で問題ないでしょうか?
木谷氏:はい。「ガルパ」も引き続き大切なタイトルとして、可能な限り継続して運営していきます。
――「ヴァイスシュヴァルツオンライン」についてもお聞かせください。リアルカードゲームと平行する形になりますが、今後どのように展開されていくのでしょうか?
木谷氏:「カードファイト!! ヴァンガード ディアデイズ」のようにカードゲームとしての自社IPを使ったコンソールゲームはありなのかなと手応えを感じています。
「ヴァイスシュヴァルツオンライン」に関しても、ダウンロードコンテンツでいろいろなタイトルが出せるのならば、元のゲームも継続して購入いただけると考えています。コンソールなので運営費はほとんどかかりませんし、1年といわず2年、3年と長続きする可能性はあると見ています。

新コンテンツ「ZERO RISE」や、「バンドリ!」をはじめとする自社IPのライブイベントの現状など、グループ全体を支えるエンタメ領域について語った第3回は後日公開予定。次回で最終回となるので、ぜひチェックしていただけたら幸いだ。
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